論文カテゴリー: VEテクニック 216件

不人気産業の代表であると言われている宿泊業や飲食業は、接客サービス業の代名詞的な業種であるが、コロナ禍において人々の移動制限により、経営的にも厳しさが増している。それは、従事者自身の感染リスクとも相まって、一層、その存在価値が危ぶまれている。では、これらの業種は今後、衰退、あるいは消滅していくのであろうか。テイクアウトや宅配需要に対する対応、感染対策を講じた設備投資、政府による数々の支援で、収束を待ちながら辛うじて営業を続けている施設がある。一方で潤沢な資金の無い企業は持ちこたえられず、倒産件数も日増しに増えていると聞く。
そもそも、飲食業や宿泊業は人口の増加、商業の発展による人々の往来が多くなることで自然発生した業種である。これからもこれらの業種は姿を変えながらも生き残っていくことは間違いない。そのような社会にとって不可欠な業種こそ、産業として生き残っていかなければいけないのではないか。今回、これら業種の生産性向上のきっかけを得るべく、サービス価値評価技法の開発を試みた。

VE は、世の中の製品やサービスなど、全てを改善対象にでき、その効果も絶大である。より広い領域で適用され、より大きい改善効果を期待し、VE を積極的に導入する企業も少なくない。VE を導入する企業にとって、その普及活動は極めて重要となる。社内への普及がうまく行かなければ、VE の導入や普及活動に掛かる投資が無駄となる。とはいえ、導入後数年間はVE 専門家が不足するため、多種多様な対象テーマの規模や改善余地に応じて、実施方法を最適化することが難しい場合もある。そのため、効果的なVE 活動に繋がらないことが発生している。
そこで、本論では、VE の普及活動を軌道に乗せるため、サービス業における小規模な改善テーマに最適な簡易版のVE ワークショップを開発し提案する。そして、その実践事例を踏まえ、有効性について示す。

機能思考が特徴の1つであるVE(Value Engineering、以降VE と記す)は、必要な機能を確実に達成することを目指した活動により、使用者が思いもよらないような革新的な製品や新たな実現手段を有した製品が実現可能となる方法論である。
しかし、VE ジョブプランにおける代替案作成段階の詳細評価では、代替案の設計内容が具体化されるため、プロジェクトメンバーは、品質思考(原因-結果の論理で徹底的に品質課題を解決する思考)重視となり、機能思考(目的-手段の論理でテーマに必要な機能とコストの相互分析を行うことで課題を解決する思考)が後追いの状態となってしまう傾向がある。代替案の「技術性の評価」では、必要な機能と各種の要求事項を代替案が満たす可能性を評価する活動ではあるが、要求事項の確認が主体となり、代替案の試作品による妥当性の評価が、構成要素が要求事項(仕様)を満たしているかを確認することに注力され、モノ中心の思考となり、必要な機能が確実に達成されているかを確認する意識が低くなるため、機能の検証モレによる品質対策が別途必要となることが懸念される。
本論文では、代替案作成段階(詳細評価の「技術性の評価」)において、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis、以降FMEA と記す)を活用した品質思考と機能思考を融合した技術性の評価プロセスおよびその実践体制を提案するとともに、プロセスの有効性の検証内容を報告する。

コロナ禍において、イベントや会議の開催には十分な感染症対策が求められる。VEは多人数が対面式で参加するワークショップを行うため、密となるイメージが避けられず、2020 年度はVEの実施そのものを躊躇してしまう傾向が見られた。
しかしながら、プロジェクトを円滑に進めるためには、コロナ禍においても丁寧な意見交換や議論の場が必要である。
今回、公共事業を対象に、WEB会議や少人数会議を組み合わせ、感染リスクを抑えつつVEワークショップを実施する方法(仮称:デジタルVEワークショップ(以下、デジタルVE-WS))について検討し、試行した。
デジタルVE-WSは移動時間や会議室準備の制約が少なくメリットも多いが、事前の通信環境の整備やワークショップの運営において注意が必要である。
本稿は、コロナ後においてもVEを実施する手法を確立するため、今回の試行結果を報告し今回の取組みから得られた知見を共有するとともに、今後の展望についてとりまとめるものである。

自社製品を保有する製造業において、企業の持続可能性を確保することは重要であり、自社製品の設計ノウハウの伝承は、企業の持続可能性を確保するための課題の一つである。そこで、機能定義を適切に実施することによる①製品の特有情報などを共有できる、②製品が果たすべき機能や制約条件を明確にできる、③設計の考え方を理解することができる、などの期待効果より、設計ノウハウ伝承のためにVEを適用するケースが増えている。
しかし、設計ノウハウを伝承したいVE対象に対し、VE活動を適用しても、設計ノウハウを期待値通りに伝承できたケースと期待値未達に終わったケースが発生している。そこで、設計ノウハウ伝承時のVEの有効性を高めるための工夫点やファシリテーションの留意点などを提案する。

従来の現場作業の改善は、現場主体の小集団チームにて実施されており、それに活用される手法としては、IE やQC が主体的に用いられてきた。そしてこの活動は、確実に成果をあげてきた。しかしながら近年の少子化による現場作業者の減少とICT の急速な進歩により現場作業の改善方法の変革が必要となってきている。筆者らは、現場作業の改善を組織的知識創造のSECI モデルの概念にしたがって実施することを推進している。これは現場作業の情報を形式知の情報に変換してデータベースを構築し、その情報を活用して組織的な改善を実施する。次に改善した情報を現場に提供し、現場を含めた組織全体で情報を共有化する活動である。筆者らは、この情報を活用して組織的な改善を実施するひとつの手法としてFAST とTRIZ を組み合わせる手順を考案した。まずFAST ダイヤグラムにより現場作業の問題点を可視化する。そして継続的改善の方法としてTRIZ の「技術矛盾と発明原理」を活用する。一方、革新的改善の方法としてTRIZ の「技術進化のトレンド」を活用する。本実践論文では、この手法を論じ、この手法を用いて実際の大型ガスタービンの部品加工の改善案を創出した実践事例を報告する。

「機能定義は、機能的研究の基礎でありVE活動の成果と効果に影響を与える重要なステップである。」 1) これは、VE研究論文「機能定義についての考察」のはじめに記されている一文である。また、この論文の終わりに「機能定義用語の選択と標準化に(中略)ついて今後いっそう実践活動にむすびついた研究を進める必要がある」1)と記されている。
このように、機能定義に使用する用語、特に動詞の選択は、VE活動を効率的に実施するためのポイントであるため、『新・VEの基本』3)や米国VE協会(SAVE)出版の『Value Methodology』4)(以下、「日米のVEの教本」という)にも標準化(注1)された動詞がリストとして示されている。しかし、VE適用対象や適用段階により機能定義で選択すべき動詞が変わるため、当社の製造VEプロジェクト活動(以下、製造VE活動という)(注2)では「日米のVEの教本」で標準化された動詞のリストを活用していなかった。そこで、当社にて過去10年間に実践した製造VE活動の機能定義用語を調査、整理して、製造VE活動で使用された動詞を抽出し、「日米のVEの教本」の標準化された動詞と比較することで、製造VE活動の機能定義に用いる最適な動詞について分析した。その結果に基づき、 製造VE活動に特化した標準化された動詞のリストを作成した。

注1:同一同容を表す言葉をまとめることによって用語を集約すること。1)
注2:社内プロジェクト体制にて実施する本格的な製造VEのこと。3.1 1)項参照

製品の価値向上の形態の一つに「機能の向上」、すなわち「より優れた機能を持った製品を使用者に提供する」方法がある。そのためには的確に「使用者の必要とする機能」を理解し、その要求を上回る機能を提供しなければ、高い顧客満足を得てその価値を認められることはない。
本論文では、VE対象の情報収集のステップでの「体験法」「生活研究(観察法)」、機能の定義のステップで「シナリオライト法」を適用した事例をもとに、「使用者の必要とする機能」を正しく理解するための情報収集の重要性について考察する。

VE適用が製品やサービスの価値向上に成果をもたらすことは、VE全国大会等で紹介される様々な事例が示すとおりまぎれもない事実である。より大きなVE成果を得るためには代替案のもととなる優れたアイデアが不可欠であり、アイデア発想力を強化することはVE成果の拡大に直結する。
本論文では、VE適用によって得られる成果をこれまで以上に拡大するために、アイデアを闇雲に数多く発想するのではなく、価値向上に寄与する可能性のあるアイデアをはじめから多く出す方法を提案し、その効果を実際の活動で確認した。製造企業において、VE実践、VE研修、特許ミーティングというそれぞれ異なる目的のために開催される活動を融合することで、VE成果の拡大につながるアイデアの創出を促進できた。

企業も製品も進化していかなければ生き残れない。製品進化はターゲットとした顧客の満足を継続して向上させることによってなされる。この満足を向上させるには継続的・断続的価値向上と、その製品の差別化・個性化が不可欠となる。この結果が製品進化となるのである。本論文はこれら2つの要素を効果的に実現するため以下の展開をするものである。
まず第一に、機能定義の対象拡大(上位拡大と並位拡大)を図る。ここでは、VE対象(製品など)の果たすべき機能とその目的となる機能(使用目的など)を明確にし、さらに、VE対象(製品など)の機能発揮に密接に関わる「人」や「もの」が果たしている機能も明確にする。次に、これらに基づいて全体最適の思考の下に、これら三者の間の機能分担を合理的・合目的的に行うのである。この経過を経て、使用目的などを確定し、「人」や「もの」が果たしている機能をVE対象(製品など)に採り込むなどしてターゲットとした顧客に対するその製品の価値向上や差別化を図るのである。