公共事業VEの転換を図る価値分析手法の提案

論文

これまで、公共事業VEで一般的に使われた機能分析法は、製品VEと同様に事業単独の構成要素だけを対象としたものであった。
しかし、公共事業の機能は自己完結型で成立するものではない。それが整備される場所や地域社会との相関関係の中で果すべき機能が定義される必要がある。これからの公共事業に必要な機能は、地域社会という大きなシステムとの相関関係で定義される必要がある。
したがって、機能を定義することは、複数のシステム間に相互に働く影響力を評価することである。その場合、公共事業の構成も複数の手段機能によって構築されたシステムと考える。
また、機能の相互作用によって「有益な働き」と「有害な働き」が発生する。この二つの働きを探索することにより、従来の機能の定義では把握できなかった問題点が発見できる。そして、「有益な働き」はさらに拡大し、「有害な働き」はできる限り減少させることが、使用者の満足度向上につながる。
さらに、複数のシステム間に相互に働く「影響力」は常に一定に作用するものではなく、時間の経過や利用状態の変動に伴って変化するものである。社会資本が長期間に亘って機能するためには、変化に対応して柔軟に対応できる仕組みが必要である。

目次

    • 1.はじめに
    • 2.これからの公共事業VEに必要な要素
    • 2.1 価値を高める「足し算」の思想
    • 2.2 設計VEから企画VEへ
    • 3. 公共事業VEの質を変える「要求機能」
    • 3.1 公共事業VEの成否のカギ
    • 3.2 要求機能の定義
    • 3.3 「あるべき姿」から「要求機能」への展開
    • 3.4 要求機能の抽出に関わる留意点
    • 4. 適用事例による検証
    • 4.1 対象事業の概要(都市公園のリニューアル事業)
    • 4.2 公園の利用状況相関マップ
    • 4.3 利用者要求事項の把握
    • 4.4 要求機能の設定
    • 5.代替案作成の過程
    • 5.1 有害な作用の探索
    • 5.2 手段機能のFASTダイヤグラム
    • 5.3 有害な働きの探索
    • 5.4 有害な働きの改善策
    • 5.5 代替案の作成
    • 6. 段階的な整備の提案とその効果
    • 7. おわりに

発行年

2011年 VE研究論文集 Vol.42

著者

パシフィックコンサルタンツ株式会社
VEセンター
主席研究員
斉藤 浩治 VES

カテゴリー

  • VEテクニック

キーワード

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