目的を確実に達成する機能をもつ「オブジェクト」という抽象的概念を取り入れることにより、建築を構成する「商品」・「サービス」を「抽象的な階層化されたツリー状の構造をもつ、オブジェクトの集合体」としてとらえることができる。この集合体の目的を実現する手段としてのオブジェクトをシステム的手法で抽出し、段階的に細分化、詳細化・具体化する。その過程で、その構成品の改善案を順次抽出し再構成する。その再構成されたものが、「商品」・「サービス」の、より価値の高い代替案となる。この代替案の選択を通じて、集合体としての建築の価値の向上を図ることができる。この考えに基づく手法を「オブジェクト指向によるVE展開手法」と命名する。
本論文で、オブジェクトの定義、その構造、および、その手法の展開手順を示すとともに、工法改善VEへの適用事例を示して、本手法の有用性を明らかにする。
一般的によくいわれることだが、不況時にはコストダウンの管理技術としてVEは重要視され、好況時には忘れられることが多いので、なかなかVEの本質であり、基本である機能定義を正しく理解し、活用している企業は少ないようである。
当社においても、VE概念やVE活動は一応定着しているが、VEの基本である機能定義は難解なこともあり敬遠されがちである。
本論文は、機能定義の中でも重要であり、その入口でもある使用者機能および基本機能に的を絞り、初心者でも簡単にこの両者を定義でき、また、一定の基準に基づいて機能レベルを自己評価できることをネライとして、機能定義用ワークシートおよび機能レベルチェックシートを開発した論拠と、その有用性を示すものである。
この機能定義用ワークシートおよび機能レベルチェックシートを使用することによる効果としては、VE教育や活動の場での機能定義の理解力向上、VE事務局のスキルアップとローテーションへの対応等により、一層のVE活動の活性化が期待できる。
なお、当社ではVAという呼称が定着しているので、以後VEをVAと表現する。