Value for Future(2)

  • 若者たちの社会貢献意識を高めるESD

前回、若者たちの社会貢献意識が高まりつつあるというお話をしました。その要因の一つとして、文部科学省が推進しているESD(Education for Sustainable Development = 持続可能な開発のための教育)の普及があるのではないかと思います。これはあくまでも私見ですが、仲氏のいうミレニアル世代は「理想を全てデフォルトで刷り込まれている」という状態は、学校教育が大きく影響しているのではないかと考えられます。

ESDが目指すことは、環境、貧困、平和、開発といった様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(Think globally, Act locally)ことにより、それらの課題解決につながる新たな価値観や行動を生み出すことです。SDGsとも密接な関わりがあります。

ESDを進めていく上で、「アクティブ・ラーニング」という授業形態が注目されています。先生が一方的に講義するのではなく、児童、生徒たちが主体的に学び合い、対話を通じて課題解決を図っていくような授業形態です。ちなみに、本会では、こうしたところにVEの考え方、進め方を適用できないかと研究を行っています。

 

  • 広がるESG投資

また話が跳んでしまいますが、2017年9月27日にNHKで放送された「クローズアップ現代」というTV番組で、「ESG投資」が紹介されました。「ESG投資」とは、売上高や利益といった財務指標だけではなく、「E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)」の課題に積極的に取り組む企業を投資先に選ぶ一方、十分に配慮していない企業からは資金を引き揚げるという投資家の動きで、2,500兆円を超えるESG投資の最前線が紹介されました。

同年10月18日の日本経済新聞1面にも「ESG投資 市場の3割に」との記事が掲載されました。「株式市場で財務数字に表れない企業の『見えない価値』に着目して投資先を選ぶ動きが広がって」おり、「投資残高は約23兆ドル(約2,600兆円)と世界の運用資産の3割に」迫ると紹介されました。

上述の「クローズアップ現代」にゲスト出演されていた大手企業の社長さんは、ESG投資の動きが広がる中「真のグローバル企業になっていくには、SDGsを中心に企業運営をしなければならない」との認識を示されました。

 

  • そこで『論語と算盤』

話を少し収束させる必要がありますが、前回冒頭でお話しした『論語と算盤』にもどります。

渋沢栄一氏は、『論語と算盤』の中で、論語と算盤は一致させるべきもの、調和させるべきものと説いておられます。徳を蔑ろにして利益を追うのではなく、かといって金銭を蔑むのでもなく、社会への貢献と富を増すことは両立しうるし、そうすべきだということです。

SDGsは、企業の取り組みに大きな期待が寄せられているそうです。社会への貢献と利益確保を両立させる取り組みです。ESG投資がそれを後押しするような感じになります。

マイケル・ポーター教授らによって提唱されたCSV(Creating Shared Value = 共有価値の創造)も、経済的価値と社会的価値を両立させるということで、基本的には同様の考え方にもとづくのではないかと思います。また、最近の若い人たちは、いかに社会に貢献しうるかという視点で仕事を選ぶ傾向もあるようです。社会貢献度が企業を評価する指標の一つになってきました。

次回は、SDGsについて、もう少し掘り下げてみたいと思います。

 

(2017.11.22 事務局・宮本)