VEは、製品やサービスの機能をその研究対象とし、その機能とは顧客にとって必要な機能でなければならない。
機能本位のVE活動によって、限られた経営資源を重点分野に効率的に配分する上で、価値向上余地による判断材料を提供し、改善対象とする機能分野を選択する重要な段階が機能評価の段階である。いわば機能評価によりVE活動の方向が決定されるのである。
本研究では、このVE活動の方向を決定する重要な機能評価のステップに消費者行動分析を適用、顧客の立場で機能を評価し、顧客満足の実現を目指した。分析手法にはコンジョイント分析を採用、アンケート調査による実証とその有効性について考察を行った。
本研究は競合製品が多々ある成熟製品を対象として、次期改良型の新製品を開発するときの製品コンセプトづくりに不可欠な顧客情報を作成し提供する新しい方法論を明示するとともに、その有効性を明らかにしたものである。それは2つの部分から構成されている。
第1は、現状の機能に対する顧客評価により、当該製品の主要な機能の改善対象を明らかにするものである。第2は、この改善対象機能を具体化した方式案を組合せて製品設計案を複数考案し、これらの案に対する顧客の選好を調査した上でコンジョイント分析を行い、得られた情報を製品コンセプトテーブルにまとめるものである。
また、製品コンセプトテーブルを顧客層別にセギュメントして複数作成し、これらの情報を活用して、顧客層別に顧客満足の高い新製品開発を行わせるものである。
本研究は既存技術で既存市場へ参入する成熟期にある新製品で、製品差別化に使用・便宜上の機能が主要な役割を果たす製品を対象に取り上げ、製品コンセプトづくりの段階で、顧客の機能評価に基づいて製造原価目標を主要な構造物に細分化する方法を提案するものである。このような顧客の機能評価に基づく製造原価目標の細分化法は渇望されて久しいが、この分野の研究は極めて少ない。そこで、本研究はこの課題に取り組みコンジョイント分析を用いることにより新しい方法論を提案した。さらに、このようにして得られた構造物ごとの製造原価目標と生産者側の構造物ごとの原価見積値を比較・勘案して開発設計チームが納得する原価目標値を決定させるようとするものである。