香りを取り入れる(1)  (ゆ)  No.296

こんにちは。公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会事務局の(ゆ)です。

昨日の3月3日は、日本の伝統行事の一つでもある桃の節句でしたね。中国の「上巳の節句」が由来で、長寿や魔除けの力があると考えられていた桃の花のお酒を飲んだり、桃の葉を使ったお風呂に入ったりして厄払いをしていたそうです。また、川で身を清める習慣もあり、それが日本に伝わったことで、紙等で作った人形を撫でて川に流して邪気払いをしたのが「流し雛」のルーツだとか。その後、流すのではなく飾るようになったのが雛人形だそうです。下の写真は、以前からお世話になっている伊豆のホテルに飾られていた雛人形です。

   Hina dolls 2021.3 photo by y★u

既に3月中旬だったので「あれ?」と思ったのですが、『この近辺では旧暦で「ひな祭り」を祝うので、しまい忘れではないですよ』という説明のカードがついていました。雛人形をしまうのが遅れると「お嫁に行くのが遅くなる」等と聞いたことがありますが、いつ飾っていつしまうかについての決まりは特にないのだとか。ただ、一般的には、立春が過ぎた頃に飾って桃の節句が終わった後のなるべく早い時期にしまうのが望ましいそうで、桃の節句をお祝いしたら、身代わりとなって厄払いの機能を果たしてくれた人形をいつまでも置いておくのはよくないからだそうです。

雛人形の歴史も古く、奈良時代や平安時代とも言われているそうですが、当時の貴族達の間で流行っていたものの一つに「香」があります。その頃は毎日のようにお風呂に入る習慣がなかったので、西洋の香水と同じく「体臭をごまかす」芳香剤としての機能もあったとか。

前回のブログで登場した私の伯母の茶道教室では、時々、香を焚いて、その香りを当てるという「聞香」もしました。伽羅や白檀等のいい香りの中、遊び感覚で楽しみながら集中もできて面白かったです。前回のブログでは蝋梅の写真も掲載しましたが、蝋梅は別名「ジャパニーズ・オールスパイス」ともいわれ、フトモモ科の植物で果実が用いられる香辛料だそうです。中世ヨーロッパの人が珍重したといわれる4種類のスパイスのうち、3つの香りを併せ持っていたことから名付けられたとか。いずれにしても、国内外を問わず香りは古くから生活に取り入れられていたんですね。

この蝋梅のように様々な花の香りは遥か昔から身近なものだったと思いますが、焚いて楽しむ「香」は香木の香りで、『日本書紀』によれば、日本に初めて香木がもたらされたのは推古3年(595年)のことだそうです。しかも、梅やお茶のように渡来人からもたらされたものではなく、淡路島に漂着した流木だったとか。島の住人がこれを偶然焚き木として火にくべるととてもいい香りがしたので、宮中に献上され推古天皇の元へと渡ったのが、東南アジアの「沈香(じんこう)」という香木だったそうです。

日本の香文化は仏教伝来とともに定着したと考えられているそうですが、奈良時代になると仏事の香から離れ、貴族達は部屋で香木を焚いて香りを楽しんだそうです。鎌倉時代から室町時代にかけて、香は武家のたしなみとしても親しまれ、茶の湯と同様、禅との関わりで愛好されるようになり、死と隣り合わせの戦の合間に落ち着ける遊戯として浸透したとか。出陣する前に兜に香(伽羅)を焚き染め、戦の間、興奮しないように香の鎮静効果を利用したという話もあるそうです。香は、その香りを楽しむだけでなく「気を鎮める」という機能も併せ持っていたとすれば、VE的にも価値が高いものだと思います。

ただ、もっと前の段階で香を使って普段から気を鎮めていれば、戦い自体も減ったのではないかと思いますが、今後も香りを取り入れることで少しでも平和な世の中に近づいていってくれればいいなと思います。戦国時代を経て、武士によって確立された香道は、江戸時代に入るともっと下の階級の人々にも広まり、茶道・華道と並ぶ三大芸道の一つとなり、上流階級だけでなく庶民まで気軽に楽しめるようになったことで、現代まで芸道として続いているそうです。

VEもIE・QCと並んで三大管理技法の一つと言われています。当会で開催しております「バリューデザインスクール」の2022年度のスケジュールが決まりました。4月1日よりお申し込み受付を開始いたしますので、この機会に、現代人として、VEという管理技法を嗜まれてみてはいかがでしょうか?(https://www.sjve.org/23952

では、よい週末をお過ごしくださいませ。 (ゆ)

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