論文発行年度: 2012年 VE研究論文集 Vol.43

製品やサービスの開発や改善活動において価値ある代替案を創出するには多くのアイデアを出すことが重要とされている。VE実施手順のアイデア発想ステップでは発散思考し、その後の具体化ステップでは収束思考することで効率的に代替案を生み出す。発散思考時には多くのアイデアを発想するが、このときの「多くの」とは単純にアイデア数が多いことを指すのではなく様々な意味が含まれている。本論文は「多い」の意味のうちアイデア数と多様性を考慮して、発想されたアイデアのアイデア量を評価する方法を提案するものである。アイデア発想ステップで創出されたアイデアを分類し、カテゴリ数とアイデア数およびエントロピー(平均情報量)からアイデアの多様性を数値化してアイデア量として定義し、ケーススタディーで評価式の評価を行った。

公共工事において総合評価方式が増加している。落札するためには、発注者ニーズを的確にとらえ差別化した技術提案により、高い技術評価点を獲得することが必要である。
今回は「開発のVE」を利用して、発注者ニーズを機能に置換し整理することにより真の発注者ニーズを把握し、差別化した技術提案を作成する方法を紹介する。

本論文は、永遠の課題である健康問題に対して機能系統図を活用することでより理解を深め、各人の健康意識の向上に貢献することを通じて、機能系統図を活用することが未知の分野の知識の全体構造をより短期間でもれなく把握する方法論として有効であることを示すものである。

多くの製品は競争優位性を確保するため、多数のバリエーションを有していることが多い。そのような製品をシリーズ開発する際での設計構想段階にて、多数の バリエーションに対して有効に共通化できる部品モジュールを開発し、それを製品の各目標Q(品質)、C(コスト)、F(機能)、D(納期)を満足させるよ うに、最適なモジュール展開構想を実施することは非常に重要であることは言うまでもないが、今まで具体的な手法がなかった。本論文ではテアダウンの手法を 活用し、モジュール展開構想の見える化、比較分析を行い自社の開発製品に対していい所取りを行う、具体的な手法について提案する。

『VEハンドブック』の7.3.1(P.355)(注)で紹介されているとおり、サービス領域での管理・間接業務や、2時間VEなどの短時間VEでは、現状の問題から機能を定義し、アイデア発想を行う手法が広く利用されている。

現状の問題は、改善活動を行う上で大きな動機の一つとなるため、この方法はチームメンバーの参画意欲の維持や向上という点等においてすぐれた手法である。

しかし、従来からの「問題点反転法」や、不具合を原因と結果で表現した「問題点系統図」を利用したVE活動において、VE本来の実質的な機能定義が行われない状況が少なからず生じている。

本論では、問題から機能を定義する場合に、従来からの利点を残したまま、VE本来の実質的な機能定義を行う方法を考案することを目的とした。

まず、VEの対象となる製品やサービスの問題とは何かを定義し、問題をいくつかの形態に分類した。そのうえで、問題の形態ごとに機能の定義の方法を提示した。

次に、従来からのVE実施手順に沿って、問題から機能を定義する場合の手順を提示し、最後に例題形式で機能の定義、機能の整理の方法を通して提示した。

全体を通して、VEの定義やVE実施手順と慎重に照らし合わせながら、本論で解説した、問題からの機能定義の方法が、VEとしての要件を満たすことを証明することに注力している。

VEは、価値向上を改善の目的とする優れた方法論である。より多くの経営者に理解され、より広い領域に適用され、より大きな効果を創造するために は、価値向上の効果を目に見える形で示したい。そのためには、定性的な表現や精神論ではなく、定量的で具体論とするべきである。特に、機能(F)の変動を 伴う価値向上時が、とりわけ困難である。

そこで、本論では、あらゆる価値向上のパターンに適用でき、その経済効果を厳密に計算する式を提案する。この式により、これまで、提案者の説明力と被提案者の理解力に依存していたものが、客観的に表現されるようになる。

さらに、価値(V)による判断を補完する新しい指標として、パワー(P)を提案する。FとCから計算されるPは、Vと共に用いることで、さらに経営判断を助けるものとなる。価値の概念がより強調され、経営の進むべき方向と力の掛け具合が明確になる。

全編をとおして、筆者が特に伝えたいことは、VEをコスト削減のためだけに使うのではなく、あらゆる価値向上に活かしていこうということである。

公共団体におけるVEの導入目的には、コスト縮減だけではなく、組織内の横連携強化や意思決定の迅速化などがある。その場合、VEは、企画段階にお ける意思決定ツールとしての活用効果を期待されている。そして、意思決定ツールとして活用するうえで、手軽にワークショップを行う方法についての要望は多 い。

公共事業の企画段階で意思決定ツールが必要とされる背景に、公共事業に求められるニーズが複雑化、多様化していることがあげられる。このことは、まちづくりや防災分野、環境分野など特に意思決定の過程が複雑な事業において顕著である。

筆者は、今後のVEの公共事業における展開を広げるために、これらの分野における活用方法を提供することが重要と考えている。

本 稿では、防災分野と環境分野の両面の要素を持つ事業を対象に、その企画段階において、意思決定ツールとしてVEを活用する場合の留意点やその効果について 考察し、工夫すべき点について検討し、実際にワークショップを行った例を紹介する。そして、この題材を通じて公共事業の企画段階へのVE の適用の可能性について述べる。

社会インフラへの投資は、現在の社会活動のためだけではない。次の社会を支える未来の世代のための資産をつくり、それを継承することである。我々がこれまでに整備した社会インフラは、物を残すことではなく、必要とされる「機能」を未来に残すことが本質的な目的である。

社会インフラ整備におけるVE検討は、工業製品などと同様に基本的な実施手順に忠実に行われてきた。しかし、製品と社会インフラには決定的な相違点があることに留意しなければならない。それは単独で機能するか、複合で機能するかの違いである。

これからは既成の学問分野の狭い領域の中で問題解決を図るのではなく、一つの問題についても、複数の要素が関係する「社会システム」という枠組みの中で捉える必要がある。社会を構成するあらゆる要素を「機能」という評価軸で横断的につなぐ能力が問われている。

これからの社会は、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)などの進展によって、益々、複雑さを増して行くと考えられる。社会全体の価値観が多様化する時代にあって、社会インフラ整備にも新しい考え方が必要となっている。

本論文で提案する社会システムに着目した「事業の広義の捉え方」は、これからの社会インフラ整備のVE活用に大きく貢献できるものである。

現在の日本経済は厳しい環境下にあり、価値向上を目的とするVEの必要性が高まってきている。VEは広範囲な事業分野に普及しつつあり、VEに取り 組む企業やVEL取得者も増えてきているが、VEが使いこなされ定着化してきているかというと、そこまでには至っていないのが現状である。VEが誰にでも 実践できない理由として、VE実施手順の代替案作成段階におけるアイデア発想、欠点克服のアイデア発想での行き詰まりが挙げられる。この打開策として、ア イデア発想をサポートする効果的な手法を望む声も高まっている。

一方、TRIZは、250万件を超える特許分析により、問題解決の方向性、 アイデア発想の視点・観点等を体系化したもので、VEへの活用については、これまでも取り上げられてきているがVE実施手順にどのように活用するかについ てはまだ確立されていない。そこで、一般的な製品改善のVE実施手順のどの段階にどのようにTRIZを活用するかについて具体的方法と手順を提案する。活 用段階は代替案作成段階における「アイデア発想」と、「具体化における欠点克服」であり、「技術的矛盾の解決アプローチ」と「物理的矛盾の解決アプロー チ」を活用する。

本論文をVEにおけるアイデア発想のツールとして活用することにより、VE活性化の一助となれば幸いである。

顧客要求の複雑・多様化や製品のライフサイクルの短縮化が進んでいる今、機会損失を防ぎ、効率的に価値ある製品やサービスを市場に提供することが求 められる。そのため、製品開発プロセスの中心活動である開発・設計業務においては、従来にはない機能や構造を有した製品やサービスをより安価でより短納期 で創造していくことが必要になる。その実現を可能にするのが機能的アプローチであり、VEである。

一方、設計案に対して確実な機能の達成を 実現するためには、設計過程において設計案が有する潜在的な不具合因子を漏れなく抽出・克服し、技術性評価においてもその達成を漏れなく評価しなければな らない。そのためには活動メンバーの固有技術のみならず、組織内に蓄積されている過去の経験・知識を有効活用する必要がある。

本論文では、組織内に蓄積されている過去の不具合情報を、未然防止に役立てられるように設計知識として機能ベースで構造化して整理するモデルを提案するとともに、設計段階のVEにおける活用とその有効性を証明することを試みた。