論文
当工場はモートル,可変速ドライブモートル,換気扇,送風機,圧縮機,ポンプ,給水装置,産業用ロボット,プログラマブルコントロールシステム,制御装置,制御システム等を生産している。これらの製品は,それぞれ顧客のニーズに対応して各種の容量のものが作られており,何らかのシリーズ品として捕えることができる。
これらの製品は,それぞれ,顧客は市場値(プライス:Price)で購入し,製造側では,それを作り上げるのに原価(コスト:Cost)が発生している。このプライスとコストの差が製造側の収益となり,企業は収益を確保するため余分なコストの発生を防止しなければならない。
一方,市場においてはエレクニロニクス等の技術革新が激しく,製品のライフサイクルも,従来は5年~10年であったものが,最近では2年~3年と短かくなってきており,顧客は,常に最新技術を駆使したコストパフォーマンスの高い製品を求めている。このようなエレクトロニクスの市場は,技術の進歩も著しく品質,仕様,機能等を含めて製造者間の競争が激しい。したがって製造側は,常に最新技術で顧客の要求機能を達成すると同時に,それらの技術を,更に発展させることによるコスト低減競争が極めて激しくなっている。
このような環境で,従来のVAの価値の捕え方である V=F/C での機能(F)とコスト(C)に代って,プライスとコストで価値を評価する方法を考えることができる。本来,機能を評価する際,機能は値打ちとして捕えられてきた。部分としての機能は,代替機能としての値打ちが機能評価値となる。しかし,製品全体としては,プライスそのものを顧客の指定する値打ち,機能評価値と考えるべきである。すなわち V=F/C をV=Price/Cost と置き換えて価値を評価することができる。これによって企業収益に直結した形で価値改善を考えることができる。
また,このプライスとコストの関係を,当工場の製品のようなシリーズ品全体に適用し,プライスライン,コストラインとして,グラフによって比較すれば,シリーズ品全体収益についての管理も可能となる。すなわち図-1に示すように,プライスラインとコストラインが平行になっていなければシリーズ品の構成の考え方に誤りのあることがわかる。更に,コストの内容を基本機能,補助機能に分割し,顧客の要求機能すなわち顧客が金を支払う機能と,製造側が要求機能を達成するのに必要な機能に分けて,それぞれのコストラインをプライスラインと比較すれば,どの機能分野が収益確保の阻害要因かが明白になる。
このように,収益を確保するための製品VAで,プライスとコストの関係から価値判断をすることによって,顧客のニーズに見合い,かつ収益確保に密着したVA活動の進め方を「PCチャートによるVA診断法」としてまとめたので,以下,内容を発表する。
目次
- 1. 緒言
- 2. PCチャートによるVA診断法とは
- 2.1 VA診断法とは
- 2.2 PCチャートとは
- 3. PCチャートによるVA診断法のステップ
- 4. PCチャートによるVA診断法の例
- 5. PCチャートによるVA診断の効用
発行年
1981年 VE研究論文集 Vol.12著者
- 株式会社日立製作所
習志野工場資材部VAグループ - 土方正美
カテゴリー
- VEテクニック
キーワード
購入
この論文はPDF版をご購入いただけます。
ご希望の方は「カゴに入れる」ボタンをクリックしてください。