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公共事業と建設VEで意見交換 日本VE協会 第41回VE全国大会開く(建設産業新聞)
- 2008/11/21 10:32:55
- カテゴリ:メディア紹介記事
日本バリュー・エンジニアリング協会(会長・小野茂夫東京工芸大学理事長)の第41回VE全国大会(大会実行委員長・松田節夫フジタ安全・品質・環境本部エグゼクティブコンサルタント)がこのほど、「今こそSHINKAの瞬間(とき)」をテーマに、東京・千代田区のアルカディア市ヶ谷で開かれた。大会には、2日間で約1100名が参加。各種表彰、発表、講演等とともに、トークセッション「建設VEのSHINKA」が開催され、建設VEと総合評価を軸に、会場の参加者も交えて発注者と設計者、施工者の3者が活発な意見交換を行った。3者が建設VEでWIN―WIN―WINになるために――。
■出席者
<パ ネ ラ ー>
秋田県建設交通部 建設管理課技術管理室 副主幹 VEL 菅 尚文氏
大分県土木建築部 建設政策課 副主幹 VEL 森﨑 貴嗣氏
株式会社建設技術研究所 マネジメント事業部 副事業部長 VES 山下 幸弘氏
りんかい日産建設株式会社 技術研究所 所長 CVS 五味 信治氏
<コーディネーター>
ソルブ コンサルティング 代表 CVS 宍戸 利彰氏
宍戸(ソルブコンサルティング) 今日は、発注者と設計者、施工者の3者それぞれにメリットのある関係を構築するにはどうしたらよいかということを、VEという共通言語で話していきたいと思う。このトークセッションも今年で5年連続になるが、97年に「公共工事コスト縮減に関する行動計画」が策定され、VEが初めて政策の中に取り入れられたことを受けて1年後のフォーラムでその司会をした。当時は契約VEが中心で、ノウハウや報酬をめぐり発注者と施工者の利害が対立しているような関係だったが、05年に関東地方整備局が国交省として初めて設計VEを導入し、また、「公共工事品確法」の施行に伴い総合評価落札方式が広がったことで、地方自治体も積極的に設計VEに取り組まれるようになり、この3年ほどでVEが共通言語になりつつあると考えている。最初に秋田県さんから、現状の取り組み、問題点についてお話しいただく。
菅(秋田県) 04年から06年で9件の契約後VEを採用し、大幅なコスト縮減となっている。さらに、今年度からは総合評価落札方式で施工計画審査タイプ以上の大きな工事については契約後VE方式を併用している。
05年には「設計VEの推進に関するガイドライン」を策定して07年まで34件を実施し、コスト縮減提案が約93億円となっているほか、事前の研修やワークショップ等を通しての職員の技術力向上効果も大きい。ただ、課題もある。中には機能の低下によるコスト縮減ではないかと誤解している方もいる。また、設計条件のとらえ方で個人差があり、その成果には大きな違いが出てくる。さらに、事業採択要件が壁となることもあるほか、事業化の決定が急なため、VE実践のスケジュール管理が難しい。また、難しいVE提案を判断できる職員が不足していることも課題だ。本県の場合、入札時VEの対象案件の数が少ないこともあり、施工者の取り組みも遅いように思われる。
次に、VEのあるべき姿を二つの視点で述べる。一つは3者の関係で、設計者からはアイデア、施工者からは技術の提供をいただき、発注者は適正に評価する。これが上手く回っていくことが必要となる。本県の場合は、工事を発注した際に、重要な案件については当初設計した設計者さんにも出席いただき、施工者、発注者とともに注意点の確認を行う。このような関係ができあがっていくと、公共事業の価値が向上し、地域の活性化、発展につながり、最終的にはエンドユーザーの満足が得られるのではないか。
事業の流れからの視点がもう一つ。計画立案の段階から設計、工事発注、工事施工に至る様々な段階で、発注者、設計者、施工者がそれぞれに、また、3者が協力し、「いつでもVE」「どこでもVE」を行うことができれば、理想といえるだろう。
宍戸(ソルブ) 次に大分県さん。
森﨑(大分県) 設計VEは06年度からインハウスVEを主体に取り組んでいる。
設計VE導入の目的は、大きく分けて三つある。一つ目は、コスト縮減効果が高いということ。できる限り上流の段階でやればやるほど大きな効果が見込める。二つ目は、コスト縮減以外の問題解決に、VEは大きく寄与する。環境負荷の軽減、地域ニーズの適切な反映など、潜在化した問題点が解決の方向に進んでいく。三つ目は、発注者としての意識改革と技術力の向上。VEを活用することによって、あらゆる分野の専門家、知識に長けた人間がその活動に参集して、議論をぶつけ合う中で、それらの向上が図られるのではないかと考え、設計VEを導入している。
そうした中で、人材育成は非常に重要。大分県では公共事業の実務担当者の約半数が既にVE基礎講座を受講しており、その約4割の103名がVEリーダー(VEL)の資格を取得している。官公庁初のVEスペシャリスト(VES)も輩出しており、VE環境は少しずつ浸透しつつある。
VEは従来の各種基準類に基づく公共事業の設計・計画を80点とすれば、100点に近づけていく改善活動だ。その改善には、まだまだ多くのやるべきことがある。今、発注者自身が改善へ向けた取り組み姿勢を明確に示して、みずから実践していく観点が求められている。
一方で、発注者と同様に、設計者や施工者の意識改革、技術力向上も重要だ。設計者、施工者を適切に評価するシステムをつくるなどし、VE環境を浸透させていきたい。
総合評価落札方式は、5000万円以上の工事を対象に取り組んでいる。本県の総合評価落札方式は、実績を重視する簡易型で実施しているため、高度な提案を受け付ける入札時VEは採用していないのが現状である。
宍戸(ソルブ) お二人の県ともにインハウスVEを中心にしている。総合評価方式は、まだそれほど多くの実績はないが、総合評価方式はVEそのもの。地方に行くと、建設業者さんにその認識がないことに驚かされる。次に山下さん。
山下(建設技術研究所) 私ども建設コンサルタントがVEに関してやっている仕事は官公庁の中堅技術者向けの設計VEの基礎講習と、インハウス設計VEの支援業務が中心。国交省などでは、設計チームとVEチームが独立したVE付き設計業務もある。
そうした中、課題は、VEをやるための組織体制と人材が必ずしも十分とは言えないこと。意識改革も発展途上にある。関係者の理解促進も重要。このため、講習会、意見交換会を開催したり、また、学会発表なども始めており、今後もどんどんやっていきたい。
発注者側においては、契約方式、報酬制度をしっかりと整えていただき、窓口も一本化、また、理解の促進には民間の技術者をぜひ活用していただきたい。ビジネスモデルの確立も課題で、それには提案力を評価するプロポーザルなども有効と思う。
要は、官側は目標を達成するために民間技術等をうまく活用し、民間は官側のいろいろな要求に的確に応えていく。そのために、民間は人材の育成や技術の組み直しなど行う。今日の全国大会の意見等も踏まえて、柔軟に変えていきたいと考えているところだ。
宍戸(ソルブ) 最後に五味さん。
五味(りんかい日産建設) 私は、実際に施工の提案に応じた時に現場でどのようなことが起こっているかということについてお話したい。問題は3つあり、一つは技術のダンピングで、高額な新技術、特殊工法を提案しないと、技術評価点が出ないという場合が多い。このような提案の費用負担は施工サイドの企業努力となってしまう。また、本来は設計変更となるような事柄が施工サイドで費用負担をしなければいけないということも生じている。
次は、オーバースペックの問題。共通仕様書などに出来形は定められているが、過剰な精度の向上を技術提案でなおかつ求めるというのは、いかがなものかなと感じる。過度の工期短縮も課題で、適切な工期設定ができずに、工期短縮を技術提案で求めることもある。3つ目は評価結果の不透明性で、評価結果の内容が公開されない事例が多いと聞いている。
宍戸(ソルブ) 私のほうから少し補足すると、総合評価落札方式もまだ発展途上でいろいろな問題を含んでいる。総合評価方式の活用検討委員会では、仕様の範囲内で評価をするという指導が出ており、あれもやります、これもやります、こういう高いものを含めますという提案は、評価してはならないということになっているはず。それが徹底されないまま動いている。この徹底が図られないとだめかなという気がする。
一通り4名の方のお話を伺った。会場の方で、もう少し説明をいただきたい、また自分はこう思うのだがというようなことがあれば。
会場① 森﨑さんに、設計VEにおいて施工者の意見も反映されるかを伺いたい。
森﨑(大分県) 我々発注者だけで担い切れない技術、知識を補うためにコンサルタントを活用する時があり、技術的提案の裏づけ等をとるために施工者の意見を聞くこともある。
会場① 菅さんにお伺いする。VEは価値創造。コストダウンも価値創造の一つの表現の方法だと思うが、それを分配する方法に関してはどうお考えか。
菅(秋田県) 先ほど、過度な提案を求めているという指摘もあったが、発注者が設計者、施工者にどのように還元していくのか。その分のインセンティブをどう評価し、組み入れていくかということが、現状ではちょっと薄いように思う。そうした面も含めて、我々発注者はもっとVEのシステム、発注スタイルを進化させていく必要があるとは考えている。
会場② 菅さんにお聞きしたい。93億円の節約を支援したVEの専門家には幾らぐらいフィーをお払いしたか。生々しい話で申し訳ないが、お答えいただきたい。
菅(秋田県) アドバイザーの方に入っていただいたのは、34件のうち5件。それ以外については、専門家に指導いただいた者がリーダーとなり実施している。3年間は導入期間で、ノウハウを教えていただくということがあり、諸経費、技術経費などを含めて、日本VE協会の参考基準に拠っている。
会場② インセンティブも考えていただければと思う。
宍戸(ソルブ) 次に、皆さんからあるべき姿の構築に向けてのお話を。
菅(秋田県) あるべき姿というか、理想形を描いてみた。1点目は、発注者、設計者、施工者それぞれが意識改革をすること。発注者がお客さんではなく、本当のお客さんはエンドユーザーだという高い次元に立つことが必要となる。そして、3者が協力できる環境整備、発注方式の改革も重要。例えば、設計・施工のJV、また、プロポーザルと公募型の併用など、それぞれが協力できる発注方式がとれれば、VEをもっと広く活用できる。次に、設計者、施工者の活動を適正に評価する仕組み。インセンティブによるモチベーションの確保だ。もう一つは、VEの各段階におけるアイデア、視点の共有化。それらをオープン化し、持ち続けることで、改善していくポイントが狭められ、さらなる追求が図られる。
森﨑(大分県) 発注者、設計者、施工者の意識改革が重要ということで秋田県さんのお話と重なるが、インセンティブでいえば、金銭や受注機会に対するアドバンテージなど、いろいろあると思う。ただ、われわれもまだそこまでの領域に達していないところがある。そのためにも、こういった発注者相互やコンサルタント、ゼネコンさんとの環境構築に向けた意見交換が重要。公共事業の最適化といわれて久しいが、発注者の発注システムとしての最適化は当然のことながら、VEは、業界も含めた社会資本整備を行う上でのシステムを最適化していくためのきっかけになるのではないかと考えている。
山下(建設技術研究所) VEの契約方式には、設計企業とVE企業が全く別々の分離方式、設計企業とVE企業が共同体を組む共同体方式、また、設計業務の中にVE企業を含む1社方式が考えられ、われわれはどれにも対応できるが、それには発注者としてしっかりとしたルール化がされないと、なかなかいい成果が得られないような気がする。例えば、設計も知らないVE企業に頼んでいいのだろうか、本当に責任がとれるのだろうかということが一つ。また、設計企業とVE企業の独立性をどう担保し、技術力を使い分けるかなどが課題となる。
一方で、報酬については、10件の仕事がみんな同じお金の必要はない。最低金額を保障し、それに実際にかかったもの、汗をかいた分を支払う形ではどうかと、個人的には思う。その前提は、設計者が責任をもってVEを評価するということ。コスト縮減なり、価値向上によって、成功報酬を考える。いずれはこういう形になるのではないか。
五味(りんかい日産建設) 現状報告であげた課題の裏返し、いわゆる技術のダンピング防止、オーバースペックへの注意、評価結果の内容の公開をしていただきたい。また、制度の改革ということでは、ゼネコン側がいろいろ物申す筋合いのものではないが、工事をやる場合、発注者と受注者側の間に第三者機関をたてればもうちょっといろいろな面で改善ができる。第三者機関として、日本のコンサルタントはまだそこまで成熟していないとの指摘もあるが、私は取り組むべき時期に来ている、期は熟しているのではないかと思っている。そして、会計制度の見直し等が必要。成功報酬の問題も現行の会計制度のままでは運用の段階で対処するだけの局所的なものとなってしまい、なかなか前に進まないだろう。最後に、ゼネコン側の問題では、最近、技術力が低下してきているといわれている。ベテランの人がいなくなった、忙しいなどいろいろな要因が考えられるが、技術に関する教育をしっかりやっていくことが、今後のVEを考える場合、重要だ。
宍戸(ソルブ) 会場からご質問、ご意見を受けたい。
会場(1) インセンティブでいうと、人事評価の世界にあっては、お金がないなら「ほめて上げてください」ということがある。自治体の方々の中で、いい仕事をした企業のブランド価値を上げるような努力をされているのか。
菅(秋田) 優良工事を表彰して、それを受賞されると総合評価のときの加点としている。
森﨑(大分) われわれの総合評価落札方式の中でも、過去の表彰実績を評価するということになっている。総合評価はまだ始まったばかりで、今後インセンティブについても、いろいろな業界の方々の意見を聞きながら、やっていく必要があるのではないかなと思う。
会場(2) 受注者として、ここは評価していただきたい、また、ここを評価すれば、技術力の区別がつきますよというところがあれば、教えていただきたい。あわせて、発注者が設計VEを業務として発注するとき、最低条件として問いたいポイントについても。
山下(建設技術研究所) 私どもが評価していただきたいのは、過去の経験を通じてどれだけの広い範囲に対応できるかということ。VEをやると、メンバーだけでできないことにもぶちあたる。そういったときに、チームリーダーが、会社の適材適所の人間を呼んでこられる能力も必要。それには、チームを運営する人としての素養も大切で、VEの技術に限定するのではなくて、周辺のところまで探るような評価をやっていただきたい。
森﨑(大分県) われわれ発注者が調達したい人材はどういうものなのかによって、調達の仕方が変わってくるのだと思う。VEマネジメントスキルを調達する場合は、やはりプロポ、もしくは総合評価的な形でこれまでの経験、VEマネジメントとしての経験を適正に評価した上で契約ができる世界を構築すべきだと思う。ただ、VE活動そのものに参画を要請する場合、それぞれに特化した専門技術、知識が重要となる。そこの部分を発注者が明確に示しながらVEの実績を積み上げていくことで、VEマネジメント、そしてVE活動に参加する技術者の方々のスキルも自然と上がってくる。いまは随契などによる調達だが、いずれ人材等の環境が整えば、自由な競争の中で調達できる発注環境も出てこよう。
宍戸(ソルブ) ありがとうございました。先ほど五味さんからご提案のあった、会計制度の見直しの件で、10年ほど前に会計検査院の方にこういうフォーラムに出てくださいと何度もお願いしたことがあった。そこでは、「いや、会計検査院は、検査機関で状況を粛々と検査するだけのことで、いい案があったから変えて、こういうことができましたということについてとやかくいう気は一切ありません」というお話だった。あるべき姿に向けてもっと前向きに、何とかできる方法を見つけたり、あるいは提案したりしていきたいと思う。これで「建設VEのSHINKAトークセッションを終わります。
会場風景

パネリスト

■出席者
<パ ネ ラ ー>
秋田県建設交通部 建設管理課技術管理室 副主幹 VEL 菅 尚文氏
大分県土木建築部 建設政策課 副主幹 VEL 森﨑 貴嗣氏
株式会社建設技術研究所 マネジメント事業部 副事業部長 VES 山下 幸弘氏
りんかい日産建設株式会社 技術研究所 所長 CVS 五味 信治氏
<コーディネーター>
ソルブ コンサルティング 代表 CVS 宍戸 利彰氏
宍戸(ソルブコンサルティング) 今日は、発注者と設計者、施工者の3者それぞれにメリットのある関係を構築するにはどうしたらよいかということを、VEという共通言語で話していきたいと思う。このトークセッションも今年で5年連続になるが、97年に「公共工事コスト縮減に関する行動計画」が策定され、VEが初めて政策の中に取り入れられたことを受けて1年後のフォーラムでその司会をした。当時は契約VEが中心で、ノウハウや報酬をめぐり発注者と施工者の利害が対立しているような関係だったが、05年に関東地方整備局が国交省として初めて設計VEを導入し、また、「公共工事品確法」の施行に伴い総合評価落札方式が広がったことで、地方自治体も積極的に設計VEに取り組まれるようになり、この3年ほどでVEが共通言語になりつつあると考えている。最初に秋田県さんから、現状の取り組み、問題点についてお話しいただく。
菅(秋田県) 04年から06年で9件の契約後VEを採用し、大幅なコスト縮減となっている。さらに、今年度からは総合評価落札方式で施工計画審査タイプ以上の大きな工事については契約後VE方式を併用している。
05年には「設計VEの推進に関するガイドライン」を策定して07年まで34件を実施し、コスト縮減提案が約93億円となっているほか、事前の研修やワークショップ等を通しての職員の技術力向上効果も大きい。ただ、課題もある。中には機能の低下によるコスト縮減ではないかと誤解している方もいる。また、設計条件のとらえ方で個人差があり、その成果には大きな違いが出てくる。さらに、事業採択要件が壁となることもあるほか、事業化の決定が急なため、VE実践のスケジュール管理が難しい。また、難しいVE提案を判断できる職員が不足していることも課題だ。本県の場合、入札時VEの対象案件の数が少ないこともあり、施工者の取り組みも遅いように思われる。
次に、VEのあるべき姿を二つの視点で述べる。一つは3者の関係で、設計者からはアイデア、施工者からは技術の提供をいただき、発注者は適正に評価する。これが上手く回っていくことが必要となる。本県の場合は、工事を発注した際に、重要な案件については当初設計した設計者さんにも出席いただき、施工者、発注者とともに注意点の確認を行う。このような関係ができあがっていくと、公共事業の価値が向上し、地域の活性化、発展につながり、最終的にはエンドユーザーの満足が得られるのではないか。
事業の流れからの視点がもう一つ。計画立案の段階から設計、工事発注、工事施工に至る様々な段階で、発注者、設計者、施工者がそれぞれに、また、3者が協力し、「いつでもVE」「どこでもVE」を行うことができれば、理想といえるだろう。
宍戸(ソルブ) 次に大分県さん。
森﨑(大分県) 設計VEは06年度からインハウスVEを主体に取り組んでいる。
設計VE導入の目的は、大きく分けて三つある。一つ目は、コスト縮減効果が高いということ。できる限り上流の段階でやればやるほど大きな効果が見込める。二つ目は、コスト縮減以外の問題解決に、VEは大きく寄与する。環境負荷の軽減、地域ニーズの適切な反映など、潜在化した問題点が解決の方向に進んでいく。三つ目は、発注者としての意識改革と技術力の向上。VEを活用することによって、あらゆる分野の専門家、知識に長けた人間がその活動に参集して、議論をぶつけ合う中で、それらの向上が図られるのではないかと考え、設計VEを導入している。
そうした中で、人材育成は非常に重要。大分県では公共事業の実務担当者の約半数が既にVE基礎講座を受講しており、その約4割の103名がVEリーダー(VEL)の資格を取得している。官公庁初のVEスペシャリスト(VES)も輩出しており、VE環境は少しずつ浸透しつつある。
VEは従来の各種基準類に基づく公共事業の設計・計画を80点とすれば、100点に近づけていく改善活動だ。その改善には、まだまだ多くのやるべきことがある。今、発注者自身が改善へ向けた取り組み姿勢を明確に示して、みずから実践していく観点が求められている。
一方で、発注者と同様に、設計者や施工者の意識改革、技術力向上も重要だ。設計者、施工者を適切に評価するシステムをつくるなどし、VE環境を浸透させていきたい。
総合評価落札方式は、5000万円以上の工事を対象に取り組んでいる。本県の総合評価落札方式は、実績を重視する簡易型で実施しているため、高度な提案を受け付ける入札時VEは採用していないのが現状である。
宍戸(ソルブ) お二人の県ともにインハウスVEを中心にしている。総合評価方式は、まだそれほど多くの実績はないが、総合評価方式はVEそのもの。地方に行くと、建設業者さんにその認識がないことに驚かされる。次に山下さん。
山下(建設技術研究所) 私ども建設コンサルタントがVEに関してやっている仕事は官公庁の中堅技術者向けの設計VEの基礎講習と、インハウス設計VEの支援業務が中心。国交省などでは、設計チームとVEチームが独立したVE付き設計業務もある。
そうした中、課題は、VEをやるための組織体制と人材が必ずしも十分とは言えないこと。意識改革も発展途上にある。関係者の理解促進も重要。このため、講習会、意見交換会を開催したり、また、学会発表なども始めており、今後もどんどんやっていきたい。
発注者側においては、契約方式、報酬制度をしっかりと整えていただき、窓口も一本化、また、理解の促進には民間の技術者をぜひ活用していただきたい。ビジネスモデルの確立も課題で、それには提案力を評価するプロポーザルなども有効と思う。
要は、官側は目標を達成するために民間技術等をうまく活用し、民間は官側のいろいろな要求に的確に応えていく。そのために、民間は人材の育成や技術の組み直しなど行う。今日の全国大会の意見等も踏まえて、柔軟に変えていきたいと考えているところだ。
宍戸(ソルブ) 最後に五味さん。
五味(りんかい日産建設) 私は、実際に施工の提案に応じた時に現場でどのようなことが起こっているかということについてお話したい。問題は3つあり、一つは技術のダンピングで、高額な新技術、特殊工法を提案しないと、技術評価点が出ないという場合が多い。このような提案の費用負担は施工サイドの企業努力となってしまう。また、本来は設計変更となるような事柄が施工サイドで費用負担をしなければいけないということも生じている。
次は、オーバースペックの問題。共通仕様書などに出来形は定められているが、過剰な精度の向上を技術提案でなおかつ求めるというのは、いかがなものかなと感じる。過度の工期短縮も課題で、適切な工期設定ができずに、工期短縮を技術提案で求めることもある。3つ目は評価結果の不透明性で、評価結果の内容が公開されない事例が多いと聞いている。
宍戸(ソルブ) 私のほうから少し補足すると、総合評価落札方式もまだ発展途上でいろいろな問題を含んでいる。総合評価方式の活用検討委員会では、仕様の範囲内で評価をするという指導が出ており、あれもやります、これもやります、こういう高いものを含めますという提案は、評価してはならないということになっているはず。それが徹底されないまま動いている。この徹底が図られないとだめかなという気がする。
一通り4名の方のお話を伺った。会場の方で、もう少し説明をいただきたい、また自分はこう思うのだがというようなことがあれば。
会場① 森﨑さんに、設計VEにおいて施工者の意見も反映されるかを伺いたい。
森﨑(大分県) 我々発注者だけで担い切れない技術、知識を補うためにコンサルタントを活用する時があり、技術的提案の裏づけ等をとるために施工者の意見を聞くこともある。
会場① 菅さんにお伺いする。VEは価値創造。コストダウンも価値創造の一つの表現の方法だと思うが、それを分配する方法に関してはどうお考えか。
菅(秋田県) 先ほど、過度な提案を求めているという指摘もあったが、発注者が設計者、施工者にどのように還元していくのか。その分のインセンティブをどう評価し、組み入れていくかということが、現状ではちょっと薄いように思う。そうした面も含めて、我々発注者はもっとVEのシステム、発注スタイルを進化させていく必要があるとは考えている。
会場② 菅さんにお聞きしたい。93億円の節約を支援したVEの専門家には幾らぐらいフィーをお払いしたか。生々しい話で申し訳ないが、お答えいただきたい。
菅(秋田県) アドバイザーの方に入っていただいたのは、34件のうち5件。それ以外については、専門家に指導いただいた者がリーダーとなり実施している。3年間は導入期間で、ノウハウを教えていただくということがあり、諸経費、技術経費などを含めて、日本VE協会の参考基準に拠っている。
会場② インセンティブも考えていただければと思う。
宍戸(ソルブ) 次に、皆さんからあるべき姿の構築に向けてのお話を。
菅(秋田県) あるべき姿というか、理想形を描いてみた。1点目は、発注者、設計者、施工者それぞれが意識改革をすること。発注者がお客さんではなく、本当のお客さんはエンドユーザーだという高い次元に立つことが必要となる。そして、3者が協力できる環境整備、発注方式の改革も重要。例えば、設計・施工のJV、また、プロポーザルと公募型の併用など、それぞれが協力できる発注方式がとれれば、VEをもっと広く活用できる。次に、設計者、施工者の活動を適正に評価する仕組み。インセンティブによるモチベーションの確保だ。もう一つは、VEの各段階におけるアイデア、視点の共有化。それらをオープン化し、持ち続けることで、改善していくポイントが狭められ、さらなる追求が図られる。
森﨑(大分県) 発注者、設計者、施工者の意識改革が重要ということで秋田県さんのお話と重なるが、インセンティブでいえば、金銭や受注機会に対するアドバンテージなど、いろいろあると思う。ただ、われわれもまだそこまでの領域に達していないところがある。そのためにも、こういった発注者相互やコンサルタント、ゼネコンさんとの環境構築に向けた意見交換が重要。公共事業の最適化といわれて久しいが、発注者の発注システムとしての最適化は当然のことながら、VEは、業界も含めた社会資本整備を行う上でのシステムを最適化していくためのきっかけになるのではないかと考えている。
山下(建設技術研究所) VEの契約方式には、設計企業とVE企業が全く別々の分離方式、設計企業とVE企業が共同体を組む共同体方式、また、設計業務の中にVE企業を含む1社方式が考えられ、われわれはどれにも対応できるが、それには発注者としてしっかりとしたルール化がされないと、なかなかいい成果が得られないような気がする。例えば、設計も知らないVE企業に頼んでいいのだろうか、本当に責任がとれるのだろうかということが一つ。また、設計企業とVE企業の独立性をどう担保し、技術力を使い分けるかなどが課題となる。
一方で、報酬については、10件の仕事がみんな同じお金の必要はない。最低金額を保障し、それに実際にかかったもの、汗をかいた分を支払う形ではどうかと、個人的には思う。その前提は、設計者が責任をもってVEを評価するということ。コスト縮減なり、価値向上によって、成功報酬を考える。いずれはこういう形になるのではないか。
五味(りんかい日産建設) 現状報告であげた課題の裏返し、いわゆる技術のダンピング防止、オーバースペックへの注意、評価結果の内容の公開をしていただきたい。また、制度の改革ということでは、ゼネコン側がいろいろ物申す筋合いのものではないが、工事をやる場合、発注者と受注者側の間に第三者機関をたてればもうちょっといろいろな面で改善ができる。第三者機関として、日本のコンサルタントはまだそこまで成熟していないとの指摘もあるが、私は取り組むべき時期に来ている、期は熟しているのではないかと思っている。そして、会計制度の見直し等が必要。成功報酬の問題も現行の会計制度のままでは運用の段階で対処するだけの局所的なものとなってしまい、なかなか前に進まないだろう。最後に、ゼネコン側の問題では、最近、技術力が低下してきているといわれている。ベテランの人がいなくなった、忙しいなどいろいろな要因が考えられるが、技術に関する教育をしっかりやっていくことが、今後のVEを考える場合、重要だ。
宍戸(ソルブ) 会場からご質問、ご意見を受けたい。
会場(1) インセンティブでいうと、人事評価の世界にあっては、お金がないなら「ほめて上げてください」ということがある。自治体の方々の中で、いい仕事をした企業のブランド価値を上げるような努力をされているのか。
菅(秋田) 優良工事を表彰して、それを受賞されると総合評価のときの加点としている。
森﨑(大分) われわれの総合評価落札方式の中でも、過去の表彰実績を評価するということになっている。総合評価はまだ始まったばかりで、今後インセンティブについても、いろいろな業界の方々の意見を聞きながら、やっていく必要があるのではないかなと思う。
会場(2) 受注者として、ここは評価していただきたい、また、ここを評価すれば、技術力の区別がつきますよというところがあれば、教えていただきたい。あわせて、発注者が設計VEを業務として発注するとき、最低条件として問いたいポイントについても。
山下(建設技術研究所) 私どもが評価していただきたいのは、過去の経験を通じてどれだけの広い範囲に対応できるかということ。VEをやると、メンバーだけでできないことにもぶちあたる。そういったときに、チームリーダーが、会社の適材適所の人間を呼んでこられる能力も必要。それには、チームを運営する人としての素養も大切で、VEの技術に限定するのではなくて、周辺のところまで探るような評価をやっていただきたい。
森﨑(大分県) われわれ発注者が調達したい人材はどういうものなのかによって、調達の仕方が変わってくるのだと思う。VEマネジメントスキルを調達する場合は、やはりプロポ、もしくは総合評価的な形でこれまでの経験、VEマネジメントとしての経験を適正に評価した上で契約ができる世界を構築すべきだと思う。ただ、VE活動そのものに参画を要請する場合、それぞれに特化した専門技術、知識が重要となる。そこの部分を発注者が明確に示しながらVEの実績を積み上げていくことで、VEマネジメント、そしてVE活動に参加する技術者の方々のスキルも自然と上がってくる。いまは随契などによる調達だが、いずれ人材等の環境が整えば、自由な競争の中で調達できる発注環境も出てこよう。
宍戸(ソルブ) ありがとうございました。先ほど五味さんからご提案のあった、会計制度の見直しの件で、10年ほど前に会計検査院の方にこういうフォーラムに出てくださいと何度もお願いしたことがあった。そこでは、「いや、会計検査院は、検査機関で状況を粛々と検査するだけのことで、いい案があったから変えて、こういうことができましたということについてとやかくいう気は一切ありません」というお話だった。あるべき姿に向けてもっと前向きに、何とかできる方法を見つけたり、あるいは提案したりしていきたいと思う。これで「建設VEのSHINKAトークセッションを終わります。
会場風景
パネリスト