設備システムのLCC算出

論文

VEが対象とする価値は使用価値,貴重価値及びコスト価値である。われわれが,あるいは建築主が金を支払うのはその物の持っている「ハタラキ=機能」に対してである。このユーザー(顧客)が要求する働き(機能)を最低の投資で作り出し,ユーザーの満足を高めることがVE活動の目的である。VE活動の対象となる物は大きく2つに分類できる。その1つは,初期に投資する金額を重点的に考えれば良いもの,もう1つは,初期投資以上に使用期間中,すなわち機能を発揮している期間を通して必要な費用を考えなければいけないものがある。VE活動はややもすると初期投資金額の低減,コストダウンに目がむきがちであったが,初期投資だけではなくライフサイクルコスト(LCC)でのコストダウンを目標とすべきである。今回建築設備の中の給水揚水システムを一例として,システムの機能を「システム信頼度を80%以上に保持する」ことを条件に,ポンプ等を複数台設けた場合(冗長設計した場合)と1台との場合でLCCがどのように変わるか試算を行った。冗長設計されたものは当然初期投資コストは上昇するが,LCCで考えると必ずしも不利にはなっていない。建築設備のように機能をいかに発揮するかが重点のものは,特にLCCでコストを評価しなければならない。また,LCCで評価する場合にも,途中での交換時期をどのように決めるかが重要であるが,この機器の交換時期を各機器の信頼性データをもとにしたシステム信頼度を一定以上(80%以上)に保つことを条件に決定した。

なお,ここでいう信頼性のデータは,機器の交換(理由のいかんを問わず)を故障と見なして算出してあり,信頼度とは交換されていないものの割合を表している。

目次

  • 1. はじめに
  • 2. 給水揚水システム
  • 3. システム構成要素の信頼度
  • 4. システム信頼度
  • 5. LCCの検討
  • 6. おわりに

発行年

1986年 VE研究論文集 Vol.17

著者

戸田建設株式会社
筑波技術研究所 第4研究室
小坂信二

カテゴリー

  • VEの適用局面

キーワード

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