音を聞く(6)  (ゆ)  No.280

こんにちは。公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会事務局の(ゆ)です。

このブログにも何回か登場したピアノが趣味の友人は、№130「芸術を鑑賞する(1)(https://www.sjve.org/15348)」でも触れたように、『譜面があれば、初めての曲でもその場で弾ける』そうです。譜面の音符がすぐに音として脳に伝わっているというだけでも驚いたのですが、最近、大人気のハラミちゃんというピアニストは、譜面がなくても一度聞いた曲をその場で「耳コピ」してすぐに弾いてしまわれます。先天的な絶対音感をお持ちかと思ったのですが、4歳の時からの訓練で身につけていかれたそうです。

そんな彼女も音楽大学を出たものの音楽では食べていけないと思い、IT企業に就職して楽しく働いていたものの、引きこもりになってしまわれたとか。そのうちにピアノで自分自身も元気になりエールをもらって、音楽が人を楽しませることに気づき、ストリートピアノを弾く様子をYouTubeにアップしたことがきっかけでブレーク。『弾くより聞いてもらう方が幸せ』という彼女は、来年、武道館コンサートを予定しているそうです。彼女も私の友人も、一体どんな耳の機能を持っているのかしら?と思いますが、そういう機能をコピーできたらいいのになあと思います。

ただ、世の中は、優れた耳を持っている人ばかりではありません。どうしても、加齢と共に音を聞く機能は衰えて耳が遠くなりますし、年とは関係なく聴覚障がい者の方もいらっしゃいます。最近、骨伝導という手段で音を聞くことができるイヤホンがあるのを知ったのですが、「身体で聴こう音楽会」という、耳の不自由な方にも楽しんでいただけるコンサートがあったことを思い出しました。

この音楽会は当会の会員でもいらっしゃるパイオニアさんの主催だったのですが、以前、同社に私の従兄弟が勤務しており、このコンサートのことを聞いたので私の元同僚に紹介してみました。残念ながら私は伺えなかったのですが、従兄弟がアテンドをしてくれたようで、『ボディソニックの機能のお蔭で、耳がよくなくても音を聞くことができて楽しめた』と喜んでもらえました。

音を振動に変えるボディソニック(体感音響システム)は約30年前に製品化されたそうですが、このコンサートは同社の創業者の想いが原点で、社会貢献活動として積極的に取り組んでこられたとか。同社のHPにも紹介されていますが、ロケット工学で有名な糸川英夫博士が、社内講演時に『音楽は、聴覚を通して聴く「音波」と「ボーンコンダクション」(骨伝導)の2つの成分を聴いている。つまり音楽は耳だけで聴くものではなく、体全体で感じるものである。音楽を聴く人が真の恍惚感に浸るのは、このボーンコンダクション効果が大変大きく、骨伝導のエネルギーの伝わりがオーディオ機器には不可欠である』と提言されたそうです。

この提言をヒントに同社の創業者の松本 望氏が、「ボディソニック」の研究・開発に取り組まれて、この第1号が1980年に誕生。更に、『この骨伝導を利用すれば聴覚障がいの方も、音楽やリズムを楽しめるのではないか』と考えて研究を行っていかれた中で、聴覚障がいの方の喜ぶ姿や感動した様子に感銘を受けた社員が、『ぜひ、企業のボランティア活動に』と提案されて、1992年に第1回「身体で聴こう音楽会」が開催されたそうです。

音楽は媒体を通して聞くのももちろんいいのですが、実際の音を聞くことができるコンサートというのは、耳や骨からだけでなく、皮膚を始め体全体で感じられる所がいいのではないかと思っていましたので、上述の糸川博士のご提言を伺って納得しました。更に、音と同時に、その場にいる人達の発する音(波動)も全身で聞けます。音を出す人と音を聞く人、そして音を聞く人同士と、互いの波動が共鳴するので、一体感が出て心地良さに包まれるのではないかしらと思います。

しばらくお休みされていたという「身体で聴こう音楽会」は、来月から再開される予定だそうです。ご興味のある方は、こちらのサイトをご覧になってみてはいかがでしょうか?(https://youtu.be/yYdD4dSbhQA
この音楽会同様に、休止や入場制限をしている多くのコンサートが早く元通りに開催されるといいですね。そして、一人でも多くの方々が「音を聞く」ことを一緒に楽しまれて、同社の企業理念でもある『より多くの人と、感動を』分かち合える場面がたくさん誕生することを願っています。

では、よい週末をお過ごしくださいませ。 (ゆ)

 

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