論文カテゴリー: VEテクニック 216件

建築工事のVE検討においては、実施設計図をVE検討の対象とするのが一般的である。しかし実施設計図だけでは発注者ニーズを的確に把握できないために、充分なVE検討成果を得られないことがしばしばあった。

今回は施工者の立場で、シナリオライティング法と機能系統図を用いて潜在的な発注者ニーズを把握する方法を考案した。

さらに、把握した発注者ニーズに基づいて、効果的なVE検討を行う方法と、機能系統図を利用してVE提案内容を効果的に発注者へ説明する方法を考案したので紹介する。

競合他社品が多い成熟製品の改良開発VEにおいて、機能別コスト目標となる機能評価値の決定は、製品の企画に直結する重要な事項であり、戦略的な意思決定が必要とされる。しかし、製品の置かれた外部環境と内部要因を多面的に分析して適切な機能評価値を決定することは、製品改善VEで使用されているところの、顧客・競合他社・自社の3つの観点を単独で評価する従来の機能の評価法では困難であった。
そこで本論文では、顧客が要求する機能、競合他社品が持つ機能、自社開発品に想定する機能の3つについて、従来の評価法にAHP法、機能にもとづくテアダウン、TRIZワンパラメータメソッドを組み合せて評価し、SWOT分析の視点によってそれらを総合して機能評価値を決定する方法を提案するとともに、事例による有効性の検証結果を報告する。

国内市場の多くは成熟した、過当競争環境下にあり、正にレッドオーシャンの中に入っていると言われている。このレッドオーシャンから抜け出すには、自社の得意分野の技術力を生かし、圧倒的差別化商品を生み出し、それらをブルーオーシャン商品(2.1で解説)として育て上げる必要がある。
しかし、ブルーオーシャン商品のシナリオは簡単に生まれるものではなく、生み出す手法も必要になると考え、お客様の要求する機能から価値を創造するバリューエンジニアリング(以降、VEと呼ぶ)手法と「ハーバードビジネススクール」で開発され、企業・組織・個人の分析に活用されているSWOT分析を融合した、アイデアの具体化技法を開発した。

製造業においては、開発期間の短縮のために、営業・品質保証部門や調達先などを含めたコンカレントエンジニアリング等を取り入れている。さらに開発期間を短縮するための対応策の一手法として、機能を元にしたアイデア発想に、製造技術者と設計者が、製造技術注1)・技能を理解・共有・融合注2)し、製造VEの視点からのアイデア発想注3)を加えて、価値の高いアイデアに具体化していくことが考えられる。このことにより、設計の手戻りが少ないだけでなく、製造法の検討と開発が同時に進行できるため開発期間が短縮できる。
本論文では、製造を理解するための「5つのフレーム」と、製造技術を織り込むために、これまでの製造VEのアイデアを調査・分析して、アイデア発想の視点を抽出して整理した「69項目のチェックリスト」を活用することで、機能を元に発想したアイデアを、短時間で、技術性・経済性の高いアイデアの具体化に活かすことができる手法について、提案する。

公共事業に設計VEが導入されてから既に10年以上が経過しているが、社会的な変化に伴って一つの転換期が訪れている。事業の直接的な影響圏となる狭い範囲で評価するのではなく、社会環境を取り込んだ広い範囲を評価対象とすることで、真の社会価値を向上する必要がある。

公共事業の効用の評価に関して、それを提供する側とそれを享受する側の評価には、少なからず評価の相違が発生している。その原因は、公共事業を提供する側が考える達成すべき機能の捉え方が限定的であることが原因となっている。

この問題を解消するための方法は、事業評価項目を転換することであり、対象地域の使用者要求機能を基本とした評価項目を設定する必要がある。事業の恩恵や影響を受ける使用者を多面的に把握した上で、「相互関係型」によって必要な機能を抽出することを提案する。

また、使用者の要求機能を抽出する方法にも、特長の異なる複数の方法を用意し、対象事業の特性に応じて使い分けることが必要である。本論文では、感性アンケート方式、問題点反転方式、地図による機能抽出方式、の3方式を提案する。いずれもまだ適用事例が少ないことから、今後、適用対象を拡大して機能抽出方法として確立する必要がある。

企業の商品戦略を有利に展開するためには,中・長期的視野に立った正しいVE目標の設定が不可欠である。

コストに関するVE目標の設定法については,過去に報告済みであるが,ここでは更にこの考え方を拡大し,競争の激しいすべての製品に適用するために,機能とコストすなわち価値の側面から,VE目標の設定法を検討した。本研究は,まず価値の低減に関する考察から,価値低減曲線の経験式を確立した。更にこの式から目標価値指数の設定式を導きだし,これらの式の妥当性を具体的事例によって検証した。

「機能の定義」では、適切に機能表現を行うことで、「アイデア発想」においてより思考を広げ抜本的な発想ができると言われている。本論文では、機能定義用語のうち動詞に対してアイデアの出しやすさを示す指標(定量値)を計算言語学の応用によって求め、「機能の定義」に不慣れであってもアイデアの出しやすい動詞選択を可能とする方法論を検討する。動詞が「思考を広げる」のは、①その動詞が様々な場面で用いられるからである。②コーパス注)の用例数が多いものが動詞の使用場面数を数量化したものである。①、②から「コーパス用例数が多い動詞がアイデアの出しやすい動詞」であると仮説を立てた。これを検証する調査を行ったところ、動詞のコーパス用例数とその動詞から得たアイデア数には相関が見られなかった。しかし、その一方で、アイデアを出しやすいと感じる動詞の順位を質問したアンケートでは、動詞間でその印象に有意差が見られ、「機能の定義」で用いる動詞選択が「アイデア発想」で得られるアイデア数に一定の影響を及ぼす可能性があることを示唆する結果が得られた。今後は、「今回の実証実験&アンケートの結果」を総合的に吟味し、機能の定義の機能表現とアイデア数向上の関連性をより客観的に分析し、アイデア発想に役立つ科学的な動詞選択ツールの開発研究を継続するつもりである。

近年、公共事業や輸送サービス事業、建設業、自動車産業、電機産業など、ありとあらゆる事業、分野でVEが盛んである。特にここ数年における産業別のVEリーダー取得比率は電機産業を含む製造業が50%以上を占めておりVE活動の活性化がうかがえる。

 電機産業を含む製造業でのVE導入時期は、主として比較的実施し易い機構部品をVE対象テーマに選定してVE活動の実践と定着化を進めている。

しかしながら、VE活動がある程度定着化し、拡大、活性化を進めていく上では、製品やシステム全体をVE対象テーマに選定し、特に電子回路へのVE適用は必須である。

 そこで、本論文では、機能に着目したテアダウン手法の電子回路VEへの適用例を示し、有効性を明らかにするものである。

製品企画、開発では、機能(名詞と動詞で表現する働き)と機能の制約条件(その達成水準と制約)を決めることが重要である。しかし、VE技法における品質概念が不明瞭なため品質設定がおろそかになる傾向がある。一方、品質検討を補うためQFD(品質機能展開)技法が活用されることもあるが、逆にこの技法は、機能を定義する手順が明確にされず機能の達成水準のみを追求する嫌いがある。さらに、現状は、機能からの製品検討をVE活動、達成水準からの製品検討を品質活動と活動を2極化する傾向があり、製品開発上の統一性を欠く大きな問題もある。この状況を解決するには、VEにおける「品質とは何か?」を機能定義技法の原点に立ち考察し、明確にすると共に機能と品質を一貫して追求する技法が必要と考える。本論文は、機能の制約条件を簡単明瞭に設定する強化策として機能に対する品質を明確にした品質的なアプローチを取り入れた技法を提案する。具体的には、顧客、使用者の要求事項をインプットに基本機能とその目的別達成度を設定し、新機能系統図表法を用いながら機能的かつ品質的に魅力ある製品企画を決めていく。本論文は、機能と品質を一貫して検討する足がかりとして機能定義の範囲に言及して述べるが、製品企画立案時においても十分使用可能で貢献できるものと考える。

VEは一般的にコストダウンの手法だと誤った理解をされている一面がある。そのため、コストダウンした部品で不具合が発生すると「VEのやり過ぎが不具合を引き起こした」などと言われる。VEを推進する立場として、こういった誤解や偏見を払拭するためにも、自分が関わったVE事例や指導したチームのVE事例では絶対に不具合を発生させたくないと考える。

技術的な不安を残さず代替案へ移行させるためには、「具体化」のステップで欠点を漏れなく克服する必要があるが、欠点を全て把握することは困難である。そこで、VE事例の心配点、懸念点を漏れなく洗い出し克服するために、未然防止のための問題発見手法の1プロセスであるDRBFM(Design Review Based on Failure Mode)を活用したVE実施手順について検討を行った。

本VE実施手順では複数回実施するデザインレビュを通じて、VEチームメンバ以外の社内有識者や経験のある諸先輩方、チームメンバの上司達を検討中のVEに巻き込むことで、全員が当事者であると認識してもらい、代替案の実現化まで様々なサポートを得やすくすることと、VEを正しく理解してもらうことを副次的な狙いとしている。