論文発行年度: 2018年VE研究論文集 Vol.49

企業も製品も進化していかなければ生き残れない。製品進化はターゲットとした顧客の満足を継続して向上させることによってなされる。この満足を向上させるには継続的・断続的価値向上と、その製品の差別化・個性化が不可欠となる。この結果が製品進化となるのである。本論文はこれら2つの要素を効果的に実現するため以下の展開をするものである。
まず第一に、機能定義の対象拡大(上位拡大と並位拡大)を図る。ここでは、VE対象(製品など)の果たすべき機能とその目的となる機能(使用目的など)を明確にし、さらに、VE対象(製品など)の機能発揮に密接に関わる「人」や「もの」が果たしている機能も明確にする。次に、これらに基づいて全体最適の思考の下に、これら三者の間の機能分担を合理的・合目的的に行うのである。この経過を経て、使用目的などを確定し、「人」や「もの」が果たしている機能をVE対象(製品など)に採り込むなどしてターゲットとした顧客に対するその製品の価値向上や差別化を図るのである。

現代の製品には電子回路が不可欠であるが、電子回路のVE論文や事例はあまり見かけない。現在では電子回路 VE の必要性は高いはずだが、それが普及しているとは言いがたい 。この理由は、主に2点の特徴が電子回路にあるためだと考える 。第1に、電子回路は回路や部品が果たす機能に着目して開発設計している一面があるために、電気技術者の多くは、VE実施手順の特に機能定義段階について、通常の開発設計段階と重複すると感ずる傾向が見られることである。第2は、電子回路は小型ながら多機能を有するものが多いので、機能系統図の作成に多大な工数を要することである。本論文はこれらの要因を課題として捉え、その負担軽減の方法の一つとして、機能の整理にあたりブロック図を活用することを提案するとともに、機能の整理に有益な、一般的なブロック図を修正した新しい ブロック図の作成方法を提案し、その有効性を明らかにするものである。

本研究では第50回VE全国大会(平成29年開催)で提案した10の対極発明原理を改良し、TRIZを活用した対極類比アプローチによる創造手法の適用範囲を、技術的課題の解決から社会的課題の解決に拡大した。改良した創造手法を製造企業における人材教育の企画立案に適用し、より価値の高い教育プログラムのアイデアを得た。
そのアイデアは、従来、VEを学ぶ機会のなかった技能系新入社員がIE、QC、VEの三つの管理技術の基礎を学ぶというものである。この革新的なアイデアを具体化するために、これまで別科目であったIE、QC、VEの入門教育を一つに統合した教育プログラムを創設し、企業内の教育施策に導入した。

コスト最適な設計を行うためには、ものづくりとコストに精通した技術者が必要である 。しかし、自動車部品業界においては、近年の開発期間の短縮や、電動化 、衝突回避システムなどの先進安全装備の装着拡大に伴って 、機電一体製品(注1)が増えてきたことにより、技術者に求められるコスト最適設計力が変わってきた。 そこで本論文では、この問題を解決するため、次の3点について述べる。第一は、現在の環境変化に合わせた技術者のコスト最適設計力を得る育成方法の開発である。具体的には、コスト最適設計力を構成する能力要素を顕在化し、その能力を得るための育成カリキュラムを開発する。第二は、顕在化した能力の能力到達度指標の開発である。能力到達度を定義することで、技術者のコスト最適設計力を得る育成の促進を図る。第三は、この育成カリキュラムを自動車部品業界の技術者に適用して、その有効性を述べる。

昨今、働き方改革により業務効率化が必須の課題となっており、VE活動自体においても、VE投資倍率の向上を目指し、活動時間の短縮化、成果の向上が果たせる活動の実現が重要課題となっている。したがって、これまでは量産品や繰り返し生産品など適用数量が多いという理由から、価値向上が果たせるVE対象テーマを選定し活動することが主であった。逆に、主に個別生産品を主体とする製品・サービスについては、一品一様となることが多いためVE活動が停滞気味であり、個別生産品へのVE 活動の導入が急務であった。

そこで本論文では、主に個別生産品を主体とする製品・サービスに多く共通して存在している2次レベルの機能に着目し、その機能を実現するための手段(以降類似サブアセンブリ品)を対象とし、VE活動を効率的に、かつ効果を拡大させる手法を提案するとともに、事例による有効性の検証を報告する。