論文発行年度:

不人気産業の代表であると言われている宿泊業や飲食業は、接客サービス業の代名詞的な業種であるが、コロナ禍において人々の移動制限により、経営的にも厳しさが増している。それは、従事者自身の感染リスクとも相まって、一層、その存在価値が危ぶまれている。では、これらの業種は今後、衰退、あるいは消滅していくのであろうか。テイクアウトや宅配需要に対する対応、感染対策を講じた設備投資、政府による数々の支援で、収束を待ちながら辛うじて営業を続けている施設がある。一方で潤沢な資金の無い企業は持ちこたえられず、倒産件数も日増しに増えていると聞く。
そもそも、飲食業や宿泊業は人口の増加、商業の発展による人々の往来が多くなることで自然発生した業種である。これからもこれらの業種は姿を変えながらも生き残っていくことは間違いない。そのような社会にとって不可欠な業種こそ、産業として生き残っていかなければいけないのではないか。今回、これら業種の生産性向上のきっかけを得るべく、サービス価値評価技法の開発を試みた。

VE は、世の中の製品やサービスなど、全てを改善対象にでき、その効果も絶大である。より広い領域で適用され、より大きい改善効果を期待し、VE を積極的に導入する企業も少なくない。VE を導入する企業にとって、その普及活動は極めて重要となる。社内への普及がうまく行かなければ、VE の導入や普及活動に掛かる投資が無駄となる。とはいえ、導入後数年間はVE 専門家が不足するため、多種多様な対象テーマの規模や改善余地に応じて、実施方法を最適化することが難しい場合もある。そのため、効果的なVE 活動に繋がらないことが発生している。
そこで、本論では、VE の普及活動を軌道に乗せるため、サービス業における小規模な改善テーマに最適な簡易版のVE ワークショップを開発し提案する。そして、その実践事例を踏まえ、有効性について示す。

機能思考が特徴の1つであるVE(Value Engineering、以降VE と記す)は、必要な機能を確実に達成することを目指した活動により、使用者が思いもよらないような革新的な製品や新たな実現手段を有した製品が実現可能となる方法論である。
しかし、VE ジョブプランにおける代替案作成段階の詳細評価では、代替案の設計内容が具体化されるため、プロジェクトメンバーは、品質思考(原因-結果の論理で徹底的に品質課題を解決する思考)重視となり、機能思考(目的-手段の論理でテーマに必要な機能とコストの相互分析を行うことで課題を解決する思考)が後追いの状態となってしまう傾向がある。代替案の「技術性の評価」では、必要な機能と各種の要求事項を代替案が満たす可能性を評価する活動ではあるが、要求事項の確認が主体となり、代替案の試作品による妥当性の評価が、構成要素が要求事項(仕様)を満たしているかを確認することに注力され、モノ中心の思考となり、必要な機能が確実に達成されているかを確認する意識が低くなるため、機能の検証モレによる品質対策が別途必要となることが懸念される。
本論文では、代替案作成段階(詳細評価の「技術性の評価」)において、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis、以降FMEA と記す)を活用した品質思考と機能思考を融合した技術性の評価プロセスおよびその実践体制を提案するとともに、プロセスの有効性の検証内容を報告する。

コロナ禍において、イベントや会議の開催には十分な感染症対策が求められる。VEは多人数が対面式で参加するワークショップを行うため、密となるイメージが避けられず、2020 年度はVEの実施そのものを躊躇してしまう傾向が見られた。
しかしながら、プロジェクトを円滑に進めるためには、コロナ禍においても丁寧な意見交換や議論の場が必要である。
今回、公共事業を対象に、WEB会議や少人数会議を組み合わせ、感染リスクを抑えつつVEワークショップを実施する方法(仮称:デジタルVEワークショップ(以下、デジタルVE-WS))について検討し、試行した。
デジタルVE-WSは移動時間や会議室準備の制約が少なくメリットも多いが、事前の通信環境の整備やワークショップの運営において注意が必要である。
本稿は、コロナ後においてもVEを実施する手法を確立するため、今回の試行結果を報告し今回の取組みから得られた知見を共有するとともに、今後の展望についてとりまとめるものである。

X パーキングエリア(以下X_PA)という狭隘かつ老朽化した社会インフラ施設更新に際し、その将来の在り方について、SWOT 分析やマルチスクリーンマトリックスなどの他のビジネス技法で得られた結果を『近未来予測シナリオ』としてまとめた。これを「潜在化した顧客要求事項」として『開発設計VE』のジョブプランにインプットする検討プロセスにより、限られた空間を最大限に活用する建築計画を実施、以て求められる機能と適正なコスト算出に基づく投資計画を導いた。対象はライフサイクルが比較的長い公共建築の更新である。未来のニーズを先取りと同時に、計画案の「検討プロセスの見える化」による円滑な社内合意形成が図られるとともに、投資判断等の意思決定に寄与した。あらゆる財・サービスに対する、効果的な検討手法としての有効性が示唆された。

自社製品を保有する製造業において、企業の持続可能性を確保することは重要であり、自社製品の設計ノウハウの伝承は、企業の持続可能性を確保するための課題の一つである。そこで、機能定義を適切に実施することによる①製品の特有情報などを共有できる、②製品が果たすべき機能や制約条件を明確にできる、③設計の考え方を理解することができる、などの期待効果より、設計ノウハウ伝承のためにVEを適用するケースが増えている。
しかし、設計ノウハウを伝承したいVE対象に対し、VE活動を適用しても、設計ノウハウを期待値通りに伝承できたケースと期待値未達に終わったケースが発生している。そこで、設計ノウハウ伝承時のVEの有効性を高めるための工夫点やファシリテーションの留意点などを提案する。

近年ITシステム化による業務の変革であるデジタルトランスフォーメーションが官庁や企業で推進されている。このデジタルトランスフォーメーションでは、従来の業務をそのまま単にITシステム化するのではなく、投資効果の高いITシステムの見直しを実施するために、同時にビジネスそのものやビジネスモデルも変革することが必要とされている。
筆者らは、この手段のひとつであるBPR(Business Process Re-engineering)を効果的に実施するために、管理・間接業務の改善手法であるLEV(LEAN Enterprise Value)技法を効果的に適用する具体的な手順を提案している。今回、このLEV技法を用いて、ガスによる給湯暖房システムTES(Tokyo-gas Eco System)の特注工事対応業務の改善を実践した。本実践論文では、その提案した手順を示し、結果を論じる。

首都高速道路(株)はレインボーブリッジを代表とした長大橋の塗装塗替え工事は、塗替え作業の土台となる足場の計画が安全性や工事費の縮減において重要となる。本検討は、レインボーブリッジの全面塗替えに向けた主塔の足場計画検討にVE の検討手法を取り入れ、安全性や景観性に配慮した足場計画を提案したものである。

従来の現場作業の改善は、現場主体の小集団チームにて実施されており、それに活用される手法としては、IE やQC が主体的に用いられてきた。そしてこの活動は、確実に成果をあげてきた。しかしながら近年の少子化による現場作業者の減少とICT の急速な進歩により現場作業の改善方法の変革が必要となってきている。筆者らは、現場作業の改善を組織的知識創造のSECI モデルの概念にしたがって実施することを推進している。これは現場作業の情報を形式知の情報に変換してデータベースを構築し、その情報を活用して組織的な改善を実施する。次に改善した情報を現場に提供し、現場を含めた組織全体で情報を共有化する活動である。筆者らは、この情報を活用して組織的な改善を実施するひとつの手法としてFAST とTRIZ を組み合わせる手順を考案した。まずFAST ダイヤグラムにより現場作業の問題点を可視化する。そして継続的改善の方法としてTRIZ の「技術矛盾と発明原理」を活用する。一方、革新的改善の方法としてTRIZ の「技術進化のトレンド」を活用する。本実践論文では、この手法を論じ、この手法を用いて実際の大型ガスタービンの部品加工の改善案を創出した実践事例を報告する。

VEの適用が製品やサービスの価値向上に成果をあげていることは様々な事例から示されている。さらには、機能とコストの大部分が決まってしまう開発の上流段階でVEを適用することにより、その成果は拡大する。したがって原価企画活動の目標達成には開発上流でのVE適用が有効である。
VE活動を次に示すとおりフェーズ1、2と段階的に活動の仕組みを改善し、原価企画活動における開発上流でのVE適用比率向上を図り、原価企画の目標原価達成比率100%継続と活動対象機種の売上高比率向上により、経営に貢献した。
(1)フェーズ1:推進事務局が主体で活動し、活動体制と仕組みを構築した。
(2)フェーズ2:フェーズ1で構築した仕組みを活用し、設計部門主体の活動への移行により開発上流段階におけるVE適用の仕組みを定着化させた。

グローバルなコスト競争が一層激化する中、Tier1(完成車メーカーに直接製品を供給するメーカー)のお客様では製品の開発期間の短縮、円滑な立上を目的とする量試一貫活動が進められている。これは、試作から量産までを同一の仕入先で検討する活動である 。図面完成後の後追い的な原価改善では、限界がある。開発の早い時期から参画出来れば、形状から材質など改善範囲は広がる。更には、上流の企画・構想段階からならば、機能に合わせた提案も可能となる。源流段階からのVE・原価企画活動による競争力のあるコストの作り込みが重要になっている。
樹脂成形品における「源流原価企画活動」についての考え方や具体的な進め方について成功事例を基に解説する。

「機能定義は、機能的研究の基礎でありVE活動の成果と効果に影響を与える重要なステップである。」 1) これは、VE研究論文「機能定義についての考察」のはじめに記されている一文である。また、この論文の終わりに「機能定義用語の選択と標準化に(中略)ついて今後いっそう実践活動にむすびついた研究を進める必要がある」1)と記されている。
このように、機能定義に使用する用語、特に動詞の選択は、VE活動を効率的に実施するためのポイントであるため、『新・VEの基本』3)や米国VE協会(SAVE)出版の『Value Methodology』4)(以下、「日米のVEの教本」という)にも標準化(注1)された動詞がリストとして示されている。しかし、VE適用対象や適用段階により機能定義で選択すべき動詞が変わるため、当社の製造VEプロジェクト活動(以下、製造VE活動という)(注2)では「日米のVEの教本」で標準化された動詞のリストを活用していなかった。そこで、当社にて過去10年間に実践した製造VE活動の機能定義用語を調査、整理して、製造VE活動で使用された動詞を抽出し、「日米のVEの教本」の標準化された動詞と比較することで、製造VE活動の機能定義に用いる最適な動詞について分析した。その結果に基づき、 製造VE活動に特化した標準化された動詞のリストを作成した。

注1:同一同容を表す言葉をまとめることによって用語を集約すること。1)
注2:社内プロジェクト体制にて実施する本格的な製造VEのこと。3.1 1)項参照

医療において、診療の品質・効率の向上は 不可欠である。そして、それらを向上するには、一般に業務プロセスの標準化が有効である。標準化が図れれば、不適合や作業ミスの防止、作業の効率化、改善のための基盤形成といったメリットを生かせる。歯科の治療法は確立されているが、患者ごとに口腔内の環境は異なるため、画一的ではない患者に合わせた治療が求められている。しかし、患者にどのように合わせるべきか明確に示されていない。本稿 では、歯科医院の業務における可視化、標準化を行うための方法論を示す。業務標準化の一般的な方法論は、QC (品質管理)の手法の1つとしてある。VEが価値向上を目指す改善手法に対し、QCは品質の安定維持をはかる手法であり、製造業をはじめ、多くの企業が品質管理を行う際に、QC手法を取り入れているだろう。QCストーリーと呼ばれる問題解決のステップの1つに業務標準化を進めるための方法が示してあるが、実施者が目的思考でない限りQCのみでは不足だと感じている。そこで、業務標準化を実施する際に、VEを取り入れた活用方法を提案する。

多店舗経営企業は、チェーンストア理論の良さである仕入れ低減や効率化を活かしながら、国民大衆の豊かな生活を支えることを目指し、全国各地へ出店を行ってきた。
しかしながら、21世紀に入り、時代の変化は更に激しさを増し、それらの企業は次第に顧客満足が得られなくなってきている。
本部が効率化を強く推し進めれば、店舗は指示命令を実行するだけの受け身の営業姿勢となり、たちまち手段が目的化する。そうなることで、顧客が本来求めている機能が満たされず、サービスの価値が下がり、顧客離れを引き起こす結果となる。
そのような問題を解決するため、多店舗経営 企業における効果的なVEの適用について、機能的分析から得られた 優れたVEの適用方法を提案する。そして、その実践事例を交え、本部による効率化やブランド一貫性を図りながらも、店舗の労働意欲を高め、主体的な営業活動に繋がる効果性を示す。

首都高速道路が積雪により通行止めとなった場合、社会に与える影響は大きく、速やかな除排雪作業を行い可能な限り短時間での交通開放が望まれる。しかし、平成30年1月22日~23日にかけた降雪においては、都市部で23cm の積雪があり、全線の通行止め解除までに約5日間を要した。本検討では、その反省をふまえ、従来の除排雪作業からより効率的な作業方法の検討を行い、通行止め期間の短縮が図れる除排雪作業方法を提案したものである。

「VUCA時代」の「経営VE」を進める上での課題は、激変する経営環境に対して、経営戦略をいかにスピーディにシフトさせるかである。そのために、中長期経営計画の策定や戦略管理、組織の変革、事業再構築の実施、経営システムの構築などをスピーディに実行する必要がある。これらの施策をスピーディに実行させるためには、企業価値の現状を正しく、スピーディに把握することが最も重要である。本研究では、スピーディな企業価値の現状把握をする手法として、企業の合併や買収などの際に対象となる企業の価値やリスクを詳しく把握するために実施される「デューデリジェンス(DD:Due Diligence)」とVEを融合させた企業価値評価技法を開発した。これにより企業の現状価値を正しく、スピーディに把握し、経営戦略をスピーディに策定できるようになるものと考える。

製品の価値向上の形態の一つに「機能の向上」、すなわち「より優れた機能を持った製品を使用者に提供する」方法がある。そのためには的確に「使用者の必要とする機能」を理解し、その要求を上回る機能を提供しなければ、高い顧客満足を得てその価値を認められることはない。
本論文では、VE対象の情報収集のステップでの「体験法」「生活研究(観察法)」、機能の定義のステップで「シナリオライト法」を適用した事例をもとに、「使用者の必要とする機能」を正しく理解するための情報収集の重要性について考察する。

首都高小松川ジャンクションは、新たな2方向の連結路と、既設入口に加え新しい入口が作られ、既設出口の付替えも行われる。供用後は新たな本線分岐と、利用形態が従来から変わる出入口となることから、お客様に混乱なく、安全に利用して頂く点に着目し、アイデア発想を実施した。具体化する過程で、アンケートによる客観的評価を取り入れ、お客様にわかりやすく、安全と考えられる供用開始ステップを提案した。その他、工程短縮、広報手法の検討も実施した。

特定の製品やサービスの価値を向上させようというときには、VE 実践活動を効率的に適用して目標を達成するマネジメントが必要になる。
本論文では、特定対象へのVE実践におけるマネジメントの問題点を問題点系統図にまとめ、その中から重要な問題点を5つに絞った。その問題点の解決策を『新・VEの基本』『 VEハンドブック』や過去のVE研究資料等の文献からポイントをまとめ、その効果的な解決策を「VE実践活動におけるマネジメント成功の5つの要因」として提案し、事例による有効性の検証結果を報告するものである。

VE適用が製品やサービスの価値向上に成果をもたらすことは、VE全国大会等で紹介される様々な事例が示すとおりまぎれもない事実である。より大きなVE成果を得るためには代替案のもととなる優れたアイデアが不可欠であり、アイデア発想力を強化することはVE成果の拡大に直結する。
本論文では、VE適用によって得られる成果をこれまで以上に拡大するために、アイデアを闇雲に数多く発想するのではなく、価値向上に寄与する可能性のあるアイデアをはじめから多く出す方法を提案し、その効果を実際の活動で確認した。製造企業において、VE実践、VE研修、特許ミーティングというそれぞれ異なる目的のために開催される活動を融合することで、VE成果の拡大につながるアイデアの創出を促進できた。

従来の2日間のVE基礎研修は座学と演習から成る。受講者がVEを学ぶことで、担当業務に活用する意欲が湧く。 さらに、VEリーダーの資格を取得することにより、知識とモチベーションが向上し、活用への使命感も生まれる。 しかし、2日間の講座を受講しVEリーダーの資格を取得しても、自分でVEを活用できないという声が多い ことが 課題であった。
そこで、受講者がVEを活用するための研修に望む施策を検討し、2日間の講座とVEリーダーの資格取得に加え、受講者が計画を立ててVEを実践活用することまで組み込んだ、VE基礎研修のしくみを構築した。その結果、本研修を受講した者はVEを活用するコツをつかむことができた。また、本研修におけるVEの実践活用から、収益面に対するVE成果を出した事例も散見された。

「人事評価制度」は、多くの企業が抱えている人事課題の1つであると考える。
しかし、そのことに対して明確な改善案を持っているかというと、そうではない。よくある傾向として、「評価」のうまく行かない原因を「評価制度」や「運用上使用している道具」に置いてしまう。そして、その対策として「評価制度」 や「運用上使用している道具」を変更することで満足してしまいがちである。
本論文は、「人事評価制度」の改善をVEにより実行する際、どのような切り口で改善の入り口を見つけ、分析していくことが有効的かを述べる。そして当社の「人事評価制度」を実際の題材とし、VEによる分析が、「人事評価制度」にも適用できることを、実際の代替案の提示も含めて述べる。

当社は半世紀にわたり経営と連携したVE 活動を継続しており、建設業の特殊性に対応しつつ全社的VE 活動を行っている。そして、子会社化に伴う新たな経営目標を達成するため、従来から行ってきたVE 活動の大幅な改善を行なった。そこで、本稿ではこの6 年間の取り組みを紹介し、建設会社の全社的VE 活動を活性化するために実施した様々な活動やそのために開発・適用した手法であるQVE とVE サークル活動を紹介する。

これまでの社会を築いてきた資本主義は、今後徐々に衰退すると予測されている。そして、次の時代の経済パラダイムとして「共有型経済(シェアリングエコノミー)」が主役になるといわれている。生産活動は大幅に減少し、物・サービス・場所などを多くの人と共有・交換して利用する社会が訪れる。
消費行動はモノからコトへとシフトし、全ての企業がサービス業になるといわれる時代には、新たなサービス創出に取り組むことが重要となる。本稿ではサービスの創出をテーマとして新たなVE検討手順を提案するものである。まず、検討の入り口として困り事を抽出し、それを深掘りすることによって、サービス創出の切掛けを発見する。従来の検討手順のようにモノだけに着目するのではなく、ヒトとモノとの関係に加えて、さらに社会環境の変化にも着目する。時間、空間、社会的環境などが常に変化し続けていることである。
ヒトとモノはその影響を受けるために、モノの機能が全く働かなくなることが考えられる。その対応策として、モノの更新に多大な資源とエネルギーを投入するのか、新たなシステムの構築で対応するか、その選択が迫られる。本稿では、後者の方法について提案するものである。

企業も製品も進化していかなければ生き残れない。製品進化はターゲットとした顧客の満足を継続して向上させることによってなされる。この満足を向上させるには継続的・断続的価値向上と、その製品の差別化・個性化が不可欠となる。この結果が製品進化となるのである。本論文はこれら2つの要素を効果的に実現するため以下の展開をするものである。
まず第一に、機能定義の対象拡大(上位拡大と並位拡大)を図る。ここでは、VE対象(製品など)の果たすべき機能とその目的となる機能(使用目的など)を明確にし、さらに、VE対象(製品など)の機能発揮に密接に関わる「人」や「もの」が果たしている機能も明確にする。次に、これらに基づいて全体最適の思考の下に、これら三者の間の機能分担を合理的・合目的的に行うのである。この経過を経て、使用目的などを確定し、「人」や「もの」が果たしている機能をVE対象(製品など)に採り込むなどしてターゲットとした顧客に対するその製品の価値向上や差別化を図るのである。

現代の製品には電子回路が不可欠であるが、電子回路のVE論文や事例はあまり見かけない。現在では電子回路 VE の必要性は高いはずだが、それが普及しているとは言いがたい 。この理由は、主に2点の特徴が電子回路にあるためだと考える 。第1に、電子回路は回路や部品が果たす機能に着目して開発設計している一面があるために、電気技術者の多くは、VE実施手順の特に機能定義段階について、通常の開発設計段階と重複すると感ずる傾向が見られることである。第2は、電子回路は小型ながら多機能を有するものが多いので、機能系統図の作成に多大な工数を要することである。本論文はこれらの要因を課題として捉え、その負担軽減の方法の一つとして、機能の整理にあたりブロック図を活用することを提案するとともに、機能の整理に有益な、一般的なブロック図を修正した新しい ブロック図の作成方法を提案し、その有効性を明らかにするものである。

本研究では第50回VE全国大会(平成29年開催)で提案した10の対極発明原理を改良し、TRIZを活用した対極類比アプローチによる創造手法の適用範囲を、技術的課題の解決から社会的課題の解決に拡大した。改良した創造手法を製造企業における人材教育の企画立案に適用し、より価値の高い教育プログラムのアイデアを得た。
そのアイデアは、従来、VEを学ぶ機会のなかった技能系新入社員がIE、QC、VEの三つの管理技術の基礎を学ぶというものである。この革新的なアイデアを具体化するために、これまで別科目であったIE、QC、VEの入門教育を一つに統合した教育プログラムを創設し、企業内の教育施策に導入した。

コスト最適な設計を行うためには、ものづくりとコストに精通した技術者が必要である 。しかし、自動車部品業界においては、近年の開発期間の短縮や、電動化 、衝突回避システムなどの先進安全装備の装着拡大に伴って 、機電一体製品(注1)が増えてきたことにより、技術者に求められるコスト最適設計力が変わってきた。 そこで本論文では、この問題を解決するため、次の3点について述べる。第一は、現在の環境変化に合わせた技術者のコスト最適設計力を得る育成方法の開発である。具体的には、コスト最適設計力を構成する能力要素を顕在化し、その能力を得るための育成カリキュラムを開発する。第二は、顕在化した能力の能力到達度指標の開発である。能力到達度を定義することで、技術者のコスト最適設計力を得る育成の促進を図る。第三は、この育成カリキュラムを自動車部品業界の技術者に適用して、その有効性を述べる。

昨今、働き方改革により業務効率化が必須の課題となっており、VE活動自体においても、VE投資倍率の向上を目指し、活動時間の短縮化、成果の向上が果たせる活動の実現が重要課題となっている。したがって、これまでは量産品や繰り返し生産品など適用数量が多いという理由から、価値向上が果たせるVE対象テーマを選定し活動することが主であった。逆に、主に個別生産品を主体とする製品・サービスについては、一品一様となることが多いためVE活動が停滞気味であり、個別生産品へのVE 活動の導入が急務であった。

そこで本論文では、主に個別生産品を主体とする製品・サービスに多く共通して存在している2次レベルの機能に着目し、その機能を実現するための手段(以降類似サブアセンブリ品)を対象とし、VE活動を効率的に、かつ効果を拡大させる手法を提案するとともに、事例による有効性の検証を報告する。

第49回VE全国大会(平成28年開催)において、「対極類比アプローチによる創造 手法の提案と検証」と題したVE研究論文を発表した。この中で、企画段階のVEプロセ スで顧客の潜在的要求に応えるアイデアの創造手法を提案し、その有効性を検証した。今 回、その創造手法にTRIZの発明原理を取り入れて、より普遍性の高い技術的な観点を 付与しさらに有効性を高めた。 本論文では、TRIZを活用した対極類比アプローチによる創造手法を企画段階のVE に適用することで、技術的方向性に沿った信頼性の高い革新的アイデアを創造できること を検証する。リサイクル工場の冷媒用フロンの回収技術の開発に本創造手法を適用し、国 内最高レベルのフロン回収率を実現することができた。

製品流通のグローバル化が進んでいる昨今、必要な機能を確実に達成していることはも ちろんのこと、ユニークかつ安価な製品を市場へ提供することが求められている。この要 求を満たすためには、機能とコストの関連を追求することで抜本改善となる代替案を導く VE(Value Engineering、以降VEと記す)プロセスは有効である。そこで弊社では、新規 性や技術的難度の高い製品開発テーマに対して、開発設計段階のVEの適用を推進してい る。 新規性の高いテーマや今まで自社で採択したことのない要素技術を用い基本構想案の検 討を行う構想段階のVEにおいては、リスクを含めた技術的な欠点が発生することが多く なる。そこでVEプロセスの「具体化」において、欠点のない代替案を練り上げる手順が 用意されているが、作成された代替案は品質確保のためのコストが増加し、コスト低減活 動を別途実施しなければいけない可能性がある。 本論文では、構想段階のVEプロセスの「具体化」手順において、VEの特徴である機 能とコストの関連追求の思考とQC(Quality Control、以降QCと記す)的思考を融合する ことにより、欠点抽出の段階で高コスト化につながる過剰な品質対策を回避する手順を提 案するとともに、構想段階のVEにおける手順の有効性を検証した。

経営改革手法として、製造業を中心に成果を出してきたバリュー・マネジメント(VM: Value Management)であるが、非製造業と呼ばれるIT企業や商社、保守、飲食などのサ ービス企業でも、バリュー・マネジメントによって、効率的な業務と価値ある新サービス の創造で企業価値の向上に取り組む企業が増加している。成熟化する国内市場では、「モノ からコトへ」の消費の変化によって、今後もサービス企業は増加が期待される。 そこで、サービス業の経営改革手法として、より効果が出るように、ワークアウトや Fast Works といった経営改革手法とバリュー・マネジメントを融合させた、新たなバリュー・ マネジメント手法(顧客指向バリュー・マネジメントVMC: Value Management for Customers)を開発した。より高い満足を迅速に顧客に提供するために、効率的な業務と価 値ある新サービスの創造を加速し、企業価値を向上させる経営改革手法である。

機能評価の詳細ステップである機能別コスト分析については、個々の構成要素のコスト をそれぞれの機能分野に各種の配賦計算で配賦することになっている。 本論文では、各配賦計算の使用実績について過去の VE 全国大会や西日本支部(関西地 区)の VE 活動事例を調べた。その結果、機能別コスト分析の記載のあった事例のほとん どが貢献度評価による配賦であった。さらに、各配賦方法の長所と短所をまとめてみた。 しかし、これらの評価はどうしても主観的になり、よりどころを明確にできない問題が あった。その改善策として重みづけ基準による配賦計算に機能の定義カード枚数による重 みづけ基準を付加することで、機能別コスト分析の合理的な基準にしようとするものであ り、事例による有効性の検証結果を報告するものである。

VE活動において、適切に機能分野を明らかにすることは重要な事項であり、効率的に 機能系統図を作成することが必要とされる。また、エアーコンディショナーの室内温度制 御、ロボットアームの位置決め等の多くの分野で使用されているフィードバック制御にV Eを適用して価値ある製品を生み出すことが期待されている。 そこで、フィードバック制御を一般化した基本となるブロック線図を基に対象テーマの ブロック線図や回路図などが設計されていることに着目し、同様にその基本となるブロッ ク線図の機能系統図を基にすれば、対象テーマの機能系統図を効率的に作成できると仮説 を立てた。そして、複数の事例による検証により、基本となる機能系統図の機能の名詞の みを特定化した後、特定化した機能の下位レベルに機能を追加することで対象テーマの機 能系統図が作成できることを確認し、本提案の有効性を明確にした。

企業には顧客に新たな感動を与える価値の創造が求められている。そのためには既に明 らかな顧客の顕在的要求に加えて、潜在的な要求を見いだし、新たな価値をもたらす製品 やサービスの基本着想を創造する必要がある。本論文では、企画段階のVEプロセスで顧 客の潜在的要求に応える基本着想の創造手法を提案し、その有効性を検証した。 提案する創造手法は開発する対象と概念的に対極のものを発想し、対極のものとその特 性を手がかりに新たな着眼点を得て、顧客の潜在的要求に応える基本着想を創造するもの である。リサイクル工場の環境改善技術の開発に本創造手法を活用し、顧客の潜在的要求 に応える基本着想を得て、顧客の期待を超えるコンセプトの工場を構築することができた。

近年、製品機能の高度化、複雑化により、新規開発や設計変更により生じる品質面での リスクは益々増加している。このリスクを避けるため、創造による変更を行うVEに対し て、消極的になることが製造業の開発現場でも見受けられる。このような傾向は、企業だ けでなく社会全体の成長を停滞させる大きな問題になる。 そこで、本論文では、製品の新規開発や設計変更によるリスクを管理し、品質を確保す るため、VE実施手順にリスクマネジメント手法注1)を活用することを提唱する。この中で、 反転リスク分析系統図を作成する手法を確立する。 この手法により、VE実践の中で、機能本位の視点から、製品全体のリスクを特定・分 析し、具体的な対応を検討することで、新規開発や設計変更によるリスクを漏れなく管理 することができ、品質をより効果的に確保することができることを示した。

産業用ロボットなどの「ものづくり」のための設備を供給する生産財メーカーにとって、製品企画活動における「新製品で実現すべき機能」、「販売価格」、「販売台数」などの設定は困難である。それは生産財メーカーの顧客は消費財を生産する消費財メーカーであり、間接的にしか市場変化を掴めないことや、質感、デザインなどの魅力機能の差別化が困難だからである。本論文は「新製品で実現すべき機能」とその決定方法について述べるものである。

とりわけ原価企画の概念を拡大し、製品企画活動及び製品企画準備活動まで範囲を拡大することにより、この「新製品で実現すべき機能」を絞り込んで決定する新しい視点を指摘し、従来の原価企画よりも総合的にとらえ展開するものである。

企業の経営環境の変化や顧客の要求に対応するために、経営層から設定されるVE活動目標の難度は高くなりつつある。VEプロジェクトチームは、難度が高く設定されたVE活動目標を達成するために、価値の高い代替案を構築する必要がある。そのためには「アイデア発想」で数多くのアイデアを発想し、アイデアを発展させることで、VE活動目標の達成に寄与するアイデアの量を増やす必要がある。

しかし、「アイデアの発想」でアイデアを多く発想した結果、アイデアの組み合わせが逆に困難となりアイデアの発展が不十分となる問題やトレードオフ関係にある機能が存在する場合に全体最適となるようにアイデアの発展が十分にできない問題により、「詳細評価」でVE活動目標が達成できずにVE活動の手戻りが発生するなどの問題が発生している。

そこで、本論文では、アイデアの発展を行いやすくする技法として「アイデア体系図を用いたアイデアの発展技法」を提案する。

VE実践活動において、基本ステップ「代替案作成」の詳細ステップ「詳細評価」については、『新・VEの基本』1)によると「技術性の詳細評価」と「経済性の詳細評価」で評価することになっている。複数案作成された提案について「技術性」と「経済性」の二面から評価することは、提案の実効性を評価する重要なステップであり、科学的な意思決定が必要とされる。しかし、VEプロジェクトの置かれた制約条件を多面的に分析し、将来のリスクを含めた適切な詳細評価をすることは、従来の詳細評価では困難であった。

そこで本論文では、『新・VEの基本』や過去のVE研究資料、VE事例等から詳細評価の内容を精査し、その改善策として従来の詳細評価に『新・管理者の判断力』2)で紹介された「ケプナー・トリゴープログラム」(以下、KT法という)を組み合せて評価する方法を提案するとともに、事例による有効性の検証結果を報告する。

VE実施手順の機能定義段階で定義した機能は、アイデア発想の起点となり、価値の高い代替案を作成する上で重要となるが、従来のVE手法では、定義された機能が正しいか、抜けが無いかを客観的に確認することは難しい。
そこで本研究は、特許という外部の知識データベースを用いることで、機能の抜けが無い機能系統図を作成することを目的とし、特許を活用した機能系統図作成の手順を提案する。製品の改善VEに本手順を適用し、有用性を確認した。
本手順を用いて、特許から達成したい機能(目的機能)を抽出し、対象テーマの機能系統図に融合させることで、果たすべき機能という視点から機能の定義を行なうことができた。さらに、機能の抜けを防ぐだけでなく、上位の機能分野を定義することができ、より価値の高い代替案を作成できる可能性があることを示した。

製品やサービスの開発や改善活動において価値ある代替案を創出するには多くのアイデアを出すことが重要とされている。VE実施手順のアイデア発想ステップでは発散思考し、その後の具体化ステップでは収束思考することで効率的に代替案を生み出す。発散思考時には多くのアイデアを発想するが、このときの「多くの」とは単純にアイデア数が多いことを指すのではなく様々な意味が含まれている。本論文は「多い」の意味のうちアイデア数と多様性を考慮して、発想されたアイデアのアイデア量を評価する方法を提案するものである。アイデア発想ステップで創出されたアイデアを分類し、カテゴリ数とアイデア数およびエントロピー(平均情報量)からアイデアの多様性を数値化してアイデア量として定義し、ケーススタディーで評価式の評価を行った。

公共工事において総合評価方式が増加している。落札するためには、発注者ニーズを的確にとらえ差別化した技術提案により、高い技術評価点を獲得することが必要である。
今回は「開発のVE」を利用して、発注者ニーズを機能に置換し整理することにより真の発注者ニーズを把握し、差別化した技術提案を作成する方法を紹介する。

多くの企業において、VE活動を通してコスト削減の実績を上げている一方で、既存のVEの手法だけではコスト削減に限界を感じている場合も多い。そこで、さらなるコスト削減を実現するため、VEとTRIZを組み合わせた新たなコスト削減手法を提案する。
本研究では、コスト削減活動の過程で度々遭遇する二律背反的な技術的問題の解決手段として、TRIZにおける技術的矛盾解決方法に着目し、新たに「コスト削減のための技術的矛盾マトリックス」を提案した。そして、その有効性をロータリー式電気シェーバーにおけるコスト削減事例により確認した。

最近のグローバル環境の変化により、日本の大手企業はもとよりその国内の取引先の企業も苦しいビジネス環境におかれている。円高が進行する環境で、安価で急速に品質を向上させている海外の部品供給メーカに打ち勝つためには、自社の製品の価値向上を継続して図ることが必要である。筆者は、国内に取引先を持つ企業が、自社の製品の価値向上を図り競争力を向上させるためには、その企業と取引先の両者が協働型である共同VE活動を実施して共に利益を享受しながら、取引先の企業の技術が成長することがあるべき姿であると考えてきた。
しかし、共同VEは、両者にとってハイリターンである一方、技術流出というハイリスクの面をもつために情報を共有化して実行することが難しい。この論文では、このハイリスクの面を低減するための計画段階のプレVE活動の手順について提案するものである。なお、実際に提案した手順のプレVEを実施し、共同VEを実施したその効果を説明し、最後に今後の取引先との共同VEの適用分野について述べる。

これまで、公共事業VEで一般的に使われた機能分析法は、製品VEと同様に事業単独の構成要素だけを対象としたものであった。
しかし、公共事業の機能は自己完結型で成立するものではない。それが整備される場所や地域社会との相関関係の中で果すべき機能が定義される必要がある。これからの公共事業に必要な機能は、地域社会という大きなシステムとの相関関係で定義される必要がある。
したがって、機能を定義することは、複数のシステム間に相互に働く影響力を評価することである。その場合、公共事業の構成も複数の手段機能によって構築されたシステムと考える。
また、機能の相互作用によって「有益な働き」と「有害な働き」が発生する。この二つの働きを探索することにより、従来の機能の定義では把握できなかった問題点が発見できる。そして、「有益な働き」はさらに拡大し、「有害な働き」はできる限り減少させることが、使用者の満足度向上につながる。
さらに、複数のシステム間に相互に働く「影響力」は常に一定に作用するものではなく、時間の経過や利用状態の変動に伴って変化するものである。社会資本が長期間に亘って機能するためには、変化に対応して柔軟に対応できる仕組みが必要である。

高速道路は都市内道路網全体の交通処理能力を向上させ、お客様に安全・円滑・快適に利用していただくため、様々な管制用機器と運用ソフトウェアで体系的・効率的に構成された「交通管制システム」により道路の管理・運用支援を行っている。このシステムでは、システムの多様化・高度化に伴うリスク回避策として“バックアップシステム(以下・BUS)”が検討されている。ICT技術の急速な進展は、これまでの経験則では全く想定できない様々なリスクの脅威が存在することを認識しつつも、その全容と詳細および対処法が全く把握できていないのが現状である。そこで本論文では、未来志向的なリスク管理手法である、「逆転発想思考アプローチによる創造的リスク対策」手法を、高速道路管制システムのBUS計画案に対して導入し分析・検証を行った。その結果、実効性のあるリスク評価結果が得られ計画案の見直しを行うに至り、基本的にあらゆる製品・サービスのリスク対策手法としての有効性が示唆された。

新たに価値ある製品やサービスを考えだすための標準的VEWSSでは、改善想定金額の比較的大きなVE対象テーマであれば、機能的研究法であるVE実施手順を着実に実践することで価値向上やコストダウンの成果をあげ、投資倍率を10倍以上とすることも可能となる。しかし、改善想定金額の小さなVE対象テーマにおいて同様のステップで実施すると、得られる成果に対する投資倍率は低くなり、標準的VEWSS参加者のモチベーション低下になることが多々みられる。また、近年においてはスピードを要求される時代の流れと、生産性を高める視点から、少ない人員で他の管理技法も同時に実施する必要があり、小さなVE対象テーマにおいては、標準的VEWSSの考え方を遵守しながら必要最小限の手順と短時間で簡単にできる方法が求められている。現在、有効な成果が得られる短時間VE手法としては「3時間VE」「WAVE法」などがあるが、それぞれ一長一短がある。本論文では実証活動による有効性の検証をもとに、簡易型VE手法である2時間VEが広がりつつある現状を分析し、この手法が日本における簡易型VE手法の一つの型となり、より使いやすく長い間使用者に使用してもらえるようにするためにはどうすべきか述べるものである。

本論文は、永遠の課題である健康問題に対して機能系統図を活用することでより理解を深め、各人の健康意識の向上に貢献することを通じて、機能系統図を活用することが未知の分野の知識の全体構造をより短期間でもれなく把握する方法論として有効であることを示すものである。

多くの製品は競争優位性を確保するため、多数のバリエーションを有していることが多い。そのような製品をシリーズ開発する際での設計構想段階にて、多数の バリエーションに対して有効に共通化できる部品モジュールを開発し、それを製品の各目標Q(品質)、C(コスト)、F(機能)、D(納期)を満足させるよ うに、最適なモジュール展開構想を実施することは非常に重要であることは言うまでもないが、今まで具体的な手法がなかった。本論文ではテアダウンの手法を 活用し、モジュール展開構想の見える化、比較分析を行い自社の開発製品に対していい所取りを行う、具体的な手法について提案する。

『VEハンドブック』の7.3.1(P.355)(注)で紹介されているとおり、サービス領域での管理・間接業務や、2時間VEなどの短時間VEでは、現状の問題から機能を定義し、アイデア発想を行う手法が広く利用されている。

現状の問題は、改善活動を行う上で大きな動機の一つとなるため、この方法はチームメンバーの参画意欲の維持や向上という点等においてすぐれた手法である。

しかし、従来からの「問題点反転法」や、不具合を原因と結果で表現した「問題点系統図」を利用したVE活動において、VE本来の実質的な機能定義が行われない状況が少なからず生じている。

本論では、問題から機能を定義する場合に、従来からの利点を残したまま、VE本来の実質的な機能定義を行う方法を考案することを目的とした。

まず、VEの対象となる製品やサービスの問題とは何かを定義し、問題をいくつかの形態に分類した。そのうえで、問題の形態ごとに機能の定義の方法を提示した。

次に、従来からのVE実施手順に沿って、問題から機能を定義する場合の手順を提示し、最後に例題形式で機能の定義、機能の整理の方法を通して提示した。

全体を通して、VEの定義やVE実施手順と慎重に照らし合わせながら、本論で解説した、問題からの機能定義の方法が、VEとしての要件を満たすことを証明することに注力している。

VEは、価値向上を改善の目的とする優れた方法論である。より多くの経営者に理解され、より広い領域に適用され、より大きな効果を創造するために は、価値向上の効果を目に見える形で示したい。そのためには、定性的な表現や精神論ではなく、定量的で具体論とするべきである。特に、機能(F)の変動を 伴う価値向上時が、とりわけ困難である。

そこで、本論では、あらゆる価値向上のパターンに適用でき、その経済効果を厳密に計算する式を提案する。この式により、これまで、提案者の説明力と被提案者の理解力に依存していたものが、客観的に表現されるようになる。

さらに、価値(V)による判断を補完する新しい指標として、パワー(P)を提案する。FとCから計算されるPは、Vと共に用いることで、さらに経営判断を助けるものとなる。価値の概念がより強調され、経営の進むべき方向と力の掛け具合が明確になる。

全編をとおして、筆者が特に伝えたいことは、VEをコスト削減のためだけに使うのではなく、あらゆる価値向上に活かしていこうということである。

公共団体におけるVEの導入目的には、コスト縮減だけではなく、組織内の横連携強化や意思決定の迅速化などがある。その場合、VEは、企画段階にお ける意思決定ツールとしての活用効果を期待されている。そして、意思決定ツールとして活用するうえで、手軽にワークショップを行う方法についての要望は多 い。

公共事業の企画段階で意思決定ツールが必要とされる背景に、公共事業に求められるニーズが複雑化、多様化していることがあげられる。このことは、まちづくりや防災分野、環境分野など特に意思決定の過程が複雑な事業において顕著である。

筆者は、今後のVEの公共事業における展開を広げるために、これらの分野における活用方法を提供することが重要と考えている。

本 稿では、防災分野と環境分野の両面の要素を持つ事業を対象に、その企画段階において、意思決定ツールとしてVEを活用する場合の留意点やその効果について 考察し、工夫すべき点について検討し、実際にワークショップを行った例を紹介する。そして、この題材を通じて公共事業の企画段階へのVE の適用の可能性について述べる。

社会インフラへの投資は、現在の社会活動のためだけではない。次の社会を支える未来の世代のための資産をつくり、それを継承することである。我々がこれまでに整備した社会インフラは、物を残すことではなく、必要とされる「機能」を未来に残すことが本質的な目的である。

社会インフラ整備におけるVE検討は、工業製品などと同様に基本的な実施手順に忠実に行われてきた。しかし、製品と社会インフラには決定的な相違点があることに留意しなければならない。それは単独で機能するか、複合で機能するかの違いである。

これからは既成の学問分野の狭い領域の中で問題解決を図るのではなく、一つの問題についても、複数の要素が関係する「社会システム」という枠組みの中で捉える必要がある。社会を構成するあらゆる要素を「機能」という評価軸で横断的につなぐ能力が問われている。

これからの社会は、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)などの進展によって、益々、複雑さを増して行くと考えられる。社会全体の価値観が多様化する時代にあって、社会インフラ整備にも新しい考え方が必要となっている。

本論文で提案する社会システムに着目した「事業の広義の捉え方」は、これからの社会インフラ整備のVE活用に大きく貢献できるものである。

現在の日本経済は厳しい環境下にあり、価値向上を目的とするVEの必要性が高まってきている。VEは広範囲な事業分野に普及しつつあり、VEに取り 組む企業やVEL取得者も増えてきているが、VEが使いこなされ定着化してきているかというと、そこまでには至っていないのが現状である。VEが誰にでも 実践できない理由として、VE実施手順の代替案作成段階におけるアイデア発想、欠点克服のアイデア発想での行き詰まりが挙げられる。この打開策として、ア イデア発想をサポートする効果的な手法を望む声も高まっている。

一方、TRIZは、250万件を超える特許分析により、問題解決の方向性、 アイデア発想の視点・観点等を体系化したもので、VEへの活用については、これまでも取り上げられてきているがVE実施手順にどのように活用するかについ てはまだ確立されていない。そこで、一般的な製品改善のVE実施手順のどの段階にどのようにTRIZを活用するかについて具体的方法と手順を提案する。活 用段階は代替案作成段階における「アイデア発想」と、「具体化における欠点克服」であり、「技術的矛盾の解決アプローチ」と「物理的矛盾の解決アプロー チ」を活用する。

本論文をVEにおけるアイデア発想のツールとして活用することにより、VE活性化の一助となれば幸いである。

顧客要求の複雑・多様化や製品のライフサイクルの短縮化が進んでいる今、機会損失を防ぎ、効率的に価値ある製品やサービスを市場に提供することが求 められる。そのため、製品開発プロセスの中心活動である開発・設計業務においては、従来にはない機能や構造を有した製品やサービスをより安価でより短納期 で創造していくことが必要になる。その実現を可能にするのが機能的アプローチであり、VEである。

一方、設計案に対して確実な機能の達成を 実現するためには、設計過程において設計案が有する潜在的な不具合因子を漏れなく抽出・克服し、技術性評価においてもその達成を漏れなく評価しなければな らない。そのためには活動メンバーの固有技術のみならず、組織内に蓄積されている過去の経験・知識を有効活用する必要がある。

本論文では、組織内に蓄積されている過去の不具合情報を、未然防止に役立てられるように設計知識として機能ベースで構造化して整理するモデルを提案するとともに、設計段階のVEにおける活用とその有効性を証明することを試みた。

コスト競争力の強い新製品をつくるためには、「原価企画活動を主体的に進める開発設計者だけでなく、この活動を支援し、開発設計者と共同推進する部門とり わけ原価企画を行う部門の強化が必要である。その役割は、対象製品に関連するメンバーを選定し、目標原価達成に向けた方向性を示し、確実に目標原価達成に 導くことである。すなわち、この部門が原価企画を効果的に支援し共同推進できる力(以下、原価企画支援力、略して原企支援力と呼ぶ)を持ち、個々の原価企 画対象製品に対して原企支援力が十分に発揮され目標原価達成に向けて効果的に活動ができていることが最も良い姿である。そこで本論文では、次の2点につい て述べる。第一は、原企支援力の評価基準を作成し、現在どの程度の支援力があるのかを把握する方法である。具体的には、原企支援力に対して評価対象を決 め、そこから評価項目を決定していき、評価方法を確立し、それに従って基準を作成する。そして、その基準に基づき評価指標(以下、原企力指標と呼ぶ)を作 成することである。第二は、原企力指標の向上施策を立案し実行することにより、個々の原価企画活動を高度のレベルで実施できるようにすることである。この 指標を自動車部品業界の原価企画活動に活用してその有効性を述べる。

VEリーダー(VEL)の資格を取得したものの、実務に活用できていない者が少なく

ない。そこで、本論文はVELの実践能力を向上するため、成人教育理論を活用した全員参画型のフォローアップ教育プログラムの構築方法を提案するものである。

成人教育理論では、成人を「社会生活を営む上で生じる課題・問題に対処するため学習する存在」と捉え、子どもの学習とは異なるアプローチでより効果的な学習支援ができると考える。

こ の理論を活用してVELの実践能力を向上するための教育プログラム構築手順を考案し、例として機能系統図作成の応用手法に関するフォローアップ教育プログ ラムを実施した。他の教育形態との比較、受講後のレポート・アンケートの結果、実務へのVE適用状況から教育効果を評価し、VELの実践能力を向上する教 育プログラムが構築できたことを確認した。

不具合事象の対策には、①不具合事象の把握、②要因解析、③改善策立案という原因追求型の問題解決プロセスがとられることが多い。いわゆるQC的問題解決プロセスである。

こ のプロセスの中心的な活動は、不具合の発生原因を想定し、それが真の原因かどうかを確認するという仮説・検証プロセスであり、この要因解析プロセスをいか に迅速かつ確実に実行できるかがポイントになる。つまり、設計時に気づかなかったような原因が仮説・検証されてこそ効果的な改善案の立案ができるわけであ り、そのためにはメンバーの思考を変革する必要がある。

一方、組織としての設計力を継続的に向上させていくためには、発生した不具合事象や その発生メカニズムの論理構造、およびその具体的対策方法などを設計知識として組織内に蓄積し、今後の設計やクレーム対策に役立てられるよう伝承していく 必要がある。いわゆる技術蓄積・技術伝承である。効果的に技術を伝承していくには、やみくもに情報を残せばいいというものではなく、再利用性に優れた形で 体系的に蓄積していく必要がある。

そこで本論文では、機能面からの視座を加えることによる原因追求の多観点化と、機能系統図上に整理された設計知識の再利用性に着目し、不具合対策プロセスに機能本位の思考を取り入れることで、

① 具体化過程で発生した不具合事象の迅速かつ確実な改善案立案

② 不具合知識の機能系統図上への蓄積

を実現する不具合対策プロセスを提案する。

顧客の要求する製品を生み出すためには、その製品に求められる機能、品質を達成するために基本となる固有技術と、価格、納期などの管理技術を併せた 総合技術力が不可欠であることは言うまでもない。しかしながら昨今の企業環境をみると、団塊世代(ベテラン)が去り、急激な増産対応へ新人投入するも教育 不足がたたるなど技術レベルの低下による品質の維持・向上が難しい状況に陥っているのが実態である。

本論文ではその対応策として、専門の知 識を持つ技術者のプロジェクト活動によって、対象とする製品の果たすべき機能、機能分野、その制約条件を明らかにし、それらの達成手段である構成要素(機 構・部品)を関連付け、さらに技術性の評価との対応関係を把握できる機能デザインマトリックス法を提案する。

機能デザインマトリックスは、 製品の広義の機能と、製品の構成要素、製品の技術性の評価の関連をデザインした機能的研究であり、製品に関する固有技術情報の集大成である。これを活用す ることで、競争力のある製品設計、固有技術の確実な伝承、新たなVE活動への貢献、設計・製造変更での検証漏れ防止など、製品品質の維持・向上に貢献する ことを示した。

建築工事のVE検討においては、実施設計図をVE検討の対象とするのが一般的である。しかし実施設計図だけでは発注者ニーズを的確に把握できないために、充分なVE検討成果を得られないことがしばしばあった。

今回は施工者の立場で、シナリオライティング法と機能系統図を用いて潜在的な発注者ニーズを把握する方法を考案した。

さらに、把握した発注者ニーズに基づいて、効果的なVE検討を行う方法と、機能系統図を利用してVE提案内容を効果的に発注者へ説明する方法を考案したので紹介する。

収益が見込めるコストで、市場にタイミングよく、安定した品質のソフトウェアを提供するには、安定した開発プロセスの確立と、継続的なプロセスの改 善が欠かせない。その改善のアプローチとして、ソフトウェア業界のなかで広く導入されてきたのが、CMM/CMMIに代表される「能力成熟度モデル」を ベースとした改善アプローチである。

能力熟成度モデルをベースとした改善アプローチは、成功したプロジェクトが備えるプロセスをモデル化し、モデルとのギャップを埋めることで、プロセスの改善を図ろうとする方法である。この方法は広く受け入れられ、効果を上げてきた。

しかし、この能力成熟度モデルによるアプローチは、「コストと時間がかかりすぎる」「現場の主体的な取り組みになりにくい」「手段の目的化」などの課題が挙げられている。

そこで本論では、プロセス改善に機能的研究法を持ち込み、機能の視点に立ったプロセス改善のアプローチと技法について提案するものである。

競合他社品が多い成熟製品の改良開発VEにおいて、機能別コスト目標となる機能評価値の決定は、製品の企画に直結する重要な事項であり、戦略的な意思決定が必要とされる。しかし、製品の置かれた外部環境と内部要因を多面的に分析して適切な機能評価値を決定することは、製品改善VEで使用されているところの、顧客・競合他社・自社の3つの観点を単独で評価する従来の機能の評価法では困難であった。
そこで本論文では、顧客が要求する機能、競合他社品が持つ機能、自社開発品に想定する機能の3つについて、従来の評価法にAHP法、機能にもとづくテアダウン、TRIZワンパラメータメソッドを組み合せて評価し、SWOT分析の視点によってそれらを総合して機能評価値を決定する方法を提案するとともに、事例による有効性の検証結果を報告する。

国内市場の多くは成熟した、過当競争環境下にあり、正にレッドオーシャンの中に入っていると言われている。このレッドオーシャンから抜け出すには、自社の得意分野の技術力を生かし、圧倒的差別化商品を生み出し、それらをブルーオーシャン商品(2.1で解説)として育て上げる必要がある。
しかし、ブルーオーシャン商品のシナリオは簡単に生まれるものではなく、生み出す手法も必要になると考え、お客様の要求する機能から価値を創造するバリューエンジニアリング(以降、VEと呼ぶ)手法と「ハーバードビジネススクール」で開発され、企業・組織・個人の分析に活用されているSWOT分析を融合した、アイデアの具体化技法を開発した。

製造業においては、開発期間の短縮のために、営業・品質保証部門や調達先などを含めたコンカレントエンジニアリング等を取り入れている。さらに開発期間を短縮するための対応策の一手法として、機能を元にしたアイデア発想に、製造技術者と設計者が、製造技術注1)・技能を理解・共有・融合注2)し、製造VEの視点からのアイデア発想注3)を加えて、価値の高いアイデアに具体化していくことが考えられる。このことにより、設計の手戻りが少ないだけでなく、製造法の検討と開発が同時に進行できるため開発期間が短縮できる。
本論文では、製造を理解するための「5つのフレーム」と、製造技術を織り込むために、これまでの製造VEのアイデアを調査・分析して、アイデア発想の視点を抽出して整理した「69項目のチェックリスト」を活用することで、機能を元に発想したアイデアを、短時間で、技術性・経済性の高いアイデアの具体化に活かすことができる手法について、提案する。

日本の経済成長の背景には、製造業の発展が大きく関係している。その発展にVEの存在は欠かせないものである。戦後復興に大きな役割を果してきたとも言える。一方で、製造業以外の一般企業では、VEの考え方を企業経営に導入して発展をしている企業はあまり多くない。むしろほとんど見当らないのが残念である。

VEの最大の特徴は、機能的研究法、すなわちファンクショナル・アプローチにある。その考え方は、企業経営を助ける優れた考え方である。多くの企業が行っている現行の経営に直ぐに導入できる程、汎用性が高いものである。例として、SWOT分析、3C分析、4P理論、ブルーオーシャン戦略、パーキンソンの法則、ピーターの法則を挙げる。

そして、企業経営に必要な4つ(経営、営業、管理、改善)のシステムを提案し、そのそれぞれにファンクショナル・アプローチを組み込んでいくことで、これからの時代を生き残る企業としての経営上の示唆を与える。

最近の円高の進行、新興国の台頭により日本の製造業は、加工付加価値型の製品(高度な加工によって価値が高められている製品)を安く製造することが必要になってきている。加工付加価値型の製品における製造改善のVEでは、発想された加工条件変更のアイデアに基づきその組合せの技術性と経済性を詳細評価する段階において、加工条件変更のアイデアが多くなればなるほど、提案されたアイデアの条件すべての組合せにおける技術性と経済性を短時間で評価することが難しくなる。

そこで、製造改善のVEにおける詳細評価段階において、提案された多くのアイデアの組合せの効果をできるだけ確実にかつ短期間で評価する手法を適用することが必要となってきている。

そこで筆者は本論文にて、多くの条件(因子)の組合せを最小の実験回数による検証で定量的に評価できるタグチメソッド(Taguchi Method)を詳細評価段階で適用する方法を提案する。

本論文では、過去に実践した製造VEで提案されたアイデアのうち条件(因子)が多いものについてタグチメソッドを適用し、従来は数週間の試験によって求められる最適な組合せを6時間の試験で求めることができた事例を紹介し、タグチメソッドを織り込んだ詳細評価段階のあるべき姿を提案する。

「機能の定義」では、適切に機能表現を行うことで、「アイデア発想」においてより思考を広げ抜本的な発想ができると言われている。本論文では、機能定義用語のうち動詞に対してアイデアの出しやすさを示す指標(定量値)を計算言語学の応用によって求め、「機能の定義」に不慣れであってもアイデアの出しやすい動詞選択を可能とする方法論を検討する。動詞が「思考を広げる」のは、①その動詞が様々な場面で用いられるからである。②コーパス注)の用例数が多いものが動詞の使用場面数を数量化したものである。①、②から「コーパス用例数が多い動詞がアイデアの出しやすい動詞」であると仮説を立てた。これを検証する調査を行ったところ、動詞のコーパス用例数とその動詞から得たアイデア数には相関が見られなかった。しかし、その一方で、アイデアを出しやすいと感じる動詞の順位を質問したアンケートでは、動詞間でその印象に有意差が見られ、「機能の定義」で用いる動詞選択が「アイデア発想」で得られるアイデア数に一定の影響を及ぼす可能性があることを示唆する結果が得られた。今後は、「今回の実証実験&アンケートの結果」を総合的に吟味し、機能の定義の機能表現とアイデア数向上の関連性をより客観的に分析し、アイデア発想に役立つ科学的な動詞選択ツールの開発研究を継続するつもりである。

近年、公共事業や輸送サービス事業、建設業、自動車産業、電機産業など、ありとあらゆる事業、分野でVEが盛んである。特にここ数年における産業別のVEリーダー取得比率は電機産業を含む製造業が50%以上を占めておりVE活動の活性化がうかがえる。

 電機産業を含む製造業でのVE導入時期は、主として比較的実施し易い機構部品をVE対象テーマに選定してVE活動の実践と定着化を進めている。

しかしながら、VE活動がある程度定着化し、拡大、活性化を進めていく上では、製品やシステム全体をVE対象テーマに選定し、特に電子回路へのVE適用は必須である。

 そこで、本論文では、機能に着目したテアダウン手法の電子回路VEへの適用例を示し、有効性を明らかにするものである。

建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、検討時間の制約があることとVE検討メンバーの意識高揚を促す方法が未確立のために、大胆なアイデア発想の転換ができず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合が散見されている。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、発想の転換が図れるアイデア発想方法の開発が必要となってくる。

ここでは、施工法に関する問題点の反転置換機能を改善着眼点・目標に設定し、それら

を強制的に組み合わせてアイデア発想する新しい方法を提案する。この発想方法を試行したところ、施工フローを入れ替えるという今までにないアイデアが発想されて、大幅な省力化と工期短縮が図れたことで、高い効果が期待できるアイデア発想方法であると確信している。

公共事業に設計VEが導入されてから既に10年以上が経過しているが、社会的な変化に伴って一つの転換期が訪れている。事業の直接的な影響圏となる狭い範囲で評価するのではなく、社会環境を取り込んだ広い範囲を評価対象とすることで、真の社会価値を向上する必要がある。

公共事業の効用の評価に関して、それを提供する側とそれを享受する側の評価には、少なからず評価の相違が発生している。その原因は、公共事業を提供する側が考える達成すべき機能の捉え方が限定的であることが原因となっている。

この問題を解消するための方法は、事業評価項目を転換することであり、対象地域の使用者要求機能を基本とした評価項目を設定する必要がある。事業の恩恵や影響を受ける使用者を多面的に把握した上で、「相互関係型」によって必要な機能を抽出することを提案する。

また、使用者の要求機能を抽出する方法にも、特長の異なる複数の方法を用意し、対象事業の特性に応じて使い分けることが必要である。本論文では、感性アンケート方式、問題点反転方式、地図による機能抽出方式、の3方式を提案する。いずれもまだ適用事例が少ないことから、今後、適用対象を拡大して機能抽出方法として確立する必要がある。

企業の商品戦略を有利に展開するためには,中・長期的視野に立った正しいVE目標の設定が不可欠である。

コストに関するVE目標の設定法については,過去に報告済みであるが,ここでは更にこの考え方を拡大し,競争の激しいすべての製品に適用するために,機能とコストすなわち価値の側面から,VE目標の設定法を検討した。本研究は,まず価値の低減に関する考察から,価値低減曲線の経験式を確立した。更にこの式から目標価値指数の設定式を導きだし,これらの式の妥当性を具体的事例によって検証した。

公共事業に対する国民の批判や不信感は、相変わらず根強い。この原因として、地域の人々のニーズを十分にくみ取ることができないことや、計画策定手順が不透明になりやすいことなどがあげられる。

そこで「県民が何を必要としているのか」「使用者が求めているのは何か」を把握し、「公共事業が見えるようにする」ため、計画の早い段階から住民の意見を聞きながら計画を策定する県民参画が、公共事業の現場で、導入されている。

一方、国や地方公共団体で、公共事業の設計段階におけるVE(以下「設計VE」という)が導入されている。設計VEの導入目的は、地域のニーズに応じた設計、使用者の立場に立った設計など、公共事業をよりやすく、より価値の高いものとして提供していくことにある。

本論文は、「機能」という言葉で、「県民参画」と「設計VE」を結びつけ、地域住民が求めていることを事業の設計に反映する手法を紹介する。

最近各企業では収益性の向上と競争優位性を確保するため、製品の価値創造と平行してサプライチェーンの競争力強化が進められ始めており、今後、VEを用いてサプライチェーンの価値創造が活発に進められるはずである。そこで本論文は、サプライチェーンの価値向上を図るVEを効果的に実施するためのアイデア評価方法を提案するものである。

従来は、サプライチェーンの価値向上のために発想した資金投入期間を短縮するアイデアについては、その効果を定量的に評価することができなかった。そのため、アイデアの具体化の段階で機能とコスト両面からの達成度を高めた代替案までに洗練化することがむずかしかった。そこで本論文では、発想したアイデアの資金投入期間減少効果を時間短縮として評価するのではなく、Jコストの考え方を用いることによりJコストの減少量に変換することで機能とコスト両面の評価を効果的に実施することを提案する。

製品企画、開発では、機能(名詞と動詞で表現する働き)と機能の制約条件(その達成水準と制約)を決めることが重要である。しかし、VE技法における品質概念が不明瞭なため品質設定がおろそかになる傾向がある。一方、品質検討を補うためQFD(品質機能展開)技法が活用されることもあるが、逆にこの技法は、機能を定義する手順が明確にされず機能の達成水準のみを追求する嫌いがある。さらに、現状は、機能からの製品検討をVE活動、達成水準からの製品検討を品質活動と活動を2極化する傾向があり、製品開発上の統一性を欠く大きな問題もある。この状況を解決するには、VEにおける「品質とは何か?」を機能定義技法の原点に立ち考察し、明確にすると共に機能と品質を一貫して追求する技法が必要と考える。本論文は、機能の制約条件を簡単明瞭に設定する強化策として機能に対する品質を明確にした品質的なアプローチを取り入れた技法を提案する。具体的には、顧客、使用者の要求事項をインプットに基本機能とその目的別達成度を設定し、新機能系統図表法を用いながら機能的かつ品質的に魅力ある製品企画を決めていく。本論文は、機能と品質を一貫して検討する足がかりとして機能定義の範囲に言及して述べるが、製品企画立案時においても十分使用可能で貢献できるものと考える。

人口減少時代への突入、少子高齢化の進展、地域間競争の激化など社会情勢が大きく変化しているなかで、道路、河川、都市計画等の社会資本整備のあり方が問われている。

そのような状況のなか、2009年9月には「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズに、民主党政権が誕生し、公共事業予算も大幅に削減された。

国や地方公共団体では、公共事業の設計段階におけるVE(以下「設計VE」という)が導入されているが、効率的な社会資本整備を行うためには、改善効果が大きく、設計段階よりも上流側にある、企画段階、開発設計段階でのVE手法の導入が必要である。

本論文では、公共事業の企画段階、開発設計段階に相当する、社会資本整備(公共事業)を実施していく上での指針である「社会資本整備基本計画」の策定にVE手法を適用することの効果と、その手法について紹介する。

VEは一般的にコストダウンの手法だと誤った理解をされている一面がある。そのため、コストダウンした部品で不具合が発生すると「VEのやり過ぎが不具合を引き起こした」などと言われる。VEを推進する立場として、こういった誤解や偏見を払拭するためにも、自分が関わったVE事例や指導したチームのVE事例では絶対に不具合を発生させたくないと考える。

技術的な不安を残さず代替案へ移行させるためには、「具体化」のステップで欠点を漏れなく克服する必要があるが、欠点を全て把握することは困難である。そこで、VE事例の心配点、懸念点を漏れなく洗い出し克服するために、未然防止のための問題発見手法の1プロセスであるDRBFM(Design Review Based on Failure Mode)を活用したVE実施手順について検討を行った。

本VE実施手順では複数回実施するデザインレビュを通じて、VEチームメンバ以外の社内有識者や経験のある諸先輩方、チームメンバの上司達を検討中のVEに巻き込むことで、全員が当事者であると認識してもらい、代替案の実現化まで様々なサポートを得やすくすることと、VEを正しく理解してもらうことを副次的な狙いとしている。

本研究は、原価企画の支援業務を改善するために、VEの5原則から原価企画の支援業務に対する受援者側の視点と切り口を決め、改善に必要な機能を抽出する方法を提案し、その有効性を明らかにするものである。要旨の第一は、原価企画の支援業務に対する改善視点の重要性を明確に述べた。第二は、この受援者の視点と切り口を三つのマトリックスにまとめ、機能抽出する方法を提案した。その受援者の視点は、支援者本人の立場と支援業務を評価する立場である。改善の切り口は三つである。一つには、順機能からの機能抽出、二つには、逆機能・実際認識からの機能抽出、三つには、要望からの機能抽出である。最後に、これらが原価企画の支援業務の改善に効果的であることを明らかにする。

経営者やプロジェクトリーダーの多くは、限られたリソースをどのように配分し、全体の価値を最大にすることを常に考えている。筆者は、限られたリソースの配分を最適化し、価値を最大にするテクニックを開発した。

VEは、問題解決に優れた方法論である。それを、経営やプロジェクト全体に適用するためには、複数の問題解決を同時にマネジメントする必要がある。全体の価値は、個々の価値の総和ではなく、リソースの総和と機能の達成度の総和の比であるということを、図で表すことができた。その図が価値管理曲線(Value Management Curve)である。

価値管理曲線を身に着けることで、企業やプロジェクトの特徴を分析することができると同時に、多くの経営企画や事業企画の一助となるものである。

昨今の製品開発には、性能や機能のみならず、製品のコスト低減が重要となっていることは、どの企業でも同様である。海外メーカーや海外生産製品の均質化により、企業が生き残るために、コストは製品開発の中でも非常に重要なファクターとなっている。

それ故、必要な機能を満足し、必要な利益を上げるために、製品開発に原価企画を導入している企業が多い。

さらに、製品については、ユーザーニーズの変化や多様化により、多くの製品ラインナップを揃え、さらに、各々の機種に多岐にわたるバリエーションが必要となっており、多品種少量化への対応が余儀なくされている。

製品の種類が増加すれば、それだけの部品が新たに発生する要因となる。当然、部品点数増大がもたらす弊害が懸念され、部品の増大を防ぐため、共通化は製品開発を行う上で必須項目となる。

本論文では、製品ラインナップを構成するシリーズ製品群の開発に、原価企画活動を適用する際の「シリーズ製品共通化計画」の立案方法について考察する。

外部調達品のVEによる改善は、設計情報やコスト情報を購入側では把握しきれていないため情報不足により、購入側にとっては不要な部品の削減や部品の形状・仕様変更、等による改善の推進が困難な場合が多い。そのため供給メーカーの協力がないと、そのようなVE的な改善が進まないのが現状である。

そこで本論文では、コスト解析というプロセスを通じて、購入側にて対象品の機能・コスト面での理解を深め、その結果から外部調達品のVE思想を活用した改善を促進させ、外部調達品のコスト低減、価値向上につなげる手法とその適用例を示し、有効性を明らかにするものである。

第40回VE全国大会(2007年開催)において、「VE実践力向上のための人材育成プログラム」と題したVE研究論文を発表した。この中で、VE実践力の向上を図る方法として、実課題の解決を通じた人材育成プログラムを紹介した。この育成プログラムの基本的なカリキュラムや適用事例は既に示したとおりであるが、その課題解決力・VE実践力育成の主要な要素は次の4つであると考えられる。①必要な知識の習得、②習得した知識を基に考えさせる、③VE活動の実施、④VE活動における問題点の指摘。

本論文では、これら4つの要素について、育成対象者のVE活動を実施する実践力や対象とする課題に合わせて、どのように指導すべきかなど、より具体的な対処方法に踏み込んで考察を加えると共に、実施結果からの知見も紹介する。

本人材育成プログラムの考え方を適用して、部長クラスのプロジェクト・リーダーをVE活動の効率的な進め方(プロセス)を設定でき、部下への効率的なVE活動の進め方の指導のできる人材を育成することで、部門全体のVE実践力の向上に繋がっている。

製品の外観を良くするためには、魅力機能として取り扱い、顧客要求や顧客満足度を指標に計画が進められる。一方、土木事業で扱う景観には、建造物の外観だけではなく、すでにそこに存在する自然や他の建築物の外観が含まれている。景観検討では、周辺環境との調和や強調といった概念が必要となる。

我が国では2004年に景観法(景観緑三法)が制定され、良好な景観の形成を促進するための仕組みづくりが進められてきた。しかし、具体的なアプローチ方法までは示されておらず、景観検討には担当者の感性やデザイナーの美的センスに頼らざるを得ないのが現状である。当初のイメージを具体的な形とし良い景観を創出するまでには、関係者の努力と多くの時間が投入される。

筆者は、景観検討の精度向上と効率化を目的に景観検討の手順にVEを取り入れた検討を行い、具体例によりその効果を検証した。本稿では、その手順、考え方、手法について具体例とともに示す。そして、景観検討へのVE適用の効果を明らかにするとともに、今後VEを用いた景観検討の方向性を示すものである。

公共事業における設計段階は長期間にわたるうえ、意志決定のプロセスが複雑であり、製造分野でのVEをそのまま適用することが困難とされてきた。また、VE対象が単品生産であり個別性が強いことから、VEを公共事業へ適用するには、個別の対象テーマに応じて検討の方法をその都度工夫することが必要とされてきた。

同一の対象テーマであっても適用の目的や適用段階が変われば、実施手順の各ステップにおける検討の方法やテクニックも柔軟に変える必要がある。しかし、多種多様な事業がある公共事業において、適切に検討の方法を選択することは容易ではない。

本稿では、検討方法の選択を容易にし、設計VEによる効果を高めることを目的に、検討の方法について定型化を提唱するものである。本文中では、この定型化した検討の方法を、スタイルと表現している。

現在、公共事業では設計VEは事業の進捗段階や事業種別に応じて分類されている。

本稿では、定型化の観点から、対象事業を改善するレベルや改善の方向性に応じて分類することが適切と考え、この考え方に基づく5つの基本スタイルを提唱する。また、改善の方向性の概念として、3つの方向性について説明する。

最後に、特に適用方法に工夫が必要となるデザイン・レビュー型、開発設計型について事例と共に留意点を詳述する。

なお、本稿では、公共事業における設計VEについて取り扱っている。よって本文で扱う設計VEとは、公共事業における設計段階に適用するVEである。

公共事業では、計画、設計の段階で事業費を算出する。そして、その事業費をもとに事業が管理される。事業の凍結や停止も、この事業費を利用している。

しかし、設計の時点で算出した事業費が、最後まで変わらないことはほとんどない。なぜ、毎回事業費の修正をしなければならないのか。その理由は、「事業費はたった1つしかない」という幻想を信じているからである。本来、まだ起こっていない未来の費用を、完璧に見積もることは不可能である。

そこで、重要なのがリスクの概念である。リスクを設計に盛り込み、より最適な改善案を引き出すための新たな手法「コスト・リスク・マネジメント」を提案する。

100年に一度と言われる世界的な大不況が企業の業績を大幅に悪化させている。各企業は生き残りをかけて企業体質を強化し業績を向上させて、この激変する外部環境に対応しなければならない。このような外部環境激変の環境下にあって、企業が業績の向上を図るためには企業内の諸活動を活性化させなくてはならない。また、この諸活動の成果を的確に測定し評価することが大変重要な課題となっている。

バランス・スコアカード(以下、BSCという)は、財務、顧客、業務プロセスおよび学習と成長の4つの視点から組織の戦略目標とこれを実現するための具体的なアクションを識別して構築できる経営ツールとして活用されている。

しかし、BSC活用面の課題として、「単なる業績評価指標の寄せ集めでしかない」や「業績評価指標の設定が容易でない」などの項目が挙げられている。

そこで本論文は、機能的研究法をBSCにおける業績評価指標の設定に活用する方法を提案するものである。

顧客ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短期間化に対応するため、製造業各社の開発製品数は急増し、製品開発プロジェクト価値をいかに向上させるかが重要な課題となっている。そこで、多数の開発プロジェクトにおいて、プロジェクト価値向上のためにバリューマネジメントをいかに行っていくか、またいかに組織展開していくかについて提言する。VE技法とプロジェクトマネジメント技法とを融合させた新たなバリューマネジメント技法について述べる。

管理技術は固有技術をサポートする技術である。近年、固有技術は異分野や新分野間の技術融合が進みつつあり、積極的な新分野の研究推進が必要となっている。これに応じて管理技術も変革を迫られることになると考えられる。こうした現象から、今後のVEが必要としているもののーつとして、新たなVE技法の開発あるいは他の管理技術との技術融合等がある。この問題を解決するために、本論文ではVEとは別の方法論であるTRIZをVEの中で有効活用し、両手法の長所を生かした新たな手法を提案し未来に備えたい。本論文は、VEの基本思考は変化させずに実施手順の詳細ステップにTRIZの概念を導入し、VEが次世代を目指した新しい手法として活用できるように試行したものである。

製品多様化と部品少数化の二律背反を克服するために、次の10の活動ステップからなるモジュラー・デザイン方法論を開発した。

(i)製品システム構成確立、(ii)モジュール数およびその使い方確立、(iii)目標設定・実行計画策定、(iv)製品ミックス整備、(v)設計・製造連携VE、(vi)生産構造要件書運用、(vii)設計のモジュール化、(viii)編集開発、(ix)MD効果の実現、(x)MD視点、デザイン・レビュー

また、製品のモジュール化を阻害する要因を解明し、それにもとづいて製品のモジュラー型/擦り合わせ型を判別するモジュール化難易度指数の算出法と製品をモジュール化しやすくする7つの技術方策を提示した。

公共事業は、経済活動と国民生活を支える社会的使命を担っている。しかし、限られた財源と長い事業期間は、大きな課題となっている。コストを削減する技術は多くが提案されてきたが、整備を早める技術があまり提案されていない。

そこで、公共事業の整備に関わる各段階において、それぞれに実践的対策法を提案する。すなわち、合意形成を早める実践的対策法、工期を評価する実践的対策法、機能発現を早める実践的対策法である。

合意形成を早める実践的対策法では、3つの共同VEの提案を行っている。工期を評価する実践的対策法では、コストと工期を同時に評価できる多指標評価法の活用を提案している。そして、機能発現を早める実践的対策法では、段階整備の考え方と各段階における価値分析を判断するプロセスコントロール図法を提案している。

これらのテクニックが全ての公共事業に活用され、国民、県民の満足度の高い社会資本が適切なタイミングで提供されていくことを願っている。

VE活動において抜本的なアイデアを得るためには、VEを専門的に実施する専門家よりも、実務を一定期間経験し業務に精通した者がVEを正しく理解し活用した方が効果的である。弊社でも、各部門がVE活動を自立的に実施できるVE活動の成熟期に向けて、VE教育を行うとともに、VE活動の指導や自立に向けた働きかけを継続しているが、自ら自立的に適切なVE活動を実施できる人材が増えていない。

そこで、本論文ではVE活動を自らの実践力で自立的に実施できる人材を育成するプログラムを提案するものである。これにより、VEの技術を駆使して課題を解決し企業の利益創出に貢献できる人材を育成し、その人が次の世代を育成して自立させることで、企業体質を改善することが狙いである。

本育成プログラムの適用により育成対象者のVE活動の実践力は着実に向上しており、期待される効果は得られたものと考える。

個々の事業の改善から、公共経営としての取り組みの必要性が問われている。

特に、設計VEの効果が実証されている昨今に置いては、さらに進めたVM(バリュー・マネジメント)としての導入と運営が不可欠であると考える。事業をVEにより改善する時代から、社会基盤をVMによりマネジメントする時代へと移ることが大切である。

VMに必要な要素は、筆者の複数のVM導入の実績から、4つに集約された。つまり、この4つの要素さえ整えれば、VMの導入をはじめることができる。そして、そのバランスを常に保つことが、失速しない秘訣である。

さらに、VEの効果を最大限に引き出すテクニックについて、ファンクショナル・アプローチ、VEインセンティブ、ファシリテーション・スキルアップの3つを取り上げ、原点に立ち返った考え方や具体的な内容を紹介する。

土木事業へのVE導入は展開する時期にかかろうとしている。VE導入の基本であるVEの基礎つくりも年々発注者をはじめ各階層で普及されつつあると思われる。

しかし、複雑な構図を持っている土木事業は、もっと明確的なスタンスで取り組まないとVEの定着・普及が難しいことは否めない事実である。これらの特徴を汲み上げながら土木事業にVEを植えつけるには事業にマッチしたVE活用法が求められていると思われる。

本論文はまず土木事業のVE展開の基礎つくりを論ずる。つぎは土木事業のVE活用の課題を抽出する。そのつぎはVE活用課題の解決策を考察し、提案する。

本論文では、筆者が公共機関における設計VEチームリーダーとして直接関与したVEワークショップでの活動実績を踏まえ、公共VE成果をあげるためにチームリーダーが果すべき役割と課題を明らかにし、今後のリーダー育成についての方法を提起するものである。その背景事情には、政府、地方自治体では財政面での逼迫を受けて、公共事業のコスト縮減施策や価値向上対策の一環としてVEへの取り組みが活発な動きをみせているからである。公共VEは事業予算の有効活用と納税者、利用者に満足感を与える画期的な手法であるが、個別プロジェクトでVE成果を生み出すにはキーマンとなるチームリーダーの存在が鍵を握る。

近年の建設業における利益管理は、一般製造業で行われている原価企画の考え方を参考に大きく変化し、それに伴い企画から施工までの各段階でVE活動を中心とした利益創出活動が活発に行われるようになった。この利益管理を適切に行うには、利益創出活動の各段階を通じてVEデータ管理を効果的に行い、その有効利用を図る必要がある。また同時に、VE活動は主に受注前に重点が置かれるようになり、受注前のVEデータ管理の重要性が以前にも増して高くなってきた。

そこで、本稿では受注前の利益創出活動の計画、実施、統制の各段階で利用するツールにより、利益管理の基盤となるVEデータの管理を一元化した利益管理を適正化する方法を提案する。

VEの実務において、従来よりもVE活動の時間は減少しているにもかかわらず以前より良いアイデアの発想を要求され、また、VE資格は取得したものの実務に活用できない者が少なくないという現象が見られる。こうした現象から、現在のVE活動が必要としているものとして、VE実務の短縮化と新たなアイデア発想技法の開発およびVE技法の簡素化等が考えられる。この問題を解決するために、本論文ではVEとは別の方法論であるTRIZをVEの中に組み入れ、両手法の長所を生かした新たな手法を提案し現状打開の一助としたい。

本論文は、従来のVEにおいて効果的な解決が難しい部分にTRIZの概念を導入し、VEが次世代を目指した新しい手法として位置付けられるように模索したものである。

鉄道はさまざまな要素技術から構成される労働集約産業であり、相互に綿密に関連し合う要素技術を分解すると、さまざまな業態の集合体といえる。これらの各分野に「いかにVEを適用するか」「どのように活性化するか」について検討・実践してきた結果、鉄道業に適したVEを展開し、成果も毎年創出するに至った。

そこで、VE展開方法を他業種(製造業など)と比較検討し、輸送サービス業におけるVEの考え方とVE展開の特徴を述べる。

政府、地方自治体では財政面での逼迫を受けて、公共事業のコスト縮減施策や価値向上対策の一環としてVEの取り組みが活発な動きをみせている。公共VEは事業予算の有効活用と納税者、利用者に満足感を与える画期的な手法であるが、成果を生み出すためには運営体制の確実な整備と個別プロジェクト単位での推進マネジメントが重要な鍵となる。本論文では、地方自治体でのVE導入と個別プロジェクトの本格的なVEワークショップでの活動実績を踏まえ、公共VEが成果をあげるための課題を明らかにし、その解決策を示す。

土木事業への導入はまだ模索の時期と言っても過言ではないと思われる。VE導入の基本であるVE教育は課題が残ったまま推進している状態になっていると考えられる。

土木事業の構図は他業界より複雑であり、事業内容も不明確な点が多く潜んでいることは否めない事実である。これらの特徴を汲み上げながら土木事業にVEを植えつけるには事業にマッチしたVE教育が求められていると思われる。

本論文は土木分野のVE教育について事業者教育を中心に言及し、過去7年間にVE教育を受けた土木事業関係者の反応を分析する。さらに土木分野の各階層のVEに対する認識をもとに土木事業におけるVE教育について考察する。

社内のWSSにおいて約100チームが発想したアイデアを分析することで、機能表現の抽象化との関連性や有効性の確認をおこなった。取上げたテーマは「外部排水溝工事」で、機能表現としては「水を流す」とそれを抽象化した表現の「水を処理する」から、発想されたアイデアを比較検討してみた。その結果、ユニークなアイデアの出現率やアイデアの着眼点およびアイデア発想数などで顕著な差異が認められたため、建設のVE検討においても機能表現を抽象化することがアイデアの拡大に寄与することが判明した。

これまで公共事業では、社会経済の高度成長期にあって、整備目標に向かって求められる施設を早く大量に作ることが求められてきた。そして高度成長期が終わり、多くの公共施設が整備された今、求められているものは「良い公共施設から得られる良いサービスの維持」である。また、豊かになった社会は多様なニーズを生み、公共施設には新しい価値が求められている。

このような価値観の変化に柔軟に対応しサービスを維持しつづけるために、公共事業ではこれまでの施設の維持管理システムを見直し、新たな施設の維持管理システムを構築することが緊喫の課題となっている。

本稿は、公共施設の維持管理システムを構築するうえでVEを適用することが有効であることを明らかにするものである。そして、システムを構築するうえで重要な視点となる「整備水準の設定」「VEを適用した資産価値の評価」「ワークショップによる維持管理システムの構築手法」について示し、これらにVEを適用することにより得られる効果について具体的に述べる。

戦略としてVE活動を行おうとする場合、経験豊富なVEL資格取得者がおり推進体制があるにも関わらず、最適にVE活動が行われない場合が見受けられる。この事象は戦略を実行に移すための仕組みであるマネジメントコントロールシステムの不備が原因であると考えられる。

組織が求めている適切なVE活動が行われている状態をE=1、VE活動を行うために必要な資格や経験などの能力と体制がある状態をC=1、VE活動メンバーや関係者にとって、VE活動を自ら進んで行いたいと思う状態をW=1、VE活動を行わねばならない状態をS=1として、それぞれの状態の関係をE=C∩(W∪S)とする。この式を事例に当てはめ、マネジメントコントロールシステムの視点からVE活動の阻害要因を分析し、対処法を検討した。このような、マネジメントコントロールシステムを活用した効果的なVE管理をVEコントローラーシップと呼ぶことにし、本論文ではE=C∩(W∪S)のうち、S=1を作り出すことで効果的にE=1とするVE管理について一般化することを試みた。

製品の機能を損なわずにその製造コストを低減すれば製品価値は向上する。あるいは製造コストを上昇させずに機能を上げることができれば同様に価値が向上する。このような製品の価値を向上させるために新規製品の設計・製造を検討したり、既存の製品の見直しを行うVE活動において、通常は製品が設計・製造され実際に販売され収益を上げることができれば一応の活動終了となる。しかしながら消費される製品は別として、ある程度の期間使用される製品は、物理的には減少することは少ないが、故障・劣化するなどしてその製品の持つ機能が低下もしくは欠落して使用価値が減少するものが多い。この価値低下を防ぐこともVE活動として捉えていく必要がある。

特に製品がまた次の製品を生み出すもの、つまり生産設備のようなものは、購入当初の価値もさることながら、長期間使用されるものゆえ、その価値の維持が非常に大切である。それが生み出す製品の価値をも下げてしまう危険性があるからである。そのため設備の機能の中には「各機能を低下させない機能」が含まれるべきであり、例えば劣化を防ぐ機能が盛り込まれた製品は、それがない製品よりも高い価値を持つと考える。そして製品が使用されている段階においても、機能を低下させない維持活動を管理することで価値は維持され、改良改善による性能向上は設備の価値を高めることにつながる。

従来のVEとして製品の機能を高めることで価値を向上させるという観点に加えて、製品の機能を維持することが結果的に製品の価値を向上させることにつながるというのが本論分の主張であり、主として生産設備を取り上げ、その価値の維持・向上のための管理方法について論じていく。

近年は、VEチーム活動を後戻りさせることなく長期的かつ確実に改善し続けるVEチーム活動のレベルアップ(以下単にVEチーム活動レベルアップと言う)が企業または経営上に必要となってきた。この背景には、人から人へVEノウハウを伝えることが多く、IT(Information Technology)などを単に活用するだけではVEチーム活動レベルアップの効果が低く長年VEを実施していても必ずしも活動がレベルアップできていない現状があった。そこで本論は、ナレッジマネジメント(Knowledge Management以下KMと言う)の基礎理論を活用した長期的かつ確実なVEチーム活動レベルアップを実施する手段として以下の特徴を有する具体策を提案する。

本論の最大の特徴は、KM活用による①VE実施手順を中心とした新しいワークスタイルを作り、②新たな知識・ノウハウを抽出・活用しVE実施手順各ステップの活動内容をVE適用対象や段階に応じて改善し続けることにある。具体策概要として、①コミュニティ性のある電子的に共有化されたVE実施手順を用意し、②この実施手順を起点にVEチーム活動を行う、③活動に効果的な新たな知識・ノウハウを抽出・活用し、④実施手順各ステップにおける活動内容の継続的改善を行う、ことを提案する。

本論文は、企画VEを一層充実させる方法を商品企画プロセスの先行研究と、アンケート調査結果の考察を通して論ずるものである。

商品企画に関する先行研究からは、商品企画プロセスとは不確実・多義性・複雑性に富んだ情報処理作業であり、この不確実・多義性・複雑性への対応が商品企画プロセスの高度化の1つの方向性であるとの結論を得た。

また、アンケートによる商品企画の実態調査結果から、優れた商品企画プロセスでは、商品ロードマップが活用されていることが明らかになり、商品企画プロセスにおける情報処理の1つの方法として商品ロードマップの活用という方向が得られた。

そこで、本論では、企画VEを充実させるための1つの方法として、商品ロードマップの活用を通じた企画VEの方法についての提案を行う。

日本における価値工学は、昭和30年代、40年代の「部品VE」「製品VE」に始まり、現在では「マーケティングVE」「マネジメントVE」など、調達、加工といった段階から発展・発達し、効果の高い上流段階へのVE適用へと歩んできた。

公共事業におけるVEも、その他業種同様に、上流段階であればあるほど効果が高いと考えられるが、実績の多くは下流段階に限られている。

より効果的に設計VEを定着させるためには、発注者との「認識の関」「文化の関」「感情の関」を取り除く努力が必要である。

本論文では、道路整備の中でも上流段階である道路概略設計を例において検証し、①発注者が持つ設計VEに対する誤解②設計VEシステム上の課題③評価手法の課題の3つの問題点を明らかにした上で、「設計VEシステム導入ガイドライン」「価値を基準とした地域間を越えた評価比較手法」等の提案を行った。

昨今の製造業においては、競争環境の激化が進展し、自社内の保有資源だけでは競合他社との差別化を生み出すことが困難であり、コアの資源以外については如何に外部資源を獲得・活用するか、が企業価値を革新するための重要なファクターになっている。

本論文では、製造業の企業が企業価値を向上させるための経営課題として新規事業開発や新商品開発を検討する際に、技術のもつ「機能」と「条件」に着目して、機能的な観点を応用活用することにより、自社のコア技術(自社優位性の源泉となる中核技術)を明確化し、新規事業・新商品開発のために必要な技術開発の方向性を設定する方法論について述べる。また、新規開発のために必要であるが、自社コア技術と領域が離れている技術、または自社開発が困難な技術について、如何に協業候補先の保有技術を分析し、自社の開発とのシナジーを創出し得る技術獲得を実現させるか、について、ここでも機能的な観点を応用しながら検討していくステップについて事例を織り交ぜながら、その有効性を示していくものである。

土木事業の設計VEは、事業全体の価値向上に対して有効であることは筆者が過去10年間の研究および実務を通じて徐々に証明してきた。しかし、事業は単品生産で分野も様々であるため、全面的に適用するにはかなりのハードルを越えなければならないと思われる。

本論文は土木事業の要である発注者が行うインハウス設計VEについてのマネジメント方法を実施例と交えながらコントロールポイントを論ずるものである。

第37回VE全国大会(平成16年開催)において、「納得と創造を引き出すVEファシリテーションの技術」と題したVE研究論文を発表した。この中で、VEチームリーダーを育成するステップは納得と創造の連鎖であり、それぞれに特徴のある手法として、会話例とともにVEファシリテーションの技術を紹介した。

本論文では、メンバーに対する「質問」を中心にその効果的な活用方法を整理し、理論的な背景に踏み込んだ考察を試みた。その結果、以下の理解に立った効果的な質問を行うことで、チームの生産性に大きな影響を与えることを認識するに至った。

●質問には、VE活動の局面に応じて、その問いかけ方や表現方法に特徴がある。

●目的達成に必要な論点に議論が集中するよう、質問を構築することが重要である。

●いかに効果的な質問を作り出すかが、VEファシリテーションの要である。

油圧ショベルやホイールローダ等汎用的な建設機械の多くは、顧客用途や使用環境への適合を考慮し、同じ機能の製品を複数のクラスに分けシリーズ化して販売している。成熟されたこれら市場では、各クラスにおいて非常に厳しい競合が繰り返され、同時に顧客も厳しい眼で製品価値の評価を行い、購入機の選定を行っている。

本論文では、建設機械の中心的位置づけにある油圧ショベルを取り上げ、顧客価値評価に基づいた適正な価格評価を行うことを目的に、価格の分析とその評価方法の検討を行った。同時に、検討内容に関し、モデルチェンジにおける価格設定への反映を試みた。

本研究では、VE活動メンバーの保有する評価能力を効果的に発揮できる代替案評価法(特に構想設計案レベル想定)について提案するものである。従来の代替案評価では、スコアリングモデル(特に5点評価法)の活用やメンバ一間の相談に基づく評価が多いようであるが、今回提案する代替案評価法は、最近VEでも注目されているAHP(Analytic Hierarchy Process)を改良した「記述型AHPモデル」になっている。

記述型AHPモデルとは、現実の人間の意思決定に近づけて、意思決定者自身の納得性を高めようとする「記述型モデル」を前提にしたAHPによる評価法のことである。この手法は、とくに少数ではあるが複数ある代替案の中から最適案を選択する際に、評価に至る構造の顕在化とその評価結果の修正によって、評価者自身の評価に対する納得性の向上を目指している点が最大の特徴である。なお、本論文では、一つの適用事例に基づいて提案手法の有効性について論じるつもりである。

公共事業は、利用者や事業工程など、一般の製品やサービスと異なる視点が存在している。公共事業へのVE適用が急増する近時において、その視点に沿った新しい価値の評価方法が必要となってきた。

そこで、新しい視点の整理をすると同時に、新しい評価方法を導くことを試みた。まず、公共事業を評価する上で必要な要素を、機能、コスト、時間、手間の4つを抽出した。そして提案する評価式は、これまでの機能とコストの2つの要素で表現されていた式から、機能、コスト、時間、手間の4つの要素で表現する式を導き出した。

この新しい式は、これからの公共事業の価値をより正確に評価するために活用できるものであると同時に、製品やサービスにも転用できるものと考える。

本格的なIT社会が到来し、スキミング被害やフィッシング詐欺に見られるようなIT絡みのリスクが増大している。このようなリスクは、以前には予想することすらできなかった内容である。このようにIT系のリスクは革新性が高く、過去の検証に基づく対策アプローチだけでは対応できない可能性が高い。

そこで本論文では、未来志向的なリスク管理アプローチとして、「逆転発想機能分析によるリスク管理手法」を提案するものである。具体的には、身の回りの設備や環境等を積極的に活用して、破壊工作者の思考で積極的に新手のリスクを発生させる方法を機能思考で創造し、その後にその結果を反転させることによって未来型リスクの予防に役立てようとする手法である。この手法の意図するところは、過去の発生の有無よりも、未来対応型でリスク対策案を検討するところに大きな特徴がある。したがって、本手法は未発生の新手のリスクに対処できる可能性が高いという点と、「リスク管理はリスクに対する認識力に依存する」という側面から「リスクに対する感受性感覚」を飛躍的に向上させる効果が期待できる。

土木事業は民間では採算の取れない社会資本を整備することが一貫した使命である。近年は、政府の財政難により様々な場面でコスト縮減が図られてきた。

コスト縮減手法としてBOT、CM、NPM、PFI、PPP、ISOなどを次から次へと土木事業関係者に取り組ませたが、本質的に効果が表われた場面は少ないと感じる。また、コストは縮減されたが品質、機能に問題が残った場面も多々ある。コストと機能を満足させるバリューエンジニアリングは上記の問題点を解決できると考えられる。

今まで国内では土木事業で整備された社会基盤が立派に日本の成長を支えてきたことは否定できない。しかし、新しい時代の社会基盤にはユーザーの要求に応えられる価値を持たせなければならない。1970年代から国内では様々な分野で価値専門家CVS(Certified Value Specialist)が価値向上を図ってきたが、その経験を活かせば十分に土木事業に新しい価値を付加できると考えられる。本論文では土木事業の特徴や課題を整理し、CVSが能力を発揮できる方法を論じ、土木事業の価値向上施策のきっかけを示す。

ここ数年、道路建設事業の業界においてもVEの流れが急速に押し寄せてきた。しかし、その目は価値の向上というよりも、直接的なコスト(道路建設費)の縮減に目が行きがちであることは否めない。もちろん、道路建設事業のエンドユーザーである国民がコスト縮減を求めていることは事実ではあるが、道路建設事業は直接的なコストだけで説明できるものではない。移動時間の短縮や環境面での改善効果など、さまざまな投資効果があることはよく知られている。

しかしながら、現状の道路建設事業におけるVEでは、コストの縮減効果に対する評価は行っているものの、本来、使用者にとって最も重要なこれらの投資効果について、適切に評価されているとは言いがたい。このため、筆者は、道路建設事業がもたらす投資効果に着目し、これらをできるだけ定量的に測定することによって、道路建設事業の投資効果を反映したVEのあり方について検討することとした。

中小企業でVEのコンサルテーションをスムースに導入するには、PRE-VE段階での課題発掘が鍵である。この「事前分析と準備」段階のVE手順は、あまり研究されていない。本研究は課題発掘と事前準備を軸としたPRE-VE段階の方法論である。その手順は、課題発掘のための願望把握、課題のコンセプトアウト、課題の精緻化、課題の実現構想、プロジェクト計画、課題を解決するための応用VE技法の選択と教育、解決に役立つ最適情報の提供およびコミュニケーションギャップを埋めるまでを六つのステップで構成している。この技法は多方面での試行錯誤を繰り返し、「PRE-VEデザイン法」として確立した。このデザイン法には、「コンセプトアウト法」「理想システム構造図」「SQ展開法」等のユニークなツールがシステム化されている。本技法は管理技法に不慣れな中小企業に適用して効果をあげており、VEの裾野を広げる方法論として活用されることを期待している。

日本の社会資本整備は、「標準多量型整備」から「個別吟味型整備」へ移ることが求められている。そのためには、「改善」という概念の導入が設計段階に必要となる。VEは、公共事業の改善に有効なツールである。しかし、その適用は、個々の業務で考えるのではなく、事業全体で考えなければ大きな効果が得られない。すなわち、バリュー・マネジメント(VM)である。

公共事業へVEを導入するためには、5つの制度と4つの環境をシステムとして整えなければならない。5つの制度とは、①人材育成のための教育制度、②効果的適用のための適用制度、③改善効果を上げるための実施制度、④品質を確保するための評価制度、⑤動機付けのための報酬制度である。また、4つの環境とは、①積極的な適用のための競争環境、②繰り返し適用するための改善環境、③外部技術者の適用のための契約方式、④旧来の制約から解放された法律体系である。

本論分では、これらの9つの制度や環境を統合し、VEシステム体系として位置付け、相互の有機的関連について新しい提案とした。さらに本提案の有効性をO県で実証した。

建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、時間的な制約や情報が未整備のために、大胆なアイデア発想の転換ができず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合が散見されている。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、発想の転換が図れるアイデア発想ツールの開発が必要となってくる。

ここでは、既存ツールの問題点を克服し長所を統合した新アイデア発想ツールの作成法と新ツールの活用定着のためのシステム作りについて提案する。新ツールを試行したところ、利益率の向上が図れたことと更なるアイデア発想の切り口が報告されたことで、高い効果が期待できるアイデア発想ツールおよびシステムであると確信している。

建築工事におけるVE検討は、設計・見積・調達・施工の各段階において、受注拡大や利益確保のために実施されている。施工段階においては、施工方法を改善する施工VEを積極的に行うべきであるが、施工VE提案数は多くない。これは建築工事に適合する効率的な施工VE手法が確立されていないためと考えられる。また、設計仕様変更によるVE検討は広く行われているが、この手法だけではコスト低減は限界に近づき、コスト低減に有効な施工VEの手法が求められている。

ここでは建築現場の生産性向上を目指した施工VEの適用ノウハウを提案する。製造業を参考にして、共同VE、現場観測、機能系統図の効率的作成方法などを適用した。この手法を実際のプロジェクトに適用し、十分な成果を確認したので紹介する。

公共事業に設計VEを適用する事例が、ここ数年増えてきた。しかし、製品やサービスのように、大きな改善効果が得られないケースがあるのはなぜなのだろうか。事例を重ねることによって、公共事業の特質と設計プロセスのマイナス要因が、重要な鍵となっていることが判ってきた。

そこで、本論文は、公共事業に設計VEを適用するために必要となる公共事業の特質と、大きな改善効果を出すための設計VEの適用方法と、さらに、将来の公共事業へのVEの新しい活用展開を提案するものである。

公共事業の事業者は、社会資本整備を進めなければならないという社会的責任と、景気低迷や少子高齢化がもたらす税収不足による財政難とにより、新たな問題解決の方法を求めている。VEが、公共事業の価値向上を実現し、より良い社会資本の構築のために、活用される時期に来ている。

この論文は、筆者のこれまでの体験をもとに、公共事業におけるVEのメリットを最大限に引き出すことを狙い、VEの新たな展開と発展を図るものである。

国内の産業界にVEが導入されたのは1960年代と言われている。導入当時は自動車と電機などの産業が中心であった。建設関連業界も製造業に遅れ、1970年代に建築を中心に推進し始めた。しかし、40数年後の今はVEの導入結果は10年差どころか建設関連は相変わらず開発途上の状況になっている。

最盛期は年間で約70兆円あると言われている建設産業の規模は景気の低迷の今も縮小現象が続いている。一方、公共事業だけを見ると、縮小傾向にあるといわれてもいまだに50兆円前後の規模になっていて、大半は土木事業に費やされていると推定できる。なお、上記の公共事業の50兆円には民間投資が含まれていない。また、公共事業の中に土木事業の割合は公的データがないため現在は調査中である。

本論文は土木事業にVEを定着させるためVE関係者がなにを理解しなければならないか、またはなにをしなければならないかについて提案し、土木事業の価値向上のためのVE推進に資したいと考える。

VEは製品の価値向上を図るツールであると言われているが、換言すれば顧客満足度向上と企業満足度向上の両者に寄与するものであり、その両者の向上を表すには価格(P)の関与が不可欠であることを数式を用いて説いた。またCSは一般に顧客満足度向上(Customer satisfaction)のみに使われているが、もう一つの意味合いとして企業満足度向上(Company satisfaction)のCSでもあるとし、両者の関係およびV=F/Cとの関係をも図解して明らかにした。このように両者のCSとVの関係を表現することでVEが企業経営になぜ必要か、自明の理とした。さらにCS向上活動の概要と組織、責任について多少触れた。後半には、CSの定量的評価はどうあるべきか、まず使用品質分析法を引用して機能(F)の定量的評価を示した。しかし、Fの評価は時々刻々変わる環境や顧客期待値の向上によっても変化するもので、価格(P)のダウンはまさにFの評価にリンクするものであり、顧客満足度はこのPの操作で維持されるのであるとの見解を述べた。

製造段階における工程改善アイデアは、顧客要求及び製造条件からの制約が多く、質の高い改善アイデアを出すのに苦労している。すなわちVE技法である機能からのブレーン・ストーミング法によるアイデア発想だけでは対応できなくなりつつある。そこで、①ブレーン・ストーミング法を基本テクニックとして②製造上でのチェック項目を列挙したチェックリスト、そして③類比発想法の1手法であるNM法のステップにおけるQBを合わせて活用することによりアイデアを導き出す方法を提案する。本論文は、製造段階のVE活動におけるアイデア発想フェーズの強化に関する内容である。

VEは、製品やサービスの機能をその研究対象とし、その機能とは顧客にとって必要な機能でなければならない。

機能本位のVE活動によって、限られた経営資源を重点分野に効率的に配分する上で、価値向上余地による判断材料を提供し、改善対象とする機能分野を選択する重要な段階が機能評価の段階である。いわば機能評価によりVE活動の方向が決定されるのである。

本研究では、このVE活動の方向を決定する重要な機能評価のステップに消費者行動分析を適用、顧客の立場で機能を評価し、顧客満足の実現を目指した。分析手法にはコンジョイント分析を採用、アンケート調査による実証とその有効性について考察を行った。

収益性の改善を目的とする全社活動の推進部門にとって、自社製品や工事に適したVE活動テーマの具体的な選定方法の確立と目標の設定は、重大な課題である。弊社では具体的なコスト改善活動を開始する事前検討過程に、簡易的なVE展開を導入して、コスト改善戦略を策定する「シュッド・プラン アプローチ」と呼称する手法を開発し、多くの成功事例を得た。本アプローチでは、該当する製品・工事の機能に注目し、簡易的なVEの機能定義を行って大括りな機能分野(機能モジュール)に整理する。その機能モジュールに、現状の把握・分析をベースに技術面・製造面の成熟度、過去のコスト改善状況や調達実績等を勘案してコスト改善の余地を検討し、目標コスト(シュッド・コスト)の設定と改善戦術計画(シュッド・プラン)の決定を行う。これにより、全体最適を達成する戦略が策定でき、大きな成果が期待できる。

顧客が受け取る価値を高める活動としてVE活動があり、企業は顧客の要求機能を確実に達成すること、顧客の納得する価格にて供給することを両立させ、加えて利益も追求するVE活動を推進する必要がある。

ほとんどの製造業では、顧客が要求する仕様、機能、価格を作りこむために直接的に掛かる費用である直接費低減をねらいとしたVE活動を行っており、間接費低減をねらいとしたVE活動はあまり盛んではないのが現状である。もちろん、間接費低減をねらいとするVE活動が価値を向上させる有効な手段であることは認識しているものの、間接費は配賦の仕方でいかようにもなり原価として正確に把握できない、直接費を管理している製造工場は間接費の構成がよく判らない、また、直接費低減をねらいとしたVE活動のみで充分な価値向上、利益確保ができていたことなどの理由から、これらが活発化していなかったと推定する。

しかし、価値を向上させる手段としてこのVE活動も重要であることの認識から、VE協会にても各種研究が行われ、最近では「VE資料 No91 管理・間接業務のVE」などの発行に至っている。しかし、これらは間接作業の時間短縮や外注作業の効率化の手法研究が多く、作業以外の間接費低減をねらいにしたものは少ない。このため、間接費低減をねらいとしたVEアイデア発想法を考案、各種シートと共に論文とした。

本研究は競合製品が多々ある成熟製品を対象として、次期改良型の新製品を開発するときの製品コンセプトづくりに不可欠な顧客情報を作成し提供する新しい方法論を明示するとともに、その有効性を明らかにしたものである。それは2つの部分から構成されている。

第1は、現状の機能に対する顧客評価により、当該製品の主要な機能の改善対象を明らかにするものである。第2は、この改善対象機能を具体化した方式案を組合せて製品設計案を複数考案し、これらの案に対する顧客の選好を調査した上でコンジョイント分析を行い、得られた情報を製品コンセプトテーブルにまとめるものである。

また、製品コンセプトテーブルを顧客層別にセギュメントして複数作成し、これらの情報を活用して、顧客層別に顧客満足の高い新製品開発を行わせるものである。

VEリーダー(VEL)の資格を取得しVEに関する基本的な考え方や進め方は理解しているものの、これを実務に活用できない者が少なくない。そこで本論文は、VELの実践能力不足を解決あるいは補助するため、コンピテンシーモデル(Competency Model)を作成しこれを活用する方法を提案するものである。

コンピテンシーは、高業績を上げている人達にみられる共通の行動特性や思考特性のことである。それはその人が保有している知的能力だけではなく、それに加えて具体的な行動として現れた能力のことである。

このコンピテンシーを、高業績者のノウハウ的な行動特性としてモデル化し、その活用による人材能力の向上(仕事のできる人をつくる)と企業の発展(業績を向上させる)を目的に欧米で導入が広まっている。わが国でも人材マネジメント全般へ人材能力向上に活用する研究が始められている。本論文は、この方法を応用してVELの実践能力の向上を図るものである。

厳しさを増す経営環境や顧客ニーズの変化により、物流も新たな局面を迎え、最良の変革が求められています。今後企業が生き残るためには、物流の理想的なビジョンのもとに、業務を改革しなければなりません。VEを駆使して、この問題の解決を図ることができます。

本論文は、VEの基本的な考え方をベースに、新たなアイデア発想方法と評価方法を取り入れました。まず、アイデア発想要素及び希望点抽出の7つのキーワードによる系統的希望点列挙法と、連想法でアイデアを抽出しました。次にアイデアを評価して、現実案と理想案に分けて、今後の家電物流のあり方を提案しています。改善効果も大きく、今後の物流改革に必ず役立つと思われます。この方法は、将来に向けての改善や0 Look VEに活用することができます。

建設業者の殆どがISO9001の認証を取得している。この基本コンセプトは2000年の改訂で、従来の「品質保証」から、品質マネジメントシステムに変わった。その目的も、顧客要求事項を満たし顧客満足向上へと広がった。又、経営者の責任がより明確になり、品質マネジメントの8原則を経営に生かし、経営と組織の一体化や顧客満足を測定・分析してシステムの改善を図り、顧客満足を高めるなど、実用的なシステムへと変わった。

しかし、これらは規格の構成や表現が改善され利用し易くなっただけで、システム確立の方法論は示されていない。この論文は、経営資源を有効活用して、施工品質向上及び、その有効性を高め、継続的改善の成果を向上するVE活用に関する研究論文である。

VE技法を効果的に活用し大きな成果を得るために、VEチームリーダーはVE技法の知識と実践能力を磨くに留まらず、VEを分かりやすく伝え、受け手の感情に配慮して生産的なコミュニケーションを行うことを通して、VEチームを目標達成に導く原動力にならなければならない。

一方で昨今、「活動や議論を促進する人」という意味で、ファシリテーターという役割を担う人材が、会議やプロジェクト活動の運営、組織・風土の活性化において活躍する場が増えている。ファシリテーターの役割と、上述したVEチームリーダーに求められる役割やスキルとは類似した点が多いと考えたため、本論文では「VEファシリテーション」という新しい呼称を用いて提案する。

VEファシリテーションの技術を通して、VEチームリーダーがチームメンバーに与える効果という側面から考えたとき、VE実施手順の3つの基本ステップは、納得性を高める段階と創造性を発揮する段階に分けられ、それぞれにおいて特徴的なVEファシリテーションの技術があると考えた。そこで本論文では、VEチームに初めて参加するメンバーが、やがて自立してVE活動ができる能力を身に付けていく過程を通して、その場面場面に応じた具体的なVEファシリテーションを、「納得」と「創造」を引き出す技術として整理した。また、VEファシリテーションにおいて、VEチームリーダーのチームメンバーに対する姿勢やコミュニケーション技術が重要であることから、対話例も多く挿入した。

原子力発電所は商用運転が開始されてから20年以上が経過し、国内の発電電力量の3割以上を供給しており成長・成熟段階と推定される。原子力発電所の原子力設備を構成する機器(以下機器と称す)は、それぞれ異なる要求機能と使用環境が多く、個別に設計・材料調達・機能向上努力がなされる場合が多い。このため、共通的な材質の機器の素材材料(以下材料と称す)も個別最適化が進み詳細仕様レベルで相違した材料が増加し、調達コストを増加させる結果となっている。本VE活用は、材料調達の観点より機器毎個別に蓄積された経験等により設計面の材料機能(仕様)の統合・標準化と資材面の材料調達計画の統合化を図り、最適な材料調達を行うための手法を体系化するものである。本手法は設計的要素(3ステップ)と資材的要素(3ステップ)より構成し、材料調達エンジニアリングVEと名づけた。非量産品の多種類の機器間で共通的な機能部分を標準化するVE手法であり、特に法令等の共通制約条件があり、多部署が異なる製品を製作している分野で有効と考える。設計と資材が独立分担型の調達形態において、統合・調達する手法であり、有効活用されれば幸いである。

VEの最も特徴的な部分は機能系統図といわれている。機能系統図を作成する上でキーとなることは、上位機能(目的)と下位機能(手段)を整理することであり、その過程で設計の考え方や、チーム員のコミュニケーションが計られている。

テアダウンや既存製品の改良品の機能系統図に関しては、部品や部組品があるので、それぞれの機能は比較的簡単に作成でき、その機能の上位機能・下位機能関係を整理することになる。一方新規製品や公共事業、行政などの機能系統図作成に関しては、部品や部組品がないケースが多いので、機能を考えることに非常に多くの時間がかかっている。

本研究では、機能系統図を作成する時に必ず考えなくてはいけない上位機能(目的)一下位機能(手段)の効果的作成方法「機能定義のための逆転発想法」を提案するものである。この考え方を活用することにより、自治体などのサービスVEの機能系統図へも活用できることを明らかにするものである。

昨今、年間市場規模50兆円と言われている公共事業は改革が求められ、顕著な改善効果がなかなか本質的に現れてこない。本研究は公共事業のプロセスに焦点を当て、それぞれの段階の課題を抽出する。これらの課題の中、特に発注者側が企画を練る段階に対し、管理技術VEを適宜に応用できる手法を提案することが主目的である。また、全実施プロセスに対しても分析を行い、公共事業の全体へのVE活用の課題提起も行う。

機能系統図を作成する「機能の整理」のステップはVEの最も特徴的な部分であり、その効用は設計思想を共有化する、創造力を刺激する、コミュニケーションを改善するなど、多くの利点がある。機能の表現方法や検討対象範囲などにより、系統図もいくつかのタイプに分類されることが知られているが、いずれの場合においても、最上位機能から展開される上位レベルの機能のとらえ方が、機能分野や重点機能系列を決める上で極めて重要となる。

一方で、VE活動の目的を「価値を向上させるための質の高いアイデアを効率的に出すため」と定義するならば、多くの時間と労力を割いて作成する機能系統図は、アイデア発想において付加価値の高いものでなくてはならない。換言すれば、「機能系統図」と「アイデアの出しやすさ」との相関において、チームメンバーの誰もが機能系統図の付加価値を高いと感じるものでなくてはならない。

本研究では、アイデア発想のステップにおいても機能系統図の作成手順と同様のアプローチで発想していく方法について、『アイデアの構造化』、『"願望機能"を起点とするアイデア発想』という新しい概念と、『フレームワーク』という汎用的なビジネスツールの概念を適用した新しい方法について提案する。機能系統図の付加価値を高めることで、機能系統図の作成検討時におけるメンバーのアイデア創出の動機を高めることができ、モレのない視点で効率的に質の高いアイデアを発想していくことが可能になると考えている。また、成熟した製品・業界において、既成概念を打破し抜本的に製品構造を見直すことは困難を極めるような状況の中でも、より現実的なアイデアを効率的に出していくことが可能になる。

この論文は、地域住民が主体となって、便利で、快適で、人情味あふれる個性ある街づくりを実現するために、VEを適用し行政と住民が協働して、街づくりプランを合理的に策定する提案である。従来の我が国の都市計画は行政主導型で、その内容や手続き等は法律で細かく規定され全国画一的であった。これを欧米方式に改め、個々の市町村が各々の特徴や個性を活かし、行政と住民が協働して、『コラボレーション・デザイン』の考え方を取り入れ、都市を形成する方針に都市計画法が改正された。それは様々な考え方を持つ住民が、望ましい街づくりの未来像を描き、その構想やイメージを共有して、街づくり目標を達成するアイデア発想して街づくりプランを策定し、住民が主役の街づくりを進める。

すなわち、行政と住民が協働して創意工夫し、街づくり目的に合った良好な街環境を形成し、維持・向上させる考え方である。そのため、街づくり機能を明確にし、その機能を達成するアイデア発想して、アイデアを相互に補完させ、異なる発想を交錯させ、新たな視点を見出し調和させ総合化して、目的に合った街づくりを実現するVE論文である。

小型メカトロ装置の設計開発については、従来の高度成長期の開発装置は、ともすると設計者各人の技量が装置全体に提案され、顧客の真の要望は二次的要因であった。顧客満足度を追求した装置を開発製作するための手法として、設計者が開発段階で行うDR(デザインレビュー)とVE(バリューエンジニアリング)の仕掛け仕組を一体化し、ISO環境等をも加味し、チームデザインで行った「M-VM手法」(以下説明)を実践し、各メカトロ装置の開発をすることにより、装置全体のスキルアップと顧客の満足度向上と信頼性の向上を得ることができた。その結果、プリンターメーカーの自動化装置、公共のETC用遮断機の受注展開、駐車場システム装置への応用、半導体画像検査装置への進出、環境関連システムの受注に繋がり、その部門のスキルアップとマネジメントの構築が図れ貢献できたので、ここにメカトロ装置開発のリニューアル化とマネジメントについて述べる。

購買費用は、製造業の例でいえば、原価の約55~70%を占め、企業経営への影響度が高い。筆者は、最安値が実現でき、かつ効率的、効果的な購買テクニックの開発はますます重要であるという認識をもっており、企業経営に役立つ購買主導的な活動は何かという観点から本テーマに挑戦した。

アプローチの方法は、購買業務機能はなにか、経営に貢献できるその時代、時代の購買戦略機能は何かを再点検することを試みた。ここで明確になった機能を達成するための方法と科学的なテクニックを開発・改良して適用する。

さらに、購買業務機能、戦略機能、テクニックを有機的に組み合わせマトリックスにして、誰にでもできるようにしたものである。これらの方式は、実戦でも活用済みである。また、経営状況や市場の状況の変化に応じ、内容を見直しながら活用できる。

経営にVEを取り入れている企業は多々ある。しかし、企業は収益を上げねば成り立たない。一方、VEの狙いは顧客満足度向上である。顧客価値(顧客満足度)と企業価値は一見相反する事象に見える。つまり、顧客要求機能に傾注すると原価はあがり、企業価値を低下させる。いかにすれば顧客価値と企業価値の両立はありえるのか。V=F/Cに新たにプライスのPをパラメータとして用いることで顧客価値と企業価値の関係を明らかにするとともに顧客価値向上の両輪である価値企画活動と価値改善活動を励行することが、顧客価値、企業価値の双方の価値を高めることになることを示した。また、価値向上活動においては企業価値向上目標のみならず顧客価値向上目標を掲げた活動こそが顧客本位の活動ではないかと提案する。更に価値向上活動の全容を示すとともに、価値企画活動および価値改善活動の進め方について私見を述べた。最後に連結経営下での関連会社価値向上活動を展開するうえでの組織と戦略について一考察を付した。

新製品開発の成功の要は製品企画段階にあると言えるが、真に顧客満足の高い製品を実現するには単純に顧客要求を把握するだけでは不十分であり、製品化技術の今後の発展を長期的な視野で見抜く力も問われる時代になっている。そこで、本論文では、最近注目されているTRIZの技術進化のパターン等を活用して、次世代製品の近未来の姿を社会の変遷と技術の発展という観点から予測し、その予測結果を企画VEに反映させるアプローチを提案するものである。予測結果のアウトプットは、純粋に対象製品の近未来を描写したシナリオ(文章形式)を想定しており、このシナリオが製品化コンテンツのコアとして企画書に反映されることになる。なお最近、筆者はこのような革新的なシナリオライティングメソッドに対して『FUN Method(ファン・メソッド)(Future Navigation Method』と命名した。本論文では、本メソッドの中で活用する主な技術進化の未来予測テクニックを小事例に基づいて紹介するつもりである。

建築工事においてVE検討は原価低減のために計画、設計、見積、調達、施工の各ステップにわたり日常的に行われている。特に近年は顧客の機能・コストについての要求が厳しく、効果的なVE手法が求められていた。一方、建築物は構成部品が非常に多く、建築物全体を大きく捉えてVE検討対象を効率的に絞り込むことが難しかった。今回考案した手法は、短時間で建物全体を大きく捉えて価値の高い代替案を提案することを目指した。

なお、本論文は第32回VE全国大会にて柏原氏が発表した「建設VE検討におけるテーマ絞込み法」を発展させたものである。建築工事費の「工事項目の金額比率」に注目して対象分野を絞り込む方法に加えて、本論文ではさらに「①面積あたり工事項目金額」「②面積あたり数量・容量」「③設備容量あたり単価」の値に注目することにより、VE検討の対象テーマを絞り込む方法を考案した。この手法を用いて実際の物件にて検証を行った結果、手法が有効であることを確認できた。

一般的に、数多くある競合製品において、製品差別化のために複数の付加機能が追加されるが、これらを合理的に金額評価する研究はさほど進展していない。本研究は付加機能が複合化させることによって生じる相互効果を、相互効果額・相互効果額比・相互効果認識率の3つの指標を用いて具体的に金額評価する方法を提案し、その有用性を明らかにするものである。

これらの評価値を総合的に活用することにより、戦略的な製品コンセプトづくりや標準的売価決定の基幹となる予測売価の算出、さらには原価目標の設定などに効果的に活用できることを明らかにするものである。

本年1月に実施された日本VE協会主催の第12回VEリーダー資格試験は4,057名の合格者を発表したが、今年も合格者数の75%を建設業とその関連業が占め、企業別合格者数も上位20社のうち建設業が15社、総合重機械メーカーや建設コンサルタントの関連業を含めると実に19社となり、建設と関連業がほぼ独占する形となっている。

この事は諸官庁のVE提案制度の導入と、企業評価にVE能力を加えたことや、昨今の民間分野での受注においても、VE手法の活用が欠かせなくなってきたことが、建設の関連業界にVEL取得の異常な高まりを持たれている要素になったことと思う。

他方、建設業界での受注競争は、相変わらずの明日無きコストダウン競争の状況にあり、この業界での生き残りをかけた戦いは、今後益々熾烈なものとなることが予想される。

本論文は、VEの基本理念を建設会社に導入し、VELを積極的に活用の上、実り無きコストダウン競争からの脱却を図り、合理性のあるコストダウンシステムを作り上げ、過酷な現況に対応できる企業体質を目指した、VE実践システムの構築について述べる。

当社ではVEリーダー認定試験合格者などを対象に、建設VEの理解を深めるために、Off-JT教育として社内で建設セミナーを筆者が講師として開催している。このセミナーにおいて建設VEについての、いろいろな問題が提起される。例えば、機能系統図からの機能本位のアイデア発想がVE改善とは言いがたい場面が見受けられる。このことから、受講者にVEで最も重要とされている、機能分析について理解されないことがある。これらが障害となり「教育の執りかかり」で受講者がVEに対する関心をなくしてしまう恐れがあることもある。このため、本論文では機能系統図を建設VEセミナーで、どう生かすかの検証を行った。その結果、VEテーマの問題点を検討、整理することによって、施工者側と顧客側からの観点を変えた、二種類の機能系統図を作成することにより、効果的なVE改善の提案をすることが可能となった。これにより、受講者にとって機能系統図作成の意義を理解することができ、分りやすい建設セミナーになると思われる。

本研究は現在国内公共事業の計画、設計を担当している建設コンサルタントが直面している課題を摘出し、今の状況下に活路を見出し、価値向上を図るため、VEを業務上に活用する方法について提案することが主目的である。今回は主に建設コンサルタント業に自主的にVEを行う場合の実行策を提案し、今までVEを実施していない地域計画分野と道路計画分野を例にVEの活用策について詳述する。

VE活動を通して検討・提案される代替案は、総じて設計内容が抽象的で、ダイレクトに試作・実験等による技術評価を行うことは難しい。そこで、従来からこのような場面では、手軽に活用できる主観的評価法(レーティングなど)を用いることが多いのだが、評価のよりどころとなるモデルがあいまいな(あるいは存在しない)ため、評価結果にチーム内での合意がともなわず、混迷する場合も少なくない。

そこで本論文では、主観評価ではあっても、評価のよりどころとして効用関数を活用する合理的な設計評価法を提案するものである。具体的には、「ウェーバー・フェヒナーの法則」に基づいた「対数効用関数(関数の決定にはAHP手法を利用)」を活用した代替案評価法を開発している。

なお、提案評価法は、広くプロジェクト型製品設計活動での活用を前提としているので、実際にA社の3Dモデリングマシンのスプンドルユニット開発プロジェクトで適用し、メンバ一間の合意形成による評価法としてその有効性を検証している。

顧客価値とは、消費者である我々自身が、商品やサービスを手にし、使用する時感じる満足感であり、身近なものである。しかしながら、一つひとつの商品やサービスにおいて、送り手側から、顧客の価値感の全体像を描き出そうとすることは、常に困難を伴うものである。

なぜならば、顧客価値とは顧客が感じるものであり、顧客の立場に立って見た使用場面への理解というものが欠かせない。また同時に、顧客のその満足感を顧客が感じ取れるように、どう実現するのか、送り手の創造性も同時に求められているからである。

本論では、商品の企画段階では必ず志向されるであろう顧客の価値感の全体像を、VEにおける機能分析手法の中に、一定の枠組みを設けて描きだせるようにした。顧客価値に迫りやすくすることで、機能分析の活用に、より多くの送り手の参加を願うものである。

本論文は、自動車部品を対象とし、納入先との共同開発を行い厳しい目標製造コストを達成していく開発設計段階のVE(以降では開発VEと呼ぶ)の効果的な進め方を提案し、その有効性を明らかにするものである。すなわち、従来の自動車部品メーカーで多用されている開発VEの進め方の問題点を明確にし、この問題点を解決する方法を考案して、これを開発VEのジョブプランのステップの中に取り入れVE活動を効率化したものである。具体的には重要な基本機能を果たすためのおおまかな方式・構造案を決定した上で、それ以降の機能の定義・整理・評価やアイデア発想をしていくという新しいステップを取り入れた開発VEを進めるものであり、その結果、従来の開発VEより短時間で効果的な成果が得られることを示したものである。

本論文は、日本の製造業の諸課題に関する調査結果の考察を通して、企画VE活動へTRIZ手法を導入する可能性について論じるものである。

今回の調査結果によって、日本の製造業の多くが、自社事業を既に成熟期から衰退期に入っていると認識していることが判明しており、商品企画が今後の大きな課題になっている。そこで本論文の後半部では、調査結果の考察結果を踏まえて、商品企画を充実させる手段として、商品(技術)の発展イメージ(未来のあるべき姿)の形成を支援するTRIZ手法として"技術システム進化のパターン"を企画VEの活動プロセスに導入することを提案するものである。

より具体的に言えば、企画VE活動の中で、TRIZの1つの手法である"技術システム進化のパターン"を活用して新商品に関する将来シナリオを作成し、次段階の開発VEの進むべき方向性を確立する方法について言及するものである。

企業と市場を結ぶ生命線は製品である。しかし、高度化した市場において競争力、収益力、新市場開拓力を持った製品を創出することは生やさしいことではない。ここに技術を基軸にVE展開とその戦略要素を掘り起こし、新しいVE展開とその運用を提示する。

FTM(機能・技術マップ)は、市場動向に対応する製品の機能を定義し、その機能の達成と制約条件を克服するため、技術的アプローチを展開するものである。このFTMの検討結果をVEの展開と組み合わせることで、VEを戦略的に展開でき、かつ価値の高い代替案が得られるようになる。

当社製品の核磁気共鳴装置(NMR)のプローブの改善にこのVEの展開方法を実施した結果、性能約50%向上、コスト20%削減の成果を得て、製品の競争力を大きく高めることができた。

本論文は、1997年より国内で実施してきた橋梁予備設計VEの10回の事例から導いた手法についてまとめたものである。特にワークショップの実施手順に関する理想的なパターンを研究することが主目的である。

橋梁予備設計VEの手順は、機能定義、機能評価、代替案作成を基本に22のステップに分解し、実施してきたが、そのうち特に情報収集、情報整理分析、要素分解、アイデアの具体化、技術検証、提案等について具体的な実施手法の詳細提案を行った。

本研究の目的は成熟期の製品で実用機能が重視される製品を対象にし、各メーカーの製品の特性とマーケットシェアとの関係を分析的に明らかにし、顧客により好まれる製品を開発設計するための有益な情報を提供することである。この事例として小型トラック(最大積載量1t以上4t未満)を取り上げ、マーケットシェアの高い製品の特性と低い製品の特性を分析的に明らかにし、マーケットシェアの差の要因を究明し、それを新製品の開発に活用させようとするものである。そのため、小型トラックの製品カタログから得られる仕様等や顧客に対する実態調査による機能特性等の評価の情報に基づく分析を行った。

製品開発活動は企業経営の要であり、常に顧客満足の高い製品をタイミングよく市場に提供していかなければならない。そのためには特に価値向上が望める製品企画案を立案する合理的アプローチが必要になってくる。そこで本論文ではマーケティング的思考が比較的強い従来の企画・開発VEに対して、最近注目されている「TRIZ(トゥリーズと呼称:旧ソ連で誕生した過去の特許データ分析から帰納的に導いた創造原理等をベースにした一連の革新的問題解決の方法論)」を活用した「新タイプの企画・開発VE」を提案することにする。

なお、本論文で提案する企画・開発VEの最大の特徴は、次世代製品の企画シナリオをTRIZの1手法である「技術進化のパターン(技術システムに関する複数の進化パターンで構成)」を活用して作成する点にある。さらに製品コンセプトを検討する創造段階においても、従来のBS法)ブレイン・ストーミング法)に加えて「コンテンポラリーTRIZ(TRIZソフトウエア)」を活用し、創造プロセスの合理化を目指している点も大きな特徴である。

VEでは、5原則の1つ「機能本位の原則」に従い、機能を発想起点にすることで、大きな変革に繋がるアイデア発想が可能だとしている。しかし、企業において、製品の機能やその達成手段は長年にわたり研究され現在の方式や方法が採用されている。また、現在、スピード開発が求められている。通常の製品開発期間においてすべてに対し、機能に立ち返った研究を行うことは困難となっている。特に、上位の機能は変更の困難性が高く、製品開発日程上、アイデア発想の起点としにくい状況である。

また、設計図や試作機などがなく、設計者の頭脳内部の構想しかない製品構想初期段階や、クリーンルームを必要とする小ロット大型産業機械など、現物を目の前に置き、その機能からアイデアを発想することができないようなケースにおいても、機能だけを発想起点とする事は困難になりつつある。本研究は、このような困難に対し、事前に「言い訳(Excuse)」と「質問(Question)」を準備し、問題点や改善点を明確化し新たな発想起点を提案する事で、アイデア発想を活性化することに役立てようとするものである。

本研究は数多くある競合製品の主要な機能を対象にし、その標準的売価の設定に不可欠な予測売価の合理的な算出法を提案し、その有用性を明らかにするものである。

本研究では、標準的売価は予測売価に戦略的要素を加味して決定されると考え、この予測売価の合理的、かつ、実践的な新しい算出法を提案する。その骨子は次のようである。

本研究は潜在顧客を対象とし、特定の製品機能の評価額をある幅をもった金額帯で評価してもらい、この評価額を平均値(加重平均)、最頻値(モード)、中央値(メジアン)の3つの統計量でとらえ、これに数学的分析を加えることによって機能評価額の3つのタイプの代表値を算出し、それら3つの機能評価額の代表値の特性を生かして、潜在顧客の当該機能に対する評価額に基づく予測売価を戦略的に算出する方法を提案するものである。

建設技術業務の総合化、複雑化などの進展に伴い、業務全般を見渡した俯瞰的な把握・分析に基づき、技術の改善や、より合理的なプロセスによる安全性の確保・外部環境負荷の低減などを実施する管理技術が必要となってきている。

これらの管理技術は、それぞれの要求事項を個別に管理していくことのみで実現することは困難で、あり、複数の要求事項を総合的な判断により管理していく技術が必要である。

総合的な判断の根底となる管理技術に、VE技法をツールとして活用することにより、より合理性と有効性が図られ、総合技術監理としての価値向上が図られるものと思われる。

以下に建設プロジェクトにおける総合技術監理の必要性とVEの果たす役割について記述する。

企業にとって製品のシリーズ化は、既存技術や改良技術によって既存市場を深耕していく上で非常に有効な販売戦略である。この戦略の下にメーカーは価格づけを行うが、その合理的な根拠は明らかではない。望ましいのは顧客の視点に立ったシリーズ製品の合理的な評価法の確立であるが、現実にはまだなされていない。

本研究はこの方法論の確立を指向したものである。シリーズ製品の例としてカラーテレビを取り上げ、まず、アンケート調査によって調査対象者にシリーズ製品のそれぞれの評価とこれらの製品間の性能差を評価してもらう。次いで、調査対象者の個々人の暖昧な評価額を統合する。さらには、調査対象者全体の代表的評価額と購入率を算出する。これらのプロセスを経ることにより、シリーズ製品の金額評価を合理的に行う方法を提案するものである。本研究で提案する評価法は、企業が製品のシリーズ化を行う上で戦略的売価設定法として活用されよう。

低迷する協力会社のVE改善提案を活性化させるため取り組んだ連鎖工程グループ別によるVE研修会から、全体最適化管理を標榜するサプライチェーンマネジメントに着目し飛躍的改善に結びつけるVEアプローチを導いた。現状のVE活動の拡大と深化を追求するもので、協力会社を分業工程の専門家に見立て、協業パートナーの立場で情報の共有を図りつつ、データベースの構築を図る。さらに、整理されたデータベースをもとにサプライチェーン全体の最適化の調整を図る。そうすることで大幅のコスト削減と協力会社との真のパートナーシップが形成される。この一連の活動の考察についてまとめている。

建設作業所の管理においては、従来の品質、工程、原価、安全管理のほか、ISO導入、建設廃棄物問題など対応すべき事柄を多くかかえている。この場合、VE活動だけを単独に推進することはむずかしく、それら個々の管理とVE活動といかに合致させていくかが問われている。

また、工期および予算面で厳しい工事が多く、従来にも増してVE活動を効率的に実施し、成果を上げ続けるようにすること、さらに、いかに顧客の満足する構築物を提供するかが重要な課題である。

本論文では、従来の作業所VEの進め方を見直して現在の厳しい状況に合わせた、これからの新しい作業所VEの進め方について述べる。

バブル崩壊以後、税収の落込み、バブル期に建設した施設の経営困難、建築工事費の内外価格差等を背景に、公共建築の調達に様々な改革が実施されている。本論文は、近年、建築設計段階に導入されているVEについて、導入の経緯、現状を概観し、今後、建築設計VEを普及させるための課題を整理した。分析対象としたのは、建設省官庁営繕部、郵政省大臣官房施設部、東京都等地方公共団体が発行しているマニュアル、ガイドライン、実施報告と、(社)日本バリュー・エンジニアリング協会による「建築設計VEマニュアル」、およびその検討、作成段階の議論である。VEは主に製造業を対象に開発され、また国内の建築分野への導入は施工段階が中心であったため、設計段階でそれを有効なものとするためには、VEを適用すべきプロジェクトの選定問題、VEの実施時期の問題、VEチームの編成の問題、VEの手法の問題等が存在することを指摘した。

建設のVEは、過去に様々な展開の仕方が発表されている。それらは建設の特殊性を踏まえつつ、建設物のライフ・サイクルにおける一局面を取り上げて研究したものがほとんどであった。しかし、社会環境の変化と21世紀に向けて、建設のVEをどのように受け止め、適用していくべきか、再度考えておかなければならない。

本論文では、建設物のライフ・サイクルにおいてVEをどのように考え、適用すべきか、その実施形態と特徴を述べる。要点は、設計段階、施工段階などいずれの段階でもVE適用方法は同じ形態、手法で可能であり、違いは、構成要素の捉え方、分割の仕方である。そして、建設のVEを社会や大衆に解りやすいものにしていくことが大事であると考える。

なお、VEを活用するには、VEの基本をしっかりと習熟することが肝心である。その上で業種・業態に合ったVEの展開を考えるべきであることを強調しておきたい。

建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、工事項目が多岐にわたり設計図書が多くなると、有効なVEの対象分野を選定できず、総花的なCR案の提示や仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合も散見される。VE検討が徒労に終わらぬためには、VE検討チームは顧客・設計者の意図を的確に把握するとともに、それを満足する提案をすべきである。ここでは、設計者とVEチームが共通の基盤を持つために、設計図書の表記内容を現行の仕様規定から性能規定に変えることを提案する。そして、機能定義の段階で性能を重視し、設計図書から目標値を類推しながらアイデアを洗練化することにより、ほかの性能に対しての検討も広がり、原設計より性能が上回る仕様が具体化され、波及効果の期待できる提案であることを確証した。

本論文は建設省が3年間で直轄事業において、土木設計VEを試行してきた状況を踏まえ、その間で証明された土木設計VEの有効性を生かし、早く定着させる方法を提案することが狙いである。その結論として、筆者は3年間の国内経験で、日本の風土と土木伝統に満足させたほうが最も有効であると考える。

そこで、官主導型のVEも含めて提案し、移行期間として、建設コンサルタントを始めとする民間はどんな形で協力していくかについても触れた。そうすれば、2010年頃までには土木設計VEが効果を発揮し、よりよい社会資本をより多く後世に残すことができると思う。

当社が約25年ほど前に先行同業他社に学びながら、1st Look VEの実施を試みてVEを導入し、所期の目標をクリアーした普及期を経て、日常業務にVE活動を移行したところ、活動が潜在化・マンネリ化し、更に景気の影響を受けて混乱してしまった要因の分析をおこなった。その打開のため、VEリーダー養成講座を切り口とした、VE基盤再整備と再構築のためのアプローチ方法を提案するとともに、建設業における具体策を明示する。

その内容は、A.事前準備としては①VEリーダー養成方針の確立②部署窓口の確立③部署状況・方針の確認④重点活動テーマの抽出 B.改善・強化としては⑤VEリーダー養成講座実施方法の改善⑥ VEr.(バリュー・エンジニア)のためのスキルアップ研修の実施⑦情報周知活動の強化 など多岐に亘る。これらは、いたって一般的な事項ではあるが、ボトムアップ的な活動を展開していくためには、活動内容にも種々のアイデアが必要となり、それに応える人材とそのネットワークづくりが重要であることを示唆する。

建物を建設する場合、設計・施工の技術基準となるのが昭和25年に制定された法律第201号の建築基準法であり、戦後50年間続いてきた。この建築基準法は「仕様規定型」のため、建設にVEを適用する場合に大きな制約条件となっていたが、今回、基準法の一部が規制の目的や技術水準のみを規定した「性能規定型」に改正(2000年6月に施行)されたためVE効果が期待されている。(以下改正基準法と呼ぶ)

本論文では改正基準法すなわち「性能規定化に伴う建設VEの取り組み方」について考察を行った。その結果、①顧客の要求性能とコストを鑑みた、後述するグレードテーブルの活用と、②発注者、設計者、施工者の三位一体の建設VEを展開することで、顧客満足度を今まで以上に実現することが可能になると思われる。

社内のVEプロジェクトを推進している内に、それぞれのプロジェクトの成否にメンバーの心理状態がかなり影響しているように思えるようになった。そこで、VEジョブプランの各段階で「心」の状態がどう揺れ動くのかを整理し、その良好でない状態から脱するにはどうケアすべきかについて検討してきた。

大脳生理学、心理学にそれを求めた結果、とりわけ心理カウンセリング手法が有効でありVEに応用できることが実感でき、これを中心にジョブプランの各段階でその応用方法を述べる。また6年前に発表された「3分間発想法」はこの心理カウンセリング手法を上手く取り入れたものであるので、この手法の有効性を追認した。

最後に、「VEジョブプランにおける心理的方向づけ」を整理し述べた。

機器の購入価格の実績データ数が少ないので、購入品の価格見積りに統計的手法が使いにくい場合に、制約付回帰分析の技法を活用することにより、購入価格の予測モデル式を設定することができる。これを使用することにより、限られた実績から新規案件の機器の購入品の価格見積を簡便・迅速に一定の正確さのもとで行うことができる。

本研究はプラントの構成機器を対象として、まず、購入品の価格予測モデル式を作成するものである。次いで、購入品の価格予測モデル式の各項のウエイトは、各設計特性値が購入品の価格にどれくらい影響があるかを示しているので、各設計特性値を変化させることにより、購入品の価格変動についてのシミュレーションを行うことができる。最後に、設計者が企画・設計段階において設計特性値を適切に組み合せることで、コストミニマムとなる仕様の選択を行うツールとしても広く活用ができる。

さらに、代表的なプラントの高額な機器を対象に機能分析を実施し、機能分野ごとの「機能評価値とコスト」との関係を把握し、価値改善の対象分野と改善目標値を明らかにした。

本論文は公共事業プロセスの要とも言える設計段階で機能向上を図りながら、従来より少ない投資で合理的な土木構造物を求め、VE手法の土木設計への応用方法を探り、VE効果を明らかにするものである。その結果、複雑かつ保守的な土木設計プロセスにVE手法を適切に応用することにより機能向上をはかりながらセービングコストが全工事費の10%、20%に達していることが実証できた。

公共事業においても設計時に適切なVEを導入すれば、かなりの効果があがることは明らかであり、今後、公共事業とりわけ土木事業におけるVE役割が大きいと確信している。

建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、工事項目が多岐にわたり設計図書が多くなると、有効なVEの改善対象分野を選定できず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合も散見される。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、対象工事のムダな部分をいかに早く見つけ出しテーマとして抽出できるかによるといっても過言でない。

ここでは、各種工事の金額比率に着目し市販の「工事原価分析情報」のデータと比較し分析することにより、早い段階で対象分野を選定しテーマとしてしぼりこむ方法をとった。その検証事例では、工事全体を分析することにより建築と設備にまたがるテーマが選定でき、高い効果が期待できるVE手法であると確信している。

技術レベルの高い専門分野の新製品開発は、常に未知の分野への挑戦であり、創造性が要求され、開発者個人の能力に依存するところが大きい。したがって、この分野の新製品開発を一般の開発や作業と同じように進捗管理することは、本来なじまないものとされてきた。

本研究ではここにメスを入れ、高度な専門的スキルを持たなくても新製品開発の進捗管理を行えるひとつの方法を提案し、開発効率の向上に役立てようとするものである。

本研究では、新製品開発の進捗管理を対話式で行い、発生した問題、あるいは発生するであろう問題の本質を効率的に捉える方法を示すとともに、問題を解決して到達すべき目標を機能的表現で捉え、その解決策(アイデア)追求を機能的かつ効率的に行う方法を示す。さらに、考え出した解決策を、機能とコストの関連から総合的に評価する方法も示す。これらは、従来のやり方に比べ問題解決能力にすぐれ、その効果は過去の実績が示すものである。

長引く景気低迷のなか、目標利益が得られない等、厳しい状況下で受注するケースが多発している。企業が永続的に発展するためには、このような状況下においても顧客満足を得ながら目標利益を確保することが不可欠である。本論文はこれらを可能にするための『建設業における原価企画システム』について提言する。原価企画システムはコストを切り口とした一連の管理活動であり、それは企画提案から施工に至る過程で体系化されたVE活動を効率的に実践しながら、確実に目標利益を得ようとするものである。これらを総合建設業の立場から展開するものである。

製品を対象にVEを行う場合、コスト低減と機能向上がその目的となる。このコスト低減を考える上で、従来のように部品コストだけを対象にしていては不十分である。

昨今の企業を取り巻く環境は技術革新のスピードが速く製品の寿命はますます短いものとなってきているので、相対的に総生産量が縮小しているからである。

したがって、型と部品をトータルで見たVE活動指針が重要となり、この活動指針を作るための諸条件についてまとめた。

製品差別化に当たって重要な役割を果たすのが付加機能である。付加機能は単独で組み込まれることは少なく、通常、複数の付加機能が同時に組み込まれる。複数の付加機能が同時に組み込まれることにより、顧客が有用であると認識する新たな機能がほとんどコストの上昇を伴うことなく生み出されることがある。本研究ではこれを機能の複合効果と呼ぶことにする。

本研究はこの複合効果に着目し、顧客指向による「機能の複合効果認識率」および「機能の複合効果額比率」という2つの新しい評価指標を提案し、これを用いて事例に基づく複合効果の分析・評価を行う。さらに、この結果に基づいて、より価値の高い新製品コンセプトづくりや売価設定に有用な情報を提供するものである。

建設業では品質規格ISOの認証取得ラッシュが続いている。当社でも全支店で品質規格ISO9001の認証を取得することができた。一方、当社では30年にわたりVEに取り組んできた。VEとISOとは、どんな関連があるのだろうか。個別に運用していてよいのだろうか。本論文では最初にVEとISOとの関連を分析し、それぞれの性格を明らかにする。その後、企業にとって効率的で効果的な運用をするための提案を行う。

標準的な事例として、某文化会館建設工事でのVE適用事例により活用提案の検証を行う。本論文を公表することにより、ISOとの融合をはかり施工管理においてVEを管理技術として有効活用することを期待する。

建築生産活動の中で企画から維持管理まで広範囲な分野に関わる設計部門では、効果の大きな川上でのVEや、潜在需要の発掘や事業化推進の有効な手法としての建築設計VEの重要性が高まっている。

本論文では建築設計部門内部で行われてきたVE活動の分析から問題点の把握を行い、今後の効果的なVEの活用法の提案を行うものである。

設計案を評価するには通常コストテーブルが活用される。コストテーブルの一形態としてコストモデル式を採用する企業が多くなってきた。多くのコストモデル式は統計的手法を用いて作成されているので、それに見合うデータ数が必要不可欠である。しかし、現実には数多くのデータが入手できないことが多く、このときはこの手法は採用できない。

われわれが開発した重み付け分析や制約付回帰分析と称する技法によるとこの制限を解消でき、きわめて少数のデータしか入手できない場合でも、理論的に妥当なコストモデル式を作成できるし、これを活用することができる。本研究はこのような方法の概要を述べ、その活用方法について新しい提案をするものである。

今日のヒット製品は突然生まれてきては消えていくという浮動的、流動的な特徴をもち、個性的な顧客の潜在的なニーズやウォンツをタイミングよくとらえたものが多い。このようなとらえづらい顧客のニーズやウォンツに俊敏(agile)に対応していくには、新しいものを好む先導的顧客の動向を常時把握していなければならない。彼らは当該製品群に対するオピニオンリーダー、すなわち一般ユーザーに大きな影響を及ぼす先導的顧客だからである。本研究は製品ライフサイクルが短く、次々と新製品が投入されるような導入期や成長期の新製品を対象にし(事例として情報携帯端末をとりあげた)、ヒット製品づくりをするコンセプトメーキング法の1つとして、先導的顧客が当該製品に対し要求する機能を明確にし、その評点に基づいて、次期製品の新製品仕様をユーザーの視点から評価する方法を展開したものである。

市場における競争優位性を確保するためなどで製品差別化を行うにあたって、重要な役割を果たすのが付加機能である。本研究では、付加機能に対する顧客の曖昧で、しかも、顧客間でバラツキのある評価額を統合して顧客評価額の代表的価格を算出すると共に、この代表的価格の増減に伴う需要量の変化を予測する方法を提案し、この手法を活用してその付加機能の戦略的価格設定や開発設計段階における製造原価目標の設定などが合理的に行えるようにするものである。

さらに、本研究で提案した方法を家庭用電話機の付加機能の価格設定に適用することによって、この方法の有効性を明らかにする。

求められる機能を提供する企業にとって、新しいコンセプトの提案をして潜在ニーズを掘り起こし、そのニーズに沿ったシーズ開発をする必要に迫られている。一方、新しい価値を創造し、明確に他製品を差別化するための鍵を握るのは、製品を構成するキ一部品/キー材料ともいわれていることから、開発企画段階から、製品開発側の発注者と資材供給側の取引先との両者の研究開発部門を参画させたプロジェクトをつくり、両者が共同して製品開発を推進する資材共同開発VE推進の仕組みを確立し、価値を共に創造する基盤構築を行いVE活動を推進することが重要である。

この資材共同開発VE推進の仕組みについて、パイロット・プロジェクトを実行した結果、VEの適用範囲の拡大に効果の期待できる成果が得られたので、これに基づく方法論を以下に記述する。

大競争時代下で価格競争の厳しい家電業界では開発製品に対して、厳しい目標原価の設定と開発期間の短縮が必要である。しかし、収益確保に必要な厳しい目標原価を達成できずに製品化する事例がある。

本論文は目標原価未達の課題を改善するために、開発設計段階の目標原価達成手法である原価企画活動を1994年から実施してきた事例について目標原価未達の原因を分析評価した。この結果に基づいて、原価管理とVEを具体的に融合させてVE担当者が目標達成意欲をだせるシステマティックで組織的な活動をコンカレントにできる実践的な原価企画とVE活動システムを開発したのでこれについて述べる。

取り上げたVE対象の機能評価を行う際に、実用的には機能別にコスト分析したあと、このコストを基準にして、機能評価値をきめ価値指数を求めて判定する。

その過程で、多くの場合は全体の低減目標などのバランスだけで、解決のつくものもあるが、扱うシステムが大きくなり、また新しい機能を追加したり、ソフトを対象にするようになると判定が複雑となる。

本論文は、機能のコスト評価の段階で、目的にあった評価の価値指数を求める方法を提言する。

建設産業、特に公共工事の一部において設計VEの導入が始まった。しかしながら、現状の設計VE導入に際しては、VEについての基本的な理解がなされぬまま、まず形から入ることが多い。その結果期待したほどの成果が上げられず、設計VEそのものに対する誤った評価がなされることもある。これまでの設計VEへの参加経験から、公共工事設計VEにおいては、特にチームリーダーが結果に非常に大きな影響を与えることを痛感した。

本研究では、設計VEのもつ問題点を整理した上で、VEスタディを円滑に実施し、より大きな成果を上げるためには、チームリーダーとしてどのような考え方や行動がポイントとなるかを中心に論述した。

研究開発部門の生産性向上は、企業経営において重要課題であり、その課題に対応する管理技術としてVEは効果的であり、しかも、研究開発段階でのVE活動の実施はVE活動対象のなかで最も効果的である。そこで、本論文では、研究開発部門のVE活動をより効率化するために構築した、既に研究開発部門に普及している高度情報技術を活用した経済的システムとしてのイントラネットを利用し、チームデザインを重視するとともに、VE発想技法を活用したVEジョブのアプリケーション化と分散協調型のVE活動を可能にするVE活動支援システムについて述べる。

企業が永続的に発展するためには、それぞれの製品が必要利益を確保していかねばならない。そのための方策として原価企画が有効である。しかし、従来発表された原価企画は、どちらかというと完成品メーカー(例えば自動車とか、家電製品等)の新製品開発段階における展開方法に関するものが多く、部品メーカー(この場合、機能分野ごとに引合いを受けて生産している専門メーカーをいう)にとって活用しづらいものが多かった。

本論文では、部品メーカーにとって有効な原価企画の展開方法を、戦略・戦術的観点から望ましい「あるべき姿」を示すと共に、効果的に推進するための具体的方策として、①攻めの原価企画②守りの原価企画③要素別VE の3つの活動を効果的に組み合わせる方式を提案する。そして、これら3つの活動における現状の問題点を明確にし、その対応策として具体的ステップを示し、各ステップがなぜ必要なのか、また、なぜそうせねばならいのかについて解説する。

筆者がまだ設計の仕事に専念していた頃(1963-1985)、いくつかの製造業や食品加工工場の仕事に関与したことがある。その内のいくつかは、まだVEやプロセス・フロー・チャート技法など知らないままにやった仕事である。そして1960年代後期にはコンピューター・プログラミングの基本技術を習得し、それがソフトウェア・プログラム開発のフロー・チャート作りに役立った。

VEを勉強してから最初に化学工業タイプの施設に関与したのは、1987年に韓国の合成化学工場においてであった。このプロジェクトでは、筆者が1970年代後半に開発し、日本にも紹介した"エネルギー・バリューマネジメント理論"も適用した。

筆者が化成工業分野で本格的なVEに取り組んだのは1989年であった。まだこの業種に不慣れだったこと、チーム・メンバーの中にも具体的な化学プロセスを知らない人もいたなどの事情から、彼らの演習材料としてまずプロセス全体の完全なFASTダイアグラム(機能系統図)をチームワークで作らせた。そのプロジェクトでは、10段階のプロセス・ステップが並んでいた。プロセスの段階毎の入口(input)と出口(output)に焦点をおいて見て行くと、一連の論理的パターンが浮彫りにされてきた。それを最初として、多くのプロセス・プロジェクトに参画し、その結果をまとめ上げたのが、このProcess FASTまたはPro-FASTの技法である。

Pro-FAST技法は、プロセス・タイプ(装置工業)の対象プロジェクトをまず、ごく簡単なブロック・フロー・チャートでとらえて、それを単純な"包括的マスターFASTダイアグラム"に"変換"して研究するアプローチである。次に、そのマスターFASTダイアグラムを"拡張"して使うと、特定のプロセスの中に現れるすべての二次機能が捕捉できる。

VE活動は日常業務として定着している。各種の技法などによる取り組みや運用・展開などはいろいろな場面で行っており、各分野において独自になされている。そのため本論文は建物の計画から施工まで一連のVE活動に対しての考察を行うものである。その主な内容は、建物の機能性などの情報を共有化して、顧客や利用者のニーズを満足させるVEの展開をするものである。

企業経営の基盤の強化や経営資源の有効化を図るためには、これらを構成する組織や従業員等が保有する技術を総合的に発揮しなければならない。特に人の集合である組織に対して重要な要素である。

VEワークショップセミナー、VEジョブプランを適用する過程において個の集合体である組織に対してどのように作用して、どのように影響していくかを研究することによってVE技法の導入、普及を迅速化できると同時に、職場の組織に活力を与えることができると考え、VEを実践すると同時にこのメカニズムを研究したので、ここに発表する。

社会は人間の倫理観と美意識からなる価値観により変化する。企業はこの変化に対応し、価値の高い商品やサービスを市場に提供することで、社会に貢献し、存続をしている。

VEでは機能を「使用することを目的とする使用機能」と「色彩や形状などの顧客の欲求を刺激する貴重機能」に大別してきた。近年は顧客の欲求の対象が「物中心」から「人中心」へと大きく変わり、利便性、快適性、嗜好性、安全性などのような「人間の感性に関わる機能」が重要視されるようになってきている。

本論文は使用機能、貴重機能と重なり合う、人間の感性に関わる「感性機能」の存在と感性機能の機能定義に形容詞類を使用する方法を提案するものである。

新製品開発は企業にとっての生命線であり、良い製品を安くタイミングよく市場に投入し、常に顧客要求に応える努力をしなければならない。そこで本論文では、VEをベースにした効率的な新製品開発プロセスを設計することによって、顧客満足の高い新製品を極めて高い確率で実現していく方法を提案するものである。具体的には、まずVEの問題解決プロセスを開発設計業務の標準プロセスとして昇華させ、プロジェクト方式で製品開発を行いながらデザイン・レビューも有効に取入れてコンカレント・エンジニアリングの効果を引出す。

そして本論文で提案する機能分析等に関わる応用テクニックも製品開発の標準ツールとして装備することによって、ムリ・ムラ・ムダのないいわゆるリーン・エンジニアリング(一貫性のある新製品開発体制)を構築しようという試みである。

目的を確実に達成する機能をもつ「オブジェクト」という抽象的概念を取り入れることにより、建築を構成する「商品」・「サービス」を「抽象的な階層化されたツリー状の構造をもつ、オブジェクトの集合体」としてとらえることができる。この集合体の目的を実現する手段としてのオブジェクトをシステム的手法で抽出し、段階的に細分化、詳細化・具体化する。その過程で、その構成品の改善案を順次抽出し再構成する。その再構成されたものが、「商品」・「サービス」の、より価値の高い代替案となる。この代替案の選択を通じて、集合体としての建築の価値の向上を図ることができる。この考えに基づく手法を「オブジェクト指向によるVE展開手法」と命名する。

本論文で、オブジェクトの定義、その構造、および、その手法の展開手順を示すとともに、工法改善VEへの適用事例を示して、本手法の有用性を明らかにする。

一般的によくいわれることだが、不況時にはコストダウンの管理技術としてVEは重要視され、好況時には忘れられることが多いので、なかなかVEの本質であり、基本である機能定義を正しく理解し、活用している企業は少ないようである。

当社においても、VE概念やVE活動は一応定着しているが、VEの基本である機能定義は難解なこともあり敬遠されがちである。

本論文は、機能定義の中でも重要であり、その入口でもある使用者機能および基本機能に的を絞り、初心者でも簡単にこの両者を定義でき、また、一定の基準に基づいて機能レベルを自己評価できることをネライとして、機能定義用ワークシートおよび機能レベルチェックシートを開発した論拠と、その有用性を示すものである。

この機能定義用ワークシートおよび機能レベルチェックシートを使用することによる効果としては、VE教育や活動の場での機能定義の理解力向上、VE事務局のスキルアップとローテーションへの対応等により、一層のVE活動の活性化が期待できる。

なお、当社ではVAという呼称が定着しているので、以後VEをVAと表現する。

この論文では、施工段階でのVE事例を分析することにより、VE技法による改善アイデアが、他のプロジェクトでも利用されることが多いということに注目し、改善アイデアが、どのように展開しているかを追求する。改善アイデアの展開を考察することにより、新しいVEステップを提案する。

さらに、改善案の評価方法について提案する。提案する手法を適用した改善事例を評価することにより、提案手法の有効性の確認を行う。そして、単なるコストダウン案や改善案との違いを明確にする。

物が溢れる今日、消費者から見れば同じような商品が数多くのメーカーから世の中に送り出されている。これらはメーカ一間の技術力が均衡し、商品そのものの基本機能にも大差がないために、消費者から見るとどれも特徴をつかめず、同じような商品にうつってしまう。このような状況下において、メーカーとしてはどこに顧客の満足度をみいだし、いかにしてヒット商品を作り出すかが、重要な課題となる。

本研究では、このテーマに対して、VEの基本的な考え方であるV=F/Cの公式をベースに、商品の基本機能と顧客の満足度を知る上で重要度の高い人の感性の組み合わせから、機能Fの定量的な評価式を、さらには、商品の販売台数の実績から価値Vの評価方法を導き出した。そして、事業活動の中でこの評価方法を活用したVEの管理システムを紹介し、VEを管理する部門において有効性のある価値Vを考慮した企画・開発段階におけるコスト割付けの手法を確立してきたので、新しいVEの管理手法として提案する。

本研究は既存技術で既存市場へ参入する成熟期にある新製品で、製品差別化に使用・便宜上の機能が主要な役割を果たす製品を対象に取り上げ、製品コンセプトづくりの段階で、顧客の機能評価に基づいて製造原価目標を主要な構造物に細分化する方法を提案するものである。このような顧客の機能評価に基づく製造原価目標の細分化法は渇望されて久しいが、この分野の研究は極めて少ない。そこで、本研究はこの課題に取り組みコンジョイント分析を用いることにより新しい方法論を提案した。さらに、このようにして得られた構造物ごとの製造原価目標と生産者側の構造物ごとの原価見積値を比較・勘案して開発設計チームが納得する原価目標値を決定させるようとするものである。

VEは価値向上を目的とする一連の評価プロセスであるが、実際多くはコストダウンのツールとして捉えられがちである。しかし技術開発部門の立場としては、その性格としてVE本来の価値向上を目的とした評価方法がぜひ必要である。

本研究は「技術開発のねらいは価値向上を図るVEの考え方に沿うものである。」という認識から、これまで当社のVEでは評価しにくかった「技術開発のテーマ毎に異なる開発目標」を機能として評価することを試みた。また報告書式の上でもこれまでのコストダウンとしての視点から、価値指数として、価値向上そのものを示す価値向上率(U)を使い評価しようとするものである。

さらに実際の技術開発テーマにおいて、開発事業計画の初期段階で環境及び社会リスクを定量的に評価する必要性から、従来評価の対象とならなかったこのようなリスクを機能として評価することを試みた。

自動車を構成する部品の中で小物と考えられるような部品は、車両開発日程の後半になって仕様決定されることが多く、これに起因して相手部品(=大物部品等)とのレイアウト上の制約、および派生車型(車種)の追加設定に伴う要求性能の追加等で、部品の種類が多くなるという傾向がある。部品メーカーとしては、これらの製品に対しVEおよび共通化という製品改善を行うわけであるが、前記した傾向が弊害となり、なかなか効果が上がらないのが現状である。本論は製品改善を単一の対象品として捕えるのではなく、派生品を含めた全バリエーションを対象にしてVE展開することにより、バリエーション全体として最大のコストメリットを生み出し、さらに、この展開の中でバリエーションその物の共通化をも狙った、実践的VEプロセスの構築を行うものである。

建設工事の合理化の中で、工法の改革による合理的施工方法の改善が要求されている。建設工事は複数の工事要素の組み合わせにより構成されており、それぞれの要素が密接に関連付けられている。一般のVE手法では、要素別に検討を行った方が具体的なアイデアがでやすいが、その反面、相互関連的な面において支障が出ることも多い。個々の要素では、有効なアイデアでも、前後の関連を見ると有効性が減じられる場合や、実際には採用できない具体案もでてくる。一つの要素に対してだけの改善案では、全体的にみて効果が半減してしまう。ここでは、工事要素が比較的少なく、各要素のからみが大きい高層煙突工事を事例として、要素の分類から要素の関連付けによるVE検討を行った。その結果、個々の要素を他の要素と関連づけることにより、総合的に高機能な施工方法を開発することができた。この建築工事におけるアイデア関連付け法の手法とその検討結果について報告する。

ヒット製品を作り出すためには基本機能もさることながらその製品の付加機能が極めて重要な役割を果たす。本研究はこの付加機能の評価問題に焦点を当て、その新しい評価方法を提案するものである。本研究では付加機能のうち「顧客が求めている付加機能」を評価対象とする。「顧客が求めている付加機能」の評価値は当然のことながら顧客の評価値に基づくべきであるが、顧客の評価値はそのニーズや、付加機能に対する知識の程度などによって多様であり、そのバラツキは小さくない。本研究はこのバラツキのある顧客の評価値をファジィ理論を応用して合理的に集約する方法論を示し、それをRV車に適用し、その有用性を明らかにする。そしてこの結果を開発設計段階の売価設定やVE活動における原価目標の設定に役立てようとするものである。

VEは実践工学であり経験工学であるといわれている。しかしながら、実践に寄与するVErを育てるために、数多くのVE実践活動を経験することによって実践力が身につくのを待っていたのでは、今日のような変化の時代のスピードについていけるものではない。加えて、組織のフラット化は一層の個の力量の強化を必要とし、商品競争力を向上させるためのVE技術をいかに早く広め実践に寄与するかが重要な課題のーつとなってきている。とりわけ、VE教育におけるVEマインドの移植成果は、その後の実践の場での戦力力量に大いに影響をもたらすものであり、従来のVE教育における課題を社内VEセミナーの実績データをもとに解析し、『実践的VE教育のすすめ』として提案する。

建設市場の発注量の低迷と、低コスト化の傾向は今なお進行しつつある。総合建設業においては今まで以上の低コストで施工する必要が生じ、総合建設業の各企業内におけるコスト低減努力だけではその限界をこえたといえる。

そのような状況下において、ここでは総合建設業における専門工事業者からのVE提案を協力業者からのVE提案と位置付け、以前にも増してVE提案が出てくるようにし、また、一般的製造業における発注者と協力業者との関係のような、固定した協力業者との関係を保ちながらさらなる低コスト化に対応するためにはどうすればよいのか、総合建設業と専門工事業者の双方にメリットがあると思われる方法のーつとして、協力業者のVE提案制度という新たなしくみを提案するものである。

製品は、その製品に作り込まれた機能がその目的を果たすが、当社の保守サービスという商品は,そこに働く人がその目的(目標)とする機能を果たしていくことに特徴がある。この所期の目標を達成していくには、各職場の人が目標を認識し、働きによって成果をあげていかねばならない。

目標達成に必要な機能は、動機づけをする機能、運用を図る機能、評価をする機能および支援をする機能の4つを具体的に伝え、行動する機能である。これら4つの機能を幹部、VE推進センターおよび各職場が実践した結果、定量的成果として目標値を達成し、定性的成果として経営効率の向上を目指す礎となる新しい企業文化、風土を築くことができる。

建設業におけるVE活動は受注者側の収益改善が主目的となりやすく、その結果価値向上を伴わないVE提案となるケースが多い。VEの持つ課題解決のための明瞭かつ公正な意志決定の方法が発注者、設計者、受注者など、建設に関わる関係者にとって正しく理解されているとはいいがたい。

建設業におけるVEを真に、普及、定着させていくためには受注者側におけるVE推進組織の役割を見直し企業内VEの枠を越えた新しいVE推進組織を確立し、建設に関わる関係者のVE基盤整備を行いVE活動を推進することが重要である。

この新しいVE推進組織について一年間試行し、検証の結果わが国におけるVE普及と建設業の信頼向上にとって効果的であると考えるので以下に詳述する。

製造業における新製品開発は、まったく新しい分野の製品を開発するというよりも、基本機能は変わらない現行品の類似品であったり、改良型の製品である場合が多い。そのような製品を従来より安くするためには、作り方を見直さなければならない場合が多い。すなわち、開発初期段階での生産性改善が重要となる。

しかし、製品開発初期段階でのVE活動において、生産性を評価し改善する技術は、VEではまだ充分に研究されていない分野である。

本論文は、製品の生産性を向上させるために、開発初期段階で、生産設備のVE活動を実施し、その活動の中で製品の生産性改善を行うことを提案するものである。

現在、建設省総合技術開発プロジェクトで開発中の新建築構造体系が確立すれば、構造設計者はコストエンジニアリングの一環として、自由なアイディアで技術提案をして構造設計が可能になる。その際の技術提案の最有力候補の一つに免震構造の採用が考えられる。

しかし、これまでの免震構造はコストは多少アップするが、機能(耐震性能)を大幅に向上させることで、価値を高めてはいるが、高い耐震性能が要求される一部の用途を除き、コストアップを許容しにくい一般建物への普及にまでは至らなかったのが実状である。

そこで、本論文ではコストアップの問題点を定量的に整理した上で、従来型の耐震構造の代替案として免震構造を採用した場合の設計VEの可能性と有効性について検討を行い、その有効性を確認した。

さらに、新しいコスト評価手法として、地震に対するリスク管理を含めたライフサイクルコストの低減についても免震構造の有効性を示した。

商品の価格破壊が進むなかモノ造りの面において生産体質の強化が急務となってきた。要求されるコストダウンの目標が大きく部門ごとの個々の活動や、単一の管理技術の活用では限界がある。各種管理技術の融合を図り、実践的かつ効果的な問題解決手法の確立の必要性を痛感している。

このような背景から、本論においては「製造現場における実践的なVE活動」を考える上で、特に「科学的管理手法のIE」と「機能的アプローチ手法のVE」の利点を融合化し、製造工程における管理技術として体系づけた。

その活動ステップは次の3段階で構成されている。

① IEの基本を活用して工程を細部にわたり分析しVE手法で機能定義する

② IE手法の核となる時間のデータから各工程を製造VEの効率指数に変換する

③ 製造VEの効率指数をもとに機能的アプローチで創造的に工程の改善を行い、ロス削減に取り組む

建設生産の発注から施工、引渡しまでのプロセスは日本独特のもので、外国のシステムとはかけ離れたものである。海外建設業の市場参入、閉鎖社会でおきた談合問題の批判に伴う入札方法の改革など、建設業界全体が激烈なコスト競争の嵐に巻き込まれている。

どのような状況下でも、顧客の満足する価値すなわち作品を提供することは建設業者の責務である。これからは、企業内VEに取り組むだけでなく、顧客と一体になったVEを指向することで、国際競争力に耐えうる建設業へと変わって行かなければならない。建設流通システムの簡素化、建段施工の省力化(無人化)、海外の安くて良質な資材の輸入、ならびに建設生産プロセスの改善などの提案を通して、日本の建設業のかかえる問題点の解消の一助としたい。

建築産業において、特に建築施工部門では従来から建築生産が一品受注生産であるがゆえまた、施工部門がプロジェクトの業務を引継いだ時点では、生産対象(建築物)の設計図・仕様書・原価がほぼ確定しているため、生産対象の各部分・各部位を個別に取り上げ、改善案を作成し、通常業務と密着した日常的なVE活動を行ってきた。しかし、建築生産は各部位の集合体であり各部位の機能が生産過程においてまた、生産結果として相互に作用し、機能するものであるので個々の改善ではその効果・成果を十分に上げられず限定されたものとなってしまう。そこで、生産対象物をあらゆる角度から検討し、「繰り返しVE」も含め各部位の改善・VE手法を整理し組み合わせ、総合的なVEを確立する必要がある。

本稿では、実際に一つの生産物(建築物)を対象に施工部門が行った活動をとおして、大規模工事における総合的なVEのすすめ方を提案する。

再開発工事等の大型建設プロジェクトでは、地域住民・出資者から構成される施主(再開発組合等)からの将来の環境,景観,建設のコスト,工期,建物のグレード,品質等々のニーズに対して、設計者,施工者からの提案が要求される。

これらの諸要素を総合的にまとめつつ生産設計をおこない、工事を進めるには、解決しなければならない問題点が非常に多く、かつ処理する時間が少ないのが常である。

とりわけ、生産設計を早期に完成するためには、設計と施工の責任範囲を分割すべきでなく、設計部門が基本・実施設計作成する作業の中へ施工部門が参画し、多岐にわたる問題点の同時解決進行作業が必要である。

一方、このような大型プロジェクトにおいては、従来の3時間VEによる作業所VE活動では対応できないものも多くある。

本稿は具体的建築物件において、生産設計を進める中で各種問題点をトータルVEプログラムに基づき解決し、見通しを得たので提案するものである。

建設産業政策委員会が1995年4月に策定した「建設産業政策大綱」の基本目標の一番目に「エンドユーザー(国民)にトータルコストで良いものを安く提供する」と示されている。これは、われわれ建設産業に携わるものに対する社会的な要求であり、果たすべき使命でもある。

この社会的使命を果たすためには、対象プロジェクトに携わるすべての人々が従来の枠組みを乗り越え、エンドユーザーの立場に立って能力の結集を図らねばならない。

本稿は、このための有効な手段としての「公共工事における協同VE」の必要性とその進め方について提言するものである。

近年、当社の作業所における「VE計画会議」は、VE計画のためだけでなく、VE実施のための会議としても位置付けられるようになってきた。即ち、会議の内容が、VEテーマの摘出にとどまらず、多くのアイデア発想やアイデアの具体化を含むものに変化してきている。本論文は、当支店の「VE計画会議」において機能分析がどのように展開されているかを検証・分析し、それを踏まえて「新しいVE計画会議」を提案するものである。

企業が永続的に発展するためには、個々の製品がそれぞれに必要利益を確保することが重要である。本論文では、それを可能とする原価企画活動についての概念と進め方を、体系的にまとめると共に、その定着化における課題について実態を踏まえて抽出し、原価企画活動を円滑に進めるためのVE適用方法の望ましい姿を、仕組みづくり・人づくり・道具づくりの面から総合的に提案する。

カーメーカーは車両の商品性向上のために、様々な装備品を開発しユーザーに提供している。それぞれの装備品は標準装着、オプション、車両グレードによる使い分け、等に分類され車両全体の製品仕様に組み込まれる。ユーザーの各装備品に対する評価を正確に把握しユーザーにとって最適の製品仕様を設定できる方法が確立できれば、製品の価値を高める有効な手段となる。

従来、製品仕様は様々な情報をもとに経験的な判断により決定されていたが、最適化を追求するためには今一歩精度に問題があった。

本稿はユーザーにとっての必要な機能、不要な機能を、装備品という切り口からより高い精度で評価し、製品仕様に反映させる方法とその検証結果について述べたものである。

VEの成果拡大を図るため、今まではあまり目を向けていなかった単体部品(構成部品を持たない単一材料や単機能部品)についてもVEを実施していかなければならない。単体部品は製品のVEの適用が難しく成果も出しにくいので、製造のVEを適用しているが、VEの活動メンバーからは手軽に使えて、より成果のあがる新VE手法が望まれている。

現在行っている製造のVEでは製品改善も考慮するようにはしているが、手法として活動の進め方が製造工程を中心にした進め方となっているため、製品の機能に対する意識が薄くなりがちで製品の改善力に欠けるといった問題点がある。

このような問題点を解決するため、誰にでも使えて成果が得られ、実戦向きで、しかも従来と同様な時間で活動できる製品・製造混成型VE手法を開発したので、これについて述べる。

市場では、ソリューションサービスについての必要性が叫ばれており、これへの対処として、各企業はいろいろな方策を検討しつつある。

本研究もこのための1つのアプローチとして、この分野にVEを適用してみた。それは、提案営業の一環として、問題点がモヤモヤして具体的に提示できないお客様に対して、お客様の価値を指標化して定量的に定義・把握し、お客様の潜在的問題点を抽出する。そしてそれをベースに、改善策を創造し、提言していくための手法である。

当社は情報処理会社であるが、本手法により、お客様の問題解決のために、適切な情報技術を効果的に提案し、提供することができ、お客様が期待するソリユーションサービスが実現しつつある。

社会環境の変化に伴い、各企業においてはVE思考に基づいた経営戦略、商品戦略が従来にも増して求められている。一方では、そのような企業ニーズに対応して開発された商品を価値評価する際に、従来のV=F/Cという概念式だけでは、正確な評価が難しいという現実もある。

そこで我々は商品開発段階で、より実態に近い価値評価が可能な概念式を作り上げる事を模索してきた。一昨年の全国大会では、PART-Ⅰ(その①)として社会価値要素とライフサイクルコストの概念を盛り込み、そして今回はPART-Ⅱとして、貴重価値要素を盛り込んだ概念式を提唱している。この結果、現在の商品が保有している各価値要素を網羅した評価が可能になったと考える。又、検証の意味も含めて我々の提唱した概念式を用いた評価も併せて実施している。

VEの「機能評価」では「機能」が果たす値打ちを、コスト換算(仮に「C」)して、おなじ機能をもつ代替のものや、こと、あるいは理論値で評価(「F」)し、判断材料にする。現状を、改善、改良、組織なら改革する目的で、活動しているにもかかわらず、価値を検討する段階では、例えば、手続きやサービスが対象なら、評価値を強制的に低い数値で割つけ、力を入れたい分野は配分を増やす。また、製品や、製造など、ハードのVE対象でも、付加価値を上げたり、ある分野の機能をアップしたいときには、その機能分野のコスト配分を増やす。その結果、F/Cが1より大きくなったり、(C-F)がマイナスとなって、現状の方が改善後より価値があるという、当初の思いと離れたことを容認してきた。本論文は、果たすべき成果を先取りして、算定式に用いれば、このテーマに解決がつくことを指摘し、その具体的な方法について提案する。

近年、問題解決のためのシステム化指向が高まっており、情報の概念化と標準化がより一層、求められるようになってきた。

本論文で提起する『入出力形態法』とは、問題解決に際しての情報の流れを、簡明な入出力の形態、すなわち入力部、処理部、出力部の三区分に体系化することにより、早く的確に解決法を見い出そうとするものである。意図的に構成フォーマットを同じにし、多くの人が手軽に、かつ一定レベルの情報を確保する狙いもある。これは一種の情報整理手法とも言えるが、考え方の整理ができること自体、システム指向の表れでもあり、VE活動に不可欠な価値創造の展開に多少なりとも寄与するのではなかろうか。

『入出力形態法』は、企画提案の分析やソフト開発の概念化構想などに有効であると考える。

現在、企画,構想から設計までの開発初期段階のVE活動によるQ.C.D.の作り込みが重要且つ、効果的であると一般に言われている。

そして、このことは実際の開発業務におけるVE活動で、数多くの実績を残していることからも証明されている。

また、生産部門のフロントローディング化により、開発部門と生産部門の連携によるサイマルテニアス・エンジニアリング活動がクローズアップされている。しかし、現状では、この活動における開発、生産両部門で共有できる管理技術は確立されていない。

一方、VE活動は使用者機能の追求を目標とした管理技術としては成熟しているが、その反面、生産性については必ずしも十分な評価方法や判断基準が確立されているとは言えない。

本論文では、VE活動における生産性評価を補強する手段として、DFMA手法をVEのステップに導入する方法を提案するものであり、同時に、この新ジョブ・プランを導入したVEを開発、生産両部門で共有できる管理技術とすることを意図した。

ソフトVEの機能定義方法について、簡易で、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)への拡張性のある方法を提案する。それは、業務規定から、目的・手段の機能をセットで抽出するという方法である。この方法によれば、機能分野の判定が容易、かつ、機能の定義も、制定の目的の項から簡単に抽出できる。規定には、品質マニュアルで示すべき、標準と、その具体的作業手順や記録のとりかたが、示されている。従って、この機能系統図を品質作り込みフローの段階毎のアウトプットについて作成すれば、品質マニュアルを基礎とした標準化が実現できることになる。さらに、各機能の手段の妥当性・価値を検討し、VEを進めれば、手段の合理化、すなわち、BPRが、可能となる。

半導体に使われる加工用材料のコストを算出し評価しようとする場合(通常ウェーハ当たりで求める)、生産工程が数百ステップもある同一生産ラインでも非常に多種の製品を作っているので原価計算が複雑であった。更に生産ラインが多拠点に分かれている場合、同一製品と言えどもライン間のバラツキによる"ロス"の発生が生じる。

本稿の狙いは、同一製品で、加工用材料コストの評価をする場合に、加工の大きな単位である"マスク・パターン加工層数"の回数(n)でノーマライズしたものを「工程機能」とし、これと、加工用材料コストを相対比較する手法を検討、評価を行った結果、"つくり方の差"、"ラインの差"によるバラツキの顕在化が出来たので、その手法について述べる。

建設産業の近代化、合理化、構造変革と大きな転換期を迎える中で、我々、専門工事業の体質及び組織の自己変革が求められ、今までの慣習を捨て、企業として新たな組織つくりが重要な経営課題となった。

ここで我々の経営活動に価値を創出するには、どの様な思考プロセスを身につける必要があるかと言う点で、環境変化情報と我々の願望とを読み取り、現在との比較を行いながら取り組んだ「組織変革へのアプローチ」の検討内容を提示する。

建築生産における商品開発という側面をみると、一品受注生産であるがゆえに、個々のプロジェクトにおける業務プロセスの大部分を対象としている。つまり、ルーチンワーク(通常業務)そのものが商品開発といえる。

一方、社会経済情勢が大きく変化している現在、従来の生産者主導の価格形成から市場価格主体へと、マーケット・ニーズが激しく変わってきた。このような状況下における商品開発に対応するために、コスト管理がより重要となり、特に事業企画といった川上段階から、生産プロセス全域に渡り、適用されつつある。

このように広範囲に渡ったコスト管理システムは、多少の欠落部分はあるにしろコストエンジニアリングの領域に著しく近づきつつある。このような段階においては、VE活動・組織・プロジェクト管理システム・ツールとしての概算見積り手法等、幅広い仕組み作りが必要であり、これらを洗練化させてシステムを構築しなければならない。

本橋では実務面からコストエンジニアリングによる商品開発の方法論と、活動の実際を述べる。

VE活動において、ジョブステップを順に実施して、多数のアイデアを得る所までは、着実に到達できる。しかし、多数のアイデアの中から、良い改善案をつくるまでの各ステップはチームメンバーのスキルに非常に影響される活動であり、この各ステップが結果の成否を左右する。

本論文は、アイデア発想から具体化・洗練化のステップに至るまでの間のアイデアの組合せの仕方について、まず現在の方法の問題点を明らかにして、そこから解決するポイントを整理した。そして、問題点を克服する新しい技法を提案した。

これにより個々のアイデアを組合せてまとめる際の段差を着実に登り、製品に結び付ける事を助けることを意図した。

近年、教育訓練の分野でVA適用の期待が高まっている。本論文は、戦闘機用のパイロット養成を狙いとしたフライト・シミュレータ訓練価値について、基本的な考え方を述べたものである。

戦闘機パイロットの操縦能力には、操縦資質、操縦技術、戦闘技術、空中感覚及び空中判断が必要であると考えられるが、このうち、操縦技術と戦闘技術はシミュレータ訓練の得意な領域である。シミュレータ訓練における意義とは何か。また、実際の航空機を使った訓練と比べ、訓練課目、訓練の重み、訓練の有効度はどうなのか。

ここでは、シミュレータを使ったパイロットの訓練機能について問題提起すると共に、その価値を判断すべくケース・スタディを試みた。

今日、顧客の価値観やライフスタイルの多様化、個性化が進み、顧客動向を把握することが非常に困難となってきている。さらに、製品のライフサイクルの短縮化にともなって、「ヒット製品」や「売れる製品」が生まれにくい状況となってきている。このような状況において「売れる製品」を生み出すためには、顧客の欲求を満たす製品を作る方法論が重要である。この方法論が、製品企画段階における合理的な製品コンセプトづくりの方法、すなわち、コンセプト・エンジニアリングである。本研究は、コンセプト・エンジニアリングの新たな方法を展開したものであり、この方法を筆記具に適用し、その有効性を明らかにした。コンセプト・エンジニアリングの主な内容は、製品のソフト機能の評価法、ならびに、ソフト機能による製品特性の評価法を提案し、その評価法から得られる諸結果を統合して、製品コンセプトづくりへ活用するものである。

VEの適用を歴史的に見ると、購買部門の価値の高い部品の調達に始まり、価値の高い製品やサービスの開発や構想へと進展し、昨今ではバリューマネージメントと発展し、経営改善へVEを適用することで大きな成果をあげるに至った。

本論文では、VEが経営という立場から改善・合理化分野を俯瞰することにより、広範な対象領域から、経営戦略に基づく多くのVEテーマを抽出する方法の研究とその推進方法としての企画部門から~事業所に至る関連部門の有機的な結合と継続的なVE推進法を研究することにより、多くの成果を納めたので論文として取纏めたものである。

その研究の要点は、①経営方針・経営戦略と事業所の経営事態のギャップ分析による経営合理化ニーズの把握、②シナリオ法応用による"経営の将来の姿"の具象化と分析・評価による広範なVEテーマの抽出、並びに③巾広いVEテーマの長期経営戦略にリンクし、VE関連部署間の有機的に結びつきを持った、一貫したVE活動の推進方法について、事例をふまえ提示するものである。

建設業は個別受注産業で、その都度異なる要求の建物を、その都度異なる生産場所で、厳しい自然条件に対応しながら、主として屋外で生産している。そして、それらの建築物は、施工計画によって品質・工期・安全などが保証される性格を持っている。

そのため、施工計画は、設計図書や契約書に示される発注者の要求条件と、生産場所の客観的与条件に基づいて、施工管理をする作業所の担当者と、企業の専門スタッフが英知を結集して、チームデザインをすべきものだと言われている。

この施工計画は、設定条件が変化すると計画も変わり、又、設計意図と敷地条件の相互の関連に施工計画の条件を合わせ、全体計画を想定して計画しないと、計画を実施する施工管理の段階で、大幅な変更が発生するものである。更に、建物を作る施工精度も、この施工計画の内容の精確さで決まる要素を持っている。これらの問題を解決するため、施工計画を立案する、施工計画の立案に関するVE手法を考案した。その手法を以下に提示する。

業務用機器のライフサイクルが短くなる中、目標の品質・コストを短期間で効率よく、達成することが望まれ、企業浮沈のカギを握っている。

機器開発における問題点は、設計者の主観的なところで進められているところが多く、結果としてコスト目標は達成できず、またトラブルも多い。

そこで、システム設計をVE手法で、システムの最適化を信頼性向上アプローチで行い、設計意図を忠実に機能・機構に反映することにより、目標のQ・C・Dを達成する方法を考えたい。

顧客が仕様を決めてくれ,それに合うものを作ればよい時代から,顧客が世界のどこからでも良いものを選ぶ時代になり,「どう作るか」より「何を作るか」,すなわち商品企画の段階が重要になってきている。

本論文はVAをとりまく商品企画と検証に最重点をおいた「売れてトラブルのない商品づくり」の仕組みの構築をめざしたものである。

「売れる商品」は生産財の場合は顧客の儲けが大きいことから,「顧客の利益V=顧客の収益F/顧客の出費C」として価値分析することにより,定量的にセールスポイントを抽出することを可能にした。又トラブルは変えたり,変ったところからおこり,70%以上が検証不足が原因であり,品質分析表(品質機能展開)により,洩れのない検証を実現した。

4年前にVE全国大会の研究論文として発表した現状打破の技法「WHY? & REALLY?法」の適用事例と基本の考え方を関西地区のVE大会にて発表する機会を得た。

その結果、大会参加者からかなりの高い評価を得ることができた。

また同手法を当社におけるVE活動の種々の局面で展開した結果、開発当初予想していた以上の応用領域の広い手法であることを改めて認識することが出来た。

そこで、展開の過程を踏まえながら、同手法を再分析し、展開編として報告する。

VEの基本的指針ともいえる「価値向上の原則」は、他の手法には見られない極めて特徴的な理念である。しかし、この「価値」とは分子分母の関係における比率尺度であること、そして必ず比較対象を有する相対尺度であることから、環境条件や観測者の違いによって様々な評価がなされ、その取扱いに苦慮する場合が多い。とりわけ、近年の急激な環境変化や価値観の多様化は、売れる商品づくりのための「価値の見極め」を一層困難なものとしている。

本稿では、顧客が認める価値のメカニズムを明らかにし、それを感度良く捉えることで、顧客ニーズを見逃すことなく構想案の提案まで持込むための一連の考え方と手順を検証された一手法として紹介する。

顧客自らによる評価を機能評価の段階で取り入れることは、より顧客のニーズに合致した改善案を生むために有効である。

ここでは、(ゴルフ場建設の)設計段階のVEを事例にして、抽出した機能をアンケート調査によって収集した顧客の評価要素によって機能評価する方法を検討した。

評価法には数値解析を用い、美しい、使いやすい、安心できるといった定性的な評価要素を定量化し機能と関連づけることで、より客観的な機能評価ができるようにしている。

発想法には種々のものがあるが、VEジョブプランにうまくフィットするものが比較的少ない。この論文では、既存の発想法を、VEのジョブプランに適合させるため、発想の原理と共に、大脳生理学や、社会心理学上の考察を加え、考案した「3分間発想法」を紹介する。

「3分間発想法」には、「発想の間口を絞る」「発想中は発言禁止」「発想後はアイデア自慢を行う」等の10原則を設け、実施に当たっての規範とした。

また実施の結果多数の現実的アイデアが得られ、多数の特許出願等、多くの成果を得ることができた。

当社がVEを導入して以来、その活動の中心となってきたのは工事部門のVE活動である。本論文では、その中で、建築作業所におけるVE活動を3段階に分類し、各々の段階ごとの分析を行い、VE活動の拡大を目的とする「量の拡大」と、内容の充実を追求する「質の向上」との両面から効率的なVE活動を推進していくための方策を探ろうとするものである。

わが国の主要企業において、VE活動の「アイデアの具体化」のステップにおけるコスト見積の実態は、正常な(現有設備等による従来の延長線上)コスト・レベルで行われているのが約70%であり、理想的な(実現可能な最経済的)コスト・レベルで行われているのが約10%程度となっている。

ところが、正常なコスト・レベルと理想的なコスト・レベルの差は、製造技術の進歩が著しい現在、小さくない。

従って、VE活動の目的である「機能を果たす多数の手段の中から、最も合理的・経済的な手段を選び出す」ためには、改善案検討時のコスト見積は最経済的製造手段を追求した、実現可能な理想的なコスト・レベルで行う必要がある。

本論文では、「アイデアの具体化」のステップで、最経済的な製造手段を追求したコスト見積をすることにより、次のような改善が可能であることを述べる。

1. コスト見積が適切にできることから、改善案の価値改善率を高めることができる。

2. 特に外作品につき、改善案作成時に、算定したコスト見積値を目標にした、取引先との共同VE等により、外作品の価値改善が促進できる。

企業の経営環境の変化が激しい今日においては、極端な社員の流入、流出が有り得る。企業内でVAを導入し、それを展開して、適用分野の拡大を図り、その企業独自のVA管理システムが一時期完成したとしても、これのメンテナンスを怠ると短期間にVAポテンシャルのレベルを引き下げてしまう場合が多く見られる。VAのポテンシャルを維持、向上させていくためには、導入期と変わらないほどの、ときにはそれ以上のVA普及の工夫と努力が必要である。

VA活動の推進管理方法として、従来、節約額などの目に見える成果を推進管理の指標として管理してきたが、それ以外に、企業内のVA推進部門は常に組織のVAポテンシャルに視点を置いて実態を把握することが大切である。なぜなら、VA活動の陳腐化は、「VAポテンシャル」と「VA推進管理目標」とが整合していないことが原因で起こることが多いからである。そこで、VAポテンシャルが毎年変化し、又同時に各個別組織でそのレベルが一様でない場合において、この二つの要素の不整合によるVA活動の陳腐化を最小限にするために有効なVA推進管理目標の設定方法を提示する。

尚、本論文でいうVAポテンシャルとは、組織全体のVA活動の潜在能力をさす。

本論文は、従来のVE概念を発展させ、V=F/Cの概念式にあってFの今日的思考Cの真のライフサイクルコストの捕え方をベースに、新時代に対処できるような新しいVE概念について考え、それに基づいたモデル式を提唱し、ワンサンプルによるモデル式の検証を行ったものである。

一言で述べると価値概念の総合化を狙ったものであるが、Fの従前の使用価値概念から、商品やサービスを提供する企業や、それらのライフサイクルの間に発生する多くの価値、廃棄に至るまでの社会に与える価値に発展させたものである。

具体的には省資源的要素に時間関数を考慮する事により商品ライフサイクル間(発売~廃却)での価値変化を面積で評価するものである。

更に、資源の再利用の時代を控え、廃却時にリサイクル率を評価する事により総合価値評価に近づけると同時に、廃棄していた資源の再利用による新たな価値の発生、価値変化に連続性を持たせ再利用段階に於ける価値評価への期待を残している。

このモデル式を適用する事により生産側での総合的な商品評価が可能になり、前段の社会ニーズに適合した商品を開発する際のツールの一助となり、更に言えばVEのより広範囲な適用へ繋がる可能性を秘めた概念であると考える。

今日、企業を取り巻く環境は、かつてないほどきびしい状況にある。その中で、各企業はリストラクチャーを盛んに行い、現状打破の課題解決をはかろうとしている。しかしながら、現状分析から入るアプローチでは、どうしても現状の延長線上の改善にしかならない。そこで、願望の実現こそ大切であるとの認識から、願望把握より入るアプローチが必要と考えた。

そこで、本論文では、VEの良さである機能的見方からの斬新な課題解決法を生かし、さらに上流の目的(広義の機能)から展開することで現状打破をはかろうとするものである。具体的には、従来のVE基本ジョブプランの前に方針把握ステップ(願望把握、目的把握、価値観創出、価値把握)を入れることにより、現状のレベルと比較し、飛躍的に改革された新しいレベルを創造するアプローチを確立した。

VEの有効性が社会的に認知され、建設工事においては請負契約にVE条項を折り込む動きが見えはじめた。本論文では、民間の建設工事契約にVE条項を適用するにあたってのポイントを抽出し、変更提案の際のトラブル等を防止してVE条項を効果的に活用するための検討を加えた。

VE条項の民間工事への適用に際しては、受注者は発注者から信頼を得ることを基本に考えて、VEへの理解、契約条項への理解を得るとともに、発注者のニーズを正確に把握してVE提案することが必要である。

かつて生活水準向上と経済力拡大のために進めてきた大量生産、大量販売が環境に影響を与えるようになった。VErが携わって開発した高機能、低価格、高価値製品は顧客の満足を得て、生活の向上と企業の発展をもたらしたが、プラス面だけを評価できない時代になった。これからは企業の環境への取り組みが自らの存在と活動の必須の要件といえる。

地球環境問題のような複雑で難しい問題こそVE適用の新分野だと考え、企業市民としての対応と新しい価値観による「知恵ある豊かな生活」への変革を提案した。それを実現するため、環境保全を志向するVE推進の7原則をあげ、環境保全の12のキーワードと環境保全の8ステップなど5項目を示した。またこれらのVEジョブプランへの組み込み方と各ステップのチェックリストを例示した。さらにこの方法の実践事例を数件あげて、価値向上と環境保全にかかわる有効性を証明した。

開発の初期段階にVEを適用することの重要性については言を待たないが、二次メーカ一、三次メーカーと縦の繋がりによって構成されている我が国の自動車製造業界においては、中小の部品メーカーがVEを展開する上で、数々の障害があることも事実である。今回はいすゞ自動車グループ21社が3年に渡って研究してきた『自動車部品を扱う中小メーカーにとって、効率の良いVE展開手法とは何か』についてその研究成果を報告する。

企業における課題/問題が大きく複雑になってくると,その解決のためには局面に応じて最も有効な手段/道具(管理技術)の選定が重要となってくる。しかしながら,道具は良くてもそれを使う人の技量が見合っていないと十分な効果をあげられない。要は,企業にとって手なれた道具を有効に活用して成果をあげることである。本論文は,新製品の企画段階においてQCとVEの特長を生かし,品質表と機能・方式を融合・展開し,企画した製品の価値評価の方法を提案するもので,特徴として次の点があげられる。

1) 機能の達成条件は品質表により企画する

2) 機能評価値は方式評価値(基本方式の品質特性達成度合い)とする

3) 価値評価は基本方式の設計品質総合評価値と方式コストにより行う

システム機器における価値評価の対象として、機能・性能や操作性と並んで整備が重要視されつつある。整備とは、整備員、補給支援、ツール、技術データなどの整備要素を統合したもので、稼働率の向上を図るのが狙いである。

ここでは、フライトシミュレータというシステム機器の整備を例にとり、VE基本式を構築するとともに、その整備価値を分析するため、パラメータを設定してケーススタディを行った。また、ライフサイクルコストからみた評価を試みた。

システム機器の整備価値とは何か。これまで注目されることの少なかった、こうした課題に対し、一つの考え方を示した。

半導体製造用生産設備は非常に高価なため、出来るだけ設備を休めずに、動かす時間の割合を大きくすべく使い方の工夫をして、一枚当たりのウエーハの償却費などを小さくする事が大切である。そのためには、設備の稼動率を出来るだけ大きくし、一枚当たりの処理時間を出来るだけ小さくすることが必要である。またライン全体の処理能力改善を出来るだけ時間的にも、経済的にも効率的に行うには改善の順序を決めることが必要である。

時代とともに顧客のニーズが高度化・多様化している。それに応えるためには、従来の調達方法では対応が難しくなってきた。従来の調達業務では、主に作業所からの資材、労務および外注の購入依頼により商談し契約を行ったが、顧客および社会のニーズに応えるには、事業の流れの各段階で、営業・設計段階まで川上にさかのぼり、顧客のニーズ情報を収集、分析をしてVE手法を用いて改善し提案する方法を取り入れる必要がある。

特徴としては、従来の機能系統図と調達業務より作成した機能系統図を重ねて活用する方法を取り入れている。後者の機能系統図を調達機能ツリー図と名付けた。この調達機能ツリー図を用いて改善対象機能を決めたり、機能評価およびアイデアの評価に活用する方法を取っている。

また、提案方法では顧客に改善案を納得していただきやすい方法を取っている。その活動結果を情報として蓄積し、他の工事物件で資料として活用が出来るようにしている。

以上をVEステップに盛り込み適用したところ数多くの良い効果が得られた。今回、論文にまとめ報告する。

最近特に地球規模の環境問題がクローズアップされ,全世界的に対策の必要性が緊急課題として取り上げられるようになってきた。

このような中で,建設産業にとっても環境問題を抜きにしては工事が出来なくなりつつあり,社内における建設VEの中にも環境問題を取り上げたものが多く提案されるようになってきた。そのため,このような環境改善のVE提案を正しく評価するための評価基準が必要とされるようになった。また,環境対策を行う際に,その基本的な考え方と評価方法を示す事によって,より有効な環境対策が計られると考える。

ここでは,当社のVE実施例の評価項目の中に「環境への貢献度」をつけ加えるに当たり,評価方法のーつとして,その基本的考え方に化石燃料の消費削減をとり上げ,建設VEにおける消費エネルギーの削減量を「エネルギーコスト」に換算することにより,定量的に評価する方法を提案する。

コンピュータ・ソフト分野への、VA適用が盛んになるにつれ、ソフトウェア技術者からは、その手法のさらなる改善要求が、熱心に提起されるようになった。要求は多岐にわたるが、結論は、より納得性の高い手法への期待である。考え方がより合理的で、作業により困惑の生じない手法への期待といい換えることができる。

これに応えるために、ソフトウェア技術者の協力のもとにプロジェクトを編成し、研究を重ねた結果、一定の成果が得られた。

一つは、合理性という面では最大のネックとされている、機能評価の進め方に、合理的手法が開発できたこと。もう一つは、困惑回避の面から、作業の容易性の高いジョブ・プランの進め方が、開発できたことである。

内容は、あくまでも、当社手法の改善であるが、コンピュータ・ソフトVA手法の一つの考え方には違いないので、一石を投ずることにした。

なお、研究過程でのソフトウェア技術者の協力に敬意を表し、合理性と容易性をまとめて、実務性という用語を使うこととする。

現在、十分な製品戦略、マーケテイング戦略下の合目的な製品コンセプトづくりなくして"ヒット製品"をうみだすことは困難である。そこで、本研究は製品コンセプトを「消費者サイドからみたNeeds(潜在欲求)を探求し、メーカーがこれらに応えるBenefit(機能・便益)を決定し、それに経営方針を加味して、製品に託した企業メッセージである」と考え、既存市場に既存技術及び改良技術で参入する新製品のコンセプトづくりを実用機能面から支援する新しい方法を提案するものである。その特徴は実用機能を機構・構造上の機能と使用・便宜上の機能に分類し、それぞれについて潜在欲求を明らかにし、さらにそれらの情報をまとめ、集約した表を考案しようとするものである。なお、本研究は「魅力機能による製品コンセプトの構築支援法」と一対となって補完しあい、総合的な製品コンセプトづくりの方法論を構成するものである。

作業所VEに関する手法や実施方法については、これまでに、多くの場で発表され、定着してきた。しかし、最近の社会環境の変化により、ゼネコン各社共、工事量が大幅に増大し、人手不足が叫ばれている。このためVE活動をいかに効率化し、顧客の満足する製品を提供するかを検討しなければならない。

本論文では、従来の作業所VEの進め方を見直して現在の企業環境に合わせた、効率的なVEの実施方法、ならびにVEジョブプランを述べる。その特長は、工事受注前段階からのVE活動の着手、組織的な活動の充実、施工上の重要なポイントのVE改善を優先的に取り組む点である。

建設作業所における生産活動において、生産性向上の要求の中で生産活動を管理する技術者は減る傾向にあり、工事管理支援システム開発による合理化が必要とされる。そのシステム開発についてVE手法に基づく効率的な方法の開発を試みた。すなわち改善の対象として管理支援システム構築とその運用とに区分し、その取り組みの仕組みが異なるため、対応する内容を明らかにした。また作業所における必要なニーズを的確に確認し、シーズを探索しその機能展開を行い、改善案にいたるジョブプランを提案した。

特に機能分析は、システム構築についてはシーズにかかわる要求事項・制約条件を摘出して機能に変換し、またシステム運用についてはニーズにかかわる主として問題点を機能に変換し、おのおの改善案に結びつけることとした。さらにその手法を作業所の仕上げ管理においてバーコードとパソコンを活用した工事管理支援システム開発に適用した事例を示した。

商品開発段階からの0 Look、1st Look VE活動は、2nd Look VE活動に比べて大きな成果を得やすい。しかし、商品寿命の長い誘導電動機のような成熟製品においてはモデルチェンジのインターバルも長く、その間の収益維持確保のためにはどうしても2nd Lookを中心としたVE活動の強化が必要不可欠である。

一般的に2nd Look VEには、製品構成部品の形状や適用材料の変更などに多くの制約条件がついて、思うような成果が上がりにくいのが実態である。それをカバーするためには製品や構成部品の対象範囲をできるだけ広くとらえ、多くのアイディアを発想し、その中から真に効果のあるものをみつけだし優先度を明確にし、効率的な活動展開を図る必要がある。

本論文では、この2nd Look VE活動を効率良く推進するための「VEアイテム展開表」、「VEポートフォリオ」を考案したので、VEのー技法として提示する。

近年、化学反応系材料製品の開発設計は、高機能化・高信頼性が求められる一方、開発期間短縮に対する要求も強くなってきている。この相反する要求に対応するため本稿では、開発設計段階における信頼設計法として、VEの機能分析とQCの信頼性設計を融合したFDM法 (Function Dispersion Matrix 法) を提唱する。これは、物の流れ(反応メカニズム)を軸として、対象製品に必要な機能と現在起きているバラツキ原因とを対応させ、機能と機能達成レベルを同時に改善する方法である。

情報システムの開発に当たって、効率的な開発を行うための支援ツールは、沢山ある。

しかし、開発しようとする情報システムが本当に利用者にとって有効で価値があるかを事前に診断し、評価するツールはないと言っても過言でない。

そこで、VEの原点である「有効性」に的を絞り、開発の上流段階で価値ある情報システムを開発するための工夫を技法としてまとめた。

本件は、筆者の体験に基づき、「潜在ニーズの早期顕在化」及び「価値の診断と評価技法」を中心にV=N/Cなる評価式により、これらを定量化する考えを示すものである。

本技法により、お客様の予算内で有効で価値ある情報システムの開発を実現させようとするものである。

従来から魅力機能の定量化に関しては研究されてはいるものの製品コンセプトづくりとの関係で取り上げられたものは少ない。そこで、本研究は製品コンセプトを「消費者サイドからみたNeeds(潜在欲求)を探求し、メーカーがこれらに応えるBenefit(機能・便益)を決定し、それに経営方針を加味して、製品に託した企業メッセージである」と考え、既存市場に既存技術及び改良技術で参入する際の新製品のコンセプトづくりを魅力機能面から支援する新しい方法を提案するものである。その特徴は魅力機能を定量化して評価すると共に体系的に図示し、改善すべき魅力機能とその程度を明らかにし、さらにそれらの情報をまとめ、集約した表を考案しようとするものである。なお、本研究は「実用機能による製品コンセプトの構築支援法」と一対となって補完しあい、総合的な製品コンセプトづくりの方法論を構成するものである。

そもそも「地球の環境」は我々に対しての思恵そのものである。この思恵を今後も享受するために,我々が地球環境を良好な状態に保全・維持するのは当然の理りである。この当然の理りを『地球環境にやさしい(Environment-Friendly)』の言葉で表現したもので,昨今のマスコミを賑わすキーワードとなっている。

この当然の理り『地球環境にやさしい』が,企業の経営理念・個人の生活観念ばかりでなく,製品VA/VE活動にも要求されるのである。

この論文は,筆者が発案した新しい価値概念『トータル価値』による「地球環境にやさしい製品VA/VE活動」の基本的な考え方について述べるものである。

製造、使用システムでの化学原材料、中間体、製品の化学的変換を特徴とする材料製品の機能設計において、

製品の全体像を化学原材料を最初のインプットとし、使用者のアウトプットを最終アウトプットとする入出力モデルとして表現するMCダイアグラム(材料変換図)は、機能の設計解への変換(機能設計)及び製品の機能への変換(機能分析)を容易にする中間モデルとしても機能し、製品の全体~細部設計を創造的、効率的にする。

化学原材料、中間体、製品の機能、挙動、構造、特性の関連を関連図として表現するFBSダイアグラム(詳細機能関連図)は、製品の細部像を明確にし、製品の細部設計を創造的、効率的にする。

MC/FBSダイアグラムによる製品の全体像、細部像の明確な把握及び設計チームでの共有化により、材料製品の機能設計及び再設計をより創造的、効率的に行うことができる。

本論文は課題把握と課題分析の段階で、ユーザーの立場にたった新しい価値観を創出し顧客の満足のみならず感動をも得るための商品企画案作りの一方法を述べている。

まず、対象テーマについての現状を把握することから始める。現状がどうなっているのか、企業や市場のニーズが何であるのか。そのためには対象テーマを取り巻く環境を多角的に把握しなければならない。そこで願望と問題点という観点から課題を把握するのである。

次に、この課題把握で得られた真のニーズである願望を達成するため、願望と問題点をマトリックス化し『ユーザーの立場に立った価値観』で情報を分析、整理する。そして、これらをもとに新商品や新サービスを創り出すためのベースとなる『商品企画書』を作成する。

今日、企業は21世紀に向けて大きな変革期の中にある。環境・社会構造・人々の価値観は、いずれも従来の枠をこえた新たな課題を提起している。こうした状況下において、健全な経営のカジをとるには、課題そのものを探索する能力と、それを解決する能力の2つが同時に要求されている。我々は、この課題探索と課題解決のために、経営の中にVEを組み入れ、企業の成長・発展をめざすべきであると考える。

本論文では、今後のVE活動には次の3点が重要であることを論じ、その具体的な展開法を述べる。

1. 経営の基本的構造と、メカニズムを常に視野に入れる。

2. 経営課題の抽出から関与し、VE課題の選択へと連結する。

3. VEの成果は、経営指標向上ヘの寄与度でとらえる。

「業種業態に合ったVA/VE」即ち、実践的管理技法を求める要望は強い。そこで中小企業にVA/VEが浸透しない要因を考え、VA/VEコンサルタントの立場で、新たに企業トップが経営戦略の道具のーつとしての「VA/VE戦略」取り組みを意図した場合の、導入モデルを提案する。(第1報は総論編であったが、第2報は各論編として纏めた)

前段で浸透阻害の背景を考え、本論文の取り組み方向づけをし、「実践ステップ」のモデル化の概念を示すとともに、経営課題としてVA/VEの位置付を明確にした。

本論で、VA/VE導入手続きをステップ分けすることにより、VA/VE管理技法の活用具体化方法を取り組み時間に従って述べ、企業トップや従業員がVA/VEを理解し、本提案を取りあげていただける動機付工夫をした。

最終まとめはVA/VE管理技法が、お客様志向のものであり、その前提での筆者の今後の目標を確認し、決意表明をした。

VE活動の成果を確実なものとし、VEの考え方、技法を会社内に定着させていくためには、VEプロジェクトを企画推進するのみならず、プロジェクト終了時に活動を振り返り、次のプロジェクトの内容充実を図っていくことが重要である。

そのために、「活動の振り返りチェックシート」と「4Tチェックシート」によるプロジェクトの評価を行うことにより問題解決を図る方法を創出したので、紹介する。

この2つのチェックシートは共に、プロジェクトメンバーが記入するもので、プロジェクトを企画したり、VEをガイドする側にとって、そのプロジェクトでのVE理解度を定量的に知ることができる。また、プロジェクト企画推進上の評価は、次の活動企画に役立つ。

VEを導入して、着実に前進させるには、綿密なVE展開計画をたてて推進することが効果的である。本論文は、各企業でのVE展開計画(VE推進中期計画)を実戦的に作り上げることを目的としている。

そのために、企業の風土、VEのしくみ、戦略の三要素を取り上げた。この三要素をバランスよく展開実施するために、VE展開ブロック図によりレベル診断を行い、各企業の"あるべき姿"とトレードオフしながら計画の枠組みを作り、目的展開系統図を用いて、価値あるVE展開計画を立てることを特徴としている。

物質的な過飽和社会の中で、顧客に満足を与える商品を創造するためには、商品企画段階における徹底した価値の追及が必要である。しかし、「価値」という言葉のもつ曖昧さにより、その核心を突くことは、極めて困難である。本論文は、価値工学の立場から概念的な商品価値を実体的な商品価値として把握し、その追及を容易にした。具体的には、まず新商品とは何かを明確にするために、企業の立場から新商品を3つの種類に大別し、さらに使用価値型商品と感性価値型商品という2つの対極を設定した。次いで、再上位機能の定義の中に、副詞または形容詞の活用という考え方を導入し、新商品に高い価値を付加する技法を確立した。最後に、従来のVEの基本式を分析し、各種の商品戦略(8つのVE戦略)に活用できる新しい価値の方程式を提起した。その結果、VEの活用により、強力な訴求点をもつ商品の企画が容易になると共に、企業の商品戦略に直結したVE活動の展開が可能になった。

建設業は顧客から工事の注文を受け生産するという,受注生産形態を有している。つまり,顧客第一主義に徹し顧客の事業化を有利にして,はじめて工事受注を獲得できるという業種である。

この受注と生産活動を円滑に行うためには,顧客の事業化を有利にする方法が必要である。

このためには,今まで不可能とされていた工法を可能にし,また,社会・経済情勢の変化による建設費の変動を安定させる等の方法を創出する必要がある。

これらを実現する具体的な手法として,工法を創出するVE手法を作成した。

この手法は「工法の機能」と工法に対応する「作業手順」をマトリックスの関係に関連づけ工法を創出する手法で,以下にこの内容を提示しようと思う。

情報ネットワークを伴うシステムをVE対象とする場合,単独システムを効果的に稼働させ,その機能を満足させるためには他のいくつかの関連システムと相関させ,有機的に結合することによって始めて目的を達成するものが多くなってきた。

この論文では相乗(派及)効果を狙ったシステムVEの推進ジョブプラン及び評価法について述べた。

そのポイントは次の3つである。

(1)システム構成要素研究と連想キーワード設定による関連システム追求法

(2)ダイヤチャートによる独立したシステム機能ブロック関連評価法

(3)システムVEにおける相乗効果(派及効果)の評価法

当社ではこの手法を物流システム改善に適用し,大きな成果を上げることが出来た。

この手法を用いることは最少の投入工数で,大きなVE効果を得るために極めて有効である。

試作設計段階、さらに開発企画段階といったようにより源流段階でのVEの適用が注目される時代となった。

しかし他方では、VE導入期および停滞気味の段階における企業では、保守的な考え方の殻をどう破るかが大きな問題である。

本論文は、この問題について掘り下げを行うと共に、解決の一方策としての「現状打破の技法」を提案したものである。

さらに、当社における同手法の展開事例を通して、この問題に対し本技法が有力な道具となることを示した。

生産性向上は企業における永遠のテーマともいえる。その生産性の向上を製造VEの立場から挑戦してみようと思う。すなわち造り易さの観点からVEを行ない,生産性の向上をはかろうというものである。

作り易さの基本は(1)部品を知る (2)工程を知る (3)加工しやすさ,組立やすさを評価する (4)付加価値を生まぬ作業を排除することにあると考え,各々を有機的に結びつけ,それから改善のポテンシャルを導き出し,生産性向上に結びつけようというものである。

自動車部品を対象とした自社のVE活動を進めるかたわら,13社に及ぶ協力会社に対して同じような共同VE活動を指導・推進し,6~8ヶ月の活動で所期の目標を達成できる見通しを得た。

協力会社とのVE活動においては,各企業の性格を十分に理解することが必要であり,また,発注者と協力会社は売買する製品の価格については対立関係にあるため,共同VE活動において両者は対等な立場にあるとは言いがたく,VE活動を推進するに当たってはその点を十分に配慮しなければならない。この論文では,通常の自社内のVE活動と違って協力会社との共同VE活動で特に気配りを要する点についていくつかの提案をする。

当事業所の製品群は"エネルギーと情報をつなぐ"ための電線,ケーブルおよびこれらのシステム製品である。近年これら顧客の生産体制並びに販売ルート等の変化に伴い,多機能,短納期の要求が強く打ち出されて来ており顧客ニーズに立脚した組織的な推進がより重要な課題となっている。

本論文は,こうした時代の変化に対応した全社組織のVE活動を構築したものである。『顧客の要求因子』をベースに,要求ニーズをより正確につかみそれを製品に反映させるマネジメントVEを行い,より高価値を生み出す体制作り推進の有効ツールとして考案したものである。

エンジニアリング業務,特に構造解析評価業務のようなエンジニアリングサービス業務では,顧客ニーズの迅速でかつ正確な把握とサービス性の向上が不可欠となってきている。

本論文では,エンジニアリングサービス業務において顧客ニーズの把握から具体化までの一連のステップに係るVEC手法を考察し,それに基づいてサービス性評価因子分析システムを開発したので報告する。

最近の商品ライフは顧客要求の多様化、価格競争の激化等により益々短く成ってきている。この様な中で従来どおりのVAの進め方、すなわちVA対象を1製品のみとした活動ではVA活動への投資の面で非常に効率の悪いものとなる。本論文は、これを打破し効率的かつVA成果の長期化が図れるVAアプローチ法を紹介するものである。

それは、新商品の企画段階からアプローチするものであり、商品戦略は1機種開発とすることなく必ず系列化をする事を前提とし、VA対象を今後商品化するであろう商品も含めた商品群で捕らえ、顧客ニーズ、技術動向情報をベースに系列化コンセプトを明確にして、共通技術を先取りしたモジュールを抽出し、これを徹底的にVAするものである。これにより顧客要求の多様化、市場変化に耐え得るVA活動となり、VA成果の拡大と投資効率の向上が図れるものとなる。

当工場の製品群の特徴は,多品種少量,ハイテク製品である。近年,高度技術の具現化を図りつつ開発期間の短縮が要求され,顧客ニーズに立脚した製品開発の効率的推進が,より重要な課題となってきている。

本論文は,開発VEジョブプランの各ステップに対応して,必要情報が得られる開発VEサポートシステム(情報バンク)を構築し,これを活用することによって,顧客ニーズに適合した新製品をタイミング良く開発していく一手法である。これまでに成功した例のうち,走査形電子顕微鏡を事例として示す。

新製品の開発に当たって,開発プロセスのどこでコスト・品質を作り込むかが,そのプロジェクトの開発効率に大きな影響を及ぼす。

目標コストに到達しないが故に,開発後期に再設計,再検証などの作業を強いることも多い。

そこで,VE手法を中心に,当社にある各種CR手法を組み合わせ,実施タイミング,責任部署等を整理した『コスト展開フロー』を作成し,最適活用を図った。

また,各種のケースに合った多くのCR手法がマニュアル化されているが,活用時に,最適のCR手法を選択するために"CR手法選択のためのツール"が必要となり,これを『コスト攻略マップ』としてまとめた。

通信機器の海外生産を考える場合,その製品の特殊性(一般的な民生機器との違い)や,海外での生産形態の違いを充分に考慮した製品設計が要求される。

本論文は,ビジネス用ボタン電話機の設計を通し,通信機器が要求する品質水準や小量多品種問題等と,海外での製造技術力とのギャップを克服する為に実施した開発設計手法に関するものである。VA的な観点からの分析やVA設計方針,具体策の選定方法など,実際の海外生産事例に適用し,その効果を実証した。本報告は,その事例を基に,通信機器に於ける海外生産化設計手法について考察したものである。

環境問題に対する世論の高まりは近年特に著しい。その中でも特に大きくとり上げられている1つが,廃棄物処理の問題である。

当工場は昭和62年に廃棄物処理のVEに取り組んだ。しかしこれは埋立地枯渇による処理費高騰への対応を目的とするコスト低減プロジェクトであった。

2年余を経て,このプロジェクトは一応の成果を得つつある。しかしこの間,環境管理への意識の高まりは,「産業廃棄物処理のVE」の焦点をコストから序々にその処理法へ移していった。すなわち環境保全・再資源化を指向した処理法により,産業廃棄物処理そのものの価値を高めることへと,主目的を移動させたのである。

本論は,当工場がコスト低減を目ざした活動から,地球を顧客とみなした「産業廃棄物処理のVE」へ転向する一課程について学んだところを報告するものである。

ソフトVE活動は,あらゆる分野・局面に拡大適用され,複雑多岐な活動となっている。活動を効果的に進めるには,多くの要因を科学的に管理するシステムが必要であるが,実際の活動では,多くの部分を経験と勘に頼っている。

そこで,当論文は,対象テーマに応じた,技法の適用と活動形態の組み合せの良否が,活動の成否を左右するものとの観点に立ち,過去5年間の実践活動事例を25の活動パターンに分類分析し,その成否結果から,ソフトVEにおける効果的な活動形態の選定方法を提言するものである。

VE活動の機能的見方によるアイデア発想活動の,体系的手順化を論じている。具体的には,

(1) アイデア発想チームへ,真のテーマを明かさない発想の工夫

(2) 機能表現を拡張した願望追求発想の導入

(3) アイデア発想活動を意識した機能分析の工夫

(4) アイデア具体化レベル順に発想法を変える工夫

をもとに,物中心の即物的発想から,機能中心の斬新な発想を可能にした。アプローチ1~5は,願望・希望列挙発想,機能・特性列挙発想,テーマ背景列挙発想,欠点列挙発想,マトリックス発想である。

建設業界では,長年にわたって若年労働者の入職率の低下による技能労働者の不足と高齢化のために生産性の低下や労働災害の増加などの問題をかかえている。

これらの問題を解決するために,VE的な思想をベースとした方法を考案し,その内容と手順をまとめている。すなわち,現場の生産性の向上に直接寄与することの可能な「建設作業所における省力化」を目指す生産手段のVE手法である。

この手法では,種々の管理技術や改善活動に用いられている改善のヒントの「キーワード」を利用し,VEの手順にそってその「キーワード」を問いながら改善のステップを進め,改善案の立案に結びつけることとなる。

その手法を適用した結果では,作業性向上と省力化工法や設計に効果があることが実証されている。この論文においては,この事例を示しながら内容の説明を行う。

様々な企業のVE導入が進み,製品の価値向上競争が熾烈になっており,VE活動のアイデア発想段階におけるキーワードの適用は,極めてその効果が期待されるところである。

基本的なキーワードの作用はアイデアを出し易くする事であると考えられるが,実際にキーワードは我々の頭脳の中で,どのような作用を及ぼしながら,価値の高いアイデアまで到達する事ができるのだろうか。

本論文はキーワードの機能が隠れた情報の顕在化にあるという仮設を立て,思考経路を3つのパターンに分けて分析し,物質名詞キーワード(自然・創造物キーワード)による発想検証の結果を踏まえながら,キーワード発想のあり方とこれからの課題について述べる。

通常のVEジョブ・プランでは,装置産業の製品を対象として活動開始した場合,工程でのみ利用される物(例えば,原材料を溶解させるための水や有機溶剤,触媒等)は機能系統図に表わしにくく,製品の生産のために使用するすべての原材料をコストダウンの検討対象とすることは困難であった。

本論文では前記問題点を,工程毎に機能系統図を作ること<機能系統図の立体化>により解決した。

その結果,機能別コスト分析も工程毎(立体的)に行うことになったが,その際の構成要素に原材料の他,経費に関する項目を追加した。

こうすることで,極めて簡単な方法で,原材料,経費両面にわたる大きなコストダウン成果が期待できる。

建築工事における作業所管理には,職員不足等多くの問題が生じてきた。

そこで,昭和62年6月より,少人数でかつ短時間で工事費全体にわたり,VE検討を行い,又バランスのとれた工事計画を立案するシステムを展開してきた。

ここでは,そのVE計画,テーマの選定,重点VEの指定,VE報告の簡素化等VE展開の流れと,そのツールとしてのVEチェックリストおよびVEヒント集について報告する。

建設企業の営業には,工事受注高を拡大する営業目標がある。この目標を効率的に達成するため,有効な営業戦略を立案し,営業活動を展開することが必要となる。

この営業戦略には,次の3つの戦略目標があると考える。何れも終局は,工事受注を目指すものであるが,その戦略構成は段階的に少しずつ異なる。

1. 『工事を受注する』ための戦略は,複雑な戦略の構成になる。

2. 『受注対象の新規顧客を獲得する』ための戦略は,かなり限定された戦略の構成になる。

3. 『受注確度を高め,将来に期待をつなぐ』ための戦略は,前述の中間的,平準な戦略の構成になる。

これらのことから,『工事を受注する』複雑な戦略立案の方法を重点に,営業VE手法について述べるものである。

商品寿命の長い製品に対しては,2nd Look VE活動が有効であるが,ビデオディスクやビデオ・オーディオテープのように全世界共通の規格にて設計内容が厳しく標準化されている製品では,VE適用上の問題により充分な成果が得られないことが多い。

本論文ではこの原因を分析し,VE適用対象の取り上げ方,VE対象の機能と制約条件との関係分析などに工夫を加え,上記製品に対する有効な手法として,「制約条件-機能系統図」を考案し,新しい2nd Look VEの適用方法を研究した。

「コスト(原価)の80%は開発設計で決まる」と言われるように,コスト生成プロセスの大半を担う設計者に対するコスト・モチベーションとも言うべきものは非常に重要である。しかし「コストは変動するもの」という言葉通り,不確定な原価を明確に設計者にイメージづけるのは意外と難しい。

コストトレンドとは製品の誕生前から終息までをスルーしたコスト推移曲線を指す。

昭和57年からの取組みの結果,コストトレンドはその形成の課程で,コスト管理機能を充分に果たすことが明らかになった。また従来機種のコストトレンド群はそのドキュメント性をもって,これからの機種のVE活動のポイントを示唆してくれ,商品企画への応用にも有用であることが実証された。本論はこのコストトレンドによるコスト管理の実際とその活用を報告するものである。

誤差の設計は,設計段階では,いつも後回しにされ,試作後に,対症療法が取られるのが一般的である。

その原因は,計算が複雑な上,最近では,部品構成が益々複雑になってきており,一部品の誤差変更が,製品のあらゆる,部位に影響を与えるため,これを一元的に把握して対応するのが,極めて困難なためである。

この論文で取り上げるのは,当社における住宅部品の設計に当たり,部品誤差を決定するために開発した手法であり,実際には,生産設備,施工精度を併せて検討を行い,比較的簡単に最経済的な誤差対策を立てるために役立ったものである。ここでは本システムに関する理論の概要と,結果を導くために必要となる,マトリクスシートの簡単な計算法について述べる。

ユーザーニーズ,設計アプローチがますます多様化する機能部品を一例に,すべての種類を把握分析し,それらの持っている機能にポイントづけすることにより,コストの順位づけをすることができた。このVE情報を設計部門に提供することによって大きなコストダウン成果を得た。この手法は,機能ごとにコストの重みづけを与えることにより種々の機能部品に適用可能であり,幅広い情報をキャッチできる立場にある資材部門のVE参画のための有力な道具となることを提示したい。

人は「あっ,そうか」とか「むっ,あれだな」とか,突然にヒラメクことがある。理屈では割り切れない人脳の特徴である。

一般に着想とかヒントは,発想者本人が意識しないだけで,大なり小なり"ヒラメキ"が起点となっている。

本論文では,このヒラメキをより効果的に確保するための方法について触れる。具体的には,ヒラメキが大変気まぐれであるという観点から,VE手順とそれを記録に残す態勢の工夫,およびヒラメキ誘発に効果的な発想技法を駆使することに焦点を当てている。

VEプロジェクトを成功させるうえで,実現性の高いアイデアを沢山出すことは,必要不可欠である。しかし,今までVEの基本ステップの中のアイデア発想において,いかに具体化して行くかという手法については,非常に重要なテーマであるにもかかわらず,あまり基本的な進め方がなく,バリューエンジニアがそれぞれ個人の経験にもとづき推進してきた。

今回,効率の良いアイデア発想をするための方法として,フェイズを三段階に分け,それぞれに対応してアイデア発想,問題点の摘出,評価,等を行い推進する技法を開発した。またこれは,ニーズに基づくアイデア発想(Want)とそれを実現するための問題点(Must)を対応させて進める手法を基本的にとっているため,WAMA法(ワーマー法)と名付けた。

(Want And Must Approach)

ハードVEに比べて,ソフトVE活動は困難な面が多い。VEでは機能中心に分析を進めるが,人の動きそのものが機能であるソフトVEにおいて,機能を特定することが難しいことに起因している。

この論文では,ソフトVEの中でも職場で業務上発生する日常問題の改善というケースを,いかに容易に分析すればよいかを考える。

そのようなケースの機能評価について,より職場の実態に即した方法を提示しようと思う。

ソフトVE活動を効果的にすすめるには,対象テーマに応じたVEステップの適用が必要である。マネジメント領域などの業務フローが明確でない問題に対しては,テーマに合わせた作業の過程を模索しながら活動をすすめているのが実状である。VE活動の基礎となる機能定義についても適切な技法が確立されていない。

この論文は,経営戦略の実行段階とVE適用局面から問題の特性と適用技法を考察し,新しい基準や理想をめざす未知の問題へアプローチする技法を報告する。

人間に代って,コンピュータに何をやらせようか,といった,顧客のシステム作りにおける欲求は年々増加の傾向にある。本論文はコンピュータシステムを稼働させるアプリケーションソフトウェアを開発,生産する企業において,昨今では不可欠となった「何をつくるか」のVEC活動,即ち「マーケティングVEC活動」の中で,もっとも重要とされる「顧客ニーズの収集」から「機能の構築」そして「顧客価値度合いの評価」等一連のステップに係わる技法の提案である。

機能定義はVE活動の基礎となる重要なステップであるが,なかなかうまくいかないことも事実である。特にソフトVEの機能定義はハードのVEにくらべ,技法としての整備がおくれているといえる。

この論文はソフトVEの機能定義用語の現状を調査した結果に基づいて,意志決定と情報の流れの面から機能定義用語を整理した内容を報告する。

ソフトVEの機能定義の効率化と普及に役立てようとするものである。

ソフトVEの領域は広範囲に渡るので,ワンパターンの展開はできない。そこでテーマや条件の特殊性をにらみ合わせて様々な展開の方法を工夫しながらVEプロジェクトを進めている。本論文では業務改善のためのVEジョブプランに的を絞り,従来の問題点を分析し,その問題に対応した,効率的かつ,実用的な展開のしかたを提示する。新しい展開方法の主な特徴は,ビジュアル化された機能分析(機能ツリー図と名付ける)と効率的なアイデア発想の方法(IPOアイデア発想シートと名付けたワークシートの利用)の2点がある。

建設作業所のVE活動は,従来の量的拡大から質的向上へと変化を迫られている。そこでその変化に対応するため,これまで各企業において多くのVE手法の研究開発がなされてきた。当初ハードVEを中心に取り組んできた作業所VEももはや単純なVEステップのみでは,工事ソフト的な対象テーマの問題解決は難しくなってきた。そこで本論文では,これまでの作業所VEの経験を踏まえVE手法の研究を進めてきたが,これを「簡略工事ソフトVE」手法として確立,多くの作業所で実践した結果,その有効性が認められたので新VE手法として発表する。

VHSの成功は研究開発だけの成功ではない。しかし研究開発がうまく行ったからこそ成功したのも事実である。VHSの開発をながめてみるとそこに効率の良さが感じられVE手法が見られる。

そこで,研究開発とVEについての考察を試みた。

VE手法を無理につかうのではなく,成果を出そうとすれば自然にVE手法を使うようになるというのが,この論文の骨子であり,私の主張である。

半導体製品のVEアプローチは非常に難しいと言われているが,当社に於ては,プロセス改善による歩留向上生産効率の改善等を行って来た。然るに原価の1/3弱を占める「部品材料」(以下「部材」と略す)の改善は製品原価の直接費の中で最も大きい比率を占めVE改善活動の大勢を決めると言っても過言ではない。そこで,VE活動活性化のため半導体独特の部材改善アプローチを考えた。それには,機能相当パラメータによる評価値を算出しバランスチャート図に表現した改善ポテンシャル発見技法を主なツールとして使用した。

建設業は従来からの未解決の問題を抱えたまま,国内建設需要の伸び悩み,実質生産性の低下,海外からの市場開放圧力等の問題に直面している。

我が国経済は既に成熟しており,21世紀に向けて建設業はエンジニヤリング・コントラクター化,ソフト化を指向するとともに,ー層の合理化を進めなければならない。

合理化の原点は作業所にあり,工事施工を分担するパートナーであるサブコンの責任施工能力の向上が不可欠である。とりわけ施工管理の鍵を握る作業監督者の資質向上が重要である。

本論文は,建設業作業所の管理組織構造およびその生産性向上に関する各種管理技法の効果を比較して述べる。また建設業の法的義務である作業監督者の職能開発教育に着目し,法定教育カリキュラムにVE研修を組み込んで,業務とVE研修を緊密にリンクさせた仕組みおよび具体的成果について述べる。

成熟した冷蔵庫などの家電製品の機能は製品固有の利便性を提供する基本機能と顧客ニーズの変化に応えて付ける付加機能(メリット機能とも称す)に分けて考察できる。

この付加機能は製品のセールスポイントになっており極めて重要である。したがって,顧客ニーズを捉えた新しい高価値の付加機能を付与した製品をタイミング良く,市場に提供していかなければ事業の発展はない。

本論文は,付加機能の価値評価法に関するものであり,付加機能の機能評価と原価を求めて価値評価を行い,自社製品の問題点を明確にして,これを改善する高価値の付加機能を選択することによって商品力の強い商品コンセプトを構築するものである。

物流業は顧客の付加価値製品を移動させることによって,場所的効用(利益)を生む業体であり,消費者(エンドユーザー)の価値観の変化や,メーカーの販売戦略の変化の影響を受けやすい業種である。

この様なことから顧客のニーズの変化を幅広く,的確にとらえ,高度化社会にマッチした高付加価値物流システムを,タイムリーに開発・提供していくのが企業の使命であり,これに応えるのが価値創造VECの推進である。本論文では,これらの要請に応えるべく,

①顧客ニーズの価値向上要素(VALUE UP要素)への変換法

②顧客ニーズの機能変換法

③顧客ニーズの計数的評価法

…等の研究を進め,顧客ニーズの把握から具体化までの実践的なVEC推進ステップを確立し,価値創造VECの推進を可能にしたので,報告する。

カラーテレビは,1インチ-1万円と言われた時代があり,製品の価格は,画面の大きさにほぼ比例するとされていた。また家庭用の冷凍冷蔵庫の価格は,庫内容積とほぼ比例関係にある。これに対しマイコン保温釜では,炊飯能力1リットルと1.5リットルの価格差は,僅か5%である。

規模の戦略および機能戦略のいずれの展開においても基本機能の機能達成度の水準を変更する場合には,変更後の基本機能のあるべき売価または原価をできるだけ正確に推定することが,VE目標を正しく設定する上で,極めて大切である。本論文は,この目的のために,各種製品(主として家電製品)について,機能達成度と標準価格の関係を求め,これらの関係を,評価係数kをパラメータとしてビジュアル化した。この結果,従来に比較し,開発製品の正しいVE目標の設定が可能になった。

近年,企業を取りまく経営環境は,厳しくなる一方である。各企業は,企業としての存続をかけて,多角化や分散化,集約化により,合理化,コストの低減化を計っている。

建設のコストに関する問題点を追求していくと,従来のように,イニシャルコストだけによる経済性評価では,評価として不十分であることが分かってきた。

一方,VEの分野においては,VEとは,最低のライフサイクルコストで必要な機能を確実に達成するために製品とかサービスの機能的研究に注ぐ組織的な努力であるとされているにも関わらず,わが国では,ライフサイクルコスティング(LCC)の研究が進んでいない現状である。

この問題を解決するため,現在価値法によるLCCの手法を,VEの中に組み込んで,新しい技法として体系を確立し,成果を上げたので,以下に報告するものである。

一般的に,個々の機能の定義は「名詞+動詞」を用いて「~を~する」という形でなされ,定義された個々の機能を有機的に体系づけたものを機能系統図と呼ぶ。しかし,個人あるいはVEチームのもつ機能の表現力の豊かさと,機能に基づくアイデア発想の拡張性には様々な限界が生じると共に,定義された個々の機能を樹木状に体系的に整理することは,大変な時間と労力を要するものであろう。そこで,本論文では,パーソナルコンピュータを利用することで,主に,アイデア発想の拡張,情報収集・蓄積とその有効利用を計るために,対話型で既知の機能用語を利用する方法,および経験と専門家の知識を利用したエキスパートシステム構築の方法について検討し考察する。

最近のVA活動は,益々その適用領域を拡大し,又,活動内容も高度なものになりつつある。この様な活動から創りだされる提案を如何にして効率的かつ効果的に評価し,より大きな成果を引き出すかは当社のみならず多くの企業にとっても共通の課題であると思う。

本論文は,当社が運用しているVA提案の評価システムをベースにVA活動における機会損失とは何かを具体的に示し,この損失を最小限に留めるための評価システムを提言するものである。

企業にとって最大の効果をあげるには経営の最適計画が必要不可欠であり,VEC活動においても同じことが言える。

本論文は,受注生産,システムが多岐に亘る,長工期などの特長を有する大型システム製品に対するVEC計画の最適化アプローチ法である。

アプローチの方法としては,VEC計画に当り,製品戦略,生産過程における各段階及びVEC活動形態の三つの要素に集約すると共に,各計画要素のメニューを整備して,三つの計画メニューをX.Y.Z軸に配置したモデルを活用し,VEC計画の最適化を図ろうとするもので,XYZ-VECプランニング法と名づけた。

当社のVEC活動は,その対象分野に適した技法を活用し効果をあげてきている。しかし,機構部品へのVECアプローチは,その専門知識にたより,機能追求に欠けていた。従来は,コストターゲットに合わせてアイデア発想,具体化していったが,この方法では,目標がコストしかなく,なかなか新しい切り口が見い出せなかった。

本技法では,機構部品の機能から,加工機能展開という新しいアプローチを行い,評価点を算出し更にコストに見合った加工数を設定することができる。

目標をコストから加工数に置き換えることによって具体化のためへのアイデア発想を効果的に行うことができる。

これにより構想段階で確実にコストと機能の最適な関係を作り上げることができる。

当工場では製品開発段階からのVEC活動である0 Look,1st Look-VECを重点的に実行し,大きな効果を上げている。

しかしながら,一方では収益率の低い製品の収益改善策として2nd Look-VECのニーズも高いのが現状である。

一般に,2nd Look-VECは低減ポテンシャルは小さいが,真に有効な2nd Look-VECについては,これを実行する必要があるので,VECの事前に概略の投資効果を見積り,VECの対象として適当かどうかを評価するようにしている。

見積り上の特徴は,改善に伴う変更のために直接的に支出される試作費,型・治工具費,設備費などの他に固定費として見過ごされがちな間接員の変更に費される工数を把握し,投入経費として積算していることである。

これによって,VECを実行することが真に有効であるかを従来は感覚的な判断によっていたものを定量化することができ,VEC対象の適正化を図っているのでその内容について紹介する。

建築設備業におけるVEテーマの多くは,工事受命後の施工準備段階で抽出される。工事の原案(設計図)の中には利益を生む"宝の山"が沢山ある。また着工後の顧客からの要求事項が追加・拡大されるのも通常のこととなっている。限られた予算の中で顧客ニーズに応え,請負者として利益を確保するために,VEは有効な手段となりつつある。

しかし,VEを実行すべき施工担当者は,受命後の業務繁忙の中では十分なVE活動ができない状況にある。その実態を把握し研究して,VE本来の成果を生み出せるコンパクトな方法を試みた。それは技術者であれば,一見して判断し整理できる1枚のワークシートだけでVE成果を求める方法で,施工準備段階でのVEテーマには適しており,試用によって効果も見えてきた。これを当社(空調設備業)のみならず他の建築設備分野での利用も考え,ここにその研究成果を紹介する。

VEにおける製品の機能評価は,製品を構成している各機能の重要度が評価(分析)者間の主観的な判断を基に決定され,かなり確定した値として各機能にコストが配分されていると思われる。

そこで,本論文では,出来るだけ評価者間の主観的な判断を避け,より客観的な判断で各機能の重要度に応じた配分比とその配分コストを決定するための「あいまいさを考慮した機能評価システム」について考察する。

当社はVEの導入以来,数々の技法開発を行っている。最近では,建設の工事ソフトVEを開発し実施しているが,適用分野によっては改善の余地があると考えられる。

今回さらに使いやすいものに近づけるために,当社で開発した工事ソフトVE(施工計画・施工法)での問題点を拾い出し,次の3点を改善する。

① 機能が欠落することがある。→VE対象の選定時の項目(計画工法・計画工法の問題点・改善希望点・制約条件)より言語データを抽出する。

② 機能どうしの結合に無理な点がある。→言語データを使用して連関図にて因果関係を整理する。

言語データを機能に変換し,連関図を利用して機能系統図を作成する。

③ アイデア発想が十分生かされていない。→ブレーン・ストーミングで出たアイデアを評価し,機能系統図の各機能にアイデアを並べ,アイデア具体化のプランづくりを行う。

ソフトVEの重要性,有効性はすでに報告されているが,ハードVEにくらべて手法・対象の難しさから具体的な実践活動は各企業で試行が積重ねられている。

当事業所では部課単位の業務改善活動に重点をおいて推進してきた。この過程でテーマを選定することが改善の成果をあげる大きな要因であることを感じた。

この論文はソフトVE事例のテーマを用語の面から調査し,テーマ選定に活用できる方法を考える。すすめ方はVEテーマに使用されている単語を調査し,「分類語彙集」(国立国語研究所)を基準に分類する。分類結果を図表化してテーマの傾向を明確にするとともに,未着手の分野を示す。VEテーマを指標化し,適用分野拡大に役立てようとするものである。

建設業が多様化してゆく社会の中で発展してゆくためには,新技術の開発が不可欠であるが,従来のように数少ない研究開発担当者によって技術開発を進めるのでは多様化する今日のニーズに答えられなくなっている。

本論文は,こうした状況を打破するため,全社的なVAの組織と手法を利用して,全社員のもつ情報と能力を結集して技術開発を推進する方法を示したものである。具体的には,技術開発の初期段階から最終段階まで各ステップに応じた社内提案制度,VA実践チーム,プロジェクトチーム,各種のVA会議を通じて,上下両方向の情報の伝達を繰り返すシステムを提案した。

当事業所では,製品開発時にVECを効果的に導入し,製品価値向上に積極的に取り組んでいる。その中で金型VECも重要な役割をになっている。

この論文では,新規型の約70%を占める射出成形用金型とプレス板金用金型に焦点を当てて,新規型の必要な部品の機能系統図から,価値の把握と金型費の低減ポテンシャル値を算出し,それに基づいてアイディアを具体的に抽出するプロセスを「金型VEC」としてまとめ報告するものである。

装置産業と言われる電子部品製造は塵挨の関係上,分析するための作業状況の把握や,微細作業の解析が困難であり,VECのアプローチが充分出来ないといった先入観があった。この問題を解決し電子デバイスに合ったVEC手法を開発し適用した。これは,信頼性およびコストに最も影響する要素である不良を指数化して,それを基に工程機能分析,不良要因系統図を作成し,要因分析マトリクスにまとめ,それをベースにアイデア発想を行うものである。特にこの種の評価にあたっては一つのアイデアが多岐にわたって影響を及ぼすため,それを総合的に評価把握するのに,バードチャート評価表を用いて,改善後の不良指数を推定し,アイデアの検証を試み,改善の前後で不良指数を比較検討するものである。

科学的管理技法としてVEをわが国に導入して以来,各産業分野でそれぞれ独自に技法の改善,開発が行われて来た。

当社においても昭和44年にVEを導入して以来VE成果をさらに拡大するために,より効率的な技法の研究・開発に取り組んでいる。

本論文は,VEに標準化の考え方を取り入れ,より一層VE成果を拡大するために,当事業所で行っている標準化VE活動と,VE技法の概要について述べる。

当佐和工場は,自動車機器専門工場として,昭和43年に設立されて以来,顧客第一主義をモットーにし,製品機能をより確実に,より安く達成することを使命と考え,全従業員の総力を結集してVEC活動を展開してきた。

しかし,昨今の急激な円高ドル安の進展等世情の急変により,より一層の価値改善努力が急務となってきている。

そのため,製品開発段階では,0 Look-VECとか1st Look-VEC という形で,構造方式面に力点を置いたVEC,さらに生産段階では,2nd Look-VECとして生産性,組立性に力点を置いたVEC等あらゆる局面で一段と強力なVECの展開をしてきている。

その一環としての当工場の,主力VEC展開に製造VECがある。

この製造VECは主として加工費を対象とすることから,その実施に際しては,加工(組立)の現状を早く正確に把握し,その問題点やネックポイントを深く認識の上,改善ポテンシャルの摘出から多くの良質のアイデアが創出できるようにすることが重要である。

そのために,製造VEC手法として工程や工程要素分析等の各種分析技法が用いられてきたが,いずれも対象部品(作業)のみに分析範囲を絞った技法であるため,改善された結果が,他の類似機能部品(作業)と比較しベストの価値改善ができたかどうかは必ずしも明確でなかった。

本論文は製品機能をより確実にし,製造上の価値を向上させるため過去のベストな類似機能部品と各要素について対比し弱点部分を改善するヒントの摘出からアイデアの発想を容易ならしめ,価値を上げていく技法である。

なお,当社では61年9月より従来使用していた"VA"の呼称を"VEC" [Value Engineering For Customers:顧客指向の価値改善] [マーケティングに基づく顧客ニーズを踏まえた開発段階からの活動] に変更したので,本論文では全て"VEC"と表現している。

以下その内容を紹介する。

VEは,わが国に導入されて25年余となり,各企業の利益確保に貢献をしつつ,大きな発展を遂げたが,今後VEの"真価"を更に発揮しなければならない状況にある。

本論文は,VEの今後の課題について,

(1) VEの原点ともいうべき,「企業経営におけるVEの位置づけの明確化・VEの基本ステップの確認・VEの原点の再認識」をして,

(2) VE発展の最大のカギとなるVErが,「VErの"あるべき姿"を確認し,それを目指して,努力を続けること」である。

と考え,関係文献を参考にして,筆者なりの考えをまとめたものである。

現今の厳しい経済環境下にあって,企業は間接部門の効率化に取り組むことが必須事項である。これの有効な手段はソフトVA活動である。と認識していても実態は伴わない。本論文はこれを追求し,取り組みやすいソフトVA技法の開発により,活動の定着化を営業部門の実践活動で実証している。また,本技法の特徴は,見えない業務機能を見えやすく機能定義していること。及びソフトVA活動は,TFP活動もさることながら改善提案事項を組織全体が受まとめて,着実に実行させることが難問であり,これを解決している点である。

管理・間接部門の生産性向上が急務となっており,この部門に科学的管理技法であるVEが適用され始めている。建設業の特殊条件をふまえ,ソフトVEを効果的に実施するために,VE管理システムとVE実施システム,トップダウンのVEとボトムアップのなどの仕組について考察した。

企業の商品戦略を機能の側面から分析すると,次の4つのパターンに分類することができる。

①単機能化(単純化) ②多機能化(複合化)

③低機能化(普及化) ④高機能化(高級化)

本論文は,企業の商品戦略に結びついたVE活動を強力に展開するために,第Ⅰ報で確立した目標価値指数の一般式を4つのパターンの機能戦略に適用し,それぞれの目標価値指数の設定式を導きだしたものである。

この結果,すべての商品戦略をVE活動のための目標価値指数として定量化することが可能となった。

建築設計では,顧客の要求する構築物を作るために,顧客ニーズを具体化して,寸法,強度,材質,デザイン等に変換し,要求されている構築物がどのようなものであるか,工事段階でのようなものをつくればよいかを設計図書,仕様書を作成し,確定化している。

設計分野でVE活動を行う中で,因子分析法を用いて顧客のイメージを収集・分析し,機能評価に反映することで,顧客のニーズをより的確に把握し,顧客の価値向上を図る構想設計VE手法について述べる。

VEの発想ステップでは,カードがよく利用される。しかし,現実のVEプロジェクト活動の多くは,カード本来の利点をあまり生かしていない。むしろ,弊害の多い使い方が目立つ。

本論文は,VEが組織的活動であるという視点に立ってアイデアの発散段階におけるカードへの記述はどうあるべきかについて,記号論をもとに研究したものである。

まず,カード利用の目的を明確にした上で,現状のカードへの記述の問題点と,それが発想作業にどのような弊害を与えているかを指摘した。つづいて,これを克服するために新しく開発した。効果的なカードへの記述方法を,具体的かつ詳細に述べた。

最近の市場環境は,飽食の時代・感性消費の時代などとも言われ,顧客の表面的ニーズだけの商品開発では不充分であり,潜在的ニーズをいかに掴みとるかがその成否をわけている。0 Look VEにおいても,潜在ニーズの把握が非常に重要な意味をもってきている。

この論文では,潜在ニーズをより効率的に発見するために,研究開発者が市場に行き,顧客自身を定量的側面(IE手法の応用)と定性的側面(感性アップ)の両面でとらえることの重要性を示すとともに,その能力強化のために当社の0 Look VEの中で実施しているトレーニングプログラム”KISS法”を紹介する。

新製品開発を成功に導くためには,品質,コスト及び日程の3つのリスク・ファクターについて進度をコントロールする必要がある。

その管理をVEの"機能設計"に取り入れ,VEジョブと融合させる方法を考えた。その名を『機能関連図』といい,全体を一望しながら開発進度を管理出来るVEテクニックである。

通常アイデア発想法については,ブレーンストーミング法が行われているが,ややもすれば一般的なアイデア発想に終わってしまう場合が多い。当社のような物流業においては営業拠点が全国に散在しているため,短時間で効率的なアイデア発想を行わなければならず,そのため,従来行っているブレーンストーミング主体のアイデア発想から,より効率的なアイデア発想法を開発する必要があった。そのため,VEC-CG技法とブレーンイラストライティング技法の2つを開発した。

本報告はその経緯及び結果についてまとめたものである。

従来より数多くの機能系統図の作成方法や機能評価法が発表されているが,それらはいずれも独立した方法として展開されており,有機的につながったものではなかった。本論文ではこれらが一連のプロセスの中で,同時に,しかも簡便に行われるシステムを提案するものである。本システムは機能項目間の関係を「目的-手段」,「原因-結果」あるいは「機能重要度」等の観点から,従来のような画一的な2項関係(0または1)でとらえるのではなく,fuzzinessに基づく2項関係(0,1上の任意の値)でとらえ,よりキメ細かな関係を測定するのである。

この機能間の関係が明らかになれば,われわれの開発したFBD&FEシステムによりパソコン等で容易に機能系統図が作成できるし,同時に各機能の評価ができるのである。本論文はこのような機能系統図の作成と機能評価が連動して行えるシステムの理論を述べ,その適用例を示すことにする。

本論文はコンピュータシステムを稼働させるアプリケーションソフトウェアを開発,生産する企業において,効果的なソフトウェア活動を展開するために「コストトランスファ技法」をKEYにして,マーケティングVE,開発VEを遂行する戦略的ソフトウェアVEの実用法について述べる。

ソフトウェアの製品を定義化し,その特徴をとらえ,業種業態に合わせたソフトウェアVEジョブプランを掲げ,高度なソフトウェア技術者不足が深刻さを増す本業界において,ソフトウェアVE活動が,顧客のみならず企業が継続して社会に貢献するための,経営活性化策であることを強く提唱するものである。

製品ライフサイクルが短くなるにつれて,VEの適用時期は次第に上流にさかのぼり,開発設計段階から商品企画段階に至ろうとしている。

複数のモジュール商品を組み合わせて構成する,システム製品と呼ばれる商品では,個別のモジュール商品の機能にとらわれない自由な発想で,長期的な展望に基づく新システムを構想企画することができる。

ところがこの場合でも,実際の商品企画では,どんな新機能を,いつ,いくらで,どんなモジュール商品として発売するかという,個別の計画が最も重要な課題であり,どうすれば顧客が喜ぶかに日夜頭を悩ませているのが現状である。

今回の研究は「価値指数」の技法をベースにして,これを発展させたもので,商品企画段階での新機能の評価に関する技法を提供することを目的としたものである。

低成長時代の到来,円高ドル安等,日本経済を取り巻く環境は,大変きびしい状況にある。このような情勢下で各企業は,新製品の研究・開発に力を入れ在来製品の枠の拡大と新市場への進出の機会をうかがっている。

創造的アプローチのVE技法は,時代の要請に応えるべく新製品開発,新市場開拓などの分野で大いに活用され成果を上げて来ている。

しかしながら創造活動が中心の研究・開発段階でのVE適用は,まだまだ浸透しているとは,言いがたい。本論文では,開発VEが企業内で浸透しにくい理由を分析した結果,研究・開発技術者の意識変革が必要であるとの観点から,開発VEの新定義を提唱する。さらに,研究開発段階の創造活動の効率化をはかるのに有効な機能分析法(目的展開図法,アイデア展開図法)も開発したので合わせて紹介する。

現在の建設業界は,昭和40年代後半から50年代初期にかけての高度成長期にそのピークを極め,ゆるやかな安定成長といわれる中で,生き残りを賭けた熾烈な企業間の競合を展開している。

今日の競合の特徴は過去の成長期のごとくの受注量の拡大とは異なり,効率化と多角化にある。

拡大することのないパイのもと,各企業とも,効率化へ向けての各種の管理技法に一層の磨をかける一方で,多角化へ向けて,業際の拡大,今後の社会やニーズの変化への対応といった観点からの企業体質の変革を押し進めている。

当社においても,建設業の旧来からの体質である請負型の企業体質を脱皮すべく,同業他社に先がけ,「脱請負」をスローガンに複合システム産業化を目指して,体質の革新を続けている。

さらに,具体的な戦略として「造注体制」の確立を打ち出して事業活動を展開している。

我々の言う「造注」とは,顧客のニーズの先取り,または喚起,掘起しを行うことから,顧客に対する事業提案を行い,新たな需要の創造を目指すものである。

この様な一連の事業活動において,VEはそれらを支える大きな柱となっている。

現在は業務全般に適用され,企業内の効率化はもとより,激しいコスト競争の内での事業提案や構築物の内容の充実と差別化戦略の徹底等において有力な武器となり,企業間の競合を切り抜けている。

我々設計部門は,造注戦略の内では上流に位置し,顧客のニーズの十分な把握から,事業提案を創出し,事業化推進を押し進めるためのカジ取りを担っている。

こういった意味からも,設計部門におけるVE活動はその重要性を一層増すこととなった。

我々は,その重要性を認識し,より上流でのVE適用を計り,より一層の顧客への価値向上を果すべく,従来のVE手法を見直し,検討を加えた。

そして,ここに紹介する設計VE手法へと結実し,展開するに至った。

VEの特徴の一つに「顧客本位の考え方」がある。建設設計を行う上でも,顧客抜きには考えられない。

日経アーキテクチャーが,法人に「今後,建築家,設計者にどのような面でその能力の発揮を期待するか」を質問したアンケート資料がある。その結果の上位3つを列記してみると

①コストに対する認識の高揚

②施主の意図を的確に把握する能力

③発注者が全面的に信頼して任せられる体制の整備の順となり,今回の論文を考えて行く上でのメインテーマとした。

この論文では,これをかみ砕いて,次のような方法を考えた。

①営業・建築設計担当者が,顧客ニーズの確認のための「顧客ニーズ確認書」を作った。

②その顧客ニーズ調査より,ニーズを機能定義するための「顧客ニーズ機能定義変換シート」を作った。

③建物の基本機能に,ニーズよりの機能を加え機能系統図を作る。

④対象機能分野を選び,その機能別コストを算出する「VE顧客ニーズ機能評価表」を作った。

以上のワークシート等を作り,既設のVEステップを加えた。

この方法を使って設計を行うと顧客にも喜ばれかつ社内シーズにも応えることが出来たので提言する。

普及率の向上に伴い,成熟商品の仲間入りをしたエアコン業界の動向を現象面より眺めると,

①単発的な機能付加競争・価格競争が激化してくる。

②製品の開発期間短縮と,開発技術力の平準化により企業の収益性が低下傾向にある。

等が生じる。

このような環境の中でのVE活動は,市場価格対応優先で,売価DOWNのための活動に終わりがちである。

従って,顧客ニーズに立脚した価値改善活動による,利益計画にリンクした活動が必要であり,次期新製品開発段階における源流管理を重視した,許容原価に基づく取り組みが今後重要である。

しかしながら,企画段階におけるVEの必要性は従来より叫ばれているものの,DTCを代表とする目標設定技法は,VEへの適合性,および実用性の面より,実践的なアプローチ内容の必要性を感じる。

そこで,企画段階において,客観性のある機能評価,およびアイデア発想の指針が得られ,設計部門で次期新製品の開発目標コスト造りに,有効的なVEアプローチの一つの方法論について述べる。

VEが対象とする価値は使用価値,貴重価値及びコスト価値である。われわれが,あるいは建築主が金を支払うのはその物の持っている「ハタラキ=機能」に対してである。このユーザー(顧客)が要求する働き(機能)を最低の投資で作り出し,ユーザーの満足を高めることがVE活動の目的である。VE活動の対象となる物は大きく2つに分類できる。その1つは,初期に投資する金額を重点的に考えれば良いもの,もう1つは,初期投資以上に使用期間中,すなわち機能を発揮している期間を通して必要な費用を考えなければいけないものがある。VE活動はややもすると初期投資金額の低減,コストダウンに目がむきがちであったが,初期投資だけではなくライフサイクルコスト(LCC)でのコストダウンを目標とすべきである。今回建築設備の中の給水揚水システムを一例として,システムの機能を「システム信頼度を80%以上に保持する」ことを条件に,ポンプ等を複数台設けた場合(冗長設計した場合)と1台との場合でLCCがどのように変わるか試算を行った。冗長設計されたものは当然初期投資コストは上昇するが,LCCで考えると必ずしも不利にはなっていない。建築設備のように機能をいかに発揮するかが重点のものは,特にLCCでコストを評価しなければならない。また,LCCで評価する場合にも,途中での交換時期をどのように決めるかが重要であるが,この機器の交換時期を各機器の信頼性データをもとにしたシステム信頼度を一定以上(80%以上)に保つことを条件に決定した。

なお,ここでいう信頼性のデータは,機器の交換(理由のいかんを問わず)を故障と見なして算出してあり,信頼度とは交換されていないものの割合を表している。

建設業には品質管理の導入が遅れていたが,近年急速に品質管理への関心が高まり,各種の品質管理手法が導入され徐々に成果を上げている。しかし,手法の適用範囲,適用方法に混乱があるように見受けられる。その原因として機能定義・評価に不十分な点があるように見受けられる。

VE技法は機能本位の考え方で価値向上を目差すものであるから,顧客が求める価値を製品の品質に置き換えることにより品質向上,品質保証が可能であることに着目した。品質機能展開,FMEAなど品質保証の技法によりVEテーマを決定して,VE活動を実施する手順と数年間の研究実績とダム工事における実施例を述べる。

本論文はVA活動に対してコンピュータを導入し,VA活動そのものの効率化を図ることを目的とする技法について述べたものである。

社会構造の高度化に伴ない,大規模・複雑なシステムが要求される時代である。当工場は受注生産方式にて,製造している,製品が多いが,顧客要求に対し,要求機能の最大限達成と提供価格の低減を行うとともに,当工場内に発生するコストの低減に対し,VA活動を行い,適正な利益確保を行っている。顧客を満足させ,企業利益を確保する期待に応えるためにVA活動の拡大と有効な活用が望まれている。高度情報社会を迎え,コンピュータの活用が各分野において適用されているが,VA活動分野への適用も例外ではない。このような環境の中でVA活動に必要な客観的分析,コスト分析,アイデアの多面的組み合わせ,ビジュアル化,整理およびデータベース化など人手作業では大変な作業となる部分をコンピュータの持っている特徴を備えたツールの適用によりVA活動を支援するシステムの完成がバリュー・エンジニアの間で望まれるようになってきた。本論文はこのような背景からシステム計画技法TUPPS(Tool,User and Project-Planner System,以下TUPPSという)とコスト情報システムをVA活動に融合させ,人手作業をコンピュータ処理に置き換え,VA活動の効率化をはかる,システムの構築例を示し,その内容の要点を紹介するものである。

ここでは機能整理から機能系統図,アイデア整理からアイデア体系図等,VA活動で最も重要視されるジョブプランに,システム計画技法TUPPSを中心に構築したVA機械化システムによるVAの展開,およびVAコスト情報の収集に対する原価構成ツリーへのコンピュータ応用について述べ,VA活動作業の効率化へ,いかに貢献できるかを示すものである。

家電業界は顧客の価値感の多様化,商品のライフサイクルの短縮化,10年前とは比較にならない程の技術革新,および他社との価格競争の激化など,ますます厳しい状況のなかで企業の総合的な体質改善を,更に積極的に展開することを余儀なくされている。こうしたなかで,他社よりも,いち早く市場ニーズを適確につかみ,他社と差別化された商品を提供していかなければならない。

当社におけるデザイン部門は,自主独立事業体形式を採用しており,事業部に編入されていない。商品を生産・販売する直接生産部門である事業部には,いわゆるデザイナーと称される人がいないため,当社の発売する商品のデザインの全責任は,当部に課せられている。

また,独算制であり,当部の業務の遂行を効率化させ,価値の高い仕事への転換を,常にはかっていかなければならないという厳しい条件下に置かれている。従って単に人形に衣服を着せるような外形的なデザインだけでなく,どんな人形を作るか,いいかえると商品企画を含めたデザイン業務を企業の他部門と協力し展開していかなければならない。

VA活動が,システマティックに機能を追求するVA技法を忠実に実施することにより,効果的な活動を展開すべきことはいうまでもないが,これらVA活動の成果を左右する最大のポイントは「機能定義」から「アイデア発想」にかけての展開にあるといえる。

機能定義は,VAの特徴であると同時に,その重要性は充分すぎるほど認識されているが,この機能定義の表現があいまいであり,また,断定的にすぎると発想が制限されてしまうので,もっと発想を誘導できるような正しい表現が必要となる。

しかし実際のVA活動においては,この機能定義をあいまいにしても,コストは下がるケースが多いという現実と,機能定義の方法に不明確な部分が多く,実際活動で使用した場合,適当に妥協した"甘さ"のある分析に終始してしまい,機能定義の効果が,今一歩,発揮できなくてVA対象プロジェクトの成果が乏しいものとなっている。

この論文は,このような認識の上に立って,機能定義の機能用語としての名詞・動詞の選定と,その体系化および機能定義(機能領域)毎のアイデア発想に至る着想を,潜在情報から,いかに有効に導き出すかを記したものである。

近年,電子化製品の急増により,製造原価に占める電子回路のコストウェイトが高まっている。企業経営の収益改善にとって,電子回路のVEアプローチが重要となってきた。

本論文は,電子回路のVEの展開について研究したものであり,説明を容易にするために計量機器の具体例をとりあげて記述する。そのため,本論に入る前に,計量機器の電子化移行について説明しておく。

計量機器は,その長い歴史のなかで,これまで機械的な方法(回転力を利用したもの等)によって,その機能を達成しているものであったが,新しい要求に対応して,電子的な方法によって,その機能を達成するものへと着実に移行している。これは,電子回路が,機械につきものの摩擦抵抗を持たないことと,機械系では困難な判断機能を容易に持たせることができるなど,高精度化や多機能化に適しているからである。

しかしながら,単機能の計量機器では,依然として機械式のものがコスト面で優位さを保っているのも事実である。これは,機械式が長期にわたって,その時代にマッチした方法でのコスト改善努力が払われてきたのに対し,電子式は,機能の拡充に力点がおかれてきたためである。

計量機器の生産にたずさわる者は,この事実に目を向けて,VEの成果によって無限の可能性を持つ電子式の優位性を最大限に活かした計量機器を提供するという大きな責任を背負っている。

そのためには,VEの成果を事業戦略に結びつけることであり,VEは,回路技術者の技術談議に終始することなく,企業の利益計画,商品企画に沿って推進することが必要である。VEは,また異なる分野の専門家の集団によって,見方を変えた角度からの発想が必要である。

本技法は,このような観点より,製品戦略に立脚した電子回路のVEアプローチの方法を体系的にまとめたものであり,回路網の機能に対応した最適な方式を生み出すことを目指している。また,機能定義に回路ブロック図を活用したこと,アイデア発想を促す電子回路特有のVE質問を盛り込んだこと,およびアイデアの評価方法を具体化したことが特徴である。そのため回路技術者と他のメンバーが一体となって,VEに取り組みやすい技法となっている。

本論文は,建設業における「新工法開発のためのVE手法」についての研究成果を発表するものである。

この手法の説明は,他産業における「新製品開発のためのVE手法」を参考にしたが,内容の詳細については,建設業の特徴を強調したものになっている。

建設業の特徴は,なんといっても「大自然相手の仕事」という一言に尽きる。この大自然相手ということが,制約条件の中でも,大きなウェイトを占めている。

VE手法を展開していくうえで,非常に重要なこの「建設業の制約条件」を理解して頂くために,その背景とも言うべき,最近の建設業における技術的傾向について,次に述べる。

建設業においては,昨今,顧客から,建設する施設,建物に対して,必要とする性能(遮音性,断熱性,クリーン度,振動etc.)を満足させることを発注条件として要求してくる形態が増えてきている。現在,花形産業である超小型集積回路,ラジオアイソトープ………等のハイテク関連施設はもちろんのこと,他の用途の施設,建物においても,今後さらに,顧客からの発注条件は増加する傾向にある。我々はこれを"性能発注"と称し,従来の一般的発注と区別している。

当社にVEが導入されて,約17年,VEの対象として施工部門の領域から,思考領域を広げ,設計部門の領域より,さらに遡った企画段階までに及んでいる。性能発注への対応は,この企画段階に位置する。

われわれが"性能発注"を依頼された時,まず対応しなければならないこととして,要求される諸性能を十分に把握することである。

事例の少ない施設,建物に要求される諸性能は,往々にして,抽象的,感覚的,または他の事例からの参考的数値で表現されることが多い。

過剰設計におちいらず,要求された性能を満足する適正なものを提供するためにも,われわれは要求される性能に対して,可能なかぎり数値的にとらえ,この数値をもとに,顧客の要求する性能の再確認をし,整理を行う。このことは施設,建物が完成した後において,要求される性能についてのトラブルを防止することにもなる。

機能,性能,品質は相互に密接な関係にある。どれも日常の生活用語であり,ことさらに意識をしないで使うことが多い。

本来は機能を明確にした後に,性能を具体化することが一般的であるが,建築設計においては,まず要求される性能を整理して,内包される諸性能を明確にした後に,機能定義をすることが多い。

近年,鉄道会社の駅務合理化に対応して,駅務自動化機器の普及が進んでいる一方,客先ニーズに応えるべく多様化,高度化,コンパクト化された製品とするために,製品へのマイクロプロセッサ搭載が増加した。これにともない,ソフトウェアの開発量の増大,ソフトウェア技術者の人員不足が生じ,ソフトウェアの生産性の向上および開発費の低価格化が重要な課題となっている。

今回,定期券発行機の新型機を開発するにあたり,ソフトウェア開発費の低価格化の問題に取り組んだ。本論文は,大きな成果が得られた新型定期券発行機ソフトウェアVAに対して導入した,パラメー夕方式によるVA手法について紹介する。

当社は,建設業界の中ではVEを真っ先に導入し,以来,10数年にわたり,作業所におけるハードVE,数年前からは事務部門,管理部門においてもソフトVEと取り組み,着実に成果を上げつつある。

しかしながら,われわれ建設業のVE活動のメインはあくまで作業所を中心としたVEであり,かつ,また取り組みやすく,直接的成果も大きいのが特徴である。

本論文は,作業所におけるVEの取り組みに対する2回の発表"制約条件とVE" "建設作業所における工事ソフトVEの展開"に続く研究成果をまとめたものである。

作業所におけるVEテーマも,導入時には単純な治具工具の改善,型枠,足場工法などの純ハード的な改善が多く,従来の機能展開法で解決をはかり,成果を得てきたが,最近ではソフト的な複雑な工法,システム的問題解決を要求するテーマが多くなっており,新しい解決技法が要求されてきているゆえんである。

われわれは,それらの要求に応じた解決法を"問題点と機能変換,新しい機能評価の手法"等を研究した結果,一応の成果を得たので,ここに発表する。

VEの対象である一般的な製品の開発は,商品企画から製造までのプロセスを,ある開発期間(時系列)のなかで,順々にステップをふんで進めている。

VEは個々の対象に応じて,開発のVE(0 Look VE)設計のVE(1st…)等で,開発プロセスと結びつけ展開しようとしているが,現状のVEのあり方は,いつも対象全体を「一括」(基本機能~未端機能)して扱うことを基本としているため,開発プロセスへの対応・適用という面からみると「しっくり」行かない場面が多々出てくる。

そこで,それを「しっくり」させるために,「VEを分割」し,この分割したVEを開発プロセスの各フェイズに対応・適用し,開発プロセスの流れにそって展開するVEの新展開プログラムを開発したので,その全体について発表する。

最近のVEプロジェクトにおける対象は,現流製品から川上指向型即ち開発製品を対象とした,0 Look VEに活動の主体が移ってきている。その理由,目的は色々あるが,しかし企業経営という立場から見た場合,企業の経営基盤は,従来からある製品構成をベースに,機能を追加しプライスを下げて商品価値を向上・伸長させてきたいわゆるマイナーチェンジ製品である。当社における製品構成比率は図1に示すが,マイナーチェンジ製品が1次,2次を合せて約80%を占め,企業経営面への寄与も大である。従ってこれをどのように分析するかが経営体質に大きく関与してくる。そこで本論では,「0 Look VE」路線から今一度原点に立ち返って,経営上のウェイトが高い現流製品をベースにしたVE,即ちマイナーチェンジ製品を対象としたVE活動を新たな目で考察を加え,効果的なその進め方について提言することを目的とする。以下本論で用いるマイナーチェンジ製品とは何か,その用語を次の通り定義づけする。

(1) 新分野開発製品とは(図1の注1参照)

市場にこれまで類似機能を有する製品がない独創的製品で,その範囲は図2に示すごとく,価格的物量的に製品が安定した生産形態に達するまでの製品とする。

(2) 1次マイナーチェンジ製品とは(図1の注2参照)

新分野開発製品が安定化した後,弊害機能の改良など,顧客メリットを加え継続的に市場で発表される製品とする。

(3) 2次マイナーチェンジ製品とは(図1の注3参照)

既存製品をベースに新たに機能を追加,あるいは機能の拡張,他機能製品とのドッキングなど,発展的に開発された製品とする。

わが国にVEが導入されてから,はや20数年が経過した。当初,VEは,経営レベルによって導入されたこともあり,マネジメント・レベルでのVEに対する関心は,非常に強いものがあった。

その後,年月を経るに従って,技法の実践的側面だけが急速に進歩し,実践技法とVEマネジメントとの間の距離は,次第にひろがって行った。

製品をただひたすらに製造するだけで,大きな利益を得ることができた高度成長期には,技法独走型のVE活動から得られる成果だけで,企業は十分満足することができた。しかし,安定成長期に入り,環境が変ると,このようなVEだけでは,企業が必要とするVE成果の達成は困難になってきた。

ここで再び,企業経営に結びついたVE活動の必要性が浮かび上がり,「経営に密着したVEの展開」('85年大会スローガン)すなわち,VE推進マネジメントを模索する時代へと突入した。企業会計とVE成果額との結びつきをテーマにした研究会が発足したのも,この流れを示す1つの事例である。

本大会のスローガンである「VEによる経営効率化への挑戦」もこの流れを示すものである。

本論文は,このような背景から,企業経営とVEをどのようにして結びつけるかをテーマとして取り上げ,その基本的な考え方をまとめたものである。

近年の低成長経済下における産業界においては,特に顧客ニーズの多様化やコスト要求の激化から,VE活動そのものも,それらに対応した多様化が要求され,ハード面のみならずソフトVEの推進等あらゆる局面への拡大が不可欠となってきている。こうした状況の中で,VE活動をいかに企業経営にリンクさせ,拡大充実させてゆくかが大きな課題となっている。

従来のTFP活動のみでは対応しきれない問題をも含めて,企業内でのVEの位置付けから発生するであろう全員参加型のVE活動が,今後増々その重要度を増してくることと思われる。また,それらをいかに効率よく運営・管理し,VEの高度化を計るかが問題であり,VE活動全体の評価がどうしても必要となってくる。

本論文は,全員参加型VE活動を推進するに当っての諸問題を解決すベく,その評価システム,すなわちVE管理システムについて,そのあり方を提言するものである。

商品を開発して顧客に提供する迄のプロセスとしては「何を作るか」と「どのように作るか」という流れがメーカーサイドには有る。その中で「何を作るか」に対応する形でのVAの適用は,昨今,マーケティングVAとか,バリューマーケティングとか言われて商品コンセプト構築段階でのVA技法として,開発されつつある。

一方,「どのように作るか」を検討する段階でのVAの適用は,製品開発段階から,0 Look VAとか,1st Look VA という形で積極的に実施されており,当社においてはほとんどこの面に力点が置かれたVAが展開されている。この製品開発段階のVAにおいては,ともすると構造,方式等の面に検討の中心が置かれ,生産性,組立性を考えた上での分析が,ないがしろにされていた。これは,生産性とか組立性とかが漠然としていて適当な評価基準なり,改善指針が無く,つかみ所の無いことに大きく起因するものと思われる。本論文は,従来比較的軽視されがちであったこの面に焦点を当てて,組立性による機能評価を実施し,それに基づいてアイデアを抽出し,製品構造を決定する技法であり,これを適用することにより,生産性が良く,ロボット組立等の自動組立にも適し,信頼性,保守性にも優れた製品を開発することを意図したものである。

建築設備の設計では,発注者の要求事項を機能変換し,あるべき機能を見出すことで,その建物に必要な性能を効果的に構成させることができる。われわれは,このためにFAST技法を中心に,機能変換をすることが多いが,発注者の要求していることを正しく理解する努力を怠れば,いくらステップを正確にふんだVE活動を展開しても,決して良い結果は得られない。

過去の設計においても,計画時に発注者から聞いた要求事項を図面に反映させ,建物ができた時点で発注者の話を聞くと,『間違いではないが,考えていたものと少し違う』という事例を聞くことがある。このことは,建物ばかりでなく,オーダーメイドで作る場合,よく起こることである。

そこで,今回,VEステップのうちの「情報収集」に焦点を絞り,特に注意しなければならない項目を過去の例から分析し,情報収集方法のパターンを決めた。この方法により,誰が情報収集しても,同じレベルで要求事項のより正しい把握と,発注者のニーズを満たすことが可能となり,より高いVE効果を期待できるようにしたので,ここにその要点を発表する。

最低のライフサイクルコストで必要な機能を確実に果たすべく,組織的に,機能本位のアプローチを持続的に行うVE活動は,低成長経済の定着した昨今程,各分野の企業においても重要視され,企業収益の改善に,健全な組織体づくりにと,ますます盛んにとり入れられている。

当社においても,建設業特有の特殊性を考慮して,VE計画会議の設定,3時間VEの確立といった建設業にあったVE手法開発の,研究,普及を行ってきた。

そういった時代の流れの中で,われわれは「物本位から離れて機能本位のアプローチをする」VE最大の特色ともいえる機能分析を,更にベストよりベターを狙っていく作業所VEに適合させるべく,一昨年度来,実用的機能分析法を展開してきた。

しかしながら実用的機能分析法においても,機能評価については,従来の3時間VEにおける評価法を,そのまま採用している。そこで今回は,3時間VEの特色を生かし,実用的機能分析法を,さらに作業所に適合させることを目的として機能評価の実用的方法の考察を行った。

本論文は,建設作業所におけるVE適用分野の拡大にともない,従来から使用してきた3時間VEと並行して使うことのできる,新しいVE手法の開発の過程を述べ,その結果「工事ソフトVE」を定義している。

工事ソフトVEは,機能展開において,物自体から定義される機能と,それを扱う考え方から必要となる機能の双方を入力しなければ満足のいかない作業所におけるVEテーマに適用する。

このような入力条件を機能変更する方法と留意点を述べ,最後に工事ソフトVEを施工計画に適用させる例を示し,全体像を表現する。

建設の市場は,経済成長の減速・社会資本の充実にともない,狭くなっていくのが当然ではある。しかし,企業は,そういった環境の中でも発展していかなくてはならない。むしろ,経済成長を加速し,社会資本を,さらに充実させる使命が建設産業にある。

建設業は,受注産業といわれているように,請負契約で工事を受注して,生産し,顧客に納入する形態である。つまり,顧客からの工事の発注があり,それに建設業者が応札し,受注して,はじめて工事をすることができる。こういった工事発注・受注という流れの中で,受注競争が展開されている。そして,建設業者が工事を受注する段階,逆に顧客からみれば発注する段階では,すでに顧客側の計画は定っており,設計図書・仕様書等は,でき上っていることが通常である。このような条件の中で受注競争に勝つ力は,コスト競争力になるわけである。しかし,この時期でのコスト競争による営業活動だけでは,受注が難しいのが現状である。決定済みの機能を安く作る営業活動には,自ら,手法・範囲が限られてくる。さらに,逆に顧客のニーズとは,かけ離れたものになることも多い。建設コストを下げることのみ,受注戦術とした場合,営業活動の範囲が限られ,受注のチャンスは少なくなる。

この壁を破り,顧客の求めているものに答えることが必要になってくる。具体的には,顧客の立場になって,機能アップ・価値向上をはかること,さらに顧客の新しい事業意欲を喚起して,社会資本として価値のあるものを作ることなどを,営業活動の対象にとり入れることが必要である。

そのための手段として,営業活動にもVE手法を適用し,「営業VE」と称する手法を開発した。この論文では,営業VEの内容を詳述する。

昭和35年,米国から日本に上陸したVEは,近年多くの企業で導入し,その実効果は周知の認めるところである。なお,開発された技法・手法も多く,VE論文として全国に公表・発表されているものだけでも,200編を数えようとしている。

欲しければ,直ぐにでも手の届くところに参考書がいくつもありながら,なかなか思うようにVEを実行できず,実施したとしても,単なる形式的動作に終ってしまい,VEによる真の効果創出にまで至っていないところが,未だに数少なくはないと思われる。企業間競争は熾烈度を増し,性能面,納期面,信頼性面等,各企業とも,殆ど,その格差はなくなりつつある。そこで顧客,メーカーの双方に利益をもたらすため,できる限り価値を向上させ,できる限り安く作りあげることを,必須の条件と考えなければならないし,かかる観点から,VEの実施は避けて通れない関所と認識しなければならない。利益の下降,目標原価の未達成,あるいは新製品開発および製品転換の遅延等,その原因は「成せば成る」ことを知りながら「実行しなかった」までのことである。またその源流をとさかのぼると,ただ単なる「忙しいから」,「他人どころではない」といったものであり,「上から指示された仕事が先だから」式の「錦の御旗」として,まかり通っていたのでは,企業のじり貧は当然といえよう。企業の目的は「ますます発展と社会に貢献する」ことにあるから,やはりVEは,何が何でも強い意志でやり通さなくてはならないのである。

日常業務に追われる時こそ,問題点を発見しやすいし,その時期こそVE実施の絶好の機会なのである。よって本技法は,あえて多忙時のVE実施に焦点を合わせ,記述するものである。

本論文は,マックス・ウェーバーの三つの合理性と実践的三段論法を基礎として,VEのモデルを構成し,VE理論の研究を行った。また,最近発展しつつある設計学の中の設計実験をVE理論の研究に適用し,機能概念および属性概念の関係を論じ,機能と属性を結びつける因果合理性の内容を検討した。その結果,設計カタログの有用性に言及した。VEの発想過程は,マルコフ過程であり,機能と属性の両面からの発想の必要性と,それを容易にする研究とは何かを明らかにした。

この論文は,建築設備工事における作業所VEの対象選定について,新しい考え方を述べるものである。

当社では,VE活動における対象選定のステップを,VE計画会議と称して重要な役割を持たせている。

基本的にはベストよりベターを狙い,多くのVE対象を選定し改善することで,成果の拡大をはかる作業所VEでは,そのVE対象の良否が,効率よくVE活動を進めるうえでの大きな課題でもある。

そこで今回,当支店で実施した過去の数多くのVE事例を分析し,建築設備工事における効率的なVE対象の選定方法を開発したので,ここに発表するものである。

中・長期的な商品に結びついたVE目標を正しく設定することは,VE活動を成功に導くための極めて重要な条件の1つである。

一昨年(1983年)に発表した研究論文「原価低減曲線による戦略的VE目標の設定」では,多くの事例の分析結果から導きだされた原価低減式により,あるべき製造原価の中・長期的な推移を予測し,これに基づいた戦略的VE目標の設定法を報告した。この報告では,あるべき製造原価,すなわち必要な利益を確保するための製造原価の基礎となっている売価低減曲線(Selling Price Reduction Ratio Curve=SPR曲線)についての検討事項は,紙面の関係でほんの一部しか触れることができなかった。

本論文では,まず売価低減曲線について触れ,ついでボストン・コンサルタント・グループの研究で有名になった経験曲線(Experience Curve=E曲線)または習熟曲線(Learning Curve=L曲線)と原価低減曲線(Cost Reduction Ratio Curve=CRR曲線)及び売価低減曲線との関係を明確にする。更に目標の設定を容易にするために年をパラメーターにした売価低減式を検討し,最後に原価低減曲線と売価低減曲線の低減率の差の考察から戦略的VE目標の設定法を述べる。

建設業にVEが導入されて10数年になる。建設のVEが企業活動にいかに貢献してきたかは,ここであえて述べるまでもない。

建設VEの対象は,一般的に図-1のように考えられている。建設VEは仮設等の生産設備を主な対象として発展してきたが,ここ数年の傾向をみると,一般管理も含め生産手段等の物以外(ソフトウェア)の適用事例が増えてきている。生産手段の中の工法・作業手順へのVE手法と,その適用の重要性については,いくつかの論文でもとり上げられている。特に建設業においては,工期短縮を対象としたVE適用手法の開発は,受注競争を背景として非常に重要な課題である。

当論文では,建設工事の工期短縮をより効果的に行うためのVEの適用方法について述べる。

特に家電業界における機能・コスト競争は熾烈を極めており,市場での競争に勝ち残るためには,商品企画段階のVEが重要であることはいうまでもない。

こうした認識により,各社においても0.5-LooK VE,更に0-LooK VEと,その手法も変化してきた。

しかしながら,VEステップ上からは商品の差別化や価格ランクの差は考慮されず,同ージャンルの商品群は,基本的には同ーの機能系統図によって把握することになる。

数年前の商品と現在の商品の機能系統図の差,あるいは10万円の商品と20万円の商品のコスト構成が,図のように大きな差があるにもかかわらず,機能系統図の差はほとんどないといって過言ではない。従って,その商品固有の特徴を出して行くためには,もっぱらアイデア発想のやり方にゆだねられるきらいがある。

新商品を企画し,開発設計を進める段階で,VEをより一層効果的に運用するためには,VEステップの過程の中で,商品差別化が自然に検討できるようにすることが望ましい。

こうした観点からVEを見直し,機能定義・機能評価のステップをより拡大して分析していく手法を『拡大VE』と表現し,展開してみる。

VEが長い歴史の中で着実に発展し,企業経営における収益改善の大きな柱として位置づけられるようになったことは,まことに喜ばしい限りである。

しかし,この事実は,とりも直さず,VEに携わる人が企業の利益計画に結びついたVE目標の必達という大きな責任を背負っていることを意味するものである。

一方,企業の利益計画に必要なVEの成果を,長期間にわたり継続的に確保することは,なかなか困難なことである。

VEの成果を継続的に得るためには,次の3つのことが大切である。

まず第1は,「この製品のVEはもう限界にきた」という心理的障壁の克服である。同一製品,または同一機種の繰返しVEにおいては,枯れた製品,すなわちVEのタネ切れという図式が無意識のうちに心の中に障壁となって形成されるからである。

しかしVE努力を傾注してきた製品の製造原価は,着実な歩みをもって低減の軌跡を描き続けている。この事実は,製品は決して枯れるものではなく,顧客の要求に対応し,強い生命力をもって変化していることを物語っている。

心理的障壁の克服には,VE活動の実績成果という事実を通して「製品は決して枯れるものではなく,枯れるのは,その製品をとり巻く人間の頭の方である」ということに気づくことが必要である。

第2は,新しい角度からのVEアイテムの発掘である。従来のアプローチ方法を繰返すマンネリVEでは,必要な目標利益の達成は難しい。

継続的にVEの成果を得るためには,VEアイテムを発掘する新しい技法の開発が必要である。

第3は,VEに必要な新しい知恵と情報の調達範囲を,更に拡大することである。

VE技法をよく理解している人達ばかりでVE活動を実施すれば,非常に能率的ではあるが,情報の質の量が,かなり限定される。日常業務においては,VE技法にあまりなじみがない,より広い分野の人達がもつ知恵と情報を,VEアイテムに結びつけるためには,これに適したやさしい発想技法の確立が必要である。

本論文は,新しい観点,視点または角度からVEアイテムを発掘する方法,しかも,それがVEの初心者にも容易に活用できる方法の確立を目的として研究したものである。

この結果,われわれ日本人が常に使用している左脳の漢字を補助的なキーワードとして使用し,機能中心に右脳に,いろいろなイメージを描き,有効なVEアイテムにつながるようなヒントをつかむ方法を考案した。

本技法の大きな特徴は,発想の観点,視点または角度として単一漢字をキーワードとしていること,及びこの漢字と機能定義の動詞を併用し,2つのキーワードによって大脳の記憶情報を検索することの2点にある。

VEは,機能定義段階におけるFASTダイヤグラムや機能系統図の作成とか,機能評価段階におけるFD法やDAREシステムの応用,あるいはDTCといったマネジメント・システムによって,管理技術としての形態を整え,世界的な発展を続けている。

しかし,これらの技法を正しく理解し,完全に実践するには相当長期間の年月を要し,専門のバリュー・エンジニアでなければ活用しにくい面がある。

また,FD法などの機能評価法によって,コスト意識の低い設計者などへの動機づけをしようとするやり方は,表面的な形だけのVEになったり,逆に,意識の高い設計者からは客観性がないと,VE技法に疑念が持たれる結果になりやすい。

そのために,せっかくのすぐれたVE技法の真価が発揮されず,VE活動の拡大・定着化のネックとなっている場合も,多く見受けられるが,これらはVE思想や技法の本質と適用方法を誤っているからである。

さらに,今日のVEは,開発日程の短縮,過大な改善目標,対象プロジェクト数の増大など,非常に困難な条件のもとでの活動が要請されているのに,それに対応し得る技法の開発が遅れている感がある。

このような観点から,ここに体系化した「実践的VE技法」は,

①VEの本質は,顧客の考え方と同じ立場での価値判断に基づく「創造技法」であることを再認識し,

②特別に習熟したバリュー・エンジニアのための技法ではなく,設計者の誰もが「容易に実践できる効果的で効率的なVE技法」をシステム化し,

③専任のタスクフォースプロジェクトではなく,コストマネジメントとの融合による「日常組織主体のVE活動」を展開する。

ことにより,

厳しい経営環境を克服するために全員参加型の,いわば,QCサークル活動のVE版としてのプログラムである。

そして,その特長は,

①日常組織での企業集団ぐるみの推進体制により,VE技法の有効性を高めながら容易化が図られている。

②機能的なダイヤグラムの「コスト構成図」により,VEの原点である機能やコストが把握・比較しやすい。

③創造的機能を案出しやすい「要求機能の洗練化」により,製品差別化による付加価値向上がはかりやすい。

④体系化された「技巧的な機能評価技法」により,改善の極限を追求するためにVEの真価が発揮しやすい。

⑤ 「簡易VEワークシート」や,「VEチェックリスト」,「アイデアバンク」,「コストテーブル」などのVEデータとか,コストマネジメントシステムとの融合による効率化がはかられている。

ということができる。

プラント制御を目的とする産業用電気制御システムは顧客仕様にもとづき単品受注生産することが多いが,近年顧客ニーズにより制御対象範囲が拡大し,性能,保守などの面から高機能化がはかられている。また,制御装置はエレクトロニクス化の進展により,その製品ライフサイクルが短いものになってきている。

このような情勢にともない,システム計画段階から顧客に対し,長期間の技術的なコンサルティングが必要であり,また製品を工場から出荷した後も,現地での据付工事及び試運転調整に多くの時間を要しており,これらの費用の削減が急務であった。

そこで製品ライフサイクルの初期の段階で,トータルコストミニマムな製品にするため,関与者分析によりメーカーからユーザー迄の製品ライフの各関与者からみた製品のあるべき姿を追求し,魅力的な製品に仕上げ,販売の拡大をはかった。

VAを推進するに際し,大切なことは,実施した結果について,誇りと感激と生き甲斐を感ずるような活動を行うことであろう。特にVA推進ステップの中での機能分析は,製品の本質を追求するという意味で,最も重要な分析作業であり,このステップを忠実に実行することにより,少なくとも顕在化されている要求機能を確実に解明することができる。ただ,残された問題として,顧客要求機能から具体的な達成機能解明の過程において,対象製品の設計構想そのものが,どのような過程から採用され,どのような構想が,如何なる理由で不採用となったかという,いわゆる,潜在構想にもスポットを当てると,更に価値の高い真の達成機能を選択することができると考える。

今回,紹介する技法は,上述の問題点を解決するために,数々のVA活動を消化してゆく過程の中で,フト浮かんだアイデアを,苦心の末,体系化したもので,実際のシステム製品のTFP-VAに適用し,予想以上の成果を得ることができた。

以下,その概要について述べる。

家庭電化製品では,現在限界普及率に達しているものが多く,当工場における主要生産品目である冷蔵庫においても,厳しい市場環境にある。

従って,生産増による利益拡大は困難な状態にあり,VEに対する期待は,ますます大きくなっており,VE活動に多大の力をかけて,設計VE・製造VEはもちろんのこと,品質基準総点検による適切な品質確保によるVEにも着手し,製品の価値向上にチャレンジしている。

本稿は,これらのVE活動において,ともすればコストについて目がとどきにくい取扱説明書という印刷物にスポットをあて,パソコンを活用して最適機能コストを追求した技法について説明する。

当社は建設他社に先駆けVEによる管理技法を導入して以来,16年以上を経過しており,ハードVE・ソフトVEによる種々の改善活動も定着している。

なかでも,いち早く取り入れた作業所VEでの苦心談や失敗談を聴き,整理すると,うまく活動した作業所と,そうでない作業所との間には,VEテーマ選定の差,すなわち,たくさんある問題点,改善ヒントから,どれを自分たちの作業所のテーマとして選定したかによるVEテーマ選定で,活動の差が生じたのではないかと思われる。

そこで今回,当社の仙台支店で昭和55年から58年までの作業所の中から,任意に選出した建築系作業所6カ所のVEテーマを分類した結果,VEテーマ選定に能率的な手法(TS法)を考えたら,効果が認められたので提起する。

当工場は,設立以来約15年間,オーディオ製品を中心に生産してきている。

しかし,このオーディオ市場は,今日の低成長経済の中で,伸びなやみ状態となっている。その結果,図-1のCDコードプレーヤー売価推移の如く,激しい売価低下を繰り返しながら,メーカー間の競争を行っている。

これは,お客様からみれば,どんどん価値の高い商品が発売されて喜ばしい。しかし,生産者側にとっては,急激な速度で原価低減を行わなければならなく,さらにシェアを増加させようとするには,この市場のスピード以上に原価低減を行う必要があるといえる。

かかる状況に対処するには,従来,行っているブレーンストーミング法主体のアイデア発想から,さらに,より斬新なアイデアを創造する方法へと技法を向上させなければならない。(図-2参照)

本報告は,上記課題に答えるべく,アイデア発想での阻害要因を改善するとともに,機能系統図のイメージを見直すことによって,新しいアイデア発想技法を開発した経緯及び,結果についてまとめたものである。

逆オイルショックに代表される激動の1980年中期を迎えて,世界の経済情勢は,一部の業界を除いて底冷えの状態にある。この零サム時代を生き残るには,世界中の業界をしのぐ強いコスト競走力をつけた企業にならないと,現状設備の稼動を維持できないことはもちろん,利益の維持増加をはかり,次世代の新分野ヘシフトして行くことは困難になってくる。

これを乗り切る一つの方策として,固定費増加をもたらさない購入材料を,高効率的に用いる新材料VE技法を開発した。この技法は,材料多消費型の装置産業に高い効果が見込まれるが,他の業界においても,有効的な適用がはかれる。これを『商品分析』と命名し,その応用発展をはかっている。

繰り返し行われる改善活動により,各種VE対象の改善余地が低下してきている。改善余地が低下するVE対象から,更に,所定の成果を得るには,機能的な物の見方が有効である。しかし,機能的アプローチを行うVEで,最も重要な機能分析が,上手に,容易に行えない実状にある。これは,日常生活での物の見方,考え方が即物的,具体的であることが多く,機能化,抽象化に慣れないためと考える。不充分な機能分析は,機能にかかわった代替案の創造を困難にし,更に活動メンバーのスキル,能力差も影響し,改善案の発想にも差が生じる。今後,改善余地が低下するテーマから,必要な改善成果を得るため,これに見合う分析技法と,創造技法の開発の必要性を感じた。そのー解決技法として「PASS-VE」を開発したので,その考え方と技法について,以下に説明する。

VE活動は,利益確保への最も有効な手段の1つとして定着してきている。特に家庭電気製品では,現在,限界普及率に達しているものが多く,生産増による利益拡大は困難な状況にあり,VEに対する期待は,ますます強くなっている。従って,VE予算編成に当っては,他社価格を意識した上で利益を確保する,「かくあらねばならないという予算」となってきているのが現状である。

このVE予算を必達するために,VE実務部門は,BTC手法など活用し,日夜努力をしている。しかしながら,利益目標から出されるVE予算と,実務部門でのVEアイテムの積上げからのVE実現額との間にギャップがあり,割りつけ業務を行うVE推進スタッフ部門では,図-1のように,両者の板ばさみになっている。

利益計画の目標をVE予算にブレークダウンし,実現可能な目標にするためには,VE実務部門に対し根拠があり,具体性のあるコスト割りつけ資料の提示が不可決である。

これらを解決する手段として,VEアイテムが裏づけされた上での目標コスト割りつけを行う方法を考え,今回「VEコスト割付技法」の開発に至った。

以下,本技法の考え方,手法などについて説明する。

企業をとりまく環境は,質的,量的,両面の変動,さらに,その変動サイクルを早め,複雑化の一途をたどっていることは,論をまたないところである。このため,各企業とも,多数の対応策の中から,即効性のあるVA/VE活動に注力している。当社,当事業部においても,なんら例外たりえず,経営改善のよりどころとして,活発なるVA/VE活動を展開している。

しかしながら,VA/VE活動は,その大儀にかくれて活動自身の効率化,および管理は,十分に行われているであろうか。

ここに,本稿は,VA/VE活動の効率化をはかるとともに,活動の若干の管理的意味をも含めて,われわれの経験のなかから整理し,実用に供している技法について紹介するものである。

企業の存続と発展は,構成職員の"やる気"と"うで"と"健全な組織体"としての自覚を,バランスよく維持向上させているかどうかにかかっている。VEという管理技術は,「うで」を向上させ,その成果に魅入られて「やる気」を出し,結果として「健全な組織体」ができ上るという,時代の寵児ともいえるもので,低成長の分ほど,この持続的な努力の要求される時はないといってよいと思われる。

建設業は,VEの特に適した業種と実感されるが,VEの適用局面の拡大と発展を,更に,はかっていくためには,建設業で永年培ってきた固有の管理技術の特色を生かしながら,新しい方法と結合させていくことにあると思われる。3時間VE,100分VEなどの短時間VE志向が「ベスト」より「ベター」を狙う建設業の体質に合って効果をあげているのも,こうした理由によるものである。

しかしながら,短時間で処理する際,前線で実践にたずさわると,いろいろのひずみが生じてきている。一番重要なことは,VEの特色である機能定義,機能分析の時間を縮少して,中途半端なまま前へ進み,欠落機能を出したり,逆に,不慣れなため時間をとられすぎて,他を圧迫するなどのケースが多いことである。

本報告は,それ等を解決する目的で,建設工事を対象として短時間でできる機能分析の実用的方法の考察を,行ったものである。

オーディオの市場は,使用用途の拡大,新機能の開発等により,顧客のニーズにうまく対応しながら,その売上げを伸ばしてきた。

一方,商品の普及率の向上と成熟化により,業界の競争は,ますます熾烈をきわめ,一段と厳しい展開となりつつある。

厳しさを増す市場ニーズは,同時にユーザーの価値観の多様化と商品のライフサイクルの短命化を促進し,それに即応した商品の開発が望まれる。

ステレオ商品のカテゴリ一変遷を(図-1)に示す。商品の多様化とライフサイクルの短命化を物語っている。

オーディオの普及率は,すでに60%を越え,経済情勢も世界的な不況のなか,消費者の動向は変化し,

(1)今すぐどうしても必要なものだけ

(2)本当に魅力のある価値の高いものだけ

(3)他人と差別化できる個性的なものだけ

(4)衝動買いから計画的購入

へと変貌し,V=F/Cにおける"C"あるいは"F"へかたよるのではなく,"C"と"F"のバランスの良さが要求される等,市場ニーズは,ますます厳しいものとなってきた。

単なる製品のコストダウンやモデルチェンジでは,すでに対応しきれず,これまでのセールスポイントである単なる「業界初の機能搭載」といっただけの開発対応では,商品価値が高いとはいえなくなってきた。

こうした背景の中で,他社に一歩先んじる商品開発を実行するため,特に,ニーズとシーズの融合化をはかり,しかも,技術蓄積を生かした優れた商品の設計活動がなされるような設計の進め方に関しての仕組み作りを行いつつある。

この仕組みを,PSM設計(Paralell Design System by Seeds Stock Method)と仮称している。

本稿では,このPSM設計法の考え方と進め方を紹介する。

当工場は電力量計,通貨関連機器,情報関連機器等のファインメカニクスとエレクトロニクスを結合させた製品,パワーエレクトロニクス分野の半導体製品を生産している。

これら製品のおかれている状況をみると

①技術の革新,品質に関する市場ニーズの高度化による機能の多様化

②競合各社の価格競争の激化

等により,製品のライフサイクルは非常に短くなってきている中で,企業が維持拡大をはかるには,より早く新製品開発を行い,市場に供給することが重要である。

このためには新製品開発において,機会損失を最少にする手段として,有効的なVAを実施しなければならないことは,周知の通りである。

当工場は,昭和52年に製品,部品,資材分野を対象としてVAが導入され,昭和53年には新製品開発分野へと拡大をはかり,昭和57年にはVAテーマの約半数を占めるまでに発展した。

これは本論文で紹介する改善により,開発時のVA活動の効率化をはかったことが大きい。

なお,本論文における新製品とは,タイプチェンジ(モデルチェンジ),マイナーチェンジ,系列補完をいう。また,開発ステップの適用場面では,主に構想および試作設計段階を示している。

VEを推進する企業として,特にVE適用局面の拡大については,計画的に,これを実施していくことが必要である。当社においても,今まで,作業所VE・設計VE並びに管理部門としてのソフトVEなど,多くの分野に挑戦し,それなりの成果をあげてきた。また,トータルVEを,一層,効果的に実施するため,種々の戦略も投じてきた。VEは,無限の資産であり,われわれは,一層の効果を期待して,今回,更に,その適用分野の拡大をはかるべく,従来,実施されていなかった見積時におけるVEの積極的導入をはかるために,手順の要点をまとめることとなった。設計事務所など,他社が設計した建築物に対し,施工を請け負うという建設業の特異性のもとでは,見積時点は営業活動と相ともなって,仕事の流れとして最も川上に当るものであり,そのVE効果は,はかり知れないものが期待される。本論文では,前述のごとき,建設業特異の見積時の業務の進め方と,その問題点を分析し,この時点でのVEを効果的に導入するためのジョブプランを作成し,「今まで,実施困難とされていた見積業務へのVEの導入」を可能にした。以下に,要点を発表するものである。

企業が,今後予想される厳しい経営環境の中で,存続していくためには,顧客の要求している機能/コストを実現する以外にない。

従って,これからのVE活動は,企業の存続という点から,より一層重要となり,従来に増して全力を傾注すべき課題である。

本論文は,VE活動において,新たに追求すべき企業の枠を越えた"共同VE"の重要性と,効率的な展開方法についてまとめたものである。

すなわち,より高い価値ある製品と価値ある仕事をもたらすために,企業内のVE活動は,あらゆる分野において,強力に推進しているが,取引関係にある両企業が一体となって,仕事の価値向上あるいは取引関係の中にある問題点(発注ロット,納期,取引業務)も含めた共同VE活動については,必ずしも充分ではなかった。

そこで"共同VE"の重要性を明確にすると同時に,従来,なぜ活動が充分できなかったのかという原因も追求し,これから効率的に展開するためには,どうすべきかについてまとめたものである。

建設業を取巻く環境は,年々きびしくなり,コスト競争の激化,顧客の低コスト追求などの中で,工事益を確保し,経営を安定させるためには,より一層の企業としての努力が必要となってくる。

従来も,それに対処するための普段の努力をしているが,上記の現状を踏まえ,最大限の効果をあげるべく,より一層,企業では本支店の組織をフルに活用し,その"ちえ"を結集する時であると言える。

建設業は,他の製造業等と異なり,個別受注産業であり,多くは一品生産型である。

1件1件の工事についての目標値を設定し,それの達成のための小さな努力の積上げが,結果として企業の工事益となり,それが企業を経営していくための糧となる。

従って,各工事の工事益の目標設定に対するVEによる工事益の確保のために,最大のウェイトをかけることが望まれるゆえんである。

当社では,昭和43年,VE手法の導入以来,その推進・普及につとめ,特に工事部門ではVE計画会議と3時間VE(VE会議)等の形で作業所に定着し,その活動を活発にすすめている。(VE計画会議と3時間VEについてはVE全国大会で論文として発表ずみ。)

工事部門のVE活動方針として,作業所VEの実践による工事益の確保が大きく打ち出されているが,それと同時に,その手法を活用し,目標設定とそのフォローに組織的な展開を行い,かつ,業務能率の向上をめざし効果をあげつつある。

以下に目標設定へのVEアプローチと,具体的な展開について述べる。

企業は,永続的繁栄をはかるために,業務水準の維持,改善に開発を行い,そのために,さまざまな管理手法を使い分け,今日に至っている。

当社もVE導入後6年を経て,数多くの成果を生み出し,企業発展に寄与してきた。

しかし,その展開結果を別の視点からみるとき,必ずしも,VEの特徴が十分活かされてきたとはいいきれず,時間的なものや,手順上の問題が残されている。

改善活動において,完全に一つの管理技術に依存するということは,むしろ例外的であり,時と場合に応じた使い分け,応用が必要である。

こうした考えにたち,建設プロジェクト業務での原価低減活動に対し,その特殊性を考慮しながら,当社なりの工夫改善を重ね,VEをベースとした短時間原価低減手法の開発を試み,実用化をはかった。

本論は,これらの問題解決をはかるために試みた手法開発の経緯と,その内容を詳述するものである。

当社のVE活動の歴史は,今年で14年を数えるが,この間のVEによる成果が,企業活動にいかに貢献してきたかは,はかり知れないところである。当社は,これまで建設業という業種の特異性をあえて容認し,短時間VEなどの手法を開発して,VEに積極的に取り組んできたことは,過去に何度も紹介されてきたことであるが,これは,こうした当社流ともいうべきVEのやり方が,いかに作業所中心的に展開されてきたかを証明しているのである。ここ数年,全社的運動への広がりを求めて全社,全部門でトータルVEへの取り組みを実施しているが,これらの成果を,ある程度期待できるにせよ,今後とも,これまでの作業所中心的な活動方式は変わらないものと思われる。しかしながら,日進月歩する建築生産技術の変遷にともなって,VEの成果も徐々に変化しているのも事実である。このあたりで,過去10余年にわたって蓄積された成果を振り返って,今後のVE活動の方向性を展望するとともに,その課題解決へのアプローチを実例を掲げて紹介する。

近年,東京を中心に,ホテルの新設が相つぎ,第3次ホテル戦争の様相を呈している。

しかし,今後,東京が国際都市として発展を続ける限り,まだまだ質の高いホテルの需要はなくならないものの,低成長時代といわれるこのごろ,コストは限定され,合せて機能の充実をはかることが,ますます,われわれ建設業に携わるものに要求される。

標準的な設計手法で,発注者の要求事項を,すべて満足するように計画すると,予算を超過してしまい,実現不可能な設計になってしまうことが多い。そのために,発注者の要求事項を,いかにしてコストの中に組み込んでいくかは,重要な課題となってくる。当社では,このように発注者の要求事項を機能に変換し,それを補足する2次機能との関連を追求して,限定されたコストの中で,いかにして機能を組合せて,無駄を省いていくかを研究してきた。

われわれは,研究の課題で,バイザウェイが開発したFunctional Analysis,System,Technique (FAST)ダイヤグラムへの展開による機能追求手法の導入を検討した。

FAST技法は,日本VE協会発行「VE資料24」にも述べられているように,教科書レベルでは,その有効性を説きながらも,実践面では,ほとんど活用されていないといわれている。

本レポートでは,建築設計で,発注者の要求事項を機能変換し,機能の整理を行うとともに,VEとして重要な情報収集を効果的に行う手法に結びつけていく方法を説明し,今後の活用の端緒とする。

近年,コンピュータの著しい普及と高度な利用によって,そのソフトウェア開発量は年々増大し,かつ,その処理も複雑化してきている。

一般的にソフトウェアのライフサイクルコストの多くは,後戻り作業で,これは不完全なコーディングに起因しているものや,処理仕様書の品質バラツキと不良によるものが,ほとんどであるといっても過言ではない。

本開発技法は,これらの点に焦点を当てたものである。すなわち,処理仕様書が作られる要素である顧客要求の機能及び条件・制約などをまとめた「計画設計書」を分析し,従来,個人・個人の頭の中にある知識から,経験から,感情から等で作業していた不特定要素を除去してやることからはじまる。よって,本開発技法は,まず,IPO機能展開法(IPO:Input-Processing-Output)を作成して,ソフトウェアの機能を明確にし,このIPO技法により,最終的にビジュアル化された機能展開図及び機能系統図をベースにして作成される各種ドキュメントの工数及び技術レベルの評価・分析を実施できるようにして,実際作業の高効率化をはかろうとするものである。

IPO機能展開法,及びIPO技法による実際業務の評価分析法の2点について,その概要を説明する。

当工場は,エレクトロニクス製品を生産しているが,近年はマイクロコンピュータ,エレクトロニクス等の技術革新が激しく,それにともない製品のライフサイクルも次第に短くなってきている。この熾烈な競争に打ち勝つためには,新製品の開発,既製品の高機能化,小形化等のモデルチェンジを短期間に実施して,市場に展開していくことが,必須の条件となってきている。

VE活動を実施するにあたり,新製品の開発,既製品のモデルチェンジ等を効率的に実施し,かつ,大きな効果を得るために,機能展開のー技法として,ハードイメージ化によるFC分析技法(FC:Function and Cost)を開発,適用し,大きな効果を上げたので,以下報告する。

一般に機能分析は,VEの実施手順として広く採用され,その重要性も深く認識されているが,実際の運用面では,十分に実施されているとはいい難い。

その理由として

(1) VE活動メンバーは,一般的に製品をよく知っている設計者が主体となるため,対象製品の機能は,すでに頭の中で理解しており,いまさら面倒な機能展開はやらなくてもVEはできる,という考え方が支配的であること。

(2) 機能分析法は,対象となる製品の形,物といったハ一ド的イメージから遊離された考え方の方向性をもったため,特に設計者との相性が悪い。

等がある。

本開発技法は,ハード的な物(部品または装置)を機能と対応させてイメージ化し,機能展開を,より簡便に現実的なものとして実施しようとするものである。

当工場の製品分野は,電力,一般産業,公益および交通等,幅広い市場を有しているが,いずれもユーザーのニーズは,時代を先取りした合理化,省エネルギー化を指向したシステム製品が主体である。

このため,プロコン・システムの高度化,マイコン応用製品の増大化傾向は,顕著なものがあり,年々これらソフトウェアの比重は高まる一方で,この分野へのVA技法の導入と,VErの養成は大きな課題となっていた。

従って,プロコンおよびマイコンに関するソフトウェア(以下ソフトと呼ぶ)のそれぞれの専門家の参画を得て,ソフト部門が共通に利用できるようなソフトVA技法の開発を進めた。その結果,今まで未開拓ともいえるソフトの分野に対し,VA技法の導入を行ったので,その内容について,次に要点を紹介する。

建設業が一品生産であり,VEの量産効果があまり期待できない以上,少しでも多くのVE改善テーマに取り組み,改善件数でそれらをカバーしなければならないことは,過去の論文で述べられている。

これまで当社の作業所VEは,VE対象選定会議(VE計画会議)によってVE対象の摘出を行っている。従来,ここでとり上げられる対象は,主として顧客の要求する機能や,それらを達成する手段として二次機能を中心に検討されてきた。これは設計図書や見積書を中心にしたVE対象の選定であり,機能的側面を最重点にしてきたためである。

1つの建造物を建設するには,その地域の自然的特殊性を理解し,さらに法令や行政指導を満足するなど,さまざまの外的な制約条件をはじめとし,安全や品質確保のため,種々の企業内規程を順守しながら,設計図に示されたものを構築することになる。

作業所VEでは,それらの制約条件に対して,いかに対応するかが施工上重要な鍵であるが,従来,施工経験の豊富な,いわゆるベテランと呼ばれる人達の勘にたよりすぎていた点は,大いに反省すべきところである。

今まで,これら制約条件に対し,何の抵抗もなく通りすごしていたVE対象選定の中で,今一歩,追求を加え,果して「本当に制約条件であるか否かの掘り下げ」と,「制約条件をVE対象として,積極的にとりあげる」などVE対象選定のトータル化と,一層のVE活動の活性化を目指して研究を続けてきた。

この論文では,制約条件に対するVE対象選定の考え方と手法について,その内容を詳述する。

製品のVA活動を実施局面からみると,下流の段階,すなわち2nd Look VAになるに従い,制約条件が多く,実施効果が少なくなる。また,製品のライフサイクルからみると,成熟段階になるにつれて難しさを増す。このため,労力のかかる割には効果が小さい。

同じ製品のVAを何回も実施してくると,前の改善個所や問題個所が知り尽くされ,マンネリ化が生ずる。しかし,"改善の余地なし"といった抽象的な判断は,過去のVA実施回数や,独自の創造力に影響された個人的判断であることが多い。

一方,価値改善活動であるVAは,実施した結果,どの程度,価値改善がなされたかを知る必要がある。これを客観的に把握することができれば,明確な目標の下に,改善の余地があるか否か判断ができる。価値を客観的に把握するための方法としては,いろいろあるが,それぞれ一長一短がある。

本論文は,ユニット部品などの価値改善結果を,できるだけ客観的に把握するために,VA技法をまとめ上げたものである。また,本技法は,分析過程で,改善すべきポイントの発掘も可能である。

以下,本技法開発の背景,考え方,実践応用例について紹介する。諸賢のご批評をお願いする次第です。

VE活動が企業の収益改善に重要な役割を果たしていることは,今更いうまでもない。VEがわが国に導入されて以来,VEの戦術的側面,すなわちVEテクニックは,長足の進歩を遂げ,今後も更に発展することが予想される。

しかし,現在のVE活動が,企業の期待する役割を十分に果たしているかとなると,必ずしもそうとはいい難いのが現状である。

たとえば,ある不採算製品をとらえてVE活動を実施し,実現化時点では大きな成果が期待される結果を得たとする。しかし実際は,実現化時点,またはその後しばらくして再び不採算製品に転落するケースが多い。

このようなケースにおけるVE活動の最大の問題点は,間違ったVE目標値の設定であり,企業経営の立場からみた戦略的VE活動としての評価は,極めて低い。

価格競争の激しい製品の売価は,時間の経過と共に,急激かつ着実 (Quick and Steady) に下がる。「急激な売価ダウン」は,短期的にみると市場環境によって左右される場合が多いが,中・長期的にみると,プライスリーダーとなる主力企業のコストダウン戦略にかける強い意思が,その背景となっている。

本論文は,「急激な売価ダウン」に十分対応できるような戦略的VE目標の設定について,研究したものである。

具体的には,厳しい市場環境にある各種の製品について,製造原価の推移を原価低減曲線によって解析し,これらの資料をもとに,VE対象製品の中・長期的なあるべき製造原価の予測方法を確立した。

その結果,市場の急速な売価ダウンに対応するためには,大幅なモデルチェンジをともなう1st Look的なVEの実施が,前提条件となることが判明するとともに,その実施時期との関連において,中・長期的VE活動を展開する上での戦略的VE目標の設定が可能となった。

近年,VAが企業活動の中で重要視されてきたのは,その成果もさることながら,経営者の理解が高まってきたことによるところが大きいと思われる。VAの特徴である。

① タスクフォース方式で展開するため,組織間の壁が打破できる。

② 顧客ニーズにそった方向で製品を判断するため,アウトプットの方向性の妥当性が強い。

③ 機能分析による大幅な方式の変更により,大きな原低効果が期待できる。

以上の主要な点が認識されてきたためであろう。

企業の中で,VAがこれからも定着するためには,この3つの主要な点に,より磨きをかけることが大切と思われる。

年々多様化してゆく市場と,企業競争の激化に対応するためのVA活動は,如何にあるべきか。

VAは,コストダウン志向の取り組みが強く,企業トップのニーズも,古くから,その傾向にあり,コストダウンのツールとして多く活用されているのが実態であると思う。これからのVA活動は,前述の企業環境からも V=F/C の意味を充分に考えて取り組むことが肝要である。

Functionを最大にし,Costを最低にして,Valueを最大にすることができて,Priceを優位に設定することができる取り組みの可能な時点は,商品企画の段階である。

いうまでもなく,顧客ニーズに適応している商品を,タイミング良く売り出すことは,企業目標の1つであるが,この命題を課せられている商品企画にVAを適用させ,VAの威力によって商品企画の効率を向上させることが,これからの企業力の大きな要素となるものである。すなわち,0-Look VAの成果が,企業力のバロメーターとなるといっても過言でないと考える。

本論文は,「開発業務の効率を向上させるために,その源流である商品企画を効率的に進める」この狙いを成功させるために,0-Look VAの取り組み方を如何にすべきかを目指したものである。また,当社で 0-LookVA を実践するにあたり,手順等を作成したので,その一部も紹介する。

一般に商品の成長パターンは,開発→成長→成熟→衰退に至るまで,図-1のように一様のパターンをたどる。新開発の商品は,開発された当初は生産量を少なく,高価であるが,ユーザ一層も多くなり,需要量が増すに従い,低価格となり,その低価格が,更にユーザ一層を増加させる。一方では,新規参入のメーカー数も増加し普及率が向上するというパターンで推移するが,このパターンが最も良く表われているのが民生用商品であろう。

産業用電子機器では,普通,需要層が限られており,民生用電子機器ほどには需要の急速な拡大が図れないという壁があり,生産量の伸びや,製品サイクルの長さ,価格の推移のしかた等が,図-2のように,かなり異なっているのが通例である。

しかしながら,最近のファクシミリやOA機器にみられるように,明らかに民生用マーケットをねらった需要が開拓され,民生用電子機器に似た傾向が出始めていることは注目に値する。

本論では,産業用電子機器の発想を転換して,いかに民生用機器のレベルに近づけていくかという民生指向の戦略的VAアプローチの一方法について述べる。

VEの成果を拡大するために,最近では,ソフトVEの領域におけるVE活動が,ますます活発化してきた。しかしソフトVEは,ハードVEに比較して,対象となる領域が極めて広く,複雑多岐にわたるため,製品を対象としたVEのように,1パターンの展開が難しい。従って,ソフトVEの場合は,テーマに応じたアプローチの方法を,その都度,考え出さないと大きな成果につながらないことがある。

本論文は,多くの活動事例をもとに,ソフトVEの領域におけるいろいろな対象テーマの構成要素と,そのメカニズムを解析し,アプローチ方法のパターン化を研究したものである。

その結果,ソフトVEの対象テーマは,仕事の処理(時間または金額の削減)と仕事の流れ(スピードアップ)に分けて考えると,単純化されることがわかった。

仕事の処理には,情報の処理と物の処理があり,これらの大部分は,ハードVEと同じような考え方とテクニックで価値の評価ができる。

一方,仕事の流れには,情報の流れと物の流れがあり,特定のテーマを対象とする場合には,スピードアップまたは迅速化として,これらの流れが重要な意味を持つことがある。しかし,仕事の流れを評価する場合には,ソフトVEとして,新しい価値の概念を導入する必要があり,これについて検討を加えた。

以上について,大きな成果につながった実際の活動事例を引用しながら,以下に述べる。

産業の発展過程が成熟段階に達してくると,トータル的な考え方,進め方が,より重視されてくる。

VEにおいても,従来の製品を対象としたハードに加えて,間接部門の業務,管理システム等を対象としたソフトVEが活発になってきているのも,その現象の顕著な例の一つである。

ソフト対象は,改善効果の大きい「残されたVE領域」である。しかし,やってみると案外難しいのである。従来の製品を中心としたハードVEとは,多少趣を異にする。

現状分析をスタートにした2nd look的なアプローチでは,あまりに複雑で長時間を要し,効果もあがりにくいのである。

効果的なアプローチをするためには,いきなり分析したり,問題の細部に入り込むのでなく,取り組み対象の基本的問題に対応する仮説を設定し,その仮説を手がかりにして「あるべき姿」を描き,あるべき姿をとおして,現実的な解決をはかることが重要である。

本文において,経験にもとづいた仮説を設定し,その仮説を手がかりに,VEの科学的プロセスによって論理的,客観的にVE対象を改善していくソフトVEアプローチについて述べる。

わが国の就業者数は,製造部門で年平均1.4%ずつ減少し,オフィス部門では,年平均2.8%ずつ増加しつつあるという。

一方,米国における投資額と生産性向上率は,図表-1に示すように,製造部門の生産性が90%向上したのに対し,オフィス部門の方は,僅かに3%しか向上しなかったと伝えられている。

このような状況から,オフィスオートメーション(0A)の必要性が叫ばれるゆえんであり,80年代に生き残るための企業戦略の重要課題のーつとして「ホワイトカラーの生産性向上」が急速に浮上してきた。

同様の背景で,企業におけるVA活動も,製品などハードウェアの分野ばかりでなく,事務・手続き・組織・帳票などソフトウェアの分野へ適用分野が拡大しつつある。しかしながら,ハードウェアと比較して,ソフトウェア分野に関するVA技法研究は数少なく,特にソフトウェア分野ではヒューマンファクターの占める割合が大きいため,機能定義を行うのが難しいという問題点があった。

この論文では,事務・管理部門の業務改善などソフトウェア分野VA(以下ソフトVAという)機能定義に適用できる「機能モジュール」技法について紹介する。

建設VEの技法は設計,施工(作業所),運搬,協力企業へのアプローチなど,日本VE協会からも多くの資料が発表されている。これらは,いずれも諸先輩が,いかに建設業の中にVEをうまく導入していくかを真剣に研究してきた貴重な資料である。

そこで建設業の特徴となる要求をあげてみると

①個別受注産業であり,個々の設計により生産されている。

②ー商品の寸法が大きい。

③一商品の金額が高価である。

④ー商品のライフサイクルが長い。

⑤工場ともいえる生産現場が,一商品毎に変り,一定していない。従って生産設備に該当する仮設物の構築,撤去もー商品毎に行われる。

⑥屋外作業が多く,労働環境は必ずしも良くない。

⑦商品の構成材料が極めて多い。

⑧アッセンブリー産業である。

⑨設計図書が与えられ,生産だけを受注するものが多い。

以上のような事情が組み合わされている点が,建設業の特徴であるということができる。

すでに発表されている建設VE資料は,いずれも建設業特有の問題点の追求が多く,システム産業として実務を遂行する場合には,これらの技法を,いかにアレンジして効果をあげていくかが重要である。

われわれ建設業に従事する者は,担当セクション単独で行うVEの他に,建設物を作る過程で,各技術者グループ相互の横のつながりにより行われる,いわゆる横断VE(トータルVE)を実施してきた。われわれは,更にすすめて企画設計から施工までの縦の流れを,組織的段階に実施する縦続VEを導入し,これらをジョイントさせ,二次元的にVEを展開していくことにより,VE効果を飛躍的に向上させるVE推進方法を,ここでは,特に"ジョイントVE(JVE)"と称し述べる。

設計施工工事における上記のような横断VEと縦の流れを行う継続VEとは,一つのVEをまとめあげる過程で,VEメンバーの果す役割りに明らかな違いがあり,あえて,これを用語の上でも区別し,その定義を明らかにしている。

建設VEは,一品生産であり1つのVE改善は一つの商品のみに適用され,量産品のような反復効果は,あまり期待できない。そこでVEによる改善内容はベストよりもベターを選び,その分,少しでも多くのVEテーマに挑戦し,改善をはかることが重要である。

そこで一つの工事で,多くのVEテーマを効果的に推進して行く方法として,JVEを提案する。発注者から与えられた条件をもとに,一つ一つのテーマをJVEの考え方により展開拡大させ,より良い製品を作るということは,極めて効果的なことであり,大いに推進すべきである。

以上をまとめると,次のようになる。

TVE(トータルVE):一つのテーマを広い範囲で実施するVE。

JVE(ジョイントVE):一つの製品を作る過程で多くのVEテーマに取り組むVEの推進方法。

現在,企業をとりまく環境は,非常に厳しいものがある。すなわち,メカトロニクスや先端技術などの急速なイノベーションの時代を迎え,また大幅な短納期要求や,小ロット化,低コスト,高信頼性など,顧客ニーズの多様化,高度化が日増しに強くなってきている。

このような,時代のニーズに迅速に対応し,企業として発展をしていくため,当工場では現在,N-MOPPS (New Market Oriented Products and Production System) 運動を展開している。この内容は

①強い新商品の早期開発

②最適生産システムの拡大充実

③仕事の質の向上

であり,工場をあげて鋭意取り組んでいる。

この中で,製造部門に課せられた重点テーマは,

①短納期や小ロット化に対応したライン作り。

②大幅な,直接加工費のコストダウンである。しかしこのような課題を確実に実現していくためには,従来,スタッフ部門主体であった製造合理化を,製造現場主体で推進できる実力を早期に養い,スタッフ部門のパワーを新商品開発,新技術開発に集中していく必要がある。

一方,より高度の合理化を推進するためには,従来の分析手法だけでは限度があり,どうしても機能追求による発想の転換や組織的な力が必要である。さらには,職場全体の合理化の活性化を計るためにも,VAの思想や手法の浸透が急務であると考えられる。

このような,工場の背景と,製造現場におけるVAの必要性を考慮し,当工場に適した製造VAの検討を行い,昭和55年度よりVIQ活動を導入し,重点合理化プロジェクトから,大衆運動まで結びつけ,当面の課題消化と,今後の合理化に対する人材育成を指向し,現在,成果をあげつつある。その組織的展開と,内容および特徴について紹介する。

われわれの工場では,エアコンを過去20数年間にわたり生産してきたが,その間,第1次・第2次のオイルショック,冷夏による減産,あるいは省エネ規制にともなうイニシャルコスト等のアップ要因を,企業独自に改善できる手段として,VE技法を導入し,改善をはかってきた。

導入初期は,セカンドルックVEが中心であり,やがて,設計段階におけるファーストルック,さらには,商品企画段階におけるバリューデザイン(VD)と上流段階でのVE適用に移行し,試行錯誤や多くの実践経験を重ねながら,企業経営指標に密着して,VE活動を展開してきた。

市場におけるエアコンは,常に最新技術を導入したコストパフォーマンスの高い商品,顧客ニーズに合った商品,あるいはライフサイクルコストの優れた商品が求められている。この市場ニーズを満たすために,最新のエレクトロニクス技術を駆使した商品,あるいは省エネルギーと快適さの機能を持った商品開発に,しのぎをけずっている。

エアコンの基本を構成する機能部品は,開発日限,開発費用,あるいは設備費用に多額な資金を必要とする関係から,仕様の見直し程度か,または,市場にある標準品をエアコン用の仕様に見直した程度で対応し,抜本的な改善をはかる機会が少ない。また信頼性確保のために,確認ステップを,長期にわたって実行し,事故を未然に防ぐことが重要である。しかし,機能部品の大幅な価値向上がはかれた場合には,エアコン全体に波及し,その効果は,非常に大きなものとなる。

そこで,機能部品の機能分野におけるコストの度合を把握して,(1)機能分野ごとに方式選定によるVE効果を狙うか,(2)機能部品のVE効果を狙うか,または,(1),(2)の両方を狙うか,狙いを明確にした上で,目標割りつけを行う方法を採用した。この方法によれば,改善の狙いが明確であるから,やわらかい改善額が把握でき,また,これらに関連する情報は集めやすい利点がある。

VE活動では,価値の高い代替案を作成することを目的とし,最初に機能分析(機能定義,機能整理,機能評価)を行う。これは,VE対象を的確に把握するためである。中でも機能整理法としての機能系統図の作成は,重要な役割を持っている。しかし,この機能系統図は,時間をかけて作成した割合には,VE活動を通して有効に利用される局面が少ないのが実状である。

従って『機能系統図をできるだけ短時間に効率よく作成する』とともに『機能系統図と代替案作成との結びつきをより明確にする』ことが望まれるところである。これを可能にするための技法として『サンドイッチ形機能系統図技法』を開発したので,その考え方と技法について,以下に説明する。

VE活動において「創造力」は不可欠であるが,持って生れた個人差がつきまとい,訓練や既存の創造技法の助けを借りても,なかなか向上しにくい資質である。

また,如何に「知識」が豊富でも,「世の中の汎例や常識の範囲の発想」にとどまる人が意外に多いのに気がつく。「創造力の優劣」は,時には,人の運命を変えたり,また,企業活動においては,製品のライフサイクルや経営数値にも影響を及ぼす。

われわれVE担当者にとっても,「業界の競争」に打ち勝つ手段として「コストダウン」や「セールスポイント」を付加するための「アイデア」を,より効率的に生みだすことは,重要課題である。

しかし「TFP(Task Force Project)活動」を通じて感じる点は,まだ構成メンバー(設計,生産技術者他)の持合せる「創造力の範囲」に,活動の成否が左右され易いことである。VE推進者は,推進手段を考えたり,創造技法を駆使してメンバーを刺激し,より有効な創造をさせるべく試みるが,既存の創造技法を通して感じるわが社の問題は,

1) 難解で理解するまでの時間がかかる。

2) 創造し易い環境作り的なものが多く,アイデアの数が出ても,質や歩留りは必ずしも良くない。

3) 直接的に「答」につながるアイデアの抽出技法は少ない。

4) 問題点を把握する「分析技法」は多く開発されているが「創造技法」の数は少ない。

等が問題としてあげられる。そして「誰もが同じレベルでアイデアを出し得る技法」を開発する必要性を感じた。

最も理想とするVE活動の形態は,商品の開発過程に携わるすべての人々がコスト,機能の考え方に立って,仕事を遂行することにあり,改めて計画的にとり入れるべきものではないのが本当だろう。

しかしながら,実際のところは,企業内教育として定期的にVErを養成したり,特別なプロジェクトとしてとり上げるほかには,ターゲットが明確になっていないとか,時間的な制約などの理由から,目標が達成できていないなど必ずしも,うまくいっていないのが実態ではないだろうか。

基礎研究段階や高度成長下の商品開発では,それぞれが多少,ランダムな方向に向いていても,全体としてあるベクトルが合っていれば,それで良かった。

ところが,今や商品開発過程で各々のセクションが,VEの考え方を充分理解し,経営に結びついた計画的,組織的な活動をしなければ,企業は生き残れなくなってきている。

当論文は,「Side Look VE」という新しい考え方により,商品開発過程を横断的に眺め,VEの環境作りや,システム作りを行い,自然と全員がVEの思想に徹し,企業体質を向上させることを狙いとするものである。

クレーン等の大型鉄骨構造物においては,重量軽減がコストダウンへの近道である。また,顧客サイドからも省エネ,省資源の見地で軽量化を求められている。

この軽量化を推進するに当り,単に製品構成要素のすべてについて,平均的に軽量化をはかるのではなく,重点ポイントを絞って取り組むことが望ましい。ウェイトリレーション法は,製品の構成要素間における重量の影響系統を分析し,また各要素のコストレベル(鉄骨構造物の場合は,一般的にトン当りコスト)を把握することにより,製品の特性をチャート上に表示させる分析手法である。

ウェイトリレーション法は,目標の割りつけ,重点ポイントの摘出に利用し,成果をあげている。以下,当事業所の製品である天井クレーンを対象例として説明する。

オーディオ業界は,今,深刻な構造変化の時期に直面している。ひとつには,輸出比率の高いこの業界は,欧米市場の長期不況のために,売り上げを低迷させていること,更に国内においても需要の一巡,個人消費の低迷などにより,昨年は,前年より1割方売り上げが減少した。ふたつめには,第3国グループなどに,低価格品はシェアを譲り渡す傾向が続いている。もうひとつは,今までのアナログ技術からデジタル技術への転換に象徴される技術革新,新素材の時代を迎えたためである。今年秋,コンピュータ技術の応用であるDAD(デジタル・オーディオ・ディスク)という新しい規格のレコードとプレーヤーを一斉に発表する。今までのアナログ式のレコードよりも,音質は良くなるが,各社ごとの音の個性は,さらになくなることが予想される。そうなると,オーディオ製品は,趣味の製品というよりも,安くて良い物を作ることの競争になって行くことが考えられる。今まで,高度成長から低成長への変化を,減量経営,軽量経営によって乗り切ってきた各企業は,今また,大きな試練に立たされているわけである。

当工場においても,昭和44年の工場独立以来,VA活動を展開,多くの成果をあげてきた。本年も,前述のような企業環境に対処するため,従来以上のVA活動の展開をはかるべく,意欲的に推進しているが,特に,VA効果実現のスピードアップおよび機会損失の撲滅に力点を置いている。

本論文で紹介する「アイデアのバリュー評価法」は,アイデアのレベルをビジュアル化し,それぞれの価値の評価を適確にすることで,VA成果の増大につながるという信念に基づいて展開しているVA活動のー技法である。

VAは資源有効活用の技法として,時代的要請を満たすものであり,各企業において積極的に取り組み,多くの成果をあげていることは事実である。

しかし,一方においては,手間暇のかかる技法であり,効率的な運用が求められている。また,VAは経験技法であり,何回もProjectを体験することによって,要領がマスターされる,いわばスポーツの技のようなものであるともいわれる。しかし,現在のVAジョブプランは,分析が主体であり,現状を機能的に理解することを強調しているが,その後の代替案作成のステップが抽象的であり,不親切であると思う。成果につながるのは,この代替案創造のステップであり,具体的指示を求めている。

私どもの企業においても

1) VA実施の効率化と

2) VA成果の質,量の拡大

を目標に"機能分析と創造性の有機的結合の研究"に取り組み,"MELCO-VA発想技法"をアウトプットしたので,その一部を紹介するので,諸兄のご批判をいただきたい。

企業におけるVA活動は,経営効率を向上させるための有効な手段として,完全に定着してきている昨今,VAの役割りは,ますます大きくなり,活動の対象とする局面,および範囲は,経営活動のあらゆる面にまで拡大してきている。

この中で,今後のVAのあり方としては"VA活動の効率化"すなわち「最小の投入費用で最大の成果を生み出す」ことが課題となってきており,このため,各種VA技法の研究,開発が盛んに行われている。

しかし,そのほとんどが,VAの実施手順における「分析段階」,「アイデア発想段階」を対象にしたものが主体であり,「評価段階」すなわち"最も効果のあるアイデアを,効率良く,適確に選択し採用する"ための「アイデアの評価」に対しての技法は,必ずしも充分でない。

近年におけるVEの企業内普及は,著しい進展をみているが,その中にあって職能区分的(設計,資材,製造など)に人員割合を考えてみると,製造関係者が圧倒的に大であることは,いうまでもなく,この製造機能にVEの思想を導入し,製造機能の価値向上をはかることは,焦眉の急といえよう。昨今の製造技術のレベル・アップは,マイコン制御,作業ロボット・NC工作機等々真に目をみはるものがあるが,それに並行して,VEによる製造部門中心の製造コスト諸元の価値向上運動の展開が,大いに期待されることは,理の当然といえる。

本論では,製品のVEについては,すでに検討済みの製品について,その製造面からのVE検討を必要とする場合を想定し,それに機能分析(機能定義,機能整理,機能評価)をなす場合の考え方,すすめ方を述べようとするものである。

低成長経済の続く昨今,家電業界は性能,特徴(付加機能)に重点を置いた高額製品と,経済性重視の低価格製品との二極分化の傾向を,ますます強めている。

これらの影響を受け最近のVE界でも,0 Look VE,0.5 Look VEなど,それぞれ趣向をこらしたアプローチをし,各企業とも懸命の努力を続けている。

他方,製品は,一般的に図-1のごとく,市場開拓期から衰退期まで4段階の経過をとるが,企業にとって成長期,成熟期を,いかに長く持続出来るかが,その企業の繁栄につながる。作れば売れる成長期から,成熟期の顧客のニーズに合ったものを,いかに長く供給出来るかが,重要なポイントとなるのである。

多くの企業がVEを企業の最重点施策として,多大の成果をあげていることは,周知の事実である。しかし,その内容をみると,製品を対象としたものがほとんどで,サービスいわゆるソフトウェアを対象としたものは,大きな成果を生み出すに至っていない。製品対象のVEも,実施段階で製品・部品の標準化と品質保証を確実に行わないと,間接経費はかえって増加し,トータルコストでは採算にのらない場合が生じてくる。

かかる背景より,ここ数年来,ソフトVEの重要性が注目され,多くの企業が力を入れてきているが,まだ実践的に使える手法が確立されていないのが,実状であろう。

製品VEが物を対象とした機能分析とすれば,ソフトVEは,究極的に人を対象とした機能分析となるので,ソフトVEの場合,基本的に,テーマの内容や性格,さらには個々の企業のニーズによって,アプローチのやり方やステップのすすめ方を,むしろ変えるべきであり,また,いろいろのやり方があってしかるべきと考える。

この実践ソフトVEは,いろいろ考え得るソフトVEのうちで,「誰にでも取り組み易い,実践に役立つソフトVE手法」のーつとしての展開を試みた。

本論文は,1977年,当社が本大会で「小集団活動を推進するためのVE手法」として発表した「問題反転VE」の論理を起点としている。「問題反転VE」は,その後,実用的ということを理由に,各社で大いに活用されているが,私自身,特に管理・間接部門において,社内外100回にわたる実践テーマによるWSS,TEPに適用した結果,大きな成果をおさめている。

本論文は,実践より得た体験をもとに,その思考展開を理論的に裏づけると共に,各ステップの留意点を整理したものである。実際の指導は,40枚程度のOHPによる視覚教育で行い,専らVEの体得に重点を置いているが,本論文は,VE rとして具体問題を解決する場合,少なくとも,これだけは心得ておくと得策であろうということを意図し,前半をソフトVEを進めるための理論的背景,後半をこれを実践するための実務的な留意点という形でとりまとめた。

需要低迷の続くなかで人件費,原材料が上昇しており,企業経営は一段と苦しくなっている。このため,各社とも低成長時代を生き抜くために,コストダウン対策に本腰を入れているのは,周知のところである。VEの適用範囲もハードウェアのセカンドルックVEから,ファーストルックVE,さらには0ルックVEへと拡大され,ソフトウェアについても,ムダな経費の節約だけではなく,歩留りの向上,省力化,特に最近では省エネルギー,省資源対策と,幅広い活動が全社運動として進められている。

当社の場合も,48年秋の石油危機以来,いろいろの対策を実施してきたが,ハードウェアを中心としたVE入門研修会の概要については,すでにVE研究論文集Vol.9にて報告しているので省略することにし,本稿においては,その後の活動のうち,特にソフトウェアVEによる「改善活動のVE」に的を絞って述べてみたい。

VEの技法は,製品VEの基本ステップの応用展開により,製造の領域とか物流の領域への通用等,歴史的な発展の過程を経て,今日多くの対象領域へと拡大され,大きな成果を生みだしている。

本論文は,これらの応用展開の1つである製造VEをとりあげ,その中でも,VEの基本ステップの応用が難しいとされている機能定義に焦点をあて,その具体的方法を,実践レベルで提示するものである。

製造VEにおける機能定義の難しい点は,1. 製造機能をどのように表現するか(機能定義用語),2. 人およびその手段となる構成要素をどの程度まで細かく定義するか(機能定義の対象レベル),3. 機能を評価し,改善の方向性を把握するために,定義された機能をどのように整理するか,(機能系統図の作成)の3つにある。

はじめの1つは,主として改善のためのアイデア発想を容易にする表現が重要な要素となる。あとの2つは,VE対象の生産形態およびその特質によって異なるものであり,たとえば量産品の製造ライン,単品受注品の組立工場,装置産業的製造ライン等によって,それぞれに適するアプローチの方法を選択,決定しなければならない。以下,これらについて述べる。

製品のライフサイクルにおけるVAの適用時期については,開発設計段階の,いわゆる「上流段階のVA」が重要であり,その効果も大きいことは論をまたないであろう。

この論文では,成熟期にある量産製品「事務用,産業用,電子機器,家電製品等」の新製品開発にあたって,目標製造原価のルール化した設定法について,一つの試みを述べる。

VA活動を行うに際して,VAによる目標額は,明確に,かつ,VAプロジェクトメンバーを説得できるものであるという必要があり,同時に,この目標は,顧客の要求を満足させるような設定でなければならない。

この論文では,従来開発製品の目標製造原価設定にあたって,経験とカンに依存していた度合を,若干でも少なくするため,市場における同業他社製品を機能的に分析,総合,評価をし,価値指数(V=F/C)の動向からみた製造原価の設定方法を,筆者の実際の活動経験を基に,体系化を試みたものである。なお記述にあたっては,目的の手順をわかりやすくするため,Job Plan形式を用いた。本文が,VA活動の目標設定に際し,多少とも参考になれば幸いである。

近年,製品のライフサイクルは,短くなる傾向にあり,新製品,既製品のモデルチェンジを行う期間を短期間に実施することが,激烈なる市場競争に,勝ち残る条件となってきた。

VA活動を,新製品の開発,既製品のモデルチェンジを実施する時期に効率的に運用するため,アイデア比較評価法を適用,効果をあげた。

アイデア比較評価法の特徴は,要求機能,制約条件に対応するアイデア発想と,アイデア発想から具体化されたモデルに対し,要求機能,制約条件毎にアイデアを評価することにより,VA活動期間を短縮,効率運用をはかっていることである。

以下,アイデア比較評価の内容について述べる。

70年代は物質的充実時代であった。80年代は精神的充実の時代であるといわれている。消費者が60年代・70年代を通じて,追い求めてきたのは,商品の使用機能が主対象であった。これからの80年代は,必需品を中心とした実用的商品群と,生活を楽しみ,豊かにする一連の商品群との二極分化の時代である。後者にあっては,従来の使用機能を中心としたコンセプト作りだけでは,顧客の要求を満足させる事が困難になりつつあると思われる。

また,最近の商品のライフサイクルの短縮化傾向は著しく,特に,生活を楽しみ豊かにするといった商品分野においては,顕著であり,原価構成上の開発コストの比率は,増大の傾向にある。

従って,商品企画段階におけるコンセプトの適否が,市場占有率の増加と収益の向上を大きく左右することになる。

当事業部の主力製品であるヘッドホンにおいては,基本的な使用機を達成する技術的なレベルは,既に高度な領域に達しており,この面での技術向上の抜本的な期待度は低い。むしろ貴重機能や付加機能の適否が,販売高に大きく影響を与えており,コストに占める貴重機能コストの比率は,年々増加している。近年,アウトドア使用の製品が出現して以降,市場は一変して,一段と企業間競争は激化し,新製品の開発ラッシュとなり,製品のライフサイクルは著しく短かくなっている。

このような背景にあって,商品企画段階におけるVE適用(0 Look VE)の確立を目指し,検討,実践した内容について,以降,述べる。

建設業のVEは,繰り返し効果があまり期待できない。1件1件が,施主,近隣,環境,土質など,種々の制約条件により,新規のVEを実践すると考えて良い。そこで,ベストよりベターの改善案を求め,短時間で数多くのVEを作業所で実施し,建設業固有のVE活動を展開してきている。

しかし,毎年,大量のVE実施例が報告され,蓄積されるにいたって,その事例を,いかに有効活用していくかが重要課題となってきた。もちろん,従来から内容の優秀な物件については,VEニュース(VEスポット)として全社員に配布している。

ここに,現在までのVE実施例の活用法と,その問題点について検討を加え,それらの問題を解決すベく,新たな情報システムの確立をはかった。

なお,現在までに作業所VEとして実施され,報告書の形で蓄積されている件数は,建築,土木,設備を含めて,10,000件にも及んでいる。

建設各社が,いろいろな管理技法を導入して,経営の効率化をはかる動きは,近年とくに目立つ傾向にある。

「労働集約」,「一品受注生産」,「重層下請」といった特質をもつ建設業界にも,各社なりに工夫を凝らして管理技法の導入,展開が行われて,最近の競争激化への対応がなされている。

わが社は,建設業界では,はじめてVEを導入して,12年以上経過した。その間の社内蓄積にもとづき,この報告文は,建設工事における効率的なVEアプローチについての考察を行い,問題解決への実務手法としての展開を試みたものである。

当社にVEが導入されて以来,約13年を導入期,普及期,展開期,発展期,結実期と分けて振り返ってみると,そのいずれもが,まさに"草の根運動"の連続であった。

その成果や活動の状況については,今までの大会でも多数発表したところであり,それらを含めて,これまでの経過を,概略年表式に一覧化すると,表-1のとおりである。この小論は,これらの経験を通じて,今後の一層の発展を期してまとめたものであり,建設工事におけるVE活動の問題点,建設工事の中のVEの位置づけ,そしてそれらVE活動を踏まえた今後の方向に対する提案について述べるものである。

当社でVEを導入して13年になる。現在,設計積算はもとより,事務部門においてもVE活動を行っている。しかし総合建設業(ゼネコン)である当社にとって,VE活動の核となり,また初期より一貫して取り組み発展させてきたのは"作業所VE"である。建築工事の一角を担うわれわれ設備部門においても,昭和40年後期よりVEを本格的に導入している。当初は,VEの浸透を主眼とし建築部門同様に,施工上の諸問題を解決する技法として導入をはかっていた。その後,ゼネコンにおける設備工事管理の場合の特殊性から,施工上すなわち生産面でのVEの活用に加えて,建物をシステム集約の製品としてとらえた場合の,製品面に対するVE導入が重要性をおび,その結果業務遂行過程で発生する諸問題を,効率良く解決する技法としてのVEが定着し,現在に至っている。製品面に対するVEの導入が,ゼネコンの設備工事管理にどのような効果を発揮するか,その意義と成果の一端をここに発表する。

昨今の経済は,原油高騰に端を発した価格の変動が著しく,企業収益が大きく,これに左右され,一歩対応を誤ると,直ちに業績の大幅な低下をもたらす危険が周囲に満ち溢れている。

こうした環境下では,VA活動を一層活発化すベく,企業幹部自らが,これを参画推進して,VAを真に日常の業務として定着化させると共に,活動の領域を広げ,底辺を拡大させねば,生き残ることが難しいことはいうまでもない。

このような背景の下に,当工場ではVA活動の範囲,参加メンバーの選定,活動の対象,活動期間,活動の責任と権限範囲の設定,一般ライン組織との関連などを明確化しつつ,毎期のVA予算の達成に邁進し,目標完遂に全工場あげて取り組んできた。

TFP活動は,毎期,製品VA,製造VA,物流VA等に区分されて展開されているが,その中でも,とりわけ経済情勢,すなわち物価動向,需給動向との関連において,成果が大きく変動しがちな分野に,部品VAがある。

過去,部品VA活動を続けてきた結果,こうした傾向に気づき,これを何とか打破して,外部の変動に左右されない部品VA成果をあげるため,いろいろと工夫をしてきたが,今回は,その過程について報告するものである。

当社は,昭和47年に産業能率短期大学教育事業部のご協力を得て,VE実践セミナーを開催以来,現在にいたるまで,VE活動による経営体質の強化をねらいに,種々のVE活動を展開してきております。その間,VE活動の発展に伴い,対象者層の拡大およびVEを取巻く環境の変化に対応して,VE教育のあり方を検討・実施してまいりました。この間に育成した2,000名余のVErは,現在の当社VE活動の中核として重要な役割を担い,VE活動の原動力として,全社的な位置づけがなされております。

当社では,現相談役が「貴社では何を(どのような製品)作っていますか?」という質問に対して,「私共では『人』を作っています。」という解答をしたことが一つのエピソードとして伝承されており,経営の判る人づくりに対する強力な取組み姿勢が,当社の一つの特徴であります。反面,VEの基本的な考えである(アウトプット/インプット)の追求をおろそかにするものではなく,「教育」というインプットに対する明確なアウトプットを求めております。すなわち,教育を経費としてではなく,短期・長期の「投資」であると考えております。特にVEについては,当然のことではあるが,VEの進め方そのものも「VE的」でなければならないとの考え方が重要であり,VE活動の発展に伴いVE教育のねらい・進め方も,変化させていかなければなりません。

以下,VE導入期~拡大期に至るまでに,どのようなVE教育活動を展開するべきであるかについて論じてみたい。

当工場はモートル,可変速ドライブモートル,換気扇,送風機,圧縮機,ポンプ,給水装置,産業用ロボット,プログラマブルコントロールシステム,制御装置,制御システム等を生産している。これらの製品は,それぞれ顧客のニーズに対応して各種の容量のものが作られており,何らかのシリーズ品として捕えることができる。

これらの製品は,それぞれ,顧客は市場値(プライス:Price)で購入し,製造側では,それを作り上げるのに原価(コスト:Cost)が発生している。このプライスとコストの差が製造側の収益となり,企業は収益を確保するため余分なコストの発生を防止しなければならない。

一方,市場においてはエレクニロニクス等の技術革新が激しく,製品のライフサイクルも,従来は5年~10年であったものが,最近では2年~3年と短かくなってきており,顧客は,常に最新技術を駆使したコストパフォーマンスの高い製品を求めている。このようなエレクトロニクスの市場は,技術の進歩も著しく品質,仕様,機能等を含めて製造者間の競争が激しい。したがって製造側は,常に最新技術で顧客の要求機能を達成すると同時に,それらの技術を,更に発展させることによるコスト低減競争が極めて激しくなっている。

このような環境で,従来のVAの価値の捕え方である V=F/C での機能(F)とコスト(C)に代って,プライスとコストで価値を評価する方法を考えることができる。本来,機能を評価する際,機能は値打ちとして捕えられてきた。部分としての機能は,代替機能としての値打ちが機能評価値となる。しかし,製品全体としては,プライスそのものを顧客の指定する値打ち,機能評価値と考えるべきである。すなわち V=F/C をV=Price/Cost と置き換えて価値を評価することができる。これによって企業収益に直結した形で価値改善を考えることができる。

また,このプライスとコストの関係を,当工場の製品のようなシリーズ品全体に適用し,プライスライン,コストラインとして,グラフによって比較すれば,シリーズ品全体収益についての管理も可能となる。すなわち図-1に示すように,プライスラインとコストラインが平行になっていなければシリーズ品の構成の考え方に誤りのあることがわかる。更に,コストの内容を基本機能,補助機能に分割し,顧客の要求機能すなわち顧客が金を支払う機能と,製造側が要求機能を達成するのに必要な機能に分けて,それぞれのコストラインをプライスラインと比較すれば,どの機能分野が収益確保の阻害要因かが明白になる。

このように,収益を確保するための製品VAで,プライスとコストの関係から価値判断をすることによって,顧客のニーズに見合い,かつ収益確保に密着したVA活動の進め方を「PCチャートによるVA診断法」としてまとめたので,以下,内容を発表する。

コンピュータは,現在から次代にかけての花形製品として脚光を浴びているが,その環境条件は,技術革新の速さからくる厳しさが存在する。

性能の大幅な向上と同時に,急激な価格低落があり,そのためにコストパフォーマンスの改善スピードは大きい。

一方,コンピュータ製品の大型化と使用範囲の拡大から,その信頼性に対する期待も無限に大きくなりつつある。

つまるところ,高品質を維持しながら,如何にして原価低減をなし遂げるかという普遍的なVAテーマに到達するわけである。

最近の産業界においては,従来あまり関係がないとされていた分野にも,エレクトロニクス化の波が押し寄せてきている。メカトロニクスと呼ばれる新造語にもみられるように,エレクトロニクス化された機器は,多種多様にわたり,それとともに,使用される電子部品に要求される機能・性能・品質は,複雑多様化し,電子部品の開発のためには,高技術力が必要とされている。一方,電子部品業界内における企業間競争は,ますます激しさを増し,高技術・高品質とともに,低コストが要求されている。かかる背景から,新製品の量産開始までに,性能・品質・コストを充分検討し,問題を除去するとともに,より早く他企業に先んじて新製品を市場に送り出すことが必要であり,そのためには開発の効率化をはからねばならない。当事業部では,こうした問題を解決するために,製品設計・生産設計において充分品質・コストを検討し,かつ,開発を効率化すベく,VEとQCの融合をはかり,その推進方法のシステム化を行った。本論文は,高技術・高品質製品のVE活動を行うにあたって機能故障という考え方を導入することにより,VEとQCの融合をはかった例を紹介する。

近年の低成長経済下では,軽量経営の一環として,製品,部品,材料など在庫量を極力圧縮することが要求される。一方,市場ニーズの多様化,新分野への参入など,製品機種は増加の一途をたどり,在庫量の圧縮の妨げとなっている。この打解策として「かんばん方式」による小ロット生産などと並び,「部品の標準化活動」が非常に有効である。

しかし,一般傾向として,各製造業種とも,「標準化」の必要性は十分認識しながら,実際には顕著な推進がはかられていない。その理由としては,各企業の体質,環境にもよるが,次の要因が考えられる。

1) 製品シリーズ毎のモデルチェンジ頻度が異なり,部品の仕様格差が大きい。

多くの製品シリーズ群のうち,特に同業他社とのきびしい競合下にある製品シリーズは,モデルチェンジの頻度が激しく,より価値ある新部品が要求され,採り入れられる。一方,それ以外の製品シリーズは,とり残された形となり,同一機能部品でも仕様,コストなど著しい格差が生ずる。したがって

(a) 仕様の統合が困難で,標準化としてまとまりにくい。

(b) 標準化案を立案しても,取付寸法が異なるなど,手数がかかり,切替手配段階で敬遠される。

2) 標準化案に魅力(コスト面,仕様面)が無い。

1)で記すような条件下で,互換性を考慮し過ぎた場合,既存部品ベースでの「最大公約数的仕様」になり易く,将来構想に欠け,ややもすれば価値が低く,寿命の短かい標準化案(標準部品)となってしまう。

3) 設計者の個人差によるもの。

設計者の個人差によるものとして,

(a) 設計者の好みの差(形,デザイン,方式)が,部品仕様に反映され易い。

(b) 法規制を受ける製品については,関連法規の解釈に微妙な差異があり,部品使様に反映され易い。

(c) 信頼性,安全に対する解釈度の相違,データの不足が部品仕様に左右され易い。

(d) 顧客ニーズのとらえ方に差が生じ易い。

4) 推進体制が弱い。

委員会形式の推進体制では,ややもすると,日常業務が優先し,推進体制が散漫になり易い。

以上,標準化阻害要因について述べたが,これに対する解決策を併記してまとめると,図-1の如くとなる。

これらの阻害要因を乗り越え,一気に標準化を強行することは,特に多種類の製品を対象とした場合,障害が多く,その前段階として「何等かの調整作業」と「魅力ある標準部品」を生みだすVE技法の必要性を感じた。

この結果,対応策として考案した技法が,以下に述べる「仕様平準化技法」である。

今や,第1次,第2次オイルショック等の経済変動の時期を経過し,各企業とも,これら経済変動に起因する収益圧迫を排除する強力な武器のーつとして,VAの有用性を確認し,今後に期待するものも大きいと思われる。また,これらVA活動をサポートするVA技法についても,部品VAから製品VA,工事VA,物流VAに至るまで開発され,VA実施時点についても,現流品から開発品といった具合に多岐にわたって適用されており,VA活動が企業に欠くことのできない,管理改善手法として根をおろしたかのように思える。

しかしながら,前論文「VA活動の効率的運営について」で,VAスピードの指標について述べたように,VA活動の効率化と,実効効果の向上は,早急に解決しなければならない課題となっている。今回は,このようなVA活動に対する要求にこたえるため標準化指向の製品VAを実践して,トータルコスト低減のための「ダイナミックな標準化とVAの同期化」をはかることのできるVA手法を開発したので,そのねらいと,手順について述べてみたい。

企業の利益計画におけるVEの役割は,ますます大きくなり,その活動に投入する資源も増大の一途をたどりつつある。しかし,一時期としてとらえると,企業の人的資源には,おのずと限界があり,これを越えると,大きな混乱が生じる。また,VE活動には,企業の宿命として,できるだけ短い期間で,目的を達成し,機会損失を少なくすることが,常に要求される。これらのことから,最近では,バリュー・マネジャー及びバリュー・エンジニアに課せられた大きな課題として,VE活動の効率化および迅速化の問題が大きくクローズアップされてきた。

本論文は,製品を対象とした数多くのプロジェクトの実践活動による資料をもとに,基本機能から補助機能(または二次機能)への展開およびアイデアの発想につなぐステップをとらえ,これらステップのアプローチを容易にするために,補助機能の性質を統計的に分析,明確化すると共に,発想のしやすい機能定義用語を抽出,体系化したものである。

これによると,機能のコスト順位において,上位の5つの機能で,全体コストの84%(平均値)を占め,また全体コストの80%を占める上位コストの構成品が,これら5つの機能に,何らかの役割を持っていること,同様に,上位6つの機能で,全体コストの90%(平均値)を占めていることがわかった。また,機能そのものについては,ここで取扱った173の機能のうち,いろいろな表現形式をとっている同義語および同類語をまとめると,例えば,「電流を流す」,「絶縁を保つ」,「○○を固定する」等の機能は,それぞれ13あり,これらのものをパターン化することによって,発想のための機能定義用語の体系化が可能となった。

なお,本論文は,当社の性質から「電気製品」を中心としたものであるが,他業界の製品にも,これらの考え方は,充分,敷延することが可能であると思われる。

従来の価値工学の分野では,思考の幅を広げるために機能定義と機能系統図の方法が使われてきた。

しかし,これらの方法は,いずれも使ってみると,有効ではあるが,なにかあいまいなところ,ぎこちないところが残っており,それを取り除く技法の開発が各国で望まれてきた。

この論文は,そのあいまいなところ,ぎこちないところを取り除くため,日常なにげなくやっている思考のメカニズムを,新しい目で再分析・再組立し,それの手順化を試みたもので,次のような結果を得たものである。

(1) 「最も適切な基本機能の表現」をとらえる簡単な手順を確立し,そのメカニズムを明らかにした。(機能定義の方法の改善)

(2) 従来の作業分割構成WSSの考え方を一般化し,それを機能系統図の上に重ね合わせることにより,両方の考え方の改善をした。(機能系統図の改善)

(3) 価値の高い案を手ばやく合理的に創り出し選択するプロセスを再確認し,それを手順の中に含めた。

FBSテクニックとは,その手順につけた名称である。

低経済成長下の企業経営にとって,VEに寄せる期待は大きい。また,多くの企業で,VEは着実に成果を上げてきている。VE適用分野についても,現製品VEから新製品VEへ,さらに,ハードVEからソフト面のVEへと,拡大してきている。

VE手法面の開発,改善についても,業種あるいは企業にマッチした形で進んでいるように見うけられる。

一方,VE投資効率の観点から,VE活動体制はどうか,VE対象の取り上げ方は適切か,という反省もある。

当社では,建設業の特性を生かし,作業所中心のVE活動を長年にわたり,一貫して展開してきた。

現在,設計VE,設備VE,あるいは事務VEと適用範囲は拡大しているが,経営の基盤を作業所におく建設業にとって,今後もVE活動の中軸を作業所におくことはまちがいない。

建設現場の汗と英知を結集して実施されたVE事例は,数多く収集されている。こうしたVE情報は整備され,新しい工事に際して繰返しVEや,改善のヒントに供するよう,組織的な展開をはかっていることは,第11回論文(工事管理におけるVEのシステム的展開)で述べたところである。

近年,VE事例は飛躍的に増大しているが,その最大の要因は,作業所VE活動における「VE計画」の徹底によるものである。

本論文では,作業所におけるVE計画の重要性を述べ,ついで,VE計画をいかに行うか,VE対象の選定をいかにするか,について述べるものである。

日立電子(株)におけるVAは,テレビ放送装置・ビデオ関連装置・無線通信装置等の製品VAや製造VAが,ほとんどであった。今回,ビジコンの製造VAを行うにあたり

1. 工程が28工程にも分かれており,しかも大半の工程がクリーンルーム内の作業である。

2. 半導体の前工程と同様の微細加工を伴い,各工程毎に歩留りがあり,この歩留りが全体の歩留りに大きく影響を与えている。

などで,従来のVAとは趣を異にしていることがわかった。

本VAでは,工程の流れ・つなぎの改善に重点をおく必要があったので,種々,検討を加え,以下に述べるプロセスVA手法を開発適用して,好結果を得ることができた。

私達,企業を取巻く現在の経済環境は,数年前と大幅に異なり,製品の多様化が進み,かつ量の増大があまり期待できない低成長時代になってきている。このような状況は,図-1のようなディーゼルエシジシを生産する当小山工場においても同様で,従来通りの業務の進め方および手法では,思うようなコスト低減が困難になってきた。

そこで,今後は,このような状況の変化に対応した現状打破の手法が必要になった。

そして今回,発想を転換しVE手法を活用した工程設計および改善活動を,エンジンのメインパーツであるシリシダーブロックの加工ラインにおいて試行した。

また,このステップの標準化も検討したので,その内容について以下で述べる。

激動する経済環境の中で,企業は体質改善と新規発展のため,いろいろの努力を行っているが,その中で,近年とくに成果をあげてきたのがVE技法である。

購買部門からスタートしたVE技法が,現在では,本流の設計部門や製造部門で活用され,さらに営業・業務などの間接部門にまで展開されている。

このように,対象部門や対象テーマが多様化してくると,VE技法にもいくつかの問題点が生じてくる。これに対して各社各様の改善手法が発表されているのは,大いに結構であるが,価値工学としての基本的理念が不透明のまま,手順や手法にたよりすぎる場合も見受けられる。

VEの発展と向上のためには,一つには,多くの企業で多くの人に理解されやすく,使いやすい方法として改善してゆかねばならぬが,その反面では,価値工学としての基本理念が,多くの対象テーマの問題解決に適用できよう。技法レベルの向上に努力する必要がある。

本文では,後者の立場から価値工学の向上のための問題点と,その解決法を述べる。

高度経済成長がもはや,期待できない現状では,限られた市場のなかで,自社製品のシェアを,いかに伸ばすかがポイントとなり,VA活動の重要性が一段とクローズアップされてきた。

したがって,VA活動は,製品,製造,物流と,漸次その対象を拡大し,単に,ハード面ばかりでなく,ソフト業務にいたるまで,あらゆる分野にわたって適用されようとしている。

VAに従事するわれわれにとっても,単に製品知識ばかりでなく,多岐にわたった能力が必要とされているが,個人の能力のみに依存していたのでは,もはや限界に達し,また,効果も小さいことから,当事業所では,対象プロジェクトについてチームを編成し,総力を挙げて推進する,TFP (TASK FORCE PROJECT)活動を主体としたVAを推進している。

しかしながら,このTFP-VAにおいては,各関係部署の専門家を動員して,一定期間専従させるため,いかにして効率的なVAを推進するかが,最も大きな課題となってきている。

本報告は,この課題に対処するため,われわれが実際に採用してきた手法について紹介するものである。

当佐和工場は,スタータ,気化器,カー・エアコン等を製作する自動車機器専門工場として,昭和43年に設立されて以来,顧客第ーをモットーに,全従業員の頭脳を結集したVA/VE活動を展開してきた。

しかし,昨今の国際情勢をみるとき,原油の高騰に呼応した省資源・省資材VA努力をより一層強化し,この難局を打破しなければならない。

すなわち,原材料を輸入に依存するわが国の企業において,国際競争に打ち克ち,収益を確保してゆくには,輸入資源を最大限に有効活用することが,今や,国家的重要課題となっている。

このような中で,使用素材量削減VAも,軽量化・薄肉化……等の手段は,既に設計段階で行われる当然の業務レベルとなっている。

今回,使用素材量削減VAとして,「スクラップ・リサイクリング」に着目し,スクラップの有効活用をはかったリサイクリングVA手法を開発した。本手法は,スクラップの発生情報を的確に把えるため,コンピューターへ登録し,効率的な活用につながるための「スクラップ活用情報システム」の開発によって,実用化が可能となったものである。この情報を,設計・開発時点に適用することにより,大幅な省資源・省資材がはかれるものである。

以下,その内容を紹介する。

低成長時代における商品戦略として,価値ある商品を短期間に開発し,市場に提供することは競争に打勝つための絶対条件である。新製品の開発は市場ニーズ,顧客要求等のマーケティングリサーチから開発方針を決定し,商品として生産されるまでには数段階のステップを通らなければならない。開発方針は商品の機能,売価,市場性,収益計画,技術的難易度,開発時期,開発予算,設備投資等の検討がベースとなって決定されているが,開発方針審議時点では,各項目に対する具体的裏付けに不安定要因が多く売価,収益計画の基本となる目標コストは企業経営,商品販売戦略からトップポリシーとして決定されるケースが多い。従って新製品開発ステップの最終段階において,計画の収益を確保するために目標コストの設定と,各ステップにおけるコスト管理を行う必要がある。

近年顧客ニーズが多様化し,市場におけるメリット競争が激化しているため,競合他社品を差別化できる高メリットの商品を,短期間に開発することは販売戦略上重要である。そのためには,開発ステップを最短のコースに設定し,重複した研究試験期間は避けなければならない。従って,開発VAをできるだけ源流に遡って実施するとともに,各ステップに応じたVAを投入することにより,目標コストを管理することが必要になってくる。

1.1 鈴鹿工場の紹介

当社は総合電機メーカーであり,鈴鹿工場は回転機部門の中核をなす工場となり,現在の従業員数は約1,500名である。

製造品目を大別すると

① 誘導電動機

② 同期発電機

③ 可変速電動機

④ 応用機器

⑤ 電源装置

⑥ 誘導炉

を生産している。

1.2 当社のVAの特長

我々製造メーカーにとって,基本的な事は「図面があるから仕事がある」のである。

部品を作るには図面が必要である。次に生産準備部門での製作方法の決定,治工具の決定,資材の発注,部品製作工程での管理,品質管理,工程管理,在庫管理等が行われる。

このように1つの部品が製作過程でたどるそれぞれの処理ポイントで,それぞれの間接費用が発生する。

製品コストの内,間接費の占めるウェイトが大きくなっており,直接費のみに着眼するVAでは,かえって間接費が増大する場合も起り得る。

従って,直接費の他に間接費も削減させる必要があり,そこに着眼するのが当社の特長である。

高度成長経済,低成長時代に続く80年代は"格差の時代"とでも呼んだものだろうか。高度成長から低成長への変化を,減量経営によって乗りきった各企業は,今また大きな試練の場に立たされようとしている。同じ時に,同じ土俵で,同じように企業活動をしながら,大きく格差のついてしまう厳しい時代の到来といえよう。この格差の要因こそ,われわれが真剣に取組まねばならないVE活動のターゲットであろうかと考える。

当事業部においては,昭和47年からVEの本格的活動に着手し,多くの成果をあげてきたが,さらに厳しい環境が予想される80年代においても"企業業績の飛躍的な向上"を実現すべく意欲的に進められている。

本論文において紹介しようとする『0.5 Look VE』は,"コスト低減が困難な状況下で業績向上を達成するためには,売上増加をダイレクトに実現する飛躍的な機能向上をなしとげる必要がある"という骨子にそって展開されている。80年代前半におけるわれわれのVE努力は,この方向に傾注されつつあることを述べながら,『0.5 Look VE』の考え方について紹介し,諸氏の賛同が得られればと思う。

なお,本論文においてはイラストを意欲的に取入れたので,内容把握の一助にしていただければ幸いに思う。

VA活動も定着し,現製品の改善から,市場調査を含めた製品企画段階から総合力を結集し,体系的アプローチでもって製品企画を行い,価値ある製品を造る開発VAに焦点が移行している。豊かさからくる消費者の個性の主張と,自分の好みから選択したいという気風が強くなると同時に,伸びの少ない市場をめぐって製品競争が激しくなる。これは製品企画の競争であり,他社製品との差別化を進め,より購買意欲を高め,選択の探索を高めさせるポイントづくりが決め手となる。一方,マーケットセグメントをはかり,個々の消費者の要求に応えるきめ細かな製品企画が求められている。なお,1980年代の世界経済は不安定で,複雑で不透明な時代であるといわれている。特に,戦争がいつ勃発するか不安な中東状勢,サウジアラビアおよびイランが西側より離脱,1985年以降のソ連は海外からの石油輸入依存等により石油の問題は益々複雑になってきている。従って,企業経営においては,単に固定的で消極的な減量経営で対応するのではなく,弾力的に人,金,物,技術を組合わせ,活力と,ゆとりをもたせることが必要である。つまり,生産体制や間接業務の合理化による余剰人員の戦略的重点投入をはかり,顧客ニーズの追求,材料動向に対する情報収集に力を入れ,顧客が要求する"価値を最低コストで達成する一価値の創造"に組織的な努力でもってアプローチし,上記情報を十分に活用し,省資源,省エネルギー化を考慮した製品を開発していかなければならない。従って,省資源,省エネルギーに寄与する製品開発のアプローチと題して,体系的な製品企画のアプローチ,および省資源,省エネルギーを含めた機能評価のあり方について述べてみたい。

商品企画は,その商品のライフサイクルでの位置づけにより,展開のしかたに多少の相違はあろうが,違わないことは,その商品ができるだけ多くの顧客に受け入れられ,かつ企業として,さらに多くの利益を確保することである。商品企画は市場動向,顧客のニーズ,社会的ニーズ,マーケティング,技術開発力,製造能力等,多角的に最大の努力で検討されるであろう。また同業他社との競合のために仕様,コストダウンの検討が,企画段階で行われるのは当然のことであろう。ただ忘れてはならないことは,短期的な利益追求だけではなく,その商品のライフサイクルの長期化,すなわち衰退期を先に伸ばすような商品延命策を意識的にはかり,長期にわたる利益確保を行うことである。

売れる商品,商品延命のための適切な商品企画を目指す最大のポイントは,顧客の潜在的なニーズは何か,マーケット拡大の要素になる新しい顧客はだれかを導き出すことであろう。本論文では,このポイントに焦点をあて,VE思考によりアプローチする方法を述べる。

周知の通り,石油エネルギーの需給バランス,人工構成の急激な変動等,さまざまな環境下の今日,とりわけ技術立国をめざす日本にとって,知識労働力の生産性向上は必要不可欠であり,設計部門においても,より効率の高い仕事が要求されている。特に売れる商品を創り出す事は,効率の高い仕事をする重要な側面である。これ等は現情勢下においては,What to design-何を創るかという商品企画の優劣に負うところが極めて大きい。

しかも,それをどんな方式で具現化するかが成否の大きな鍵をにぎっているといっても過言ではない。以上の観点より,客先要求事項分析に基づき,方式を選択する企画設計段階のVEについて,何をどんな方式で設計するかを中心に紹介したいと思う。

日立製作所のVAは,本社VAセンターを基軸にして,工場毎にそれぞれの体質に合わせた活動をしているのが,一つの特徴である。

当工場は,総合電機メーカーである日立の中にあって,ポンプ,コンプレッサーなどの大型産業機械を受注生産しており,VA活動としては,開発VAを中心とした総合VAを活動の基本方針としている。

一般に開発VAは,成果が大きい反面,具体化上のリスクも大きく,そのVA効率(成果/投入費用)を,提案成果でなく,実質成果で評価すると,必ずしも満足すべきものになっていない。

この問題に対処するため,当工場では開発VA以降のVAのあり方として,単なるフォローアップの域を超えたVA技法を開発し,一連の総合VAシステムとして確立し,戦略的に展開することにより,VA効率の向上をはかってきた。

以下その考え方,実践方法について述べる。

本論は,VE導入が遅れているといわれた総合建設業の当社が,VEを導入している先行同業他社に学びながら,特に1st Look VEの実施を試みた経験をもとに,われわれの業界にVEを導入し,日常的に活用するための,組織の運営の方法について考察を加えたものである。

当社は,常々,建築の設計と施工,建築と設備の総合的請負の優位性を主張してきたが,巨大な商品である建築にVEを導入することで,この一貫した請負・生産体制のメリットが,一層明確になったと考えている。

導入は,他の事例に照らしても,いささか特異な経過をたどっている。本論では,この特殊な経験と,そこに現われた状況の中から,できるだけ普遍的な方法論を導き出すことを心掛けた。

この論文は,先に発表された「ステップリスト・マネジメントの方法」(1976年度VE大会論文集に記載)の考え方を利用して,DESIGN-TO-COSTの方法を新しく手順化すると同時に,その中で使われる「VE手法」をいくつかの形に変化させ,短時間でかつシステマティックにそれを進めることができるようにしたものです。

金型は個別発注生産であるため,発注者側(例えば,資材購買部門)で金型の事前分析を行なうことは,大変困難であるといわれていた。しかし逆の見方をすれば,金型は個別生産(1品生産)であるだけに事前に各種の分析や標準設定を具体的根拠に基づいて行ない,両者(発注者と受注者)が共通のベースで,両者の意志を十分に取り入れた型分析を行なう必要がある。

決して各担当者個人の経験技量だけに基づいた分析であってはならない。基本的な型製作方針に基づき,型分析を行ない,判断を必要とする部分に対し,経験や技量を結集していけばよい。このようにして作られた金型は,意思の入った金型といえるであろう。

ところで,最近の型製作技術の進歩はめざましく,NC装置付加工機,EDPによる型設計・製作,ワイヤーカット放電加工機等,型製作加工機の進歩のみならず,金型を構成する各種の標準規格部品の普及度合も高く,削って作る時代から,規格品の選択・組合せの時代へと移りつつある。つまり"金型づくりの改革"が行なわれつつあるのである。

一方,産業界にあっては,経済の低迷,需要の鈍化など厳しい環境下にあり,生産部門では多種少量生産の傾向がますます増大している。ということは,金型製作面数の増大,金型費用の上昇(コスト増大),金型切換頻度の増加ということになる。これらのことを考えると,発注者側での事前の金型分析,つまりは"金型への意志投入"ということは,大変重要な意味を持っているといわざるをえない。

今回,このような金型という技術的要素の強い分野にVE手法も活用し,資材購買部門がどのように取り組んだかを述べてみたい。

当社のVE導入は,先進各社より大分おくれ,昭和49年における全社でのコスト低減緊急指令にもとづいて行なわれ,以来5年を経て全社的な成果を確保するまでに至っている。

昭和47年に始まった全社的なTQC推進活動の中で,VE導入はトップの強いニーズにより組織化されてスタートしたが,導入に当り,TQCの考え方にもとづいてPLAN,DO,CHECK,ACTIONのサークルをまわしてゆく方法がとられた。このような姿勢のもとに,本社センターと,各事業部との分担する役割を明確にしてVEが導入された。

この論文は,後発のギャップを解消するために,VE導入の考え方・すすめ方をTQC推進の中で計画化し,PDCAのステップをふみながら成果に結びつけた過程を報告し,ご批判を乞うものである。

石油ショック以来,低迷を続けるわが国経済は,最近の為替相場の激変と相重なって,強烈な打撃を受け,今世紀最大の危機状態に陥ったといえよう。

当社に置いても,不況の波を諸に受け,受注量の激減,販売の伸び悩み,等々,暗い材料がうっ積し,重大な危機状態に陥ったことが,身にひしひと感じられる昨今の状況である。この激動の時代にこそ,「物の機能の本質にもどって見よう」とするVEの原点に帰り,多くの職場で多くの人々によって,限りある資源,大切な物や労力の価値を高め,ひいては日本経済の発展につとめる必要がある。

そのためには,"バリューエンジニア人口の増大"は不可欠の条件であり,当社では,その一環として,VE入門研修会を開催してきた。

本論文では,このVE入門研修会の考え方と進め方を紹介するとともに,今後の問題点などについて述べるので,ご批判,ご叱正を頂きたい。

低成長時代を迎え,家電音響製品は,ますます市場競争が激しくなり,さらに最近の石油関連資材を中心とする,材料費の高騰は収益を悪化させつつある。一方,市場のニーズにより製品はますます多様化の一途をたどっている。

これらの傾向は開発機種の数を増加させ,収益確保のために多くの機種の製品VAが要求されるようになる。VA活動は企業の置かれた環境とニーズにそったものでなければならない。

今回,家電音響製品における開発生産形態の中での,企業のニーズに合わせた製品VAのあり方について効率的な分析形態を中心に述べてみたい。

4月になると,各社とも社長が新入社員に対し訓示を行う。入社してからの心構えが主なる内容であるが,中には企業目的,行動指針も「製品供給の義務」「人類の幸福・福祉への貢献」更に,直接的に「利潤の追求」などと示される。いずれも社内事情を反映したもので,企業経営を左右する内外部要因はあまりに多いと言えよう。

こうした状況におけるVA活動を考えてみると,各企業のおかれた状況において何をやるべきか,その活動の位置付けを明確にせねば「何んでもVA」となってVA活動自体も焦点を失い,盛り上がらないものになる。

このような観点から,製造業である当社は下記する理由によって製品・製造VA,部品VA,物流VAそれもファーストルックVA (1st look VA) に的を絞り,開発活動の中にVA活動を仕組化した。本稿ではその一端を紹介し諸兄の批判を仰ぎたい。

(1) 家電商品はユーザーの巾が広く要求が多種多様であり機能の選択が厳しい。

(2) 競合会社が多く,適正な市場価格における差別化した商品でないと売れない。

(3) 製造原価に占める直接材料費の割合が高く,構造が決定される設計段階に,衆知を集める必要がある。

(4) VA導入後の歴史が浅く,金額評価できるVAが全体のコンセンサスを得やすい。

(5) VA活動がダイレクトに企業業績に反映され,参加者のモラルアップにつながっていく。

昭和48年のオイルショック時における,石油関連資材の調達難は,当社もその例にもれなかった。特に,家電品を担当する当工場においては,量産工場であるがゆえに資材物量の確保難,及び材料価格の大巾値上り等,かなりの影響を被ったのも記憶に新しい。

更に,昨年のイランの政情不安をきっかけに生じた,OPEC(石油輸出国機構)の再々にわたる値上げ攻勢(第2次石油危機)の行きつくところは,原油価格20$/1BL以上は必須という状況下にあり,54年度を迎えて原油動向は物量,価格とも増々混迷の度を強めているといえる。

我々は,この稀少資源である石油関連資材を,いかに効率よく有効活用するかを最大テーマと考え,これにチャレンジするVA活動を「省資源VA」と名づけて展開した。

以下,具体的アプローチ内容について報告する。

VEが我が国に導入されて以来,この思考法は色々な環境の中で,企業経営における利益確保の柱として大きく成長した。この間に,VE技法そのものもより大きな成果を得るために,VE手順の改善とか,新しい分野に適用する新技法の開発等,長足の進歩を遂げてきた。

しかし,このような努力にもかかわらず,VE活動によって獲得される成果は,初期の導入段階で得られたものに比較して,次第に減少の傾向にあるのも事実である。

本論文は,特定のプロジェクトについて,数回のVE-TFP活動を繰り返して実施した結果の資料に基づき,本当に「VEは無限である」のか……を検討したものである。その結果,VE活動の成果を示すVE率は,1つの曲線の近似式によって低減することが判明した。この曲線の性質は,今後多くの事実データによって裏付けられる性質のものであるが,「VEは無限である」ことを示唆している。また,この近似式によって最初の第1回目のVE活動によるVE率から2回目以降におけるVE活動の目標額の大枠設定が可能となる。

更に,本論文はこれら一連のTFP活動の追跡調査により,この曲線の性質を究明しこれと現在活用されている各種発想技法から,VE活動の発想段階における実践上の具体的な方法をパターン化した。この方法の有効性は,多くのプロジェクトによる実践活動において証明されているので,本論文は今後のVE活動における参考の資料とするものである。

VAはもはや個人,グループの技術でなく,企業経営活動の一環として極めて重要な役割を占め,企業経営の方針に基づいた組織的な活動へと発展している。

一方,VA対象もハードからソフトへ,2nd Lookから1st Lookへと,製品の生まれる源へさかのぼる傾向にある。特に新製品の開発は経済の低成長時代にあって,企業の利益を確保する重要な柱として位置付けされている。

このような経済下で新製品の機動的開発を図るためには,開発VAのアプローチが必要である。当工場における新製品開発の実態を見ると,日常行われている開発業務と開発VAは,必ずしも効率よい運用がされているとは言えない。

今回これらの点に着眼し,開発手続業務にVA的要素を入れて改善し,新製品開発ジョブプランおよび開発VAジョブプランを確立した。

オイルショック以後,高度成長経済から低成長経済に大きく転換し,企業経営の体質改善を余儀なくされてきた。また,企業をとりまく環境は,かって経験したことのない状態『モデルなき時代』に突入しており,真に厳しい情勢となっている。

これらの対応策の一環として,内部努力により利益改善の達成(コストダウン)が企業トップにおいてますます認識され,重要視されており,その最適手段としてVE活動の一層の充実展開が押し進められている。

このような厳しい情勢の中,中期計画を前提としたVE活動の一考察について述べる。

当社は東京に本社を置き,東京・神奈川に6事業所,全国に約10の地方工場を有し,通信・コンピューター・電子部品及び家電を4本柱にして,それらの装置及び部品を製造,販売するメーカーである。

当エレクトロメカニカルディバイス事業部は,東京三田事業所に属し,主に交換機及び通信用の電磁リレー,封入リレー,コネクター並びに情報端末機器を製造し,それを日本電信電話公社,一般民需,輸出向けに販売を行なっている。

当社におけるVEは,昭和36年に購買を中心にしたコストダウン技法として全社に普及し,昭和38年に,VE委員会制度が発足し,全社的にVE活動が展開され,現在は,日本電気コストコンサルティング(株)の指導のもとに,VI技法により年々大きな効果を上げている。しかし昭和48年の石油ショック,物価狂乱を契機として,これまでの高度成長志向型から安定成長適応型への企業の体質転換をすみやかに行なうことが必要になった。このような状況下において,量的な拡大を前提とした省力化,生産性の向上という従来のコストダウン技法は封じられ,この手詰りを打開する方策として,VEの新展開が不可欠となって来た。

すなわち,限られた人員,資材,資源を最も有効に活用工夫するために,製品別を基準とした,営業,技術,製造を結んだタテ糸の改善,また,各部門の効率化という視点からのヨコ糸を通した改善,すなわちヨコとタテとがおりなすマトリックスの総合的な改善を行なうべくトータルVE活動が開始された。

以下,この活動について概要を述べる。

今や,低経済成長下における各企業のVA活動に対する期待は大きく,収益向上の強力な武器として,VA活動はより活発に展開される傾向にある。

しかしながら,一方では,製品へのVA案適用遅れ,VA案検討不足による実質効果の目減り,さらには,VA分析期間の長期化等,VA活動自身の非能率等の理由により,「時間をかけた割には儲からない」という批判もある。

このようなVA活動の効率的運営という課題に対しては,従来より,VAプロジェクトの計画とフォローアップに際し,「VA効率」によりVA投資効率効果を測定してきたが,今回,更に時間的効率指標を設定することにより,機会損失を最小とし,実質効果を向上させてVA活動に対する信頼度を高めるための管理手法を確立した。

以下,これらVA活動を効率的に運営するための管理手法について述べてみたい。

新製品開発に当っては,①性能,②開発期間,③コストの3つを管理する必要がある。しかし,現実には他社との競争上,新製品を早く市場に出すことが要求されるため,性能,納期が優先され,コストについては多少の不満があっても,そのまま出荷されることが,往々にしてある。

ところが,コストは開発,設計段階で"その大部分"が決定されてしまうので,利益機種を開発しようと思えば,その時点でVAを適用し,徹底したコスト管理を実施することが重要である。開発VAを展開するに当っては,機能展開の方法,機能評価法,アイデア発想法など,各種の技法上の問題があるが,それにも増して重要なことは,各メンバーがプロジェクトに対して,どれ程真剣に取り組む気持を持つかである。その大きな要因の1つに「目標コストの決め方」がある。

本稿では,目標設定の仕方と,その管理について,以下の項目に従って述べてみたい。

(1) 製品の目標コストの合理的な設定方法

(2) 目標コストの配分方法(機能コスト配分と個人別目標配分との融合)

(3) 目標コストの管理体制

なお,本稿における新製品開発とは,今まで世の中になかった製品を開発するという意味ではなく,従来の機種系列の1つとして開発するとか,コストダウンを狙ったモデル・チェンジとして新製品を開発するという意味で使用している。

建設作業所におけるVE活動は,さまざまの制約条件のもとにあり,これを一つひとつ克服していくことは,建設業の特色を生かしたVEを生み出すことになる。建設作業所は全国に散在し,一品受注であり,ーつとして同一条件のものはない。また移動性があり,工期も6ヵ月とか1年という比較的短期間のものが大部分である。編成メンバーも1人から数名と少人数であり,その都度,編成替えが行なわれる。工事管理,原価管理はもとより,作業所経営の大部分は,作業所長に委ねられている。このような条件でVEを実施するためには,ベストをねらうより,ベターなものを数多く取り上げるのがよい。この考え方に基づいて,当社では「3時間VE」手法及び,VE対象選定のための「VE計画会議」を作業所において実践していることは,第6回および7回のVE全国大会で発表したとおりである。

現在,新しい作業所においては,次々とVE改善が行なわれ,その実施例はVE部門に報告されたもののみで,およそ,2,000件に達している。これらは,定期的に評価され,よいものは「VEスポット」にまとめられ,全作業所に配布されている。しかし,「VEスポット」はVE実施例のごく一部分であり,これらを含めたVE実施例は,今後も増え続けていくものである。

以上のような特色と実績を踏まえて,作業所VE活動をさらに実のあるものにし,質的にも転換をはかるためには,この莫大な実績データとしてのVE実施例を,縦横無尽に使い切ることが,きわめて重大な課題となる。VE情報としての手持ちVE実施例を,システム的に活用することは,今後の作業所における工事管理に欠かせないことになると思われる。また,とくに少人数作業所において,従来の「3時間VE」を補完する手法としての「担当者VE」を活用することも有効である。以下に,主としてVE情報側面から作業所VE活動の現状と問題点を述べ,その解決策と要点を工事管理に即したVEの展開として詳述する。

昨今の企業を取り巻く環境は,円高ドル安,国内外の景気不振と,ますますの厳しさを迎え,企業の総合的な体質改善を余儀なくされている。また市場競争の形態からみても,ほとんどの商品群が成長期から爛熟期へと移行し,コスト,品質,技術等の膠着化による,デザイン競争の感が,より顕著となり,デザイン部門に対する,価値ある商品デザインが切望されている。

また,こうした中で,当社VE活動の重点を,商品,部品に対するハードVEと,製造部門や間接部門を中心とした,仕事の作業の進め方のVE,いわゆるソフトVEとの,トータル的VE活動展開による,価値ある仕事の進め方を基本思想とした,新しい商品づくりを志向している。

しかしながら,感覚的な要素が重大な意味をもつデザイン活動と,価値,機能を重要視し現象をクールに分析把握しようとするVE活動とは,相反する要素を含んでいるために,水と油的印象を与える。しかも,機能(F)を一定にして部品コスト(C)を下げるという,ハードVEの影響を受け,デザイン(外観コスト)に対する価値評価が正確に把握されていないことと相互して,VEによるコストダウン会議では,常にデザイン面が"いけにえ"にされていた時期があり,デザイナーはVE活動を反目敬遠するようになり,VEを正しく理解する機会を逸していたが,新しい仕事への脱皮を迫られる今日,VEというクールなフィルターを通して,デザイン業務全体の体質改善,およびデザイナーの意識改革を目標とし,手仕事的な作業を省力化することにより,デザイン本来の機能である,発想部分に重点をおいた,デザインプロセスを展開し,将来の状況を予測し,それを描くことのできるという,デザイン独自の秘法と信用を,確保することを目的としなければならない。

景気の低迷と円高とによって,わが国の経済は低成長の時代に入り,総需要の減退から深刻な景気の悪化をまねくに至って,各企業間の競争は,ますます激烈をきわめ,その環境は,非常に厳しい状況下におかれている。

このような状況にあって,企業の目的である利益確保をはかるため,各企業はVAを単なる改善の手法としてのみでなく"経営戦略"の柱として位置づけ,全組織を結集して取り組み実績を上げている。

しかし,現在,新製品開発のためのVAアプローチ技法はあっても,それが新製品企画の市場調査や新規機能の発掘・拡大のツールとしては生かされていないのが実体のようである。それは,まずVAの考え方の中心をなす機能分析が,うまく生かされていないからである。これは使う側での勉強不足のために"機能"についての考え方に幅がなかったし,柔軟な考えが持てなかったためと思われる。

これらの背景をもとに,ある分野における商品に関しては,製品企画への実用度の高い手法の開発と確立を行ない,その有効性が確認されたので,ここに紹介する。

本手法は,新製品の中でも,現製品をもとに大幅に改善されるものを対象としたものであり,その主な内容としては<情報収集にもとづく顧客要求機能を,そのもっとも関係の深い各機能分野にとり入れ,使用者機能及びメリットを開発していく-川下型開発法>と<各機能の分解・組合わせによる方法と基本機能から使用者機能を展開していく-川上型開発法>をドッキングして展開する,商品企画に対する機能分析・分解・組立手法である。

当社では昭和47年に産業能率短期大学のご指導により,VE実践セミナーを開催以来,従来の管理技術の主流であった「IE」,「QC」,に「VE」を含めた三本柱で,生産活動の合理化・管理技術の向上を推進してきた。

その間,推進組織の変遷や,ポリシーの変化により,個々の事業場での進歩状況は,一定の伸びを示してはいないが,全体としては,着実に定着・発展しつつある。

しかしながら,商品ライフの短縮傾向をはじめとし,VE活動をとりまく環境の変化とVE活動の活発化により,次のような新たな問題が発生してきた。

<改善の質的内容の変化>

(1) VE改善の繰返し実施による投資効率の逓減。

(2) 多品種少量生産による改善効率の低下。

(3) 取組メンバーの拡大による改善案の多様化。

(4) 標準化推進活動とVE活動の競合。

一方,VE提案の採否判定については,商品ライフの短縮化の傾向の中で多様化する改善案に対して,機会損失を防ぐ意味から,早急な決断が必要とされている。

そこで,これ等の問題に対処するべくVE提案の損益分岐点を明確にすると共に,その判断基準の確立を目指した。

当社における管理技術は,昭和35年以降,これまで製造を基点として営業まで,その総称を「品質管理」の名のもとに,導入と推進をはかってきたが,その柱は,QCであり,IEであった。その間,市況の変動により,社内の緊急政策の実施等により,推進の濃淡はあったにしろ,長期的にみれば,着実に,その定着が,はかられてきた。

ところが,ご存知のごとく,昭和48年の石油ショック以後,特に消費構造の変化により,その対応のため社内における政策も急転換が始まり,当然,管理技術の推進も転換がせまられた。その一つは高品質低価格商品の造出であり,他の一つは,企業内部の効率化,いいかえれば,"贅肉取り"であった。前者については,表現をかえれば,お客さまのニーズをとり入れ,もっと次元をあげれば,お答さまの潜在需要までも,開発し,しかも,お容さまが,安く感じる"値ごろ"商品を開発することであり,後者については,いかなる不況といえども「赤字を出すことは,罪悪」であり,当然,商品個々について,最適利潤を確保することが,必定とあれば,商品個々のコストを下げることに,全力をつくすと共に,社内組織の効率化をはかり,単なる社内経費の引きしめのみならず,全社員の効率的活動による,企業内部のトータルコストの低減が,必要であった。

当社においては,昭和46年より,ワークショップセミナーが開始され,VEエンジニアが,事業部,協力会社で,主としてハードのVEを中心に活動をしておったので,幸いにも,石油ショック後の急激なコストダウンの要請には,何とか答えられたものの,企業内トータルコストの低減については,新企画が必要であった。それまでにも,社内において商品個々のVEの進展にともない,製造工程設計のVE,生産管理業務のVE,新商品開発へのVE等が,必要にせまられて,研究されつつあったが,いろいろの問題があり,苦労している時でもあった。しかし,今度は,会社トップからの要請であり,全社あげて取りくむテーマであるだけに,全社活動としてのVEのとらえ方を真剣に検討した結果,ソフトVEとしての展開をはかることを決心した。そして既に述べたごとく,事業部には,ハードのVEが思想的にも,手法的にも定着しつつあったので,一層の推進を考えるとしても,その焦点は,当然,会社の中枢である本社業務諸部門と営業部門であった。

当時の周辺の状況は,すでに市況の急激な変動にともない,"発想の転換をはかれ!!" "原点にかえって考えよ!!"と,さけばれている時であっただけに,トップの「今までの高度成長時のままの,会社体質(=考え方)では,非常に危険であり,その転換をはかれ!!」という強い要請は,全社員に良く理解されていたものの,では,具体的に,どう転換するかについては,精神的理解にとどまっている時でもあった。そこで,われわれ推進担当部として,転換の方法は,何も一つに限ったことではないが,われわれとしては,せっかく導入し,浸透しつつあるVEの幅を広げ,レベルアップをはかるため,VEの本質にたちかえり,その思想の展開と活用の徹底を,全社に拡大することにより,トップの要請に答えようとし,その結果,まとまったものが,ソフトVEによる推進であった。

「高度成長時代から低成長時代へ」と,経済の構造的変動に伴い,企業は経営体質の強化を迫られている。このような状勢下にあって,VEの果している役割は大きく,より広範なVE活動の要望がなされている。この要望に応えるためには,企業内のVE活動を,さらに定着化し,普遍,発展させていく必要がある。

当社では,その一環として,"利益の宝庫"である製造現場にVEを導入することにより,沈滞ムード気味の小集団活動をRefleshし,経営体質の強化の一担い手として,VE小集団活動を推進してきた。(われわれは,このVE小集団を「VE New Power」と称している)

本論文では,このVE小集団活動を推進するための新しいVE手法を紹介するとともに,VE小集団組織,フォロ一体制およびVE小集団活動の今後の問題点などについて述べている。

VAが企業経営活動の一環として,極めて重要な役割をはたすようになり,各企業において,VA (VE)センターと呼ばれる組織VAを推進する専任部門を有するところが多い。これらVA専任部門の持つ機能は何か,何をすべきかを明確にすることが,VAがより効果的な活動となり得るか否かの鍵であろう。

VA活動そのものを,専任部門の専有物だと考えるとしたら,そこには,生きたVAは育たないであろう。VAとは,1つの行動によって生まれる価値を,より高めるための手段であり,行動とは,大げさにいえば,企業人すべての各自の職場における業務そのものである。つまり,日常の個々人の業務は,その組織の目的に沿って,より効果的アウトプットを求めて行動しているし,その具体的手段として,VAを活用しなければならないと考える。

VAセンターの仕事は,各職場が持つ機能を理解し,より効果的なアウトプットを出すよう,指導することであり,VA専任者とは,VAスタッフであるといえる。

当工場においても,VAセンターと呼ぶ組織があるが,特に,工場という生産に直結した部門内において,スタッフは,どうあるべきかを,具体的活動事例を上げながら,述べてみたい。

今日の社会,経済情勢は,企業経営にとって非常に厳しいものがある。とりわけ,高度経済成長と,それに伴う建設投資の緩慢ない伸びが,企業経営にとって不可欠ともいえる建設業界は,かつてない試練の時代に突入している。このような情勢の変化は,企業努力の必要性と重要性を,ますます高めることになった。さらに,このことは,VE活動においても,何らかの転換を計るべき時期であることを意味している。

当社では,過去に大会論文等で報告しているように,建設の施工部門を中心にVE活動を展開し,成果を上げてきた。しかし,企業をとりまく外部環境の変化と,企業としての多岐多様な問題がクローズアップされつつある状況の中で,VEを,単に施工分野における管理技術としてのみ位置づけるのは得策ではない。そこで,施工分野の実績の拡大をはかりつつ,あらゆる分野のさまざまな問題に対して,VEを合理的かつ効率的に適用して行こうとする考えがなされるようになった。当社における「トータルVE戦略」は,このような背景のもとに打ち出されたものである。

トータルVEは,組織的かつ総合的に,企業利益の改善に貢献することを目的とする。そのために,VE活動の間口の拡大と成果の増大をはかる。しかし,トータルVEの本質は,単なる量的拡大ではなく,VEマネジメント及びVEテクニックの新しい考え方の導入と,その実践という質的な転換であり,この点が,この小論の主題である。

この小論は,以上のような基本的な考え方のもとに,VE活動を展開した結果,この考え方が有効であることが認められたので,紹介するものである。

VEが,各企業に導入され,効率的戦略の一環として推進されるようになってから久しい。

当社も,昭和43年にVEに着手して以来,「建設業におけるVEの適用」をテーマとしてとり組んできた。その中で,作業所において比較的短時間に行なうことができ,さらに,BETTER的改善を狙って開発された「3時間VE」に関しては,既に発表し,また,VE対象の選定方法,3時間VE会議の諸問題,VE会議から施工,完了までの手順等についてもフォローを行なってきた。

一方,そうした作業所を中心としたVE活動の推進と相まって,母店内勤事務系職員を中心にして,soft ware VE(特に事務のVE)の実践にも,近年,力を注いできた。

こういったVE事務部会では,時間的な面において,3時間VEは適用しにくい。というのは,ソフト面のVEのステップでは,情報収集,現状分析に,より大きなウエートをかけねばならないからであり,また,最終的な改善案は,ほぼBESTに近い状態でなくては実践に結びつかないからである。

このようにソフトVEを実践していく上には,種々の問題点があるが,本稿においては特に,「ソフトVEにおける問題点整理法」に的を絞って述べてみたい。

安定成長時代を迎え経営環境により厳しさが増すとともに,企業経営の質が問題となる。特に,下請中小企業においては,経営の近代化がおくれ経営効率が甚だ低い企業が多く,経常基盤が脆弱である。

高成長期では,低賃金と長時間労働の労働集約型の経営を行なうことにより,企業収益を得ていたが,受注量の減少,採算の悪化に伴って収益性が急激に低下し,分岐点の売上高を確保できず,水面下の経営をよぎなくされている下請企業が増加しつつある。

企業体質を改善し経営効率を高めるためには,その企業に適した管理技法を導入し,経営責任者がリーダーシップを発揮し,全従業員の総力を結集して問題解決にあたる必要がある。このような下請中小企業に,VEを定着させるためには,単に技法の紹介のみではなく,利用可能な管理技法を適切に組み合わせ,企業体質の改善を図りながら収益性向上に役立つことを体験させることが重要である。本論文は,企業診断とその改善指導を計画的に実施し,下請企業の経営効率化を効果的に実現させようとするもので,資材部門のVE専任者としての研究課題でもあるので,今後とも一層の努力を傾注していきたいと考えている。

VEがわが国に導入されて以来,各企業において着実な成果を上げ,個別活動から企業経営方針に基づいた組織的な活動へと発展してきた。また,VE対象範囲においては購入部品のコストダウンを狙ったVE活動から,既製品を対象にした2nd Look VE,商品の構想決定時に実施する1st Look VE,商品企画時に実施する"0" Look VEへと,商品が生れる源へとさか上ったVE活動が積極的に展開されるようになってきた。更には,ハードウェア中心からソフトウェアの分野へと,ますますVEの適用範囲が拡大しつつある。

一方,具体的問題解決においては幅広い関係部門の人々で構成し,その人々の最大能力を発揮するのに適したVEチーム活動を実施して大きな成果を上げている。しかし,対象分野が広くなると共に関係部門から集った人々によるVEチーム活動を,常に成功に導くためには,チームメンバー全員に必ず目標は達成しなければならないという"使命感"を持たせることが非常に重要なことである。

本稿は,価値ある商品づくり(ハード面)をするために,顧客ニーズとメーカーのコストを考えた価値係数を用いることによって,目標の適切なブレークダウンとVEチームのやる気,目標達成への使命感をおこさせる機能別コスト目標の求め方とその展開について,過去研究してきたことを紹介する。この進め方を開発するに当って,最も留意したことは,実践において確実に展開できるようにすることであった。

実態となった新局面

49年のオイルショック後の今日の企業環境を,ややもすると,それ以前の高度成長型時期を尺度にして異常であると思いがちである。しかし,もはやこのような考えでは,現状に対処できないばかりか,環境変化の本流を見い出すことができず,今後の事業運営の方向性を危惧せざるを得ない。従って今日の局面を今後とも,これが常態であると認識し対応する企業体質づくりを,一刻でも早く着手する必要があるといえる。

この課題の遂行に対してVEの特長(演繹的)すなわち

イ. 現行の諸条件・手段にとらわれず目的志向・本来機能志向をおこなう。

ロ. 改善対象システムに対しては上位目的との関連性を明確にする。

ハ. 投入資源と成果のバランス(効率)を追求する

等と,従来から取り入れられすすめて来たQC・IEの特長(帰納的)とを統合して活用すれば一層の効果が期待できると考え,第Ⅱ章のような推進をはかってきた。その推進の志向体系は次の如くである。(図1・1参照)

推進のやり方は,当然企業の実情(諸条件)を考慮したオリジナリティのあるVEを進める必要がある。次に当社の概要と当社流のVEの特質を述べる。

1960年代の高度成長期から1970年後半の成長期に移って,わが国企業の多くは攻めの経営から守りの経営へ転換し,その戦略も新製品開発主力製品のシェア拡大からコスト低減へと変ってきている。

このような,中で新製品の開発は企業にとって大きな問題となり,NO RISK的,防禦的となってきており,その新製品開発方針も技術革新型から市場革新・拡大型を重視するようになっている。

企業の製品をそのライフ・サイクルに従って導入・成長初期製品,成熟・安定製品,衰退製品の三つに分けると,1975年末における全売上に占める割合は,それぞれ13%80%,7%となり,1960年~70年代前半よりも導入・成長初期製品がかなり少くなり,成熟・安定製品が多くなってきている。

このような企業経営状態と低成長期とを考えあわせると,限りある資源,人材,時間をどのように有効につかって利益を上げていくか,企業体質改善をどのようにはかっていくかは,十分に考えなければならない問題であろう。

わが国企業の経営戦略は高度成長から低成長への移行に従って,その目的,手段共大きく変ってきているし,当然,その業種・規模によってとるべき戦略は異ってきている。その点,VAこそ企業戦略の基本であり,製品企画にVA手法を導入していくべきであると考える。

われわれバリューエンジニアにとって,ここで必要なのはVEすなわち機能定義・機能評価・代替案作成を行なうにあたって,市場条件・顧客の要求事項をどのようにとりあつかい,どのように製品企画において考えていくか,製品のライフ・サイクルとその市場の変化,価値観の変化をどのようにつかみ取っていくか,そして,それをどのように戦略的に製品企画に折り込んで考えていくかを実践していくことが必要であるということである。

このようなことを背景に,本論文では製品開発におけるVA展開に製品企画をかみ合わせ,VA戦略アプローチとして成功した当社の大形空調製品<カスタム・エアコン>を例にとって,いかにして成果を上げ得たかをのベ,その考え方の一端を発表する次第である。

オイルショックが,日本経済に大きな変質をもたらせてから,早や2年半余,経過した。この2年半余の日本及び世界経済環境の激動の流れは,高度成長時代から低成長時代への経営転換を迫り,企業経営について体質改善を余儀なくしてきた。体質改善の具体策は,高度成長時代の感覚を超えた諸策が求められ,その対応策の一環として,内部努力により利益改善の達成-コストダウン-が,企業の安定軌道を着実に確立するものとして,重要視される。

その最適有効手段として,VE活動の一層の充実展開が,各企業に進められている。企業内部各層へ浸透・定着を通じ,適用局面の拡大を進めながら,企業経営のマインドに押し進めてゆく展開過程は,幾多の企業に,その実例をみることができる。それゆえに,VEの威力に,企業が注目するところであろう。

一方,現時点の資材調達環境は,石油パニック・物価狂乱の一時期を経て,資材の新価格体系への移行が進んでいる。生産工場における購買部門の調達活動は,コストダウンの最前線部門として,質的充実・価値の追求を強く要請される。

この難局のなかで,購買部門として,個品のVE活動を積み重ねて,購買管理体系にVEマインドを組み入れ,低成長時の購買部門の利益創出機能の徹底追求と確立をはかり,併せて企業内VE活動の活性化を進めることは,企業体質改善の効果あるアプローチであろう。

本論文は,購買局面におけるVE活動の新展開を進めて,原低成果をあげてきた当所の展開過程を紹介しながら,その重要性・波及効果をまとめたものである。

ステップリスト・マネジメントの方法とは「ステップリスト」という書式を道具として使って,マネジメントをする方法につけた名称です。

ステップリストの書式とは,第1図に示す通りです。

この書式は,こみ入ったマネジメントをするときに,非常に便利なものであり,他にも,考えをまとめたり,新しいことを創造したり,問題を解決したりするときにも,便利に使うことのできる道具です。

一般に,ある目的を達するためには,いくつかの手段があります。そして,目的に対して,適切に手段が選ばれ,それが能率よく運ばれていく場合には,そこに,なにか共通したものの存在を感じます。これが,これから説明するステップリストマネジメントの中身なのです。

従って,この方法が使える対象は,ごく簡単な問題解決から,非常にこみ入った内容をもった対象分野にまで及びます。そして,その対象がこみ入ったものであるほど,この方法は使ったときの威力を発揮します。

すなわち,この方法は,こみ入った対象分野において,従来開発された各種の管理技術(IE,QC,VE,PERT,KJ法等を含んだ幅広い意味の管理技術)を目的に対し,必要に応じて適切に位置づけ,総合的に使っていくことのできる枠組を作りあげる性質をそなえており,システムエンジニアリング等の基本手法としても使える,極めて応用範囲の広い方法です。

この論文では,紙面の都合上,まず,その方法の手順ステップについて述ベ,次に,その各部分の意義と応用について説明します。

また,手順ステップに使うことばの説明は,この方法を多くの人に利用して載くため,できるだけ日常の卑近な例と,ことばを利用するように努めました。

利益指向にもとづいた目的的情報活動と,その最大限の活用により,現状打破へのシステム的VEアプローチは如何になすべきか。

利益の基本要因は,原価,売価,販売量であるが,これは(hard ware VE)と(soft ware VE)の総合システムVEで達成されるべきものである。

総合システムVEは,組織的な努力と運営により成果をみるものであるが,更に,トップの戦略決断に待つものが多い。

現在のわが国における企業競争は,同業他社との競合だけに対処しておれば,企業の存続が可能であるといった時代ではなくなり,他の業界はもとより,国際競争をたえず意識しなければならないのである。

国際競争を意識したとき,部品業界は,現在の完成品メーカーの要求仕様,最優先の考え方を捨て,要求された機能を果すため,最も価値の高い製品を完成させるために,完成品メーカーと対等の立場での協力関係を確立し,VE活動を実施することによって,共に国際競争の勝利者となることができると確信するものである。

そのためには,完成品メーカーと部品メーカーの製品企画が,同一方向を指向していることが,最も望ましいことである。

しかし現実は厳しく,国際競争力のある製品においても,多くの機会損失を発生させており,この点の改善が必要である。

今回,VE研究論文を発表する機会を得たので,ここに私の考えを発表し,完成品メーカーの賛同を得たいと考える次第であります。

昨今の経済情勢,企業動向,雇用情勢等,景気はマクロ的には若干の回復基調にあるとしても,すべての産業企業が,回復の波に乗れるとは限らず,減速経済下における企業間競争は,ますます熾烈化し,まさに各企業にとって企業環境は,厳しい状況下におかれている。

このような状況にあって,企業は何としても生き伸びていかなければならない。企業目的達成のために,いかにして利益確保をはかるか。各企業共,経営者はもちろん,幹部,第一線にいたるまで,全組織力,総合力を結集,一丸となって必死に取りくんでいるのが,今日の姿といえよう。

そして今や"VE"は,単なる改善手法としてのみでなく,すでに大多数のトップマネジャーが,認識を新たにし"経営戦略"の柱としての位置づけと,同時に実践への真剣な取りくみ姿勢がうかがわれる。

本論文の主眼とするところは,次の3つである。

ひとつは機能系統図についてである。VEでは機能系統図が,本来,非常に重要な役割を持っていると考えられるにもかかわらず,単に形式的なものにとどまったり,あるいは,せっかく時間をかけて作っても,後の代替案との結びつけが明確でないという現象が見受けられるが,これは機能系統図の作成の仕方に一因があると考えられる。

VEにおける機能定義,機能整理のひとつの大きな目的は,それによって,物事の本質を考え直すことにある。すなわち物事の原理原則を,しっかり認識することが,真の独創力を導くことになるからである。従って機能系統図も,その趣旨にそっての検討がしやすく,かつ,そのプロセスを明確に出米るものが望ましい。

そこで機能系統図を目的,手段の関係で追求して作成することには変りないが,その機能分野を基本的な原理にかかわる本質的機能分野と,機能の形への転換に関わる形態的機能分野,さらに,その形態的機能分野で,ある特定の手段,構造をとったがために派生的に発生した付帯的機能分野という形でとらえる方法を提唱し,その考え方,VEをすすめる際の注意などを,ひとつの事例をもとに,具体的に述べている。

第2番目は,製品を構成する各種の材料,部品が,以上の機能系統図のどの機能分野に,どの程度関与し,またその時のコストとの関係はどうかということ,かつ,その状況からVEによって,改善すべき方向,あるいはVEの結果,それらが,どう改善されたかをvisibleにとらえるため,新たにバリューベクトル及びバリューベクトル図という考えを導入し,展開した。なお価値標準というのは,このバリューベクトルでいえば,そのコンポーネントを作ることに相当すると考える事が出来る。

第3番目はバリューベクトル図とコストテーブルの関連について述べている。バリューベクトル図による機能の材料,部品への割りつけ変更の検討,コストテーブルによるその可能性の追及は,前者の定性的機能の後者によるその定量化という面において,この両者の結びつけは,VEにとって非常に重要であると思う。

では,以上の骨子に従って論をすすめることにする。

開発VEについては,関西支部の主催で行なわれた「開発VE実践研究会」で,1年有余にわたり研究され,その成果報告も"新製品開発のためのVEマニュアル"として発行されている。また,既発表のVE研究論文の中にも,開発段階のVEに関するものがあり,当社においても,種々参考にさせていただいている。しかし,当社の生産形態は個別受注生産を主体とするもので,小規模ながら「システムもの」と呼ばれるようなものも,かなりの件数におよんでいるという特殊な事情があるので,開発VEの展開に当っても,当社なりの工夫が必要であった。

当社での開発的要素を含んだ設計は,主に次のような段階で行なわれている。

(1) 引合い--構想設計 見積または応札(開発要素を含む)

(2) 新規受注--開発設計--生産設計--製造

(3) 基礎研究--製品化構想--開発設計

(1),(2)の場合は,いわゆる本格的な大プロジェクトとしての開発設計とはいえないものもあるが,発生件数としては多い。したがって開発設計に際しては,

・技術的革新テンポが急速で,絶えず新技術要素を折込んだ開発設計を行なっていかなければならない。

・特殊システムものなどがあり,繰返し生産が少なく,同時に件数としては増大する。

・他律的な時間制約を受ける。

など,設計に当っては,当社なりの事情がある。

当社のVAも,定着期から発展期へと進み,過去1年余り,川上作戦としてのVAの展開を進め,開発VA重点にVA活動を行なっている。システムものの場合などでは,実際の開発設計を数チームで分担するなどの例もあり,それぞれのチームへの適切なコスト配分の方法をいかにすべきか,機能配分なり,機能区分は,どのようにするのが合理的といえるのか。これらの問題については,寡聞にして既成の手法があるのかどうかが分らず,自主開発的に各種の方策を試みている。

また開発段階のVAについて,もう1つの困難がある。このことについては,既に発表されている開発VE手法の中にもふれられているが,ファーストルックVAの場合,VA対象機器が具体的な形となっておらず,ユーザーの要求は,感覚的で定量的特性として表示されていない場合が多い。われわれは,このようなユーザーの要求について,その本質をとらえ,機能として表現し,その機能をいかにして定量化し,具体的なものとして形而化して行くか,その方法過程が,VAチームメンバーに理解されやすい簡便な方法はないかということの検討をしてみた。

本稿においては,開発段階におけるVAの中で,

・機能とコストの合理的な分配

・ファーストルックの場合の「要求機能」と「物のもつ機能」とを結びつける方法

という2つの項目について,実施例を加えて述べる。

当社では,VE普及の一環として,主に中堅社員を対象に入門議座を開いている。過去数回の開催で百数十名の終了者を出している。この講座の指導を通して「機能分析」について苦労した。

そこで,われわれは,過去何回かの経験を標準化して,機能分析の一手法として確立しようと努力して来た。

例えば,根本氏の講演中ふれておられた「透明軸ボールペン」について,3~4時間としておられたのが,本手法を一通りマスターすれば,1~2時間で出来る。

因みに,当社の経験によれば,1~3工程分の作業改善,または一部品当りの設計改善程度の機能分析であれば,従来法では,平均15~18時間に対し,本法によれば平均7~8時間程度で出来る。

低成長時代のコンシューマーの眼は,高度成長時代には想像もつかなかった程,厳しくなり,それはあたかも,VE技術者の眼のごとき様相を呈してきた。消費者団体の各方面での活動は,それらを代表するものであり,適正価格の追求,信頼性表示の要求,そして「約束された機能」の判定等,企業に対する要求は,激動する経済環境を反映してか,かなり多様なものになってきている。そうした市場環境に対応すベく,企業のVE技術者に対する要求も,少なからず変化してきたようである。激化の一途を辿る企業競争の中にあって,経営者の思考も,トータルコストの見直しへと移行してきているようであり,営業第一線から製造部門まで,その問題は多岐にわたっている。そして,それらの各方面へのVE担当者のアプローチ,アクションが期待されてきているのである。しかし,複雑多岐にわたる問題が,有機的に結びついており,それらを一元化されたデーターベースに表わすということは,甚だ容易ではなく,VEは,もはや個人,グループの技術ではなく,企業体としてのテクニックになりつつあるということである。そこで今回,トータルコストに影響する因子を,如何にして適確に把握し,かつ,それを如何に効率よく商品原価計算システムにフィードバックするかということを検討してみた。

昭和30~40年代の高度成長期において,生産の量的拡大を背景とした積極的な設備投資を中心に,生産の効率化を達成して来たわが国の企業は,石油危機を契機に,高度成長から低成長へと急激な転換を迫られ,従来とは全く異った観点から,経営効率化の努力を要請されている。

低成長下における経営効率化の課題-まさに今後のわが国産業の死命を制するこの課題-を解決するために,「3Mのインプット減少」による生産効率化に,より真剣な態度で取り組む必要があろう。

当三菱電機長崎製作所においても,安定成長期に対処すベく,量的拡大から質的充実への体質改善を積極的に行なっている。

当所で生産している誘導電動機・交流発電機・タービン発電機等の回転電気機械は,60年の生産経歴を有し,この間の技術の蓄積が当所経営の基盤となって,信頼性の高い製品を世に送り出している。この技術力を背景として,大幅なコストダウンを行なうことが,今後の困難な企業環境下における生産面での最重要課題である。

従来,当所のような多品種小量生産工場では,標準化の概念が生産効率化の基本的思想として生き続けているが,根源的に問題解決を行なうためには,コストの源流となる製品設計の場において,「標準化」と「理想設計」を同時に統合することが必要となる。すなわち「最少インプットの理想設計」と「部品の標準化」とを"同時検討"し機能指向型の少種低コストの製品を図面化して,GT的な生産方式を追求し実現することが,多品種小量生産工場効率化のポイントであると考えている。

以下「中形モーターの端子箱」をモデルにして,VEによる「理想設計」と「標準化」の統合により,大幅なコストダウンと部品種類数の縮減を達成した1事例を紹介する。

昭和35年に当社に導入されたVEは,やがて展開期に入り,現在は全く定着化しているといえます。当録音機事業部においても,44年にVE担当者を設置以来,設計VEシステムが確立されており,日常のVE活動も板についた感じになっております。新製品開発システムの中に,VEをシスティマティックに組込み,設計段階におけるVEを,設計者が容易に取り組める体制を作りあげております。しかしながら,ここに到るまでには,有為変転を経ており,数多くの困難があった訳です。その中で,われわれは,あくまでもVEの必要性を説き,設計者と一体になって行動し,設計者のVEに対する考え方を変えることに成功しました。

当論文では,設計段階におけるVEの見直しを行ない,新製品開発システムを改善して,成果をあげ得た経過について報告します。

ステレオ業界は,ポスト・カラーの掛け声に競争が一段と激しくなり,ことある度に,企業内合理化が叫ばれて,VE,標準化等の合理化手法が口にされてから久しい。しかし,実情は,なかなか,これ等の手法の日常化に至らず,それには幾つかの理由が考えられよう。その代表的なものを挙げると,

(1) ステレオ商品は趣味嗜好の多様化商品である

(2) 技術の進歩が早く安定期がとらえにくい

等であろう。ところが,近年生活水準の向上に伴い,商品に対する要求は,ますます多様化し,企業間の新商品企画競争の激化は,商品のライフサイクルを極端に圧縮してきた。その結果は,部品点数の急増と,部品のライフサイクルの短縮化となって,大量一括発注によるコストメリットを無くし,部品在庫の増加と共に,企業体質の弱体化の原因のひとつにもなりかねない。これを決定的にしたのが,オイルショックによる材料費の高騰である。業界内の販売合戦とコスト競争に対処して,当ステレオ事業部も,企業体質強化の長期戦略の一環として,従来のVE,標準化活動をより強化し,展開させることになった。今回の標準化の推進は,商品設計及び生産技術面を中心として実施され,初めてVE手法を適用した柔軟で機動性に富む標準化が試みられて,ようやく第1次目標を達成することができた。本論文では,このVE手法による標準化の実施例を紹介し,実施法の1方法として論じてみたい。

VEの定義では「VEとは,最低の総コストで必要な機能を確実に果たすために製品とかサービスの機能分析と改善に注ぐ組織的な努力である」と唱えて,事務の分野にもVEが適用できるとしている。しかしながら,製品などのハードな対象と比べて,事務に対する適用例は少なく,手法上の問題点の解明についても,十分になされているとはいえない。

事務のVEに対する重要性が認識されてきているにもかかわらず,一般には,経費節減運動に見られるような長距離電話の規制とか,コピー用紙の節約などの節約ムードの醸成を促すといった一時的なコスト低減策がとられているケースが多い。

フジタ工業においては,組織の拡大と情報量の増大に伴なって事務及び手続きの複雑化が進行している。一方,事務・技術を問わず,全社員に対してFVE実践コース(2日間の研修)が実施されたことと相俟って,特に事務部門からも,VE適用範囲の拡大が要請されてきた。

今までにとり上げられたものは,作業所事務の軽減に関するもの,各種事務及び手続の改善に関するもの,組織に関する提言などであるが,本論文では,事務手続の改善について,特に手法の展開の仕方を中心として試案を提起したい。

当社におけるVE活動の現状については,過去数回,この大会で発表してきた。その中でも,特に最近は,BESTよりもBETTERの改善結果をねらって,作業所で数多くVE活動を実施するという方針をとってきている。すなわち,VE計画会議によって,問題点の摘出からVEテーマの選定,3時間VEを用いての改善活動,この両者の組み合わせで,着実に成果をあげてきている。

しかし,現実の問題として,少人数の作業所が数多く存在しており,メンバー不足のためVE活動ができない場合も,しばしば起っている。この解決策としては,物理的にメンバー数を増やす方法と,1人でもできるVE手法の開発と,2通りの策が考えられる。この論文では,前者について簡単に触れ,主として個人VEの考え方,その適用事例を中心に述べてみたい。

今日の過当競争の中で,企業が生き残るには,いかに利益をあげ存続するかによって決定されます。それは,製品の技術,価格,販売力等により左右されます。

特に最近の情勢は,価格競争が表面化してきていることは事実です。この価格競争に打ち勝つためにも1個1個の部品単価が深く追求され,いかにしたら,"VE,コストダウン"ができるか,そのVE活動に多くの期待が寄せられています。

しかし,製品コストは,設計段階での製品仕様,設計によって,ほぼ決定されると言って過言ではありません。

従って,設計段階のVEは,製品コストに大きく影響を与えると共に,企業の原動力の1つとして重視され,今後,一層推進していかなければなりません。

戦後,わが国の経済は,「20世紀の驚異」といわれる程の高度成長を成し遂げ,これを背景として国民の所得は急増し,消費力も旺盛となり,まさに「昭和元禄」を旺歌してきたが,オイルショックを契機とした資源不足による石油製品および関連製品のコスト高に起因する資材費の高勝を招き,そのあおりで消費者物価も狂乱的に高騰した。この結果,需要は下降の一途をたどり,政府の金融引締め策と相まって経済は縮小し,不況時代へと突入した。この物価も最近では落着きをみせてはいるが,国民は現在でも,なお逼迫した生活を余儀なくされている。

さらに,家庭内部においても,物心両面で多くの問題が潜在し,円滑な家庭生活を阻害しているのであるが,これらの問題に対し,現在,各家庭では問題発生後,応急処置的な対策を行なうのみで,抜本的な改善がなされていないのが,実態ではなかろうか。

かかる観点より「考える葦」であるわれわれ人間は,無限の頭脳を駆使して,社会の原点である家庭生活のあるべき姿をデザインし,より価値ある家庭生活を営むよう,あらゆる面で改善することが,いかに大切であるかを真剣に考える時代を迎えていると言えよう。

そこで私は,VE手法を家庭へ導入することに着眼し,「家庭のVE」と題して約2年間にわたり研究し,実施してみた結果,全支出の20パーセントの経費節減を行なうことができたばかりでなく,家庭生活のあるべき姿をデザインし,ほぼ満足する結果が得られたので,その実施内容を説明し,皆様のご批判を仰ぎたい。

監督者にVEを理解させることについて,現在でも疑問を持つ向きが多い。かってQC,ICがスタッフの独占物であった時代と同じ考えである。しかし現在は,QCサークルの活発化により,製造現場でQCが十分に役立ち,大きな成果をあげている事実は否定できない。さてVEについてはどうであろうか。もし,監督者としてVEが理解できないとすれば,教え方が良くないのであり,理解させる工夫が足りないと考えるべきである。このような考え方で,製造現場にVEを導入する工夫が,先進的な企業で始められつつある。

たまたまVE協会関西支部において「製造VE研究会」が持たれ,製造現場にVEを理解しやすい形で導入するための研究が始められたので,これに参加し,当所に導入するための準備をした。この関西支部の研究会を通じ,内容の掘り下げと教育のやり方を研究するとともに,ようやく所内の機運も熟してきたので,昭和49年に実験的に監督者VEセミナーを3回に分けて開催した。"短期実践的"をモットーにしたこのセミナーは,ほぼ予想どおりの成果を収めることができたので,その後も連続してセミナーの開催と,活動の浸透を図っている。

以下,セミナー開催のねらい,内容,評価などを中心に実施状況を述べるので,ご批判,ご叱声を頂だきたい。

もはや高度成長経済は過去の甘美な夢と化した。

低成長経済を大前提として,企業活動の健全な発展を期して行かねばならい現在,この点での努力と成果が,企業間格差を大きく広げて行くであろうことは,容易に想像がつく。当然,VEに対する要請も過酷なものとなり,より効果の上る手法の登場が期待されている。

当事業部においては,昭和48年頃より本格的なVE活動の実用化段階に入り,第1図に示すように着実な成果をあげて来たが,われわれは49年初頭までを"VEを実施する環境と手法の確立"を成した『第1次活動期』と呼び,以後VE活動は新たな段階である『第2次活動期』に突入したと考えている。この段階では,先に確立した手法と環境をベースに,さらに過酷なVE要請に力強く答えるべく『ワースト指数』という概念を導入したVE活動によって,飛躍的なコスト力の向上を計り,着実に成果を上げつつある。

本論文では,この『ワースト指数』を中心としたVE活動について,当事業部の実例を交えながら,述べてみたい。なお,本論文では図表等を意欲的に取り入れているので,内容把握の一助としていただければ幸に思う。

最近における企業経営は,わが国の経済構造が,高度成長から低成長に移行したことにより,量的拡大から質的充実への大きな変換を迫られ,厳しさを増しているが,この中でVAの果す役割りは,ますます大きくなってきた。

今やVAは,企業収益を改善するための重要なツールとなっているが,VAの中心的役割りを演じるべき手法の一つである機能分析は,使う側での勉強不足や受入れ体制の不備はあるものの,必ずしも実践的であるとはいえない。

これらの背景から,実践ベースでの実用度の高い機能分析手法の確立を目的に,機能評価に焦点を合わせた手法の開発を行ない,有効性が確認されたので紹介する。

本手法は,現流品を対象としたものであり,この主な内容は,機能評価に必要な情報を,VA前にコンピュータにより作成し,これらの一元化されたデータより求められる比較的具体性のある期待メリットと,改善余地件数により,展開する実践的機能評価手法である。

ある人がステレオを買った。この単純と思える行動の中には,実はその人の買うという欲求心が,複雑なコンピューターのごとく動めいて,最終的意思決定がなされている。この欲求心の中でも,外観品について焦点を絞るならば,外観品を選択する動機は大きくいってその人が持つVision,Utility,Economyと考えられる。この中で非数量的なVisionは,流行,合理性,快適性や時代性,そして個人,年令,性別,地位などの社会性,技術,材質,形態,色彩などの造形性が背景にある。このようなVisionは人によって様々であるが,できる限り数量的にとらえる必要がある。

そしてVision,Utility,Economyの関係を,適格に把握するのが外観品VEを進める前提である。

従来,VE手法の企業内導入については,いくつかの議論がなされてきた。

日く,トップの支持と理解を得ること,VEは体験しないと身につかない,VE提案は採用のための説得も充分考慮せねばならないこと。等々である。

かって,ローレンス・D・マイルズは,その著書の中で「失墜の危険排除」についての見解を次のように記述している。すなわち「意志決定に必要な環境」の章で,「新しく価値のもっとよくなるものをつくりだすための組織は,通常1年以内で,十分に機能を発揮するように作りあげることができる。しかし,新しく価値のもっとよくなるものの研究検討で得た結果を効果的に実施に結びつけるための意志決定者の考え方を変えるのには,数年を要すると考えてもよい。」と一般的な企業内の姿をとらえ,その理由と対策を次のように述べている。

すなわち,コストダウンのための良い改善案を,現在の製品にもりこむための採用意志決定の場に際して,現状を変更することが,つねに反対されがちであるから,対策の第一ステップとして「変更に関連する人達の失墜とか,将来の失墜につながるような可能性のあることがらを,最少限にしておくための,できるだけの処置をすること。」と指摘している。

このような観点から,コストが急に下がることに対する関係者段階の失墜の歯止め策を考慮しているうちに,以下に説明するような,「適正購入価格のステップリスト」の骨格ができあがった。

できあがった結果をみると,失墜防止のための歯止め策としてばかりではなく,各種の立場からもステップリストとして使えそうなので,経営上よりの,新製品/量産の管理サイクルまで拡大し,まとめてみたしだいである。

産業構造の変化(技術革新,人件費の上昇,そして労働力不足)は,中小企業にとって何を意味するのであろうか。それは今日の時代がイノベーションの時代と言われているように,中小企業にとっても,企業体質の革新を意味しているのである。しかしながら,いまだ旧態依然の体質から抜けきれず,上記の問題に面して,対応策を見い出せず戸惑っている企業が意外に多く存在しているのではないだろうか。

この論文において,ある中小企業との共同でVEによるコスト低減活動の実践をモデルとして,特にVEの人間的側面の重要性を説明し,VE実施の結果を分析することによって,VEの多面化について考察してみたい。

人間はどうあるべきか。

企業はどうあるべきか,を歴史的な事実としてとらえ,環境を知り,自社の長所短所を客観的に評価し,急所と思われる難問を摘出してそれをシステム的に,生態学的に,インターデシプリナリ的に解決するような,ユニークな教育訓練であることが望ましいのである。しかも啓蒙的教育により一人一人のヤル気,働き甲斐,生き甲斐を高場するものでなければならない。

この高邁なビジョンを達成するため,行動科学を活用した独特なプロセスを順を追って解説する。

WSSは,オリエンテーション,合宿研修の準備作業,および合宿研修会の,3つのカリキュラムから構成されている。

昨年わが国に石油パニックを起し,大きなショックを与えたいろいろな問題はまだ記憶に生々しいが,石油に端を発した諸問題は石油のみにとどまらず,我々に資源,エネルギー不足を再認識させる一方,「狂乱物価」と言う流行語までつくり出させてしまった。かって例をみなかった大幅なコストアップ攻勢に対し今後各企業が,この「狂乱物価」をどう吸収対策し,いかにして各商品の付加価値を高めるか,又新しい社会の経済変化に,いかにして速やかに同化するか否かによって,今後各企業に格差が生じてくることは明らかであろう。これ等の諸問題に対処すべく筆者の所属する事業部で行なっている種々対策の中で,現在着実に成果をあげつつあるVE活動について以下述べてみたいと思う。なお,本論文中の各種実施例は全て筆者の所属する音響機器事業部の実例である。

昨年末よりはじまった石油パニック,それに続くインフレ,大幅な人件費上昇と,企業は省資源,省力,省エネルギーといったコストダウンに追われているといっても過言ではない。また社会から,この事を,これ程まで強く要請された事も今だかって無かったといえる。社会の体質が変る時に,企業の体質が,それについて改善されないとしたら,その企業は生き残る事は困難といえよう。

一方,かねてからVEにおいては機能の追求を行ない余剰機能の削減,コストの低減,価値の向上という面を各界の人より論じられ実施されて来た。これは,現在の社会が要請している事そのものズバリといえる事である。今こそ企業が,ほんとうにVEを必要とする時であり,企業の経営にVEを採り入れる時期である。そして,企業の中に,VEというものを採り入れる時,それを,どの様な形で運用するのかを,検討するべきであるといえる。

現在,日本経済をとりまく周国の情勢は,激しい変化の様相を,更に,こくしてきております。昨年に始まった,石油パニックと,西欧,米国に進行してきたインフレーションが,更に世界的なインフレーションとして押しよせ,日本が国際社会の中で貿易立国として存在することが,国内コストプッシュ要因の増大に伴なって,大幅に圧縮されつつあり,このままゆけば3~4年間で日本は,完全に国際競争力を喪失する危機に直面してきた,とさえいわれております。

国内では,消費者物価,卸売物価は,まだまだ不安定,公共料金は値上げの一方,総需要抑制策の進行は,正に最悪のスタグフレーションへと深刻化しております。

一般企業においては,生産販売の鈍化,材料等を中心とするコストアップ,人件費の大幅な上昇など………「やがて回復するであろう」という安易な企業経済見通しは,今や,全く否定的であり,最近,特に企業経営の中にVEが大きくクローズアップされてきました。

「この危機を乗り切るためには,VEしかない」とさえいわれております。

市場競争がますます緊迫すると共に,材料費・人件費等の高騰が続く現在,価値ある技術商品を開発するために,設計部門においては,今までにない創造的な設計が要求されている。それは,非常に優れた技術的なものから,使用材料を少なくしたり,生産性・サービス性の向上を狙った,ちょっとした工夫等諸々である。

そのため,設計部門においては,日々,ユニークな,優れたアイデアの必要性が叫ばれ,グループによるアイデア会議や個人的なアイデア発想が行なわれている。

しかし,そういった形で出されたアイデアの多くは,目的とする所を充分に達成しているであろうか。また,創造的な設計をするためのアイデア発想技法は,ブレーンストーミング法・NM法・KJ法等を中心に約40前後あると言われているが,日常の設計活動の中において充分に理解され,効果的に活用されているであろうか。

どちらにしても,現在の厳しい社会情勢の下で要求されることは,実際に役立つ,効果的なアイデアを,いかに確実に,早く,多く出すかということである。

そのためには,過去の技術蓄積の全てをもっている設計者の経験・知識・知恵を,いかに有効に引出すかが,重要なことである。

そこで,この論文においてはいかにして,設計者の経験・知識・知恵といったものを有効に引出すか。そして,それを真に価値ある技術商品の開発に結びつけるかを,アイデア構造図を中心とした,創造的設計の考え方と,その進め方について,過去,研究してきたことを紹介する。なお,この論文中の実例は,当社で製造・販売している,オープンリールテープデッキに応用,活用した事例である。

われわれは,現場すなわち第1線作業所でVEを実践することを目標としてきた。

建設業の作業所は地域的に分散していてしかも移動性があり,そこで行われる業務上の判断は迅速性が要求されるので,進行管理あるいは日常決定の大部分は組織効率上母店でなされることは少なく,作業所自身にゆだねられている。人的配置も社員の80%は現場配属であり,企業の特徴は人中心主義であり,現場中心思考である。したがってVE活動においてはとくに第1線作業所で,きめのこまかい展開をする必要がある。

この観点から,どこででも,短時間ででき,しかも,BESTよりBETTERをねらうという主旨のもとに開発された「3時間VE」については既に発表したところである。あわせて,現在全社員のおよそ80%がVE基礎教育(FVEスライドと実習を中心とした2日間のFVE実践コース)を受けて,VEの考え方を理解しているので,現場で行なうVE活動は概ねスムーズにいっている。

今回は,過去2年間にわたって実際に現場で実施した3時間VEをフォローし,実践面でのテクニックとその問題点について細部にわたって検討を加えた。その結果とくに前回の論文では触れていなかったVE対象の選定方法,3時間VE会議の諸問題,VE会議後施工を完了するまでの手順を中心に,われわれが実際に推進してきた方法を体系化し報告するものである。

生産企業のあらゆる,経営活動に共通な経営哲学であるコストダウン(C.D)については,従来にまして真剣に考え,究極コストを日常活動の中に定着させるべきものであるが,近年,労働に対する価値観がうすれてきている状況では,「何が」「どのようになればよい」といった順序を正しく捉えないと,単にC.Dするといった,漠然とした活動になり,価値を評価(この商品を作るには,これだけのコストが発生する)すべきことを忘れるのではなかろうか。

昨今の企業をとりまく環境条件は,まさしく,戦後史に一時期を画し,経済混乱は,過去何回かの不況時とは,格段の違いを持った様相を呈している。この事は,もはや,かっての10%を越える高度成長の時代は終り,経済体制の転換を示していると言っても過言ではあるまい。

高度成長時代に培われた感覚での判断は,非常に危険な常識となりつつある。

当社における「VA倍増作戦」の展開も,こうした過去の高度成長時代の常識より脱し,企業をとりまくもろもろの環境条件に,柔軟に,先行的に,対応せんとするもので,"全員参画のVA" "製品総点検のVA"をキャッチフレーズに,昭和49年3月より実施されておる。

ひるがえって,当社におけるVAの発展過程を見るに,十数年前,購入資材費の原価低減を目的に導入された"VA"も,現在では,企業体質の改善を最終目的として,製品損益の改善を主体とした活動に,完全にエスカレートしており,現在,全工場で,期ごとに,1,000以上ものVAプロジェクトが実施され,その成果も,月額30億円余にも達している。

本論文は,こうしたVAプロジェクトの一環としての成果のうち,全社的に使われている部分機能を,共通機能として抽出し,分析した結果を,「横断VA」のステップとして纏めたものである。

企業の発展は,情報なくして成長しないとまで云われている今日,いかに速く,目的達成のために必要な情報を集めるかにある。それでは,どのような情報を収集したらよいか,ここで取り上げる情報収集は,ただ,やみくもに収集するのでなく,VE活動の機能分析に基づいたアイデアの提案を,ただのアイデアだけですますことなく,使用可能にするための代替案(代替品)の情報収集活動である。

いわばVE活動は情報活動の結集であり,その成果は情報がいかに上手に利用されたか,その巧拙にかかっているといっても過言ではないのである。以下,これら情報収集の利用について述べることにする。

設計段階のVEが,企業にとって経済的かつ最も効果的であることに異論を唱える技術者や経営者はいないであろう。日本を取巻く国際環境の厳しさは,真の意味での,より高い価値の創造を待望しているといっても良いであろう。しかしながら1st Look VEの必要性が多方面から叫ばれている中で,これをはばむ制約条件を克服できず苦慮している企業も案外多いのではなかろうか,これらの原因の大きな要因のひとつに大きな収益が潜んでいることを充分に承知しながら,発売時期などの関連で,見切発車をする例がある。これらはある意味で有効情報を確実に,しかもタイムリーに供給し得なかったバリューエンジニアに,その責任の一端があるともいえる。私は価値の高い商品を世に送り出すため,高度の個有技術と相まって,これらのベースとなるVE関連情報について,収集の方法や供給源を示し,1st Look VEを短期間に,タイムリーに実施するための考察を試みようとするものである。

VEは当初セカンドルックのVEより始まり,現在ではファーストルックのVEが当然のこととして行なわれている。しかし,いくらファーストルックのVEを行っているとは言え,その進め方によっては効果において著しく大きな差を生ずるのは当然である。と言うのはファーストルックのVEには,設計段階のVEと企画段階のVEの2つがあるからである。

設計段階のVEとは,すでに企画決定された商品の機能,品質,外観等を維持しながらVE活動をする方法であるのに対し,企画段階のVEは,これから企画しようとする商品の機能,品質,外観などについてもVE活動の範囲内に入れ,それらの妥当性まで追求する方法である。

企画段階のVEは,設計段階のVEよりさらに一歩進んだ方法であり,それはそれなりに多くの問題点を持っているが,当社において過去数年間にわたって実施して来きた方法をまとめてみた。なお本論中の事例は,当社白黒テレビ事業部のものである。

設計者の中には,VEと言う言葉を聞いただけで,拒絶反応を示す人が多くないだろうか……。古くから言われていることであるが,設計者は,非常に繊細な注意と,高度な知識をもって独創的な設計をするが,一方,非常に封建的であり,かつ,自己陶酔型が多いと言われている。すなわち,自ら設計したものは,全て最善であると過信しているが,案外コスト意識には,無頓着ではないだろうか。このため,細かなところまでは注意を払うが,一方では,コスト的に大きな見落しをしてしまうケースが多いのである。これは,設計者が,自己本位の城を築き,固定観念に固まりきったためのものと考えるが,現在のような情報化時代に,新技術,新材料が氾濫している時,自らの設計に,上手に適用し,必要な情報を取捨選択して,その時代時代の技術を吸収消化していけるであろうか,と疑問を感じざるを得ない,そればかりか,企業のコスト力を低下させる一因となっていくものと考えられる。近年発行されている,VEに関する種々文献,レポート等に目を通すと,設計あるいは企画段階でのVEとか,1'ST-LOOKのVEと言う表現が,さかんに使用されているが,その意味することは,要するに,新商品を開発するに当っては,同業他社よりも,コスト力の高い商品を,早期に,しかもタイムリーに開発するには,VE技法をフルに適用しなければ,企業競争に打勝っていけないと言うことを意味していると確信する。

一般によくいわれているように,製品コストは設計仕様の段階で,ほぼ80%は決まってしまうといわれている。製品設計において,材料の仕様,製法,精度などが指定されれば,それ以後の調達,あるいは生産などの段階における,原価引下げも設計仕様に制約を受け,大きな期待ができないのが,一般的である。

そこで,設計者は製品のもっている機能を充分に分析し,その達成方法の最適化を狙う必要がある。その結果,設計の良否は,製品のコストに大きな影響を与えることになる。まして昨今のごとく,物価上昇の状況においては,特に必要機能(二次機能も含む)を最低のコストで達成すべく,製品設計をすることが必要であり,VEの目的に合致する所以である。

建設業への,VE手法の導入についての問題点,およびその具体的な手法については,筆者らによって既に発表したところであるが,今回は,その後の建設業におけるVEの実践を通じて得られた新らたな問題点,およびその解決のために考えられた手法,具体的なアプローチの例について発表する。

この論文はその第一報として,個別受註産業のなやみの一つであるVEの繰返し効果がないこと,そのために,VEは最大の努力を傾注して,最大の効果をねらうというやり方について,企業としての投資効果比率が必ずしも良くないという疑問がもたれていること,そしてこのことについての原因を考えながら,VE効率を簡単に予測出来る方法を考え,BestよりBetterをねらえという筆者らの考え方について述べることにする。

産業界でのVEの適応性は非常に高く,幅広く普及してきつつある。厳しい経済事情の中で建設業界においても,業者側の立場として利益を求めることは必然であり,より高い利益を得ようとする努力の中でVEがこれを満足する1つの手法としてクローズアップしたことは,大きな発見であった。

営利会社として企業利益をあげるためには,少人数のVErで,しかも短時間に問題解決をすることが要求され,VE効率を高めることが最大の関心事の1つである。このことは少ない投資でより高い効果を求めようとする努力であり,前編第1報で述べている。

近年,建設工事の現況は,工期が短縮される傾向にあり,受注即着工が要求されるため,VEによる検討を加える余裕時間はほとんどなく,また,企業の性質上,作業所は各地に分散し,しかもこれらの作業所に配属される職員は少人数の編成が多い。したがって作業所で発生する問題を解決しようとするとき,限られた人員で極く短時間に処理しなければならず,そのための良きリーダーに恵まれることは少ない。こうした環境でVEを進めて行かざるを得ないのが現状である。

このような状態に対処するため熟練したリーダーがいなくても「VEが短時間に効率よく展開できる方法」を研究したところ,3時間で一応の結論が出せるようなVE手順を開発して,実用化することができた。

むろん,3時間で最良の改善案が得られるとは考えられないが,企業のおかれた環境の中でVEを行うためには,BESTよりBETTERをねらうという考え方に立ってこの手法を開発した。以下に手順にしたがって説明し,続いて実践活動を報告します。

建設業へのVE手法の導入についての問題点およびその実施例については,既に発表したところであり,さらに建設業の現状に適したVEの考え方,およびVE手法も開発し実用化していることは既述のとおりである。

しかし,建設業の体質の特異性のため,実際にVEを現場に適用して企業に利益をもたらすためには,VEを現場向きに消化して,建設業に適したVEの考え方,VEの手法を考えていかなければならない。この論文では我々が実際の適用例の中から,建設業に適したVE手法を考えて開発してきたものを,実例をもとにして説明することにする。

VA/VEは広い分野で活用,実践され,多大の成果を達成して来たのであるが,さらに70年代の革新時代に適合するように高度化し,一段と効果的にして,飛躍すべき時機に来ている。そのためには先づマーケティングと統合することが最も効率的であると思うので,その必要性について私見を批歴するものである。

VEを狭義に理解した場合,それは利潤追求のための原価低減のための手法として認識される。しかしその真髄とするところは「価値の概念」と「機能の追求」およびその組合せである「全体の効率」を追求するものであろう。

こう考えるとトータルとして考えた場合,QCもIE,あるいはソフトのシステムについてもテクニックが違うのみで,その狙いとするところは何ら変るところがない。

しかし重要なことは「VEには決った手法がない」と言われるように,VEは概念規定が主であり,この概念規定をそれぞれの分野における専門技術,および管理技術としてのQC,あるいはIEといった具体的な手法を用いて実務家が,いかにテーマを具現化するかと言った点にあろう。

したがって,これから述べようとするところは,VE的な概念をもちいて,我々が指向しているコンピューターを中心とする購買管理業務をいうソフトウェアのシステム作りについてである。

VEの思想は,ユーザー・オリエンテットである。すなちユーザーは,必要とする機能を最も少いコスト(ライフサイクル・コスト)で得たいとする欲望を持つ。一方,機能を提供するメーカーは,ユーザーに対し,必要機能を確実に保証すると同時に,この機能と最低のコストで入手出来ることを約束し,一層の満足度を与えなければならない。

そのためにメーカーは,ユーザーの認める機能とコストとの関係を,製品の開発設計段階で徹底的に追求(First lookのVE)し,ムダな機能とコストの発生を未然に防止させたり,生産準備,製造段階でこれを改善(Second lookのVE)に鋭意努力を積むのである。

VEの目的は,最低のライフサイクルコストで必要な機能を確実に達成することである。VEは製品の価値改善手法として,これまで主に機械工業において,製品の設計製造段階で適用されてきたが,最近は装置工業においても設備の使用段階への適用がすすんでいる。

VEの基本は,徹底した機能追求の思想であり,ジョブプランにもとづいて具体的な価値改善活動を展開する。このなかで,機能定義と機能評価のステップは,VE活動の範囲と方向を決定し,その成果と効率に大きな影響を与える重要な段階である。

VEを特徴づける機能追求のテクニックは,これまで製品の設計製造段階での適用面において開発されてきた。しかし,VEを設備の使用段階に適用する場合に,これらのテクニックを,そのままあてはめることは適切でない。組立製品を対象とする設計製造段階VEと設備の使用段階VEとには,いくつかの相違点があるからである。この論文では,設備使用段階のVEにおける機能追求の方法を検討する。

機能を科学的に,あるいは,合理的に評価することは容易なことではない。価値分析の場合,この機能評価は価値評価ということであり,価値分析の最初にして最後のテーマであろう。

機能評価が意の如く行なえないのは,機能の多様性もさることながら,評価者の立場上の限界,あるいは制約があることを見逃してはならない。以下の論述は消費財について展開するが,一般的には商品の供給者(メーカーと考えよう)の立場から,機能の研究や評価がなされ,ここに需要者(ユーザーと考える)の欲求事項は満たされているとはいえない。

もともとメーカーとユーザーとは,立場を異にしており,どんな価値概念をもってしても,両者に共通するものはない。そこで,従来の価値分析は,ユーザーの立場を理解したつもりになって,メーカー的センスのもとに行なわれてきたが,これに対する反省も必要となってきている。

本稿はユーザーの立場を重視した(user oriented)機能評価のアプローチと,価値改善の方法展開を試みたものであるが,併せてesteem valueを伴った消費財の評価法や,従来ではあまり実用化されていなかった機能系統図と構造系統図との有機的関連性についても,ある新しい試みをもってアプローチしようとしたものである。

工程改善への管理技術的アプローチとしては,QCやIEがふるくから適用され,大きな成果をあげていることは衆知のことである。しかしながら,工程改善へのVE手法によるアプローチに関しては,以前より叫ばれていながら,今日,まだこれといった成果事例が少ない。

この背景としては,VE手法そのものの誕生が,製品の改善を主体としていることと,また,その後の発展の歴史をみても無理からぬことと考えられる。

ところが,工程というものを,インプットされたものが何らかのプロセッサー(処理機能=工程)によって,新しい価値が付加されてアウトプットされると考えるとき,工程は価値分析の対象となり得る。

すなわち,(1)工程によって一定の機能を付加するために,工程の処理(作業,加工等)に要するコストを小さくすることによって,工程の価値を向上して工程改善をはかる方向と,(2)一定の処理(作業,加工等)コストでもって,付加する機能を大きくすることによって工程の価値を向上して,工程改善をはかる方向とが考えられる。

したがって,工程改善に適合したVE手法を用いれば,従来のQCやIEと異なった観点,というよりはもっと総合的な観点から工程改善が可能となり,大きな成果をあげることが可能であると信じる。

そのためには,工程改善にVEアプローチが可能となるように,工程の価値の定義を明確にし,機能分析の方法論を確立する必要がある。

以上の考えから,ここに工程改善のためのVEアプローチのための一つの方法論と,これを組立工程に具体的に適用し,成果をあげた事例を提示して,諸賢の御批評を仰ぐ次第である。

シャープ株式会社テレビ事業本部に,本格的にVEが導入されたのは昭和39年で,当時はVE自体も日が浅く購買部門と云う,社内の一部門の業務を補助するー技法として導入された。それ以前にも一部の先進的な技術者の間で取上げられていたが,組織としての採用は,この購買によるsecond lookのVEからである。この時はVE活動の範囲の必然性より,コストテーブルの制作による購買基準価格の管理と,VE提案によるものが中心となり,当初よりコストテーブルにはかなりの力をさいていた。

しかし,購買部門のみではFirst lookのVEへの脱皮は果たし切れず,ましてやVE活動を経営の利益計画に直結させる事は困難であった。そこで,VE担当部門の組織が順次移され,現在は経理部門の中にある原価管理グループにおいて行なわれるようになったのである。したがって,当初より続けられていたコストテーブルも,購買価格の基準を設定するのみではなく,VE推進上のコストデータの情報源として,そこに求められる機能も幅広いものとなって来た。これにこたえるべく,昭和44年より新しい構想のもとに,コストテーブルの全面改訂,新制作が進められ,現在では,VE推進上かかす事のできない重要な道具となっている。この様なVE推進上の基軸ともなったコストテーブルについて述べてみたい。

VEが日本に導入された当初は,資材費のコスト低減を狙った購買部門の技法として,各企業に広まったが,その後,企業間競争はますます激化し,より大幅なコスト低減を図るため,製品のライフサイクルの上流での適用,つまり,設計段階のVEを進めていく必要に迫まられてきた。そのため,各社ともVE担当部門を,購買部門より技術部門へと移行して,積極的にVEを展開してきた。しかし,われわれVErは,その必要性,効果を充分に認めながらも,実際の場においての効果的な展開方法とか,成果測定の困難性等の諸々の問題をかかえている。

そこで,この論文においては,設計段階のVEを効果的に進め,また製品の価値を確実に保証できるようにするため,機能テーブルを中心とした設計段階のVE手法と,その進め方について,過去1年間研究してきたことを紹介する。この進め方を開発するに当って,最も留意した事は,実際の場において,だれでもが簡単に,迅速に,確実に展開できるようにすることであった。なお,この論文中の実例は,当社の録音機事業部で取りあげた例である。(録音機事業部はテープレコーダ一等の録音再生機器を製造している部門である。)

企業経営の健全な運営は,経営計画の綿密な立案と,その実行にあるといえる。企業としては,当然,これ等の原則に従って,健全経営のための運営を必掛けているが,時として,計画に反した予測せざる誤算により,収益確保が困難となり,赤字経営,果ては倒産の事態が発生している。この原因には,計画時点での,万全の予測に基く計画の立案も,予測せざる環境の激変によるものもあるが,実際には,人為的に回避し得る原因もかなり多い。その一つに,技術面での不良,事故がある。

近時,信頼性の思想の普及により,信頼度管理技術が発達し,不良,事故の未然の防止が徹底して来ているが,ややもすると,事故発生を恐れるのあまり,過剰に防衛して,コスト面での破たんを来たすことがある。従って,技術面,コスト面の両面の同時管理が,製品体質の改善には不可欠であり,また,事故の発生を防止することは,工程上のトラブル防止,従って,日程管理の円滑な運営を,附随的に可能ならしめることにもなる。

一方,VA活動は,「機能を損うことなく,最低のコストで達成する」活動であり,コスト,品質の両面を管理して,真の価値改善を計ることである。従って,VAのステップには,改善案のテストや,必要機能(品質,特性も含むと考える。)を保証するステップがある。しかしながら,変更案に対する保証のための,消極的な品質保証体制を,一歩進めて,積極的に,不良,事故の防止を主体とした体制にすることが,「VA,すなわち事故」といった,誤まったイメージの改善に役立たせることができるし,真のトータルシステムとしての価値改善に密着出来るものと考える。

また,VAの対象範囲は,かつての材料費,加工費を対象とした時代から,原価構成比率の変化により,間接費の削減による,経営システムの改善等に指向して来ている。従って,製品原価の周辺コストに対する分析,改善のメスを加えた場合,時として,不良コストが爼上に上ることもある。このような場合,不良コストの削減,歩留りの向上によるトータルコストの削減が,製品価値の改善に結びつくことになり,従って,不良コストそのものを対象としたVA活動も必要であり,VAの基本ステップを,不良,事故防止の場合に適用し得る形に変形したステップの設定は,極めて有意義なことと考え,ここに,適用事例をあげて,ステップの体形を示して,ご批判を仰ぐ次第である。

産業界の発展とともに,近年,特に協力工場の戦力と能力が重要なポイントとして,認識されてきました。

これは親企業としての単一企業でなく,協力工場を含めた企業集団としての総合力が企業の存続発展の「決め手」であるという事が,激烈な企業間競争の体験の中から,切実な問題として感じてきたからです。

このため協力工場の体質改善強化,生産性向上に対する努力が行なわれており,その有効な武器として,QC,IE,VEなどの管理技術が駆使されています。

しかしながら,これらの管理技術の中で,VE活動については,QC,IEの普及定着度との比較において,残念ながら劣っていると認めざるを得ません。

これまでの日本のVE活動の歴史は,親企業が中心であり,VEは親企業がやるもの,あるいは,一部のスペシャリストがやるもの,としての風潮が大勢を占めていたと思います。

このような認識と現状のままでは,親企業と協力工場にとって,今後の企業存続をも左右する,重大な問題です。この論文では,親企業および協力工場にとって,"協力工場のVE活動が何故必要であるか" "VE普及定着化を阻害しているものは何か" "VE普及定着化のための進め方と留意点"について,その考えを述べてみたいと思います。

かって60年代においては,わが国企業は経済の高度成長の中にあって,ややもすれば売上高の増大,シェアーの拡大などにより,利益の確保と賃上げの吸収を図ってきたが,今後は経済成長が鈍化する中で,賃上げの吸収と利益の確保を実現してゆかなければならなくなった。

さらに,わが国は原材料,燃料等の量的な問題から諸資源・諸エネルギーを含めた,知識集約産業型への構造転換に迫られている。

したがって,従来の高度成長に慣れ切ってしまった経営感覚を断って,経営体制を根本的に再検討していくことが必要であり,今後,企業にとってはソフト・テクノロジーの開発と,導入が非常に重要になることから,経営の質的高度化・効率化は,70年代における最も重要な課題といえる。

そこで,わが国の企業経営における質的高度化・効率化を図るとき,どのような問題の解決が重要なのかを検討してみた。

本稿は競合市場における,新規商品の企画の分野を対象に,VE技法による商品機能編成へのアプローチ方法を論じたものである。その基本的姿勢はVEの基本定義を次の様に置き換えてアプローチしている。

「事象の本質的目的を追求するために,その必然性を比較分類,分析し,それらを定量的に把握し,そのデータをもとに技術的に,さらにマトリックス的(組織,原価費目)に改善を図り,新しい個性ある姿を創出していく活動。」

VEが企業内に導入され,計画的に実施された結果,大幅な原価低減を効率的に実現し,収益性の向上に貢献しているが,責任者が不明確な管埋されていないVE活動では,効果に限度があると思われる。故に,マネジメントの一環として,VEによる目標原価の達成を,システマチックに,しかも全社的に実施し,目標を管理しなければならないので,コスト・マネジメントを効果的に実施するためプロダクト・マネジャーは,VE活動の計画・実施・効果の確認を総括的に管理することになった。

従来,企業の努力目標が,高生産性による生産コストの低減に向けられていたが,近来の市場の需給バランスから,商品の滞貨を招くようになった現在では,新たな企業の目標として,新しい機能を開発し,市場の再開発を計ることが,急務であります。

また一方,近来の労務費,材料費の高騰,商品の多様化からくる生産コストの吸収を,今までのように,生産性向上,合埋化による生産費の低減等の量的メリットに求めることは,次第に困難となってきました。

当社においても,VE活動の中で,今までのように既成の機能におけるVEにおいて,毎年くりかえされるこれら生産費の上昇に,すでに今までの機能のやきなおし(MODEL CHANGE)では,吸収出来ないことを痛感しております。

ここに,VEの目標を,現状おかれている企業の生み出し得る付加価値の低下に対し,これをいかにして維持するか,また一方,新たな機能を開発し,付加価値上昇を如何にして計るかの改善活動は,VErの一層重大な責務として,とりくまなければならない問題であります。

このような新しい環境を基に,VEを展開するためには,今までのような一定のパターン(企画機能or設計機能)を基に,その中で,いかにコストを引き下げるか,いいかえれば,与えられた機能に対し,いかにコストの低い手段を選択し,価値を向上させるかという"コスト・ダウン"の目的から,今後は,これら価値の追求とともに,新たな機能を開発する活動が必要であります。

そのためには,VEのあり方も,今までのVEの領域を,より上位に展開し,企業の経営段階にさかのぼり,製品の企画段階において,VEを適用する,いわゆる開発VEが必要になります。

大福機工株式会社においては,VAとかQCといったグループ活動がなされています。これは,われわれグループメンバー7名が,"品質係の価値向上"と題して,昭和45年10月から昭和46年3月迄の期間で,事務の仕事を,VA手法によって改善するべく活動して来た事例です。

内容は,決して感心するようなものではないのですけれども,こういった踏台の上に,VAの今後の発展を期待して応募したものです。

VEは,価値に関する問題解決の手法であり,その特徴は機能本位のアプローチである。それは,いかなる問題にたいしても,機能定義・機能評価・代替案作成の基本ステップを,組織的に展開する活動である。

VEを製品の価値改善に適用する場合には,製品に要求される機能を,正確に定義することが必要である。2ND-LOOK VEの機能定義には,製品構成部品の機能定義と機能整理の2つの段階がある。この段階は,物本位の考え方から機能本位の考え方への思考変革の過程であり,真に要求される機能を明らかにし,思考範囲を拡大させて,価値改善を達成することが目的である。

機能定義は,機能的研究の基礎であり,VE活動の成果と効率に大きな影響を与える重要なステップである。この論文では,機能定義用語の実態調査にもとづいて,機能定義の現状について検討する。

GE社に端を発する購買を中心としたVEは,製品や部品(Product or Parts :これを第1のPとする…P1)に適用され,著るしい効果をあげつつ今日に至っている。わが国においても同様,そのめざましい発展は,昭和46年7月現在で,約3,500人のバリュー・エンジニアを育成するに至った。しかし,VEのもつ独特な機能展開の方法が,単に製品や部品,つまり"物"にのみ限定されるとは考えられない。当然,適用の範囲を拡大すべく,その応用研究は,電子回路,建築,あるいは装置へと発展した。しかし,それは単に対象が復雑になっただけで,やはり"物"の域を脱しないものである。"物"をとりまく工場の仕組みは"物の流れ","情報の流れ"を必要とする。従ってP1を中心に120度方向を変えた応用は,工程(Process:これを第2のPとする……P2)への適用である。さらに,120度方向を変えた応用は,手続き(Procedure:これを第3のPとする……P3)への適用である。

年々激しさを増す商戦の中において,わが社のステレオ開発部門も"より良いものをより安く"ユーザーに提供することをモットーに,日々開発を行なっておる訳であるが,その目標を達成するのに有効な手段のーつとして,VEが導入されてから久しいものがある。当社においても,初めは外注部門のコストダウン手法として,VEを導入したのであるが,外注部門の性質上,既存部品のコストダウンということであり,製造工程の改良とか,材料取りの合理化,あるいは外注メーカーの経営合理化指導といったものが中心であり,設計の根本にまでさかのぼる 1st LookのVEは,まれであった。この外注部門での2nd Lookも,それなりに効果は認められるところであるのはもちろんであるが,やはり既存部品の部分改良という範囲に留まらざるを得ないため,一つの限界があった。しかし,ここ数年のメーカ一間のシェア争いは,激化の一途をたどる一方であり,より効果の大きい,より根本的なコスト低減の対策を,メーカーとして考えねばならぬということで,わが社においては,VEを設計段階に適用すべく,ここ数年全社的努力を重ねている次第である。

VE実施計画における機能評価の段階は,VE活動の思考展開を特徴ずける重要な過程であると考がえられる。機能を評価することの目的は,つぎの3項に要約される。

①改善目標の設定,②低価値機能分野の確認,③改善活動への動機付け。

しかし,機能評価に対する一般的理解は,①にのみ重点がおかれ,②,③に対する理解は極めて薄い。もともと,機能評価は革新を予測することであるから,絶対的達成目標を設定することは,困難なことである。厳密にいえば,それは永久にみつからないかもしれない。なぜならば,絶対目標の設定が,機能評価によってなされるとするならば,そこには,すでに機能達成の代替となる具体的設計が裏付けされることとなり,未知への挑戦としての目標の意味が失なわれてしまうからである。したがって,機能評価による目標設定は,改善能力を,どれだけの確度で予測し得るかに期待がかけられているのである。こうした技術予測の研究は,未来学研究の一課題として盛んに思索されている。たとえば,OECD科学技術顧問,エーリッヒ・ヤンツの分類による直感的手法,フィードバック手法,探索的手法,規範的手法などがあり,ランド研究所によるデルフィ一法は,かなり有力な方法として利用されている。しかしいづれの方法も,目下のところ確度の高い,きめ手になるようなものは見当らず,いわば,あいまいな形で予測せざるを得ないのが実状である。VEにおいても,各種の方法が提示されてはいるが,同様である。それがためにVEにおいては,機能を評価すること自体,意味のないものとしてしまう傾向がある。極端にいえば,まったく省略されてしまっているともいえる。機能評価を目標の設定ということにのみ主眼をおくとするならば,それも,やむを得ぬことかもしれない。しかし,評価活動の本意は,その結果である評価値(改善達成目標の設定)そのものを得ることもさることながら,それ以外に,その過程にこそ,システム設計上の基本的姿勢が認められ,改善行動の動機を得ていくところにあるといえる。したがって,機能の評価を改善目標の設定のみ,その意義を認めるといった考がえかたは,価値保証活動推進上の大きな支障とならざるを得ない。この問題を解決するためには,機能評価活動の意図するところの正当な理解と,より現実的な評価テクニックの開発が期得される。そこで,本論では,問題解決への一手法として,機能レベルの把握による評価方式を,仕様変更の方向性の予測を交えて,これまで各企業で試行してきた結果を中心として,まとめるものである。

市場における国際的な企業間競争の激化,技術革新の飛躍的な進展,労働力不足など,今日,企業における最大の課題は,情勢に対応して,リーダシップがとれるように,企業体質を改革強化しておくことが重要である。

すなわち,企業の永続的発展のためには,新製品の開発を中心に生産性の向上,コストダウンおよび安定し,かつ,より適切な製品品質による利益の確保が,絶対的条件であり,そのために激しい企業間競争の背景のもとにあって,日々革新の連続が成されなければならない。

とくに開発に結びつく機能アップとコストダウンの問題については,企業規模が拡大すればする程,単なる一部門の活動のみならず,企業内全機能,全部門が機能に対する革新的な考え方をもった一元性のもとに,トータルコストとしての低減をねらいに,より機能向上された製品を,ユーザに供給してゆくことが重要である。

このような考え方にたって,昭和41年度より,従来資材・購買部門中心に取組まれてきたVE活動を,QC,IEとともに事業本部の管理技術の3本柱として,新たな設計中心のVEの導入普及をはかり,今日までVE教育を中心に,そのフォローアップを実践活動に結びつける方式をもって展開し,人材の育成と成果への貢献をはかってきた。

本報告は,こうした活動経過を基礎に,更に1歩,VE活動の着実な普及をはかるために,VE活動を経営に有効な武器としてIE,QCとの融合の下に,広く総合的に経営活動における価値向上のためのプログラムとして,そのトータルシステムを確立,適用,実効をあげることの必要性から,当事業本部管理技術計画重点プロゼクトとして,昨年より,当本部VE専門研究会(能大VEワークショップを終了し社内講師VEプロゼクトメンバーとして経験の深い者7名で構成)を軸に,事業部技術部門との連携の下に,経営活動の一元化を指向したVE手順の研究,適用,試行を行ない,その効果について確認がはかれたので,ここにまとめ,ご指導をお願いする次第である。

思考活動は,その過程で省略があっても,製造活動と異なり,実態が目にみえないので,不良を発見することがむづかしい。そこで,思考の省略を防ぐために,詳細な思考の手順を設定することが必要になる。

VEが大きな成果を納めているのは,機能中心の思考もさることながら,思考の過程に一応の手順が設定されていることも,重要な要因であると考えられる。

ところが,現状ではVE活動の手順は,まだ充分であるとはいえない。特に後半の代替案作成過程は,前半の機能定義,機能評価の過程に比べて,手順とテクニックが不明確であり,優れた代替案を漏らしたり,代替案の洗練化の効率が悪かったりする危険性がある。

したがって,本論文では,優れた代替案を効率的に作成するために,詳細な手順とテクニックを設定して,代替案作成過程を充分な構造化することを目的とする。

必要機能を,最低コストでえようとするVE活動の中に,ある種の沈滞ムードが漂い始めている。VEの導入当初の活動はめざましく,その成果も大きかった。その結果,VE思想が広く普及したことは,産業界にとって,誠に喜こばしいことである。しかし,より高度なものへの発展の突破口が手近かにないため,堂々廻り的活動を余儀なくされているのが,実状であろう。また,VEは理論ではなく,活動であるといわれる通り,その活動範囲は膨大であり,情報収集などは,それだけで企業が成り立つ時代でもある。これに,一つのVEグループが対処するとなると,その活動に,自から限度を生ずる。特に,委員会制度をとっている場合は,極めて断片的活動に終始せざるを得なくなるであろう。したがって,VE対象の選定段階において,部品的要素を取り上げがちになる。

部品の機能と徹底的に分析し,その部品としてのVE結果が,機械の一部として組込まれ,予期しない結果になることもある。これは,組立てた時,初めて生ずる二次機械や条件に,見落しがあったからであり,情報収集の不足,機能分析の不徹底,テスト証明の不備不足などが指摘される。VEの理論上は,このようなことはありえないという反省にもとずき,次の活動を始める。

機械としての基本機能に附随する多くの2次機能や,条件,要素などの複雑な結びつきと合理的に分析するには,どうしたら良いかを研究することが必要であろう。

この論文は,基本機能を抽出するのではなく,できるだけ多くの2次機能や要素と付随させ,それらに,どのようにコスト配分をすれば,商品として良い製品になるかを研究したものである。

多くの企業が. VEと取り組んで,ほぼ,10年になるが,その間のVEの発展には,目覚ましいものがある。日本にVEが導入された当初は,製品の製造段階での適用を狙った購買関係の技法(PE)として展開された。しかし,今や,製品化前の設計段階,あるいは開発段階での適用がなされ,資源の有効活用のため,システムの価値追求を狙う考え方,技法として重要な地位を築きつつある。

このように,VEの体系化は,もち論のこと,その各技法としての機能的研究,また,創造性開発の技法にも,著るしい発展が見られる。

しかしながら,各技法が専門化して,高度化すればする程,相互関係の理解が乏しくなり,VEの正しい理解と効果的な適用が難しくなってくる。

その例として,企業でVEを進めて行く途上,しばしば,次のような一見,単純で,その実,非常に重要な質問に出くわすことがある。

「われわれは,何故,機能的追求をする必要があるのか?」

「創造技法は,本当に役立つのか?」

「私は,長年,設計業務に携わって来たが,何もそんな事をしなくても,設計は出来た。」

以上のような種類の質問である。しかも,この種の質問をする彼等は,一応,機能的追求の技法,また,創造性開発の技法も知っているのである。

結局,彼等はVEの正しい理解と,各技法間の関係が理解されていないため,VE適用の効果的方法を知らないのである。

以上の事柄をまとめてみると,次の二点がVEの現在の問題点としてあげられる。

1. システムの価値を追求するためのVEの考え方が理解されていない。

2. 創造性との関係においての機能的追求の重要性と有効性が理解されていない。

私は,この論文において,上記の2点に焦点を絞り考察を加え,これに関する実例を紹介し,実証づけるものである。この論文が,VEに携わっている多くの人々とVE発展のために一助となれば幸いである。

検討者は2名,検討期間は30時間である。対象機種(カラーテレビ)は,コスト低減の必要があった。そのため,この機種から22項目のVE対象品が選ばれ,各項目ひとつひとつVEする計画がたてられた。シャーシ引出し機構は,そのひとつの項目である。

シャーシ引出し機構各構成部品の情報を収集し,機能定義を行ない,テストまで行なったが,主にその過程の進め方,考え方を中心に記述した。

ステレオ製品の原価の中でキャビネット・コストの占める割合は最大で,シャーシ(アンプ部分〉をしのぐ高価なものである。したがって,企画進行段階でキャビネット・コストの決定は,重要な問題であることは,いうまでもないことである。

では,このキャビネット・コストが,どのようにして煮つめられ,決定されていくのであろうか,また,その過程でVE手法は,どのように使用されるべきなのだろうか。

近年,社会経済の変動は,一段とその激しさを加え,国内外を問わず,荒波に直面している。建設産業においても,労働力の払底と労賃の高騰,生産性の遅れに加えて,金融事情の悪化などにより,企業収益の減退が余儀なくされている現状である。一見,はなばなしく感じられる建設産業も,他の装置産業(自動車,電気等見込み生産を行なっている産業)に比べると,企業の近代化は,非常な遅れを見せ,技術の改革は遅々として進んでいなかった。

体質改警にあたり,科学的な管理技法の導入も,いくつか試みてはいるものの,業態の特殊性にさえぎられ,他産業に見られる程,定着しているものは少ない。企業の経営効率を高める1つの手段としてVEが登場し,建設業に,その適用面を見出したのも,数年前にすぎない。

建設企業が過去の因習を打ち破り,企業改革に乗り出したのは,まだ新らしい事実であり,その息吹きは大きくなりつつある。生産面に技術革新を展開することと,経営面において体質改善を行なうことは,必須の急務であり,業界あげて必死の努力を続けている。

ここに産業能率短期大学のご指導を受け,建設業の問題として導入以来,諸方面にわたってコストダウンの効果が大きいことを知り,米国キングスコット社のA・J・デリソーラ氏の実践活動を結び合わせ,われわれなりに,適応性を求めて手法を展開している。

今回は,これらの実績をもとに,建設業での適用と今後のあり方について述べたいと思う。

VEは,日本に紹介されて以来,多くの研究と絶え間ない実践活動の結果,大きく成長し,発展を続けてきました。ところが,VE自体の理論及び実践面での進展に相反し,創始者マイルズ氏の主張された「業者の知識を有効に活用し,その努力に報いる」という,いわゆる報奨制度に関しては,充分な研究がなされてきたとは,いえないのではないだろうかと考えるのであります。

当社では,VA(量産段階の価値分析)からVE(設計・試作段階の価値分析)への重点移行方針に基づき,VEの組織的な推進を図って参りましたが,その進展拡大に伴ない,旧来のVA重点であった時代の報奨制度では,VEの進展を阻害するとの判断から,昭和45年秋に,改訂を実施いたしました。

こうした状況からVE報奨制度は,会社方針などから独立して考えるべきものではないと思いますが,この小論では,仕入先からのVE提案に対する報奨制度に的を絞って,当社の適用事例から,VE報奨制度の今後のあり方について考察してみたいと思います。

現下の厳しい経済体制下において,外注企業は親企業の指導育成に過渡に依存しているだけでは,変化の激しい経済・社会状勢にフォローして行けない。外注企業においても,経営管理に関する手法,例えば,VE,IE,QC,その他ORなど,マスターすることに努力し,利益を自ら計らねばならず,また他面,発注企業としても経営上不充分な点があれば,外注企業を指導して行く必要があると考える。

発注企業は,現在取引中の外注企業群に対し,その近代化,その他購入資材費を極力低減させる必要性から,VE手法によるコスト・ダウンを重視していることは明白なことであり,外注企業の窓口としての購買部門に,独創力,コスト・ガイド,その他,経営管理手法を身につけたVE専任者を置いて,外注企業の指導育成に当っているのが,一般的に見られる現象である。

以下に,製造工程改善のためのVEを中心として,創造性開発訓練としてKJ法を折込み,前記VE専任者が行なったVE教育指導の一端を述べる。VE推進活動を行なううえでの一助となれば幸いである。

シャープ株式会社テレビ事業本部に,本格的にVEが導入されたのは,昭和39年で,購買部門に調査室を設け,購入部品を対象としたセカンド・ルックのVEが開始された。

これは,コストテーブルによる購入価格基準の管理と,その過程におけるVE提案を活動の中心としたもので,購買管理のレベルアップに大いに貢献した。

しかしながら,必然的に,購買部門のためのコストテーブルという傾向があり,また,組織的な制約からファースト・ルックのVEに脱皮しきれず,企業のコストダウンの要請に適合できなかった。

そこで,昭和42年に,新製品の原価見積りを担当していた原価計算部門と統合されて,原価管理部門として独立し,設計段階のVEへ,さらに企画段階へのVEへと発展してきた。

しかし,企業を取巻く環境は誠に厳しく,帰納的な部品単位のVEや,機種単位のVEだけでは,十分とはいえなくなってきた。

そこで現在は,原価管理部門と経理部門を密着させ,演繹的なVEによる管理会計システムを確立し,利益計画に直結したVE活動を展開している。

これによって,目まぐるしく変動する市場動向に即応し,企業の要請する利潤を確保するためのコスト・マネジメントが可能となったので,その概要について述べてみたい。

生産には大別して,生産の基本ラインである直接作業と,それに付随する間接作業(すなわち管理業務〉とがある。本来,直接作業と間接作業の比は,直接作業の占める割合が多い程望ましい。しかし,多機種少量生産体制下では,技術部門では,純設計活動以外の多くの雑業務,機種毎のぼう大な設計資料の管理等の作業がある。また,そのために,同一機能品の二重設計や,同じ失敗のくり返しを生じやすい。発注部門では,伝票量の増加に伴なう発注工数の増大,工程管理部門では,管理オーダーの増加に伴なう管理漏れ等を生じやすい。

生産性の観点から見れば,密度の低いこれらの業務が,生産原価に占める間接作業費の割合を多くしている。

われわれは,生産ラインでの業務及び,それに付随する各種管理業務の機能分析を行ない,これらを最も少い労力で,最も能率的に行なうために,問題点を把握し,それぞれに対して,きめの細かい改善を施し,業務の合理化を実施しつつある。そのいくつかを紹介して,識者のご批判を仰ぎたい。

なお,このVE的合理化計画は,現在,まだ進展の途上にあり,完成したものではないので,併せて今後の方向についても言及させていただきたい。

IEは衆知のごとく,テーラーの科学的管理法にはじまる伝統的管理技法であり,わが国に導入されてから久しいが,近年,賃金の高騰,人手不足による省力化の必要性から,ふたたび見直されてきた。

また,VEを進めていく過程で,すでにIEの基盤のあるところは別として,一般に標準時間の未確立によるコストデータの不備が改めて認識され,遅ればせながら,IEの導入に踏み切った企業も少なくない。

以前,わが国が,まだ人手不足の経済でなかった時代には,IEのニーズはあまりなく,むしろQC,VEを重点的に採り入れた企業のほうが多かったようである。

全社的に,ただ1つの管理技法に努力を集中している時は,問題にならなかったが,途中から別の管理技法を併行して導入するとなると,企業によっては,それらの間の関係をどのように位置づけ,理解,統合したら良いか混乱することも十分にあり得る。とくに親企業から種々の管理技法の導入を勧告されても,中小規模の協力企業では人材も少なく,なおさら上記のような事態がみられるのではあるまいか。

この問題は,IEをどのように定義するかによっても,取上け方が違ってくる。VEをはじめ,多くの管理技法は,広義のIEにふくまれてしまうが,それでは主題の解決にはならないので,ここではIEを,狭義のIEすなわち,作業研究に限定し,VEとの関係を取扱うことにする。

どのような管理技法にしても,時代とともに,適用の場所,対象,時期,要求に応じ得る範囲を拡大し,それぞれ精緻な手法も漸次,開発されて内容が豊富になり,往々にして,あたかも1つの管理技法のみで,あらゆる経営管理上の問題が解決できるかのように信じられることがある。

しかし,管理技法は,あくまで手段であり,それ自身は目的たり得ず,また,1つの管理技法のみでは限界があることも否定できない。すなわち,それぞれの管理技法が相補関係にあることを理解し,各技法の利点を良く認識し,企業目的のためにうまく統合活用してこそ,はじめて意義がある。

この論文では,プロジェクトワークを中心にして,IEとVEの特徴を考察し,とくにIEの場合,問題定式化のフェーズが重要であることを指摘した。そして問題解決のジョブプランを基本とし,これに手法を組み合わせたWSS方式による教育訓練プログラムを開発,実施したところ効果が認められたので,統合のあり方を方向づける一例として,その内容を提示する

VAが,わが国に導入されて10年を経過した。この間,VA思想の企業への浸透は,めざましいものがあり,VAの対象も部分から全体,そして総合化へと,遂次,拡大の一途をたどってきた。またVE技法はセカンドルックを中心としたVAから,ファーストルックをめざすVEにと,発展拡大してきたことは,周知のとおりである。

最近の価値概念の変化は,大きく拡大しつつある。使用価値の向上に限定された初期のVAに比して,最近の傾向は,エスティーム・バリューをも対象とした,感覚機能に重点が置かれた,広い価値概念に対象が拡大化してきたといえる。今やVEは,単なるコストダウンの有力な手段にとどまらず,広く顧客の要求を満たすマーケッティングの中にあって,商品の価値を高める,そして具現化を計る強力な一助を担うVEに,成長したとみるべきであろう。

一方,企業内活動においても,ソフトウェア面で,価値向上をめざす努力がなされている。"物"を中心として発展し,半ば成功をおさめてきたVEの適用局面も,その基本姿勢ともいえる価値概念を,ソフトウェアの効率向上面に拡大しつつある点も,指適できよう。

このように10年を経過したVE,そして,これまで未開発であった局面に,VErの活躍の場が展開しようとしている'70代に,VErとして,企業から何を期待され,また,どのように応えるべきかについて考察を試みたい。

最近のVEの一般的傾向として,機能を向上させることもVEであるとされている。また,今後はその傾向がより深められる,といわれており,現に,その方向にVEを推進してゆこうとしている企業が多くなりつつある。

しかし,従来からの機能を一定でコストだけを下げる,が本当は本流ではないだろうか?また,機能向上ということは,一体どの様なことなのだろうか,従来の機能一定と,どのように違うのだろうか,設計段階のVEでも機能向上があるのだろうか? 以下考察してみよう。

VEとは,その製品とかサービスの機能(目的とする働き)を最低の総コストで達成するために機能を分析し,価値を最大にするための組織的なチーム活動である。

VE活動を活発化するためには,企業トップの明確な方針により営業部門の受注活動より販売後の保守サービスに至るまでの総コストを最小を最小にするVE活動の管理が重要となる。

従来は,とかく日常業務はそのまま担当させ,従業員個人またはVEチームの自発的な努力に期待し,VE活動推進の環境整備をおこたり,VE予算の裏付けもせず,いたずらにVE低減目標のみ過大な要求を行なうなど,VEに対する投資を過小にする企業のトップが少くなかった。VEの効果は,その投資額に比例して増大されることを自覚し,国際的なコスト競争に打ち勝つVE推進の総合化を,早急に実現させるべきである。

1. 最初に三つの言葉を提示しよう。多くのVErは,VEを論ずる時,これは的はずれであると合点し,とまどうかも知れぬが。

(1) 正しいはかりと天びんとは主のものである,袋にあるふんどうもすべて彼の造られたものである。

(2) 相はかることがなければ,計画は破れる,はかる者が多ければ,それは必ず成る。

(3) 全地は同じ発音,同じ言葉であった。時に人々は,東に移り,シナルの地に平野を得て,そこに住んだ。彼らは互いに言った。「さあ,れんがを造って,よく焼こう。」こうして彼らは,石の代りに,レンガを得,しっくいの代りに,アスファルトを得た。彼らは,また言った,「さあ,町と塔とを建てて,その頂きを天に届かせよう。そして,われわれは名を上げて,全地のおもてに散るのを免がれよう。」時に主は下って,人の子たちの建てる町と塔とを見て,言われた,「民は一つで,みな同じ言葉である。彼らはすでに,この事をしはじめた。彼らがしようとすることは,もはや何事も,とどめ得ないであろう。さあ,われわれは下って行って,そこで彼らの言葉を乱し,互いに言葉が通じないようにしよう。「こうして主が彼らを,そこから全地のおもてに散らされたので,彼らは町を建てるのをやめた。これによって,その町の名はバベルと呼ばれた。

以上聖書より

2. VEをツールとしてVErが自からの生命を企業に奉げんとしている時,"VEを経営の中に組み込み体系化しなさい"と言うことや,"VEをコストダウンプログラム,また,新商品開発プログラムで充分活用しなさい"と言うようなことは,よく耳にすることである。VEの具体的な展開方法については,確かに,充分に論議し,研究しなければならないであろうが,われわれは,今,VEの根本,VEの本質までさかのぼって,討議する必要もあるのではなかろうか。

3. V=F/C(V:価値の尺度,F:要求機能,C:総コスト)

これは,われわれVErが見慣れている式である。ではVErに尋ねよう,「価値が高められた,損われたというが"価値をはかる正しいはかりと天びんは何んですか。何を基準にして価値を判断していますか。機能とコストのバランスによる?それならば,そのバランスは何を基準にして判断していますか」

次に尋ねよう,「あなたがたは,よく計画を立てるが,それは生かされていますか。実施され,成果を得ていますか。計画が破れる? どうしてですか?」

最後に尋ねよう,「あなたがたは懸命に働らいているようですが,一体,何をしているのですか。何を造っているのですか。

4. 開放経済のなかで,VEはあらゆる時と場で適用され,いろいろなものをどんどんと生み出していく。しかしながら,本質的な問題が解決されないままのVEは,VEと呼ぶだけの値打ちをも持てなくなるのではないかと考えるのである。

この問題を解きながら,ここに,これからのVEのあり方として,Value Design(VD)を提唱する。

5. Value Design(VD)という言葉自体は,過去において,何人もの人々によって,述べられたことなので,何も新しいことではない。ただ過去においては,デザインというので,即,物の形態や色彩をどうすべきか,などの点とVEとの関係において,問題をとらえていた感が強く,デザインの本質までには触れていなかったようである。

ここでいう "Value Design" とは,本物のVEとは,デザインの本質を包含しなければならぬことを意味し,これが,今後のVEの姿勢であろうと考え,推奨したいのである。

VA手法が導入されてから,既に,10年が経過している。導入当初,部品に対する分析から始まって,製品・装置へ対象が移行して行っている。これと並行して,各ステップ毎のVA手法も研究が進み,対象の変化に応じて,展開が可能になって来た。

当社では,VA活動の企業内の定着は,経営幹部の理解と,承認が,最も,効果が大である点に着目し,VAの効果を,経営効果に反映させることを最終目標とし,工場単位の,収益改善計画としてのVA活動の投入,受注から発送迄の,各段階におけるコスト効率を高めることを目標とする。

このような,経営活動そのものに対する,VA活動の適用は,経営活動の広範囲な分野に対し,高所からの,マクロ的な視野による,問題点の摘出が必要で,それら,対象となる問題点の多様性に応じて,解決のための戦略を立案しなければならない。

従って,環境によって,極めて,特異な性格を持っている問題点に対しては,個々の具体的な手法そのものよりも,VA活動の計画,すなわち,広義の対象選定の計画立案が,より重要な課題となる。

今後,予想される材料費の上昇,人件費の高騰,労働人口の減少等,山積する問題点をかかえた企業経営は,戦略的なVA活動の投入によってのみ,健全性を確保出来ると考えられる。

本論文は,取り上げられた対象機種が「経営の川」を流れてゆく過程で,どの領域にVA的攻撃の的をしぼるかを,戦略的に決定し,実施した事例を挙げて,その効果が,経営の業績を直接向上せしめた実証を示したものである。

一般的に,企業間の取引品目の発注契約の際に,明確なVE契約によって,VE提案を義務づけている場合は少く,報奨金支払の取り決めを行なっているに過ぎないのが,現状と思われる。

取引先業者のVE提案を,より活発化させるためには,VE提案の採用に伴なう効果を,業者へかんげんし,その努力にむくいることが大切である。すなわち,VE提案を行なうことにより,業者の利益が増し,受注が安定することを,実証する必要がある。

VEを実効あるものとするには,業者の協力体制を整備し,業者の"ちえ"を活用しなければならない。もしそうでなければ,VEは,たんなる精神運動となり,親企業とのつきあい上,やむを得ずVE提案を提出することになり,購入コスト低減の強力な技法とはいえなくなる。

当社にVEが導入されたのは,昭和38年6月,購買部内にVE事務局が設置されたのに始まる。

戦後,経済界の非常な発展と,各業界の技術革新のさなかにあって,各企業は経営の合理化,利潤の追求なしには,激しい時代を乗り切れず,落伍するため,種々の管理方式を導入し,成果をあげる企業も多かった。その経営管理方式の1つとして,VEがアメリカより紹介され,昭和34年頃から導入する会社があらわれ,現在では約2,400社がVEを導入している。

各企業により,導入の動機は違うが,やはりコストダウンの手法として,またコストチェック等を目標にしていると思われる。導入後の展開もまた,千差万別であろう。

当社の導入の動機は,やはりコストダウンによる利益の増大と,コストチェックを目標としていた。また,VEによってセクショナリズムを打破することもあった。こうしてVE事務局は,活動を目標に向って開始した。

当社の如きアッセンブル・メーカーの場合,購入部品(生産用)のすべてが,必らず一度は購買セクションを通過するのと,外注業者との接触が一番密接である等の理由により,購買部門にVE担当者を配置したのである。

高度選択社会といわれている現代の技術社会において,技術開発そのものも複雑化し,多様化して,変身している。この高度に複雑化した技術社会における研究開発の分野も同様である。

この論文は,このような技術社会における研究開発(R&D)のプロセスは,如何にあるべきか,また,そのプロセスの中で,価値工学(VE)は,どのように適用されていくかを中心に論じたものである。

新製品開発へのVEの適用というと,一般に要求仕様から展開するファースト・ルックVEが考えられるが,ここに紹介する方法は,類似機能をもつ製品から展開していく方法である。すなわち,類似機能製品の機能系統図より基本機能だけをとらえ,この基本機能を満足する二次機能,部分・部品機能をアイデアにより展開して,これを評価して新製品としての機能系統図を作成し,これを具体化して新製品を開発していこうとする方法である。したがって,この方法は,要求仕様から展開していくファースト・ルックVEに比較して,革新的な新製品開発は望めないかも知れないが,現有の製品をVE手法を用いて,着実に改善した新製品を開発することを可能にした方法といえる。

現有製品を市場の動向や要求にマッチするように改善した新製品を開発することに対する要求は,企業競争が激化の一途を辿っている今日,ますます強いものになっていくことは自明のことであり,この方法の適用が拡がっていくと考える。

この方法は,要求仕様から展開していくファースト・ルックVEと,いわゆるセカンド・ルックVEとの間に位置し,また類似機能製品の基本機能は要求仕様の一部と考えられることから,強いて名づければ,セミファースト・ルックVEと呼ぶことができる。

現在の電気業界における競争は,熾烈をきわめ,新技術の開発,コスト開発の優劣は,そのまま製品の販売に大きく影響を与えております。

このような厳しい市場をはいけいに,コストダウンの手法として紹介されたVEは,各社こぞって導入したことは当然であります。

当社においても,このような状勢のもとに,昭和38年,購買部門にて,購入する部品のコストダウンを計ることを目的として,VEを導入し,その任としてVE事務局を,購買部門に設置致しました。

購買部門に設置された理由は

(a) 当社製品の製造原価中に占める材料比率が70~80%に及び,その90%を外注工場に依存していること。

(b) 市場より各種情報の収集が容易であること。

(c) 外注工場の専門的技術を活用出来ること。

(d) コスト情報がはやく,問題点をとらえやすいこと。

(e) 製品開発が,モデルチェンジ(一部機能の改造)的なものが多いこと。

等の理由によります。

株式会社日本製鋼所においては,広島製作所が昭和42年11月VEを導入,半年後,室蘭,東京,横浜の各製作所も導入し,全社的なVE活動が展開されようとしている。

中でも広島製作所では,VE推進満3ヵ年を迎え,7回に及ぶセミナーと,ON THE JOB TRAINING 方式により,養成されたバリューエンジニアの総数は,230余名に達し,春秋2回実施されるセミナーの期間を除き,年間,常時,6人編成のチームを2チーム活動させ,製品の価値の向上とコスト低減に取り組んでいる。

このような継続的VE活動の原動力となっているものは,次に述べるトップの方針よろしきを得た,設計管理者を中心とする積極的姿勢であることは,論を待たないが,VE推進マニュアル活用を通じて,設計ライン,VEチームメンバー,これに助言するスタッフの三者が,よりよいコミュニケーションによって結ばれ,総合されたチームデザインが生れていることも,忘れてはならない。

このマニュアルと,その背景について,動機づけを中心に,主要項目につき解説すると共に,今後のVE適用範囲とタイミングに言及し,将来のマニュアルの姿と,バリューエンジニアの使命について,述べることとする。

最近は,VEあるいは価値分析に対する反応が非常に多い。「価値」という問題に,非常に関心がもたれ,バリューエンジニアという専門家が養成されつつある。企業内におけるVEは,アレンジされた形で推進され,定着発展しているが,もう一度,本来のVE理論を基本よりふり返り,再確認し,現在の企業内におけるVEの問題と対策及び今後の方向づけの指針の設定をしてみたい。

しかるに

1) VEの適用局面

2) チームと組織化

3) VEの専門化

という問題を深く,企業の体質に合わせてボーリングし,定着化する必要がある。

最近の企業の置かれている立場,環境は,非常に厳しい。特に,その技術革新による商品ライフサイクルの短いこと,価格の低減が急速であり,創業者利潤をむさぼっていられないこと等,企業努力は並々ならぬものである。その中でも労働賃金の高騰に対し,利益を確保してゆくため原価低減には,企業は必至の努力を払いつつある。その中でVEという原価低減の手段は,有力な武器として企業にみとめられ,ここ数年来急速に進展して来たことは否定できない。しかし一方,10数年前にGEのマイルズの創始した古典的VE「敢て古典的といわしてもらう」にも,考え方,プロセスの上でも修正を大幅に加えられる時期に至っている。すなわち,この1970年代の変化と,技術革新に即応するVEとしては,余りにも受身的発想から出発していると思われる。そこで今後の時代変化に対する1,2の考え方を述べて見たいと思う。

"VEとは何か"について,数多くの定義づけがなされているが,その根底に流れるものは,確立された組織をもて,要求された機能を最底のコストで満足させるための手法であるといえないであろうか。従ってVEを展開する上で組織編成を如何に行なうかが,1つのポイントとなる。

しかし,一概にVE組織といっても,企業形態・規模・生産品目などにより異なるであろうし,また,その企業に適した組織編成をしなければ,VE効果を100%発揮させることは出来ないであろう。

そこで,VE組織とは一体如何なるものか。どのような構成を計らねばならぬか,という問題が生じてくる。

本論文は,このVE組織の問題について,アッセンブリメーカーである当社の例をとり纏めたものである。