VEは価値向上を目的とする一連の評価プロセスであるが、実際多くはコストダウンのツールとして捉えられがちである。しかし技術開発部門の立場としては、その性格としてVE本来の価値向上を目的とした評価方法がぜひ必要である。
本研究は「技術開発のねらいは価値向上を図るVEの考え方に沿うものである。」という認識から、これまで当社のVEでは評価しにくかった「技術開発のテーマ毎に異なる開発目標」を機能として評価することを試みた。また報告書式の上でもこれまでのコストダウンとしての視点から、価値指数として、価値向上そのものを示す価値向上率(U)を使い評価しようとするものである。
さらに実際の技術開発テーマにおいて、開発事業計画の初期段階で環境及び社会リスクを定量的に評価する必要性から、従来評価の対象とならなかったこのようなリスクを機能として評価することを試みた。
VEの基本的指針ともいえる「価値向上の原則」は、他の手法には見られない極めて特徴的な理念である。しかし、この「価値」とは分子分母の関係における比率尺度であること、そして必ず比較対象を有する相対尺度であることから、環境条件や観測者の違いによって様々な評価がなされ、その取扱いに苦慮する場合が多い。とりわけ、近年の急激な環境変化や価値観の多様化は、売れる商品づくりのための「価値の見極め」を一層困難なものとしている。
本稿では、顧客が認める価値のメカニズムを明らかにし、それを感度良く捉えることで、顧客ニーズを見逃すことなく構想案の提案まで持込むための一連の考え方と手順を検証された一手法として紹介する。
わが国の主要企業において、VE活動の「アイデアの具体化」のステップにおけるコスト見積の実態は、正常な(現有設備等による従来の延長線上)コスト・レベルで行われているのが約70%であり、理想的な(実現可能な最経済的)コスト・レベルで行われているのが約10%程度となっている。
ところが、正常なコスト・レベルと理想的なコスト・レベルの差は、製造技術の進歩が著しい現在、小さくない。
従って、VE活動の目的である「機能を果たす多数の手段の中から、最も合理的・経済的な手段を選び出す」ためには、改善案検討時のコスト見積は最経済的製造手段を追求した、実現可能な理想的なコスト・レベルで行う必要がある。
本論文では、「アイデアの具体化」のステップで、最経済的な製造手段を追求したコスト見積をすることにより、次のような改善が可能であることを述べる。
1. コスト見積が適切にできることから、改善案の価値改善率を高めることができる。
2. 特に外作品につき、改善案作成時に、算定したコスト見積値を目標にした、取引先との共同VE等により、外作品の価値改善が促進できる。