涙を流す (4)   (ゆ)  No.28 

こんにちは。公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会事務局の(ゆ)です。

2016年のリオオリンピックも閉幕し、世界中の選手達が嬉し涙や悔し涙を流した事と思いますが、観ていて、もらい泣きしてしまう方も多かったと思います。嬉し涙は観ている方まで感動が伝わりましたし、悔し涙も次回へのチャレンジの糧になる事と思います。

このブログ№25 「涙を流す」 (1)(https://www.sjve.org/7763)で、当会の全国大会の女性講演者に怒られて私が泣いたというお話をしましたが、一方で思わずもらい泣きをしてしまう講演もありました。
私の主な仕事は当会のVE誌の編集・発行ですが、掲載のご了承を頂いた講演者の方々のご講演の要約版を順次掲載させていただいています。ここ数年は、経費削減の一環で録音原稿も外注せずに自ら何度も繰り返し聞いて書き起し、更に何度も読み込んで3分の2程度の原稿に要約しています。

ちょうど5年前の全国大会では、日本電鍍工業㈱伊藤麻美様より、「“六本木生まれの社長令嬢”が挑んだ奇跡の経営再建物語」と題してご講演をいただきました。何の不自由もなく育ち、何の経営経験も知識もない社長令嬢であった彼女が、急逝されたお父様の代りに社員達の雇用を守るべく意を決して社長に就任され、倒産の危機にあった会社を3年で黒字化されるまでのお話でした。

彼女が32歳の若さで社長になられた当初は「この小娘に何ができるのか」と鼻で笑うような社員も少なからずいて、社内の雰囲気は色でいうとグレー、温度でいうと非常に冷たい雰囲気だったそうです。
一方、社外では、取引先に社長就任の挨拶をしても「あなたじゃ話にならないから、本物の社長を連れてきなさい」と言われたそうです。どんなに辛くて、どんなに悔しかったかは想像に難くありません。

次々に起る問題を彼女がどうやって克服され黒字化されたかという詳細については、VE誌№270(2012年6月号)に講演録が掲載されていますので、ご興味のある方は、是非、入手されてご覧になってみてください。
(VE誌バックナンバー:https://www.sjve.org/2686)。

彼女が就任されて1年目、最初は挨拶も返さず不満ばかりだった社員も彼女の奮闘ぶりを目の当りにして何も言わなくなり、当時の世間がITバブルに沸く中、お給料も下げたまま、賞与も出ないのに自腹で会社の備品を購入してくれる社員までいたそうです。そんな社員達に何か少しでもお礼をしたいと、年末の最終日に新券の1万円札1枚を三つ折りにしてお年玉袋に入れて、「少し早いお年玉です」と一人ひとりに配って歩くと、「会社がどんな状態にあるか分っているので受け取れません。別の事に使ってください」という社員が何人か現れて、涙の流し合いでやっと受け取ってもらったそうです。

お年玉に込められた、お金には換算できない価値のある彼女の想いとそれをくみ取る社員の方々の気持ちを慮ると、私はこの場面で何度も(こうやって書いていても)「もらい泣き」してしまいます。とても感動的な講演でしたが、彼女の熱意と創造力が会社の危機を救って未来を拓いたのではないかと思います。

さて、当会では、他にも感動的なお話をされる様々な分野の方々にご講演をお願いしております。
来る9月30日にも第60回西日本VE大会が、「変革の原動力VE~創造力と熱意が未来を拓く~」というテーマで広島にて開催されます。(西日本VE大会:https://www.sjve.org/7807

「涙を流す」事は「心を浄化する」という機能も持つそうです。講演でも映画でも小説でも手段は問わず、時には涙を流すのもいいかもしれません。怒られて泣くのだけはもう遠慮したいものですが…(笑)。

では、よい週末をお過ごしくださいませ。  (ゆ)

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