2025年度バリューデザインスクール 開催

身近な事例

日本バリュー・エンジニアリング協会 東日本支部・VE推進部会 VE教育研究会 編集「VEリーダーのための実践事例集( VE資料No.95 )より 発行:2007年10月

①ポインター(指示棒)

1.目的・背景・概要

機能という観点からのアイデア発想により、改革的なアイデアが生まれる。

2.着眼点、改善ポイント

・機能からのアイデア発想で改革アイデアが生まれる
・機能という観点から「思考を変える」

3.改善事例

基本機能:説明部分を指示する

「モノからのアイデア発想」
  • 握手部の材料、寸法変更
  • シャフト部の表面処理、材質変更
  • 先端部の材質、寸法変更

等のアイデアで終わってしまう

「機能からのアイデア発想」
  • レーザーポインターが生まれる

改善効果:現状を打破した改革的なアイデアが生まれる

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
遠くからも説明部分が指示できるという利便性が向上する

(2)機能本位の原則
現在の指示棒にこだわらず、機能は何かを考える

(3)創造による変更の原則
「説明部分を指示する」という機能からのアイデア発想で生まれる

(5)価値向上の原則
[価値V]大幅↑=[機能F]↑/[コストC]↑
(少々コストは上がるが、なお優れた機能をもったものを手に入れる)

②クリアーホルダー

1.目的・背景・概要

ワケをしっかり考えることの大切さを認識する

2.着眼点・改善ポイント

着眼点:ワケをしっかり考える~ワケとは、働き、役割、目的のことである~

3.改善事例

基本機能:書類を収納する~物にはその形になったワケがある~
2view

各個所のワケについて
(1)(資料の)取り出しを容易にする
(2)(資料の)収納によるホルダーの広がりを緩和する
(3)力を分散する

改善効果
ワケを把握することが品質保証、改善案創出の原点となる

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
製品の各個所のワケを考えることが品質を満足することにつながる

(2)機能本位の原則
ワケを把握することが品質保証、改善案創出の原点となる
「わかりやすいVEセミナー」より

③バックスタンド屋根

1.目的・背景・概要

ある球場には、バックスタンドの屋根がない。
今シーズンオフに構築可能な屋根を提案できないか検討した結果、幕を気球で浮上させるアイデアが発想され提案することとなった。

2.着眼点、改善ポイント

(1)着眼点
施工期間が短い

(2)改善ポイント
今回は簡易なもので代替し、次のシーズンオフで恒久的なものを造営する
軽量な屋根の代替素材と浮上方法の検討により、支持構造材を不要とする

3.改善事例

【現状】屋根なし →

【今シーズンオフ案】浮上式膜製屋根
【今シーズンオフ案】浮上式膜製屋根
【来シーズンオフ案】鉄骨吊式屋根
【来シーズンオフ案】鉄骨吊式屋根

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
・雨、露、日差しを部分的であるがしのげる。(観客)
・設置費用が安価で、転用ができる。(オーナー)

(2)機能本位の原則
・「雨を止める」「陽射を遮る」機能で、使用材料は金属などでなく「膜」が発想され
・「高さを保つ」「美観を保つ」機能から、「浮上式」が発想された

(3)創造による変更の原則
・他社との差別化のため、気球にて膜屋根を浮上させる案を提案することになった

(4)チームデザインの原則
・意匠設計者、構造設計者、素材メーカー、気球メーカー技術者などの検討が必要

(5)価値向上の原則
・屋根のない現状からすれば機能が向上し、恒久的な構造屋根に比べれば安価にできる

[価値V]大幅↑=[機能F]↑/[コストC]↓

④国民宿舎 鵜の岬

1.目的・背景・概要

対応がお役所並み、サービスが悪いという印象がある公共の宿。そんな中、97.9%という驚異の宿泊利用率をあげる国民宿舎が茨城県日立市に存在する。
鵜の岬

2.着眼点、改善ポイント

・「人を家に招いたときに母を手伝う気持ちでお客様に接すれば、応対は心がこもったものになる」
・何事も臨機応変に対応している

「基本機能:感動を提供する」

3.改善事例

  • フロントをはじめ接客者すべてが笑顔で応対
  • 高齢者向けにエレベーター内に丸椅子の設置
  • 夕食時間中にお客様の靴磨き
  • お客様用タオルの刺繍文字と歯ブラシは、タオル入れの袋の紐と色を合わせかつ、同室内はすべて色違い
  • お客様からのアンケート指摘事項で、すぐ出来るものは即改善実施
    その他、多数の改善事項あり

改善効果

  • 利用率97.9%、リピーター率60%以上
  • 予約日にはその日だけで1か月分が埋まってしまう

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
・お客様に感動、満足感を提供することをしている

(2)機能本位の原則
・どうしたらお客様が喜ぶかということを考えている

(3)創造による変更の原則
・人を家に招いたときに母を手伝う気持ちで接している

(4)チームデザインの原則
・先輩のリーダーから新人までグループを作って活動している

(5)価値向上の原則
1)機能は向上 2)コストは抑えて
[価値V]↑=[機能F]↑/[コストC]→

⑤コードレスアイロン

(1990年2月26日 NHK大阪 イブニングニュースより)

1.目的・背景・概要

【主婦の声】
アイロンがけする時に、コードが衣類にまとわりついてくる。
コードがないと、本当にダメなの?
昔、コテを火鉢の上で暖めて使っていたじゃないの!!

2.着眼点、改善ポイント

アイロンがけする時に、どんなことがおきているか、よく調べてみよう。

アイロンがけの様子をビデオカメラで撮影し、その結果を分析した。

アイロンをかけている時間は・・・11秒
衣類を整えている時間は・・・8秒

アイロンを、アイロン台の上に置いている8秒間にアイロンが元の温度になれば、コードはいらない!!

【機能:電流を流す
:コードのからみをなくす】

3.改善事例

5view

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
もの作りはお客様の要求から始まる → コードは邪魔だな!

(2)機能本位の原則
原点に立ち返って考える → コードは何のためにあるの?

(3)創造による変更の原則
アイロンを置いている間に、元の温度になればいい

⑥信号機

1.目的・背景・概要

信号機設置を普及させるには、設置にかかる製品からサービスまでのトータルコストを下げる必要があった。
目的・手段を明確にして、何に費用がかかっているかを分析し検討した。

2.着眼点、改善ポイント

(1)着眼点:VEはトータルコストの削減である
(2)着眼ポイント:対象物変革と保守費・ランニングコストの削減

3.改善事例

6view

改善効果

(1)機能の大幅向上:よく見えて事故が減った
(2)原価:トータルコストが削減された
(3)ランニングコスト:電気代80%削減
(4)保守費:ランプ交換費用(人件費・作業費)削減

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
・目の悪い人にも良く見えるようになった(エンドユーザー)
・設置費用が下がり設置しやすくなった(自治体)

(2)機能本位の原則
「色を伝える」手段として色フィルターとランプを使用していた

(3)創造による変更の原則
この「光を出す」機能のものは、ランプ、LED、蛍光体、プラズマなどがある

(4)チームデザインの原則
人間工学、電気工学、機械工学、サービスマン、製造などのプロの考えが必要だった

(5)価値向上の原則
1)機能を向上し、2)トータルコストの削減(ランニングコスト他)、3)保守費(球切れ交換など)の削減
[価値V]大幅↑=[機能F]↑/[コストC]↓

⑦切削工具の改善

1.目的・背景・概要

機械加工において加工性を追求したり、特殊な材料を加工するには付加価値の高い高価な工具になってしまう。そこで、付加価値の高い機能を有しつつ、かつ安価な工具が検討された。この解のヒントは自然界にあった。

2.着眼点、改善ポイント

7-1view

(1)着眼点
・バラのトゲは先端だけ硬い。

(2)改善のポイント
・工具は”金属を削る”ことと”刃物の位置を決める”機能がある。
・先端だけ硬い交換可能な工具の開発。
・ダウンサイジングしてとことん刃物の機能を使いこなす。

3.改善事例

7-2view

改善効果

(1)切削工具費の削減
(2)ランニングコストの削減
(3)在庫管理の向上

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
・刃物の交換が容易になった。
・チップのみの在庫ですみ、保管場所が容易になった。

(2)機能本位の原則
・切れ味の良い工具になった。

(3)創造による変更の原則
・アイデアを自然界の植物から求めた。
・切削工具を切削と刃物の位置を決めるために分解し、それぞれの機能を追求した。

(4)チームデザインの原則
・生産技術者、工具専門家、製造、調達部門などの専門家の考えが必要。

(5)価値向上の原則
1)基本機能を向上し、2)品物の原価を下げ、3)ランニングコストを下げ、4)保守費を下げることができた。
[価値V]大幅↑=[機能F]↑/[コストC]↓

⑧紙の家

1.目的・背景・概要

2004年10月に発生した新潟県中越地震によって避難所での生活を余儀なくされた被災者のために、紙の家を建てる運動が進められた。その後も避難所用の紙の家には改良が加えられ、行政を動かそうとしている。
避難所生活を送る被災者に対して実施した聞き取り調査では、長期にわたる大空間での生活にストレスを感じている人が多く、いくつかの要望が挙がった。

2.着眼点、改善ポイント

体育館などの大きな空間での集団生活を基本としながらも、その一画を紙や布等の材料による単位構造で仕切り、独立した生活空間を構成した。
材料は、ハニカムボード、ロール紙、木綿の布など身近で使用されている標準品で、多くの部材がリサイクル可能である。

【基本機能・プライバシーを守る・空間を仕切る】

3.改善

改善前:学校の体育館などの大きな空間全体を複数の家族等で同時に共有する。
改善後:小住空間を段ボールと木綿の布で構成した。床にも畳に相当するつくりを形成した。
効果:ストレスの解消に有効な要望が実現できる。

・プライバシーの守られる空間が欲しい
・夜間でも照明を使える勉強部屋が欲しい
・女性用の更衣室や洗濯物干し場が欲しい
・子供の遊び場が欲しい

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
体育館全体を使用する者はいない。細分化された空間ごとに使用者=被災者が望む姿で使用できる。紙や布など身近な素材を使用しており、人に安心感を与える。

(2)機能本位の原則
雨風をしのいだ体育館の中に独立した生活空間を確保する。ある程度のものを短時間で簡便に準備・完成できることが重要。

(3)創造による変更の原則
身近にある一般的な素材を活用して、必要な機能を果たすための住空間を構成している。材料はリサイクル可能なものを使用している。

(4)チームデザインの原則
慶応義塾大学の坂研究室のメンバーが改良を重ね、共同で部品調達、試作を繰り返した。組立現場はまさにチーム一丸。

(5)価値向上の原則
体育館などの大きな空間内に安価な構成の紙の家を作ることができる。独立した空間を確保し、被災者の避難先の空間の価値を向上させた。

5.参考情報

http://www.sfc.keio.ac.jp/visitors/news/articles/20041110_1275.html
震災避難所に「紙の家」を無償提供、日経アーキテクチャー 2004.12.13 P.44

⑨軽量薄型フレネルレンズ

1.目的・背景・概要

小活字を簡便に見る方法として薄型の凸レンズを考案

2.着眼点、改善ポイント

(1)着眼点
携帯用の薄型凸レンズを考案

(2)改善ポイント
より薄く、より軽く、いつでも使用可能

【基本機能:文字を拡大する】

3.改善事例

改善効果
(1)基本機能は確保
(2)原価90%削減
(3)携帯便利
(4)使い捨て可能

4.VEとの関連(5原則)

(1)使用者優先の原則
・常に携帯が可能
・安価

(2)機能本位の原則
・機能重視

(3)創造による変更の原則
・簡易、軽量、持ち運び便利

(4)チームデザインの原則
・年齢問わず利用者重視

(5)価値向上の原則
・基本機能を確保し、品物の原価を下げ、利用度向上
[価値V]大幅↑=[機能F]→/[コストC]↓

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