企業体質改善におけるVEの効果 ~主としてソフトVEの適用について~

論文

当社における管理技術は,昭和35年以降,これまで製造を基点として営業まで,その総称を「品質管理」の名のもとに,導入と推進をはかってきたが,その柱は,QCであり,IEであった。その間,市況の変動により,社内の緊急政策の実施等により,推進の濃淡はあったにしろ,長期的にみれば,着実に,その定着が,はかられてきた。

ところが,ご存知のごとく,昭和48年の石油ショック以後,特に消費構造の変化により,その対応のため社内における政策も急転換が始まり,当然,管理技術の推進も転換がせまられた。その一つは高品質低価格商品の造出であり,他の一つは,企業内部の効率化,いいかえれば,"贅肉取り"であった。前者については,表現をかえれば,お客さまのニーズをとり入れ,もっと次元をあげれば,お答さまの潜在需要までも,開発し,しかも,お容さまが,安く感じる"値ごろ"商品を開発することであり,後者については,いかなる不況といえども「赤字を出すことは,罪悪」であり,当然,商品個々について,最適利潤を確保することが,必定とあれば,商品個々のコストを下げることに,全力をつくすと共に,社内組織の効率化をはかり,単なる社内経費の引きしめのみならず,全社員の効率的活動による,企業内部のトータルコストの低減が,必要であった。

当社においては,昭和46年より,ワークショップセミナーが開始され,VEエンジニアが,事業部,協力会社で,主としてハードのVEを中心に活動をしておったので,幸いにも,石油ショック後の急激なコストダウンの要請には,何とか答えられたものの,企業内トータルコストの低減については,新企画が必要であった。それまでにも,社内において商品個々のVEの進展にともない,製造工程設計のVE,生産管理業務のVE,新商品開発へのVE等が,必要にせまられて,研究されつつあったが,いろいろの問題があり,苦労している時でもあった。しかし,今度は,会社トップからの要請であり,全社あげて取りくむテーマであるだけに,全社活動としてのVEのとらえ方を真剣に検討した結果,ソフトVEとしての展開をはかることを決心した。そして既に述べたごとく,事業部には,ハードのVEが思想的にも,手法的にも定着しつつあったので,一層の推進を考えるとしても,その焦点は,当然,会社の中枢である本社業務諸部門と営業部門であった。

当時の周辺の状況は,すでに市況の急激な変動にともない,"発想の転換をはかれ!!" "原点にかえって考えよ!!"と,さけばれている時であっただけに,トップの「今までの高度成長時のままの,会社体質(=考え方)では,非常に危険であり,その転換をはかれ!!」という強い要請は,全社員に良く理解されていたものの,では,具体的に,どう転換するかについては,精神的理解にとどまっている時でもあった。そこで,われわれ推進担当部として,転換の方法は,何も一つに限ったことではないが,われわれとしては,せっかく導入し,浸透しつつあるVEの幅を広げ,レベルアップをはかるため,VEの本質にたちかえり,その思想の展開と活用の徹底を,全社に拡大することにより,トップの要請に答えようとし,その結果,まとまったものが,ソフトVEによる推進であった。

目次

  • 1. 序論
  • 2. 当社における"管理技術"展開上のVEの位置づけ
  • 3. ソフトVEの展開について
  • 4. ハードVEとソフトVEの違い(まとめ)
  • 5. ソフトVEの今後の課題

発行年

1977年 VE研究論文集 Vol.8

著者

松下電工株式会社
品質管理部 品質管理課
山内康司

カテゴリー

  • マネジメントとVE

キーワード

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