論文発行年度: 2004年 VE研究論文集 Vol.35

公共事業に設計VEを適用する事例が、ここ数年増えてきた。しかし、製品やサービスのように、大きな改善効果が得られないケースがあるのはなぜなのだろうか。事例を重ねることによって、公共事業の特質と設計プロセスのマイナス要因が、重要な鍵となっていることが判ってきた。

そこで、本論文は、公共事業に設計VEを適用するために必要となる公共事業の特質と、大きな改善効果を出すための設計VEの適用方法と、さらに、将来の公共事業へのVEの新しい活用展開を提案するものである。

公共事業の事業者は、社会資本整備を進めなければならないという社会的責任と、景気低迷や少子高齢化がもたらす税収不足による財政難とにより、新たな問題解決の方法を求めている。VEが、公共事業の価値向上を実現し、より良い社会資本の構築のために、活用される時期に来ている。

この論文は、筆者のこれまでの体験をもとに、公共事業におけるVEのメリットを最大限に引き出すことを狙い、VEの新たな展開と発展を図るものである。

国内の産業界にVEが導入されたのは1960年代と言われている。導入当時は自動車と電機などの産業が中心であった。建設関連業界も製造業に遅れ、1970年代に建築を中心に推進し始めた。しかし、40数年後の今はVEの導入結果は10年差どころか建設関連は相変わらず開発途上の状況になっている。

最盛期は年間で約70兆円あると言われている建設産業の規模は景気の低迷の今も縮小現象が続いている。一方、公共事業だけを見ると、縮小傾向にあるといわれてもいまだに50兆円前後の規模になっていて、大半は土木事業に費やされていると推定できる。なお、上記の公共事業の50兆円には民間投資が含まれていない。また、公共事業の中に土木事業の割合は公的データがないため現在は調査中である。

本論文は土木事業にVEを定着させるためVE関係者がなにを理解しなければならないか、またはなにをしなければならないかについて提案し、土木事業の価値向上のためのVE推進に資したいと考える。

VEは製品の価値向上を図るツールであると言われているが、換言すれば顧客満足度向上と企業満足度向上の両者に寄与するものであり、その両者の向上を表すには価格(P)の関与が不可欠であることを数式を用いて説いた。またCSは一般に顧客満足度向上(Customer satisfaction)のみに使われているが、もう一つの意味合いとして企業満足度向上(Company satisfaction)のCSでもあるとし、両者の関係およびV=F/Cとの関係をも図解して明らかにした。このように両者のCSとVの関係を表現することでVEが企業経営になぜ必要か、自明の理とした。さらにCS向上活動の概要と組織、責任について多少触れた。後半には、CSの定量的評価はどうあるべきか、まず使用品質分析法を引用して機能(F)の定量的評価を示した。しかし、Fの評価は時々刻々変わる環境や顧客期待値の向上によっても変化するもので、価格(P)のダウンはまさにFの評価にリンクするものであり、顧客満足度はこのPの操作で維持されるのであるとの見解を述べた。

製造段階における工程改善アイデアは、顧客要求及び製造条件からの制約が多く、質の高い改善アイデアを出すのに苦労している。すなわちVE技法である機能からのブレーン・ストーミング法によるアイデア発想だけでは対応できなくなりつつある。そこで、①ブレーン・ストーミング法を基本テクニックとして②製造上でのチェック項目を列挙したチェックリスト、そして③類比発想法の1手法であるNM法のステップにおけるQBを合わせて活用することによりアイデアを導き出す方法を提案する。本論文は、製造段階のVE活動におけるアイデア発想フェーズの強化に関する内容である。

VEは、製品やサービスの機能をその研究対象とし、その機能とは顧客にとって必要な機能でなければならない。

機能本位のVE活動によって、限られた経営資源を重点分野に効率的に配分する上で、価値向上余地による判断材料を提供し、改善対象とする機能分野を選択する重要な段階が機能評価の段階である。いわば機能評価によりVE活動の方向が決定されるのである。

本研究では、このVE活動の方向を決定する重要な機能評価のステップに消費者行動分析を適用、顧客の立場で機能を評価し、顧客満足の実現を目指した。分析手法にはコンジョイント分析を採用、アンケート調査による実証とその有効性について考察を行った。

厳しさを増す経営環境や顧客ニーズの変化により、物流も新たな局面を迎え、最良の変革が求められています。今後企業が生き残るためには、物流の理想的なビジョンのもとに、業務を改革しなければなりません。VEを駆使して、この問題の解決を図ることができます。

本論文は、VEの基本的な考え方をベースに、新たなアイデア発想方法と評価方法を取り入れました。まず、アイデア発想要素及び希望点抽出の7つのキーワードによる系統的希望点列挙法と、連想法でアイデアを抽出しました。次にアイデアを評価して、現実案と理想案に分けて、今後の家電物流のあり方を提案しています。改善効果も大きく、今後の物流改革に必ず役立つと思われます。この方法は、将来に向けての改善や0 Look VEに活用することができます。

建設業者の殆どがISO9001の認証を取得している。この基本コンセプトは2000年の改訂で、従来の「品質保証」から、品質マネジメントシステムに変わった。その目的も、顧客要求事項を満たし顧客満足向上へと広がった。又、経営者の責任がより明確になり、品質マネジメントの8原則を経営に生かし、経営と組織の一体化や顧客満足を測定・分析してシステムの改善を図り、顧客満足を高めるなど、実用的なシステムへと変わった。

しかし、これらは規格の構成や表現が改善され利用し易くなっただけで、システム確立の方法論は示されていない。この論文は、経営資源を有効活用して、施工品質向上及び、その有効性を高め、継続的改善の成果を向上するVE活用に関する研究論文である。

VE技法を効果的に活用し大きな成果を得るために、VEチームリーダーはVE技法の知識と実践能力を磨くに留まらず、VEを分かりやすく伝え、受け手の感情に配慮して生産的なコミュニケーションを行うことを通して、VEチームを目標達成に導く原動力にならなければならない。

一方で昨今、「活動や議論を促進する人」という意味で、ファシリテーターという役割を担う人材が、会議やプロジェクト活動の運営、組織・風土の活性化において活躍する場が増えている。ファシリテーターの役割と、上述したVEチームリーダーに求められる役割やスキルとは類似した点が多いと考えたため、本論文では「VEファシリテーション」という新しい呼称を用いて提案する。

VEファシリテーションの技術を通して、VEチームリーダーがチームメンバーに与える効果という側面から考えたとき、VE実施手順の3つの基本ステップは、納得性を高める段階と創造性を発揮する段階に分けられ、それぞれにおいて特徴的なVEファシリテーションの技術があると考えた。そこで本論文では、VEチームに初めて参加するメンバーが、やがて自立してVE活動ができる能力を身に付けていく過程を通して、その場面場面に応じた具体的なVEファシリテーションを、「納得」と「創造」を引き出す技術として整理した。また、VEファシリテーションにおいて、VEチームリーダーのチームメンバーに対する姿勢やコミュニケーション技術が重要であることから、対話例も多く挿入した。

原子力発電所は商用運転が開始されてから20年以上が経過し、国内の発電電力量の3割以上を供給しており成長・成熟段階と推定される。原子力発電所の原子力設備を構成する機器(以下機器と称す)は、それぞれ異なる要求機能と使用環境が多く、個別に設計・材料調達・機能向上努力がなされる場合が多い。このため、共通的な材質の機器の素材材料(以下材料と称す)も個別最適化が進み詳細仕様レベルで相違した材料が増加し、調達コストを増加させる結果となっている。本VE活用は、材料調達の観点より機器毎個別に蓄積された経験等により設計面の材料機能(仕様)の統合・標準化と資材面の材料調達計画の統合化を図り、最適な材料調達を行うための手法を体系化するものである。本手法は設計的要素(3ステップ)と資材的要素(3ステップ)より構成し、材料調達エンジニアリングVEと名づけた。非量産品の多種類の機器間で共通的な機能部分を標準化するVE手法であり、特に法令等の共通制約条件があり、多部署が異なる製品を製作している分野で有効と考える。設計と資材が独立分担型の調達形態において、統合・調達する手法であり、有効活用されれば幸いである。

VEの最も特徴的な部分は機能系統図といわれている。機能系統図を作成する上でキーとなることは、上位機能(目的)と下位機能(手段)を整理することであり、その過程で設計の考え方や、チーム員のコミュニケーションが計られている。

テアダウンや既存製品の改良品の機能系統図に関しては、部品や部組品があるので、それぞれの機能は比較的簡単に作成でき、その機能の上位機能・下位機能関係を整理することになる。一方新規製品や公共事業、行政などの機能系統図作成に関しては、部品や部組品がないケースが多いので、機能を考えることに非常に多くの時間がかかっている。

本研究では、機能系統図を作成する時に必ず考えなくてはいけない上位機能(目的)一下位機能(手段)の効果的作成方法「機能定義のための逆転発想法」を提案するものである。この考え方を活用することにより、自治体などのサービスVEの機能系統図へも活用できることを明らかにするものである。