論文発行年度: 2017年 VE研究論文集 Vol.48

第49回VE全国大会(平成28年開催)において、「対極類比アプローチによる創造 手法の提案と検証」と題したVE研究論文を発表した。この中で、企画段階のVEプロセ スで顧客の潜在的要求に応えるアイデアの創造手法を提案し、その有効性を検証した。今 回、その創造手法にTRIZの発明原理を取り入れて、より普遍性の高い技術的な観点を 付与しさらに有効性を高めた。 本論文では、TRIZを活用した対極類比アプローチによる創造手法を企画段階のVE に適用することで、技術的方向性に沿った信頼性の高い革新的アイデアを創造できること を検証する。リサイクル工場の冷媒用フロンの回収技術の開発に本創造手法を適用し、国 内最高レベルのフロン回収率を実現することができた。

製品流通のグローバル化が進んでいる昨今、必要な機能を確実に達成していることはも ちろんのこと、ユニークかつ安価な製品を市場へ提供することが求められている。この要 求を満たすためには、機能とコストの関連を追求することで抜本改善となる代替案を導く VE(Value Engineering、以降VEと記す)プロセスは有効である。そこで弊社では、新規 性や技術的難度の高い製品開発テーマに対して、開発設計段階のVEの適用を推進してい る。 新規性の高いテーマや今まで自社で採択したことのない要素技術を用い基本構想案の検 討を行う構想段階のVEにおいては、リスクを含めた技術的な欠点が発生することが多く なる。そこでVEプロセスの「具体化」において、欠点のない代替案を練り上げる手順が 用意されているが、作成された代替案は品質確保のためのコストが増加し、コスト低減活 動を別途実施しなければいけない可能性がある。 本論文では、構想段階のVEプロセスの「具体化」手順において、VEの特徴である機 能とコストの関連追求の思考とQC(Quality Control、以降QCと記す)的思考を融合する ことにより、欠点抽出の段階で高コスト化につながる過剰な品質対策を回避する手順を提 案するとともに、構想段階のVEにおける手順の有効性を検証した。

経営改革手法として、製造業を中心に成果を出してきたバリュー・マネジメント(VM: Value Management)であるが、非製造業と呼ばれるIT企業や商社、保守、飲食などのサ ービス企業でも、バリュー・マネジメントによって、効率的な業務と価値ある新サービス の創造で企業価値の向上に取り組む企業が増加している。成熟化する国内市場では、「モノ からコトへ」の消費の変化によって、今後もサービス企業は増加が期待される。 そこで、サービス業の経営改革手法として、より効果が出るように、ワークアウトや Fast Works といった経営改革手法とバリュー・マネジメントを融合させた、新たなバリュー・ マネジメント手法(顧客指向バリュー・マネジメントVMC: Value Management for Customers)を開発した。より高い満足を迅速に顧客に提供するために、効率的な業務と価 値ある新サービスの創造を加速し、企業価値を向上させる経営改革手法である。