近年、製品機能の高度化、複雑化により、新規開発や設計変更により生じる品質面での リスクは益々増加している。このリスクを避けるため、創造による変更を行うVEに対し て、消極的になることが製造業の開発現場でも見受けられる。このような傾向は、企業だ けでなく社会全体の成長を停滞させる大きな問題になる。 そこで、本論文では、製品の新規開発や設計変更によるリスクを管理し、品質を確保す るため、VE実施手順にリスクマネジメント手法注1)を活用することを提唱する。この中で、 反転リスク分析系統図を作成する手法を確立する。 この手法により、VE実践の中で、機能本位の視点から、製品全体のリスクを特定・分 析し、具体的な対応を検討することで、新規開発や設計変更によるリスクを漏れなく管理 することができ、品質をより効果的に確保することができることを示した。
VE実践活動において、基本ステップ「代替案作成」の詳細ステップ「詳細評価」については、『新・VEの基本』1)によると「技術性の詳細評価」と「経済性の詳細評価」で評価することになっている。複数案作成された提案について「技術性」と「経済性」の二面から評価することは、提案の実効性を評価する重要なステップであり、科学的な意思決定が必要とされる。しかし、VEプロジェクトの置かれた制約条件を多面的に分析し、将来のリスクを含めた適切な詳細評価をすることは、従来の詳細評価では困難であった。
そこで本論文では、『新・VEの基本』や過去のVE研究資料、VE事例等から詳細評価の内容を精査し、その改善策として従来の詳細評価に『新・管理者の判断力』2)で紹介された「ケプナー・トリゴープログラム」(以下、KT法という)を組み合せて評価する方法を提案するとともに、事例による有効性の検証結果を報告する。
建設技術業務の総合化、複雑化などの進展に伴い、業務全般を見渡した俯瞰的な把握・分析に基づき、技術の改善や、より合理的なプロセスによる安全性の確保・外部環境負荷の低減などを実施する管理技術が必要となってきている。
これらの管理技術は、それぞれの要求事項を個別に管理していくことのみで実現することは困難で、あり、複数の要求事項を総合的な判断により管理していく技術が必要である。
総合的な判断の根底となる管理技術に、VE技法をツールとして活用することにより、より合理性と有効性が図られ、総合技術監理としての価値向上が図られるものと思われる。
以下に建設プロジェクトにおける総合技術監理の必要性とVEの果たす役割について記述する。