建築設計/設計VE手法の一考察

論文

現在の建設業界は,昭和40年代後半から50年代初期にかけての高度成長期にそのピークを極め,ゆるやかな安定成長といわれる中で,生き残りを賭けた熾烈な企業間の競合を展開している。

今日の競合の特徴は過去の成長期のごとくの受注量の拡大とは異なり,効率化と多角化にある。

拡大することのないパイのもと,各企業とも,効率化へ向けての各種の管理技法に一層の磨をかける一方で,多角化へ向けて,業際の拡大,今後の社会やニーズの変化への対応といった観点からの企業体質の変革を押し進めている。

当社においても,建設業の旧来からの体質である請負型の企業体質を脱皮すべく,同業他社に先がけ,「脱請負」をスローガンに複合システム産業化を目指して,体質の革新を続けている。

さらに,具体的な戦略として「造注体制」の確立を打ち出して事業活動を展開している。

我々の言う「造注」とは,顧客のニーズの先取り,または喚起,掘起しを行うことから,顧客に対する事業提案を行い,新たな需要の創造を目指すものである。

この様な一連の事業活動において,VEはそれらを支える大きな柱となっている。

現在は業務全般に適用され,企業内の効率化はもとより,激しいコスト競争の内での事業提案や構築物の内容の充実と差別化戦略の徹底等において有力な武器となり,企業間の競合を切り抜けている。

我々設計部門は,造注戦略の内では上流に位置し,顧客のニーズの十分な把握から,事業提案を創出し,事業化推進を押し進めるためのカジ取りを担っている。

こういった意味からも,設計部門におけるVE活動はその重要性を一層増すこととなった。

我々は,その重要性を認識し,より上流でのVE適用を計り,より一層の顧客への価値向上を果すべく,従来のVE手法を見直し,検討を加えた。

そして,ここに紹介する設計VE手法へと結実し,展開するに至った。

目次

  • 1. はじめに
  • 2. 設計VE手法開発の背景
  • 3. 設計VE手法の展開
  • 4. 設計VE手法の効果
  • 5. 事例紹介
  • 6. おわりに

発行年

1986年 VE研究論文集 Vol.17

著者

フジタ工業株式会社
名古屋支店 建築部設計課
鈴木正芳

カテゴリー

  • 開発設計とVE

キーワード

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