品質保証に対するVAの実例

論文

企業経営の健全な運営は,経営計画の綿密な立案と,その実行にあるといえる。企業としては,当然,これ等の原則に従って,健全経営のための運営を必掛けているが,時として,計画に反した予測せざる誤算により,収益確保が困難となり,赤字経営,果ては倒産の事態が発生している。この原因には,計画時点での,万全の予測に基く計画の立案も,予測せざる環境の激変によるものもあるが,実際には,人為的に回避し得る原因もかなり多い。その一つに,技術面での不良,事故がある。

近時,信頼性の思想の普及により,信頼度管理技術が発達し,不良,事故の未然の防止が徹底して来ているが,ややもすると,事故発生を恐れるのあまり,過剰に防衛して,コスト面での破たんを来たすことがある。従って,技術面,コスト面の両面の同時管理が,製品体質の改善には不可欠であり,また,事故の発生を防止することは,工程上のトラブル防止,従って,日程管理の円滑な運営を,附随的に可能ならしめることにもなる。

一方,VA活動は,「機能を損うことなく,最低のコストで達成する」活動であり,コスト,品質の両面を管理して,真の価値改善を計ることである。従って,VAのステップには,改善案のテストや,必要機能(品質,特性も含むと考える。)を保証するステップがある。しかしながら,変更案に対する保証のための,消極的な品質保証体制を,一歩進めて,積極的に,不良,事故の防止を主体とした体制にすることが,「VA,すなわち事故」といった,誤まったイメージの改善に役立たせることができるし,真のトータルシステムとしての価値改善に密着出来るものと考える。

また,VAの対象範囲は,かつての材料費,加工費を対象とした時代から,原価構成比率の変化により,間接費の削減による,経営システムの改善等に指向して来ている。従って,製品原価の周辺コストに対する分析,改善のメスを加えた場合,時として,不良コストが爼上に上ることもある。このような場合,不良コストの削減,歩留りの向上によるトータルコストの削減が,製品価値の改善に結びつくことになり,従って,不良コストそのものを対象としたVA活動も必要であり,VAの基本ステップを,不良,事故防止の場合に適用し得る形に変形したステップの設定は,極めて有意義なことと考え,ここに,適用事例をあげて,ステップの体形を示して,ご批判を仰ぐ次第である。

目次

  • 1. 緒言
  • 2. 当社における不良の状況
  • 3. VAによる不良解決事例
  • 4. 不良現象分析
  • 5. 不良特性要因分析
  • 6. VA活動における不良原因の究明および解決
  • 7. 結言

発行年

1971年 VE研究論文集 Vol.2

著者

株式会社日立製作所
資材部
犬塚豊彦

カテゴリー

  • VE実例

キーワード

購入

この論文はPDF版をご購入いただけます。
ご希望の方は「カゴに入れる」ボタンをクリックしてください。