論文キーワード: 体系化 2件

公共事業における設計段階は長期間にわたるうえ、意志決定のプロセスが複雑であり、製造分野でのVEをそのまま適用することが困難とされてきた。また、VE対象が単品生産であり個別性が強いことから、VEを公共事業へ適用するには、個別の対象テーマに応じて検討の方法をその都度工夫することが必要とされてきた。

同一の対象テーマであっても適用の目的や適用段階が変われば、実施手順の各ステップにおける検討の方法やテクニックも柔軟に変える必要がある。しかし、多種多様な事業がある公共事業において、適切に検討の方法を選択することは容易ではない。

本稿では、検討方法の選択を容易にし、設計VEによる効果を高めることを目的に、検討の方法について定型化を提唱するものである。本文中では、この定型化した検討の方法を、スタイルと表現している。

現在、公共事業では設計VEは事業の進捗段階や事業種別に応じて分類されている。

本稿では、定型化の観点から、対象事業を改善するレベルや改善の方向性に応じて分類することが適切と考え、この考え方に基づく5つの基本スタイルを提唱する。また、改善の方向性の概念として、3つの方向性について説明する。

最後に、特に適用方法に工夫が必要となるデザイン・レビュー型、開発設計型について事例と共に留意点を詳述する。

なお、本稿では、公共事業における設計VEについて取り扱っている。よって本文で扱う設計VEとは、公共事業における設計段階に適用するVEである。

顧客価値とは、消費者である我々自身が、商品やサービスを手にし、使用する時感じる満足感であり、身近なものである。しかしながら、一つひとつの商品やサービスにおいて、送り手側から、顧客の価値感の全体像を描き出そうとすることは、常に困難を伴うものである。

なぜならば、顧客価値とは顧客が感じるものであり、顧客の立場に立って見た使用場面への理解というものが欠かせない。また同時に、顧客のその満足感を顧客が感じ取れるように、どう実現するのか、送り手の創造性も同時に求められているからである。

本論では、商品の企画段階では必ず志向されるであろう顧客の価値感の全体像を、VEにおける機能分析手法の中に、一定の枠組みを設けて描きだせるようにした。顧客価値に迫りやすくすることで、機能分析の活用に、より多くの送り手の参加を願うものである。