音を聞く(5)  (ゆ)  No.279

こんにちは。公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会事務局の(ゆ)です。

ちょうど1年半前に始まった朝ドラの「エール」。このドラマのモデルは、全国高校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」等で知られる、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而氏と、妻で歌手としても活躍した金子氏(ドラマでの役名は「音」)でした。初回のオープニングの時代設定が、「紀元前一万年」というのが朝ドラとしては新鮮で、『古来 音楽は人とともにあった』『以来 人は音楽を愛した』『ずっと音楽は人のそばにある』というテロップが流れました。

主人公は木の棒で岩を叩いて音を出して魚が穫れた喜びを表していましたが、思えば言語体系や通信体制が確立する前の意思の伝達手段は「音を出す」や「音を聞く」ことだったのではないかと思います。原始時代には、大きな機械音とか人工的な音がない代わりに、火山の爆発音や雷の音、動物の唸り声といった危険な音も身近にあったはずです。前回のブログで、「焚火の音」にも触れましたが、音を聞くだけで焚火の映像が目に浮かびますよね。原始時代の過酷な生活の中にあって焚火は心身に温もりを感じさせてくれるものだったと思います。そういった情報が現代人達にも遺伝子レベルで引き継がれていて、焚火を見たり音を聞いたりするだけでもほっとするのかもしれませんね。

Mizubayashi wildwood  2020.10 photo by T.T.

上の写真は私の幼稚園時代からの幼馴染が送ってくれたものですが、「エール」のオープニングに登場する福島の水林自然林で、ここにたたずむ主人公と共に音符が流れる場面が印象的でした。古関氏はこういった自然の音をヒントにして作曲されていたのかもしれませんね。音楽学校で学ばれた訳でもなく独学で、1964年の東京五輪の「オリンピック・マーチ」等、数々の名曲を誕生させて約30年前に亡くなりました。そして、ちょうど1年前に筒美京平氏、今年の5月に小林亜星氏、9月にすぎやまこういち氏と、天才的な作曲家の方々も世を去られましたね。

筒美京平氏は、私の高校・大学の先輩でいらしたことを亡くなってから知ったのですが、やはり、音楽科とかで学ばれた訳でもないのに膨大な数のヒット曲を生み出されました。サザンオールスターズも大学の先輩なのですが、40年以上にわたって現役で活躍されています。私の主人はたまたま、まだデビュー前の桑田さん達と飲む機会があったそうですが、彼は隅の方でそっと本を読んでいるような物静かな方だったそうです。こういう方々の「音を聞く」力には天才的なものがあると思いますが、自然に限らず、本や芸術等からもインスピレーションを受けて作曲されてこられたのではないかしらと思います。

すぎやまこういち氏の「ドラゴンクエスト序曲」は、今年の東京五輪の開会式で流れましたが、これを聞いた世界中のドラクエファン達の頭の中には、物語の場面や登場人物が浮かんだことと思います。オーケストラ版もあるそうですが、私も夢中になってしまったゲームでは、冒険の場面毎にふさわしい音楽が流れて壮大な物語の雰囲気を盛り上げ、ワクワク感を色濃いものにしていました。

知人から誘っていただいた定期的なクラシックコンサートでも、オーケストラの演奏の音を何回か聞いたことがあります。目をつぶって聞いていると、波の打ち寄せる広大な海とか風がそよぐ草原とかの風景が浮かぶ時がありますので、古典でも現代音楽でも音の機能は変わらないものかもしれませんね。以前のブログ№133「芸術を鑑賞する(4)(https://www.sjve.org/15451)」で、カンディンスキーの絵から音が聞こえてきたということを書きましたが、音から情景が浮かぶ場合の方が多いと思います。どちらも五感の一つが刺激されて別の五感にスイッチが入った経験ですが、「音を聞く」ことは脳を活性化するためにもいい手段と言えるかもしれません。

音楽は、たとえ国や言葉が違っても、理解や想いを共有することができるので、「共通言語」の機能がありますよね。部署や専門等が違っても音楽と同様に「共通言語」となりうるのがVEの特長だと思いますので、意思疎通のために欠かせない管理技法の一つだと思います。
当会では、12月16日~17日に「製品改善ワークショップ」セミナーをオンライン開催いたします。同セミナーではVEの基本的な考え方を講義で学び、市販製品を題材に改善ワークショップを行います。お申し込みの締切りは12月6日となりますので、この機会に「共通言語」であるVEの活用プロセスを習得されてみてはいかがでしょうか?(https://www.sjve.org/22730

では、よい週末をお過ごしくださいませ。 (ゆ)

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