伝統を受け継ぐ(2)  (ゆ)  No.289

こんにちは。公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会事務局の(ゆ)です。

1月10日は「成人の日」でしたね。あいにくのご時世で、成人式が中止となってしまった所も多かったようですが、テレビのニュース等で華やかな振袖姿の女性達を目にすることはできました。着物はその柄に意味が込められていたり、季節感を味わうというような機能もありますよね。着物も日本の伝統だと思いますが、昔と比べて着る機会が減ってしまった今、手軽なレンタルの振袖も人気があるようです。

私の成人祝いの時には、当時、通学バスの中から何度も目にしたショーウインドウの中で輝いていた振袖が頭から離れず、無理を言って誂えてもらいました。白地に銀箔が散らしてあり、両袖を広げると青や白や銀の鶴がつながって円を描くように舞っているという柄でした。鶴は延命長寿の象徴とされる瑞鳥で、品格あふれる美しい姿から、婚礼衣装に多く用いられる吉祥文様だとか。確かに花嫁衣裳に最も使われている、おめでたい伝統的な柄ですよね。帯もやはり吉祥文様である熨斗の模様にしましたが、これも同じく伝統的な柄だそうです。

その後、友人や従兄弟の結婚式とかお茶会等で何回か着て、自分の結婚式でも着ました。神前式の時には白無垢の花嫁衣装、お色直しでこの振袖を着て、最後にかなり派手なショッキングピンク(普段、地味な私にしては珍しいと親族達は口々に言っていたそうです)のドレスにしました。紅白の色と共に、着物や帯の柄でおめでたい感じは表現できていたのではないかなと思います。

結婚して既婚者になると、今度は家紋の入った着物を着たりしますが、家紋のルーツは平安時代の頃に公家が自分達の衣服や持ち物に独自につけた紋が由来となっているそうです。 家紋はその家を象徴する「目印」としての機能も持っていたせいか、パッとみて分かりやすい簡略化されたデザインが多いように思います。更に「家紋」はその1代きりではなく、子孫達に次々に受け継がれていくことになったそうですが、新しい家紋を作ることも可能だそうです。

また、武家社会に家紋の文化が定着したのは鎌倉時代の中期頃で、戦局を把握するだけではなく、その後、論功行賞を行うにあたり、家紋はとても大きな意味を持っていたそうで、衣服に縫い付ける習慣が普及するようになったのは室町時代。戦国時代に入ると争いが激化し、同族同士で戦うことが多くなったため、敵と味方の区別をつけられるよう急速に家紋の種類が増えていき、羽織や裃に家紋を入れる習慣が一般化したのは江戸時代だとか。

家紋の種類は、植物紋、動物紋、天然紋、調度紋、文様紋、文字紋、建造紋などがあり、日本人は農耕民族で森や木を身近に感じていたので、花や葉をモチーフにした植物紋は一番種類が多いそうです。存在価値のないものは滅んでいってしまうのは世の常であっても、優れたものは残るので、この美しい家紋という造形は何らかの形で残るであろうと言われているそうです。

家紋を調べることで自分のルーツを発見したりすることもできると思いますが、それも家紋が受け継がれてきた伝統ある文化だからこそできることですよね。家紋の中でも、平家の家紋といわれる 「揚羽蝶紋」のデザインが綺麗だなあと思います。この「揚羽蝶紋」を始め、家紋には現代のグラフィックデザインにも通じるようなモダンさを備えているものが多いと思うのですが、スッキリした無駄のないデザインはVEにも通じるような気がします。

約900年という家紋の歴史程の長さではないですが、人も今や人生100年時代です。当会の元職員で、大正、昭和、平成、令和と約100年の人生を送ってこられた楢崎清雄さんが昨年5月に99歳で他界されたそうです。私が当会に入職した当時からお世話になってきた方で、このブログ№80「人をつなぐ(5)(https://www.sjve.org/12612)」でも登場された海外担当者でいらっしゃいました。先述の私の結婚式の披露宴でもスピーチをしてくださり、その後、私が長い時を越えてアメリカのホストファミリーに再会することができたのも楢崎さんのご尽力のお蔭です。

楢崎さんは、パソコンも英語も堪能でいらして海外からのお客様達を明るくもてなされていらっしゃいましたが、相手の立場に立たれた親身な応対で会員の方々にも人気があったようです。そういうホスピタリティーが、当会の伝統として受け継がれていくといいなと思います。
この場をお借りしてご冥福をお祈りしたいと思います。

では、よい週末をお過ごしくださいませ。 (ゆ)

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