Value for Future(5)

SDGsの目標2

SDGs(持続可能な開発目標)には、17の目標と169のターゲットがあります。ここでその全てを詳細に見ていくことは大変なので、今回は目標2に絞って見たいと思います。

目標2は、次のように記述されています。「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。」以下、8項目のターゲットが記されていますが、そのいくつかをピックアップしてご紹介します。

  • 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び乳児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分に得られるようにする。
  • 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水その他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の室を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
  • 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝的資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。

 

日本における課題

上記のような内容をご覧になって、遠い海外での課題だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、決して対岸の火事ということではありません。

今、日本国内で「こども食堂」と呼ばれる施設がどんどん増えつつあり、その数は数百に及ぶそうです。「こども食堂」とは、地域住民や自治体が主体となって無料または低料金で子どもたちに食事を提供するコミュニティの場です。その背景には、子どもの貧困層が増加しているという実態があります。驚くことに6世帯に1世帯が食料に困った経験があるとされています(NPO法人カタリバのホームページより)。近年は、こうした実態が表面化しつつありますが、まだ十分に認識されていないように思われます。

また、日本は食料の大部分を輸入に頼っています。食料自給率の低下に伴い、わが国における農地面積と農業従事者は激減してきました。不測の事態を想定すると、安定的に食料を供給できる体制が整っているとは言い難い状況です。

さらに、海外で生産された食料を日本へ運ぶに際し、その距離や輸送方法に応じて環境への負荷が生じますが、その量(フード・マイレージ)は、他国と比較して日本が突出しているとのことです(中田哲也「フード・マイレージ」)。そうした問題も看過できません。

 

世界の中の日本

その一方で、日本は大量の食品廃棄物を排出しています。年間5,500万トンの食料を輸入しながら1,800万トンも捨てているそうです。廃棄率では消費大国アメリカを上回り、廃棄量は世界の食料援助総量470万トン(WFP)をはるかに上回り、3,000万人分(途上国の5,000万人分)の年間食料に匹敵するそうです(NPO法人ネットワーク『地球村』ホームページより)。

世界の中の日本として、このままでいいのかと思わざるを得ませんが、フードバンク(様々な理由で処分されてしまう食品を食べ物に困っている施設や人に届ける活動)などの取組も活発になり始めているようです。

そのほか様々な食料問題、課題が日本にも山積しています。国内のことだけ考えればよいというわけではありません。国際的に日本が果たすべき役割も多々ありますが、紙幅の都合でこのくらいにしておきます。

食料の生産性向上や持続可能な食料生産システムということでは、近年、植物工場が注目されていますが、開発途上であり、コストの問題などいくつかの課題を残しているようです。

植物の多様性や種子の保存といった課題については、先日開催された「第6回VEアジア大会兼第50回VE全国大会」での特別セッション「Seeds of Life ~ 一粒の種から人生を、そしてVEを考えよう」が印象に残っておられる方も多いのではないでしょうか?

次回は、SDGsとVEの関わりについて考えてみたいと思います。

 

(2017.12.15 事務局・宮本)