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価値創造の夜明け -日本VE協会 創立45周年記念文庫-

価値創造の夜明け -日本VE協会 創立45周年記念文庫-

発行/社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会

2010年4月発行

■発刊にあたって

平成も二十年を超えると、激動の時代だった昭和の記憶もやや薄れつつあることは否めません。わが国にVE(VA)という創造手法がもたらされてからちょうど半世紀、また、現在の社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会の前身である日本VE協会が創立されてから四十五年になる今日、未曾有の世界不況を 克服するための手法として、その存在感はいやがうえにも増しているものの、創立期のことは記憶の彼方に去りつつあります。
そこで、日本VE協会創立四十五周年記念として、わが国へのVE(VA)導入から協会創立までの事情を、創立者の上野一郎氏をはじめ、協会創立に関わっ た方々六氏にお話をうかがい、記録として後世に残そうということになりました。幸い、みなさまには快くインタビューに応じていただき、その内容をまとめたものが、この小冊子であります。
これを読みますと、わが国へのVE導入には二つのルートがあったことが理解されます。一つは、一九六〇(昭和三十五)年四月に日本生産性本部等の招きで 来日した米国の著名な購買管理コンサルタントのS・F・ハインリッツ氏によるセミナーに触発され、製造業の間で始まったVE活動の流れであり、もう一つは、当時の産業能率短期大学の若き理事長・学長であった上野一郎氏が、米国視察で注目し、持ち帰った文献を基に研究開発した講座の流れを汲むものです。
前者はその後、「VA技術研究会」に発展しましたが、VEの教育・普及の点で新しい活路を求めていました。一方、後者の産能短大のルートは、セミナーを重ねる中でVEの理論体系を整えましたが、履修者から実践例の求めが多くなり、企業から講師を迎えるようになりました。この両者の需要を見た上野氏の決断で、産能短大が中心となって準備を進め、日本VE協会が創立されたのです。
このような経過をたどって創立された協会は、企業・団体のメンバーが中心となりましたので、個人メンバーの集まりである米国VE協会(SAVE)とは違い、独自の発展を遂げました。研究会で得た知識を企業に持ち帰って実践し、ノウハウを蓄積しながら次代に継承し力をつけていく、これが日本のVEです。
それだけではありません。「“価値”を突き詰めれば、それは顧客の満足度に至り、その満足度が高いほど価値も高くなる」との考えから生まれたVEの五原則は、中村道春氏や玉井正寿氏など初期のVE研究を支えた方々の想いを継承した土屋裕氏らによって確立されたものであり、今日のVE活動を支える大きな柱となっています。それとともに、「企業活動は人をいかに動かすかが重要である」という信念の下、瀬口龍一氏が取り組んだ企業での実践活動などと相俟って、 日本独自のVEは育まれていったのです。
また、古くから日本VE協会と親密な関係にあった米国VE協会が果たした役割も注目されます。米国視察や国際セミナーといった日米間の交流活動が、日本のVE黎明期を支えたことは誰しもが認めるところでしょう。
本書の中にも、マイルズ賞制定に合わせて再来日し、日本におけるVEの活況ぶりをつぶさに見たL・D・マイルズ氏が語った日本への想い、米国・日本双方の協会創立に関わったJ・J・カウフマン氏による述懐など興味深い記事が満載です。
協会創立四十五周年記念となる本書が、VE導入から今日に至るまでの関係各位のご苦労を偲び、また、マイルズ氏やカウフマン氏の述懐に勇気を得て、VEを持続可能な繁栄に向けて積極的に活用する縁(よすが)になれば幸いです。

【社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会 会長(東京工芸大学 理事長) 小野茂夫】

■目次

○VEとともに新たな価値創造を -上野一郎
・日本のVE黎明期
・オズボーンと創造性開発
・初めてVEを知る
・新理事長、奮闘す
・実践してこそ“価値”がある

○「まず、やってみる」から始まった -瀬口龍一
・VEという一筋の光
・とにかく、やってみるしかない
・一つの成果が日立全社を動かした
・VAセミナーで質問攻め
・協会創設の萌芽となったVA技術研究会
・『バリュー・アナリシス入門』
・日本VE協会創設にかけた想い
・VEの本質をいま一度見つめ直してほしい

○多くの苦難がVEを成長させた -土屋 裕
・日本のVEの歴史は二本の道から始まった
・社会人から学生、そして研究所へ
・玉井先生と二人三脚
・VE普及の転機となったWSS
・“御前講義”で一人前の講師となる
・「価値」の説明に四苦八苦
・多くの批判が成長の糧に
・脳みそに汗をかけ

○人と人を結んで -田中敏夫
・出会いはある日突然に
・乱読で身についた英語力
・初仕事は「海外視察団」の復活
・運命を決めたシャーウィン氏との出会い
・VE普及に必要な“三本の矢”
・国際WSSでVEの本質にふれる
・信念を貫き、自らの心に残る仕事を

○VEの原点をみつめて -楢崎清雄
・なぜ「英語屋」が必要であったか
・産業能率大学との不思議なご縁
・私のVEは“電球”との出合いから
・進取の精神にあふれた上野家の血脈
・多忙を極めた産能短大時代
・なぜ、VEは日本で広まったのか
・マイルズ氏の言葉に涙した日
・VEの原点をいつも胸に

○すばらしき日本人との出会い -J・J・カウフマン
・米国におけるVE黎明期
・日本VE協会の名誉顧問に
・日本のすばらしさにふれて
・VEを通じた出会い

・編集後記
・日本VE協会創設期の役員
・VEの歴史略年表