論文発行年度: 1996年 VE研究論文集 Vol.27

筆者がまだ設計の仕事に専念していた頃(1963-1985)、いくつかの製造業や食品加工工場の仕事に関与したことがある。その内のいくつかは、まだVEやプロセス・フロー・チャート技法など知らないままにやった仕事である。そして1960年代後期にはコンピューター・プログラミングの基本技術を習得し、それがソフトウェア・プログラム開発のフロー・チャート作りに役立った。

VEを勉強してから最初に化学工業タイプの施設に関与したのは、1987年に韓国の合成化学工場においてであった。このプロジェクトでは、筆者が1970年代後半に開発し、日本にも紹介した"エネルギー・バリューマネジメント理論"も適用した。

筆者が化成工業分野で本格的なVEに取り組んだのは1989年であった。まだこの業種に不慣れだったこと、チーム・メンバーの中にも具体的な化学プロセスを知らない人もいたなどの事情から、彼らの演習材料としてまずプロセス全体の完全なFASTダイアグラム(機能系統図)をチームワークで作らせた。そのプロジェクトでは、10段階のプロセス・ステップが並んでいた。プロセスの段階毎の入口(input)と出口(output)に焦点をおいて見て行くと、一連の論理的パターンが浮彫りにされてきた。それを最初として、多くのプロセス・プロジェクトに参画し、その結果をまとめ上げたのが、このProcess FASTまたはPro-FASTの技法である。

Pro-FAST技法は、プロセス・タイプ(装置工業)の対象プロジェクトをまず、ごく簡単なブロック・フロー・チャートでとらえて、それを単純な"包括的マスターFASTダイアグラム"に"変換"して研究するアプローチである。次に、そのマスターFASTダイアグラムを"拡張"して使うと、特定のプロセスの中に現れるすべての二次機能が捕捉できる。

本研究は既存技術で既存市場へ参入する成熟期にある新製品で、製品差別化に使用・便宜上の機能が主要な役割を果たす製品を対象に取り上げ、製品コンセプトづくりの段階で、顧客の機能評価に基づいて製造原価目標を主要な構造物に細分化する方法を提案するものである。このような顧客の機能評価に基づく製造原価目標の細分化法は渇望されて久しいが、この分野の研究は極めて少ない。そこで、本研究はこの課題に取り組みコンジョイント分析を用いることにより新しい方法論を提案した。さらに、このようにして得られた構造物ごとの製造原価目標と生産者側の構造物ごとの原価見積値を比較・勘案して開発設計チームが納得する原価目標値を決定させるようとするものである。

VEは価値向上を目的とする一連の評価プロセスであるが、実際多くはコストダウンのツールとして捉えられがちである。しかし技術開発部門の立場としては、その性格としてVE本来の価値向上を目的とした評価方法がぜひ必要である。

本研究は「技術開発のねらいは価値向上を図るVEの考え方に沿うものである。」という認識から、これまで当社のVEでは評価しにくかった「技術開発のテーマ毎に異なる開発目標」を機能として評価することを試みた。また報告書式の上でもこれまでのコストダウンとしての視点から、価値指数として、価値向上そのものを示す価値向上率(U)を使い評価しようとするものである。

さらに実際の技術開発テーマにおいて、開発事業計画の初期段階で環境及び社会リスクを定量的に評価する必要性から、従来評価の対象とならなかったこのようなリスクを機能として評価することを試みた。

自動車を構成する部品の中で小物と考えられるような部品は、車両開発日程の後半になって仕様決定されることが多く、これに起因して相手部品(=大物部品等)とのレイアウト上の制約、および派生車型(車種)の追加設定に伴う要求性能の追加等で、部品の種類が多くなるという傾向がある。部品メーカーとしては、これらの製品に対しVEおよび共通化という製品改善を行うわけであるが、前記した傾向が弊害となり、なかなか効果が上がらないのが現状である。本論は製品改善を単一の対象品として捕えるのではなく、派生品を含めた全バリエーションを対象にしてVE展開することにより、バリエーション全体として最大のコストメリットを生み出し、さらに、この展開の中でバリエーションその物の共通化をも狙った、実践的VEプロセスの構築を行うものである。

建設工事の合理化の中で、工法の改革による合理的施工方法の改善が要求されている。建設工事は複数の工事要素の組み合わせにより構成されており、それぞれの要素が密接に関連付けられている。一般のVE手法では、要素別に検討を行った方が具体的なアイデアがでやすいが、その反面、相互関連的な面において支障が出ることも多い。個々の要素では、有効なアイデアでも、前後の関連を見ると有効性が減じられる場合や、実際には採用できない具体案もでてくる。一つの要素に対してだけの改善案では、全体的にみて効果が半減してしまう。ここでは、工事要素が比較的少なく、各要素のからみが大きい高層煙突工事を事例として、要素の分類から要素の関連付けによるVE検討を行った。その結果、個々の要素を他の要素と関連づけることにより、総合的に高機能な施工方法を開発することができた。この建築工事におけるアイデア関連付け法の手法とその検討結果について報告する。

ヒット製品を作り出すためには基本機能もさることながらその製品の付加機能が極めて重要な役割を果たす。本研究はこの付加機能の評価問題に焦点を当て、その新しい評価方法を提案するものである。本研究では付加機能のうち「顧客が求めている付加機能」を評価対象とする。「顧客が求めている付加機能」の評価値は当然のことながら顧客の評価値に基づくべきであるが、顧客の評価値はそのニーズや、付加機能に対する知識の程度などによって多様であり、そのバラツキは小さくない。本研究はこのバラツキのある顧客の評価値をファジィ理論を応用して合理的に集約する方法論を示し、それをRV車に適用し、その有用性を明らかにする。そしてこの結果を開発設計段階の売価設定やVE活動における原価目標の設定に役立てようとするものである。

VEは実践工学であり経験工学であるといわれている。しかしながら、実践に寄与するVErを育てるために、数多くのVE実践活動を経験することによって実践力が身につくのを待っていたのでは、今日のような変化の時代のスピードについていけるものではない。加えて、組織のフラット化は一層の個の力量の強化を必要とし、商品競争力を向上させるためのVE技術をいかに早く広め実践に寄与するかが重要な課題のーつとなってきている。とりわけ、VE教育におけるVEマインドの移植成果は、その後の実践の場での戦力力量に大いに影響をもたらすものであり、従来のVE教育における課題を社内VEセミナーの実績データをもとに解析し、『実践的VE教育のすすめ』として提案する。

建設市場の発注量の低迷と、低コスト化の傾向は今なお進行しつつある。総合建設業においては今まで以上の低コストで施工する必要が生じ、総合建設業の各企業内におけるコスト低減努力だけではその限界をこえたといえる。

そのような状況下において、ここでは総合建設業における専門工事業者からのVE提案を協力業者からのVE提案と位置付け、以前にも増してVE提案が出てくるようにし、また、一般的製造業における発注者と協力業者との関係のような、固定した協力業者との関係を保ちながらさらなる低コスト化に対応するためにはどうすればよいのか、総合建設業と専門工事業者の双方にメリットがあると思われる方法のーつとして、協力業者のVE提案制度という新たなしくみを提案するものである。

製品は、その製品に作り込まれた機能がその目的を果たすが、当社の保守サービスという商品は,そこに働く人がその目的(目標)とする機能を果たしていくことに特徴がある。この所期の目標を達成していくには、各職場の人が目標を認識し、働きによって成果をあげていかねばならない。

目標達成に必要な機能は、動機づけをする機能、運用を図る機能、評価をする機能および支援をする機能の4つを具体的に伝え、行動する機能である。これら4つの機能を幹部、VE推進センターおよび各職場が実践した結果、定量的成果として目標値を達成し、定性的成果として経営効率の向上を目指す礎となる新しい企業文化、風土を築くことができる。

建設業におけるVE活動は受注者側の収益改善が主目的となりやすく、その結果価値向上を伴わないVE提案となるケースが多い。VEの持つ課題解決のための明瞭かつ公正な意志決定の方法が発注者、設計者、受注者など、建設に関わる関係者にとって正しく理解されているとはいいがたい。

建設業におけるVEを真に、普及、定着させていくためには受注者側におけるVE推進組織の役割を見直し企業内VEの枠を越えた新しいVE推進組織を確立し、建設に関わる関係者のVE基盤整備を行いVE活動を推進することが重要である。

この新しいVE推進組織について一年間試行し、検証の結果わが国におけるVE普及と建設業の信頼向上にとって効果的であると考えるので以下に詳述する。

製造業における新製品開発は、まったく新しい分野の製品を開発するというよりも、基本機能は変わらない現行品の類似品であったり、改良型の製品である場合が多い。そのような製品を従来より安くするためには、作り方を見直さなければならない場合が多い。すなわち、開発初期段階での生産性改善が重要となる。

しかし、製品開発初期段階でのVE活動において、生産性を評価し改善する技術は、VEではまだ充分に研究されていない分野である。

本論文は、製品の生産性を向上させるために、開発初期段階で、生産設備のVE活動を実施し、その活動の中で製品の生産性改善を行うことを提案するものである。

現在、建設省総合技術開発プロジェクトで開発中の新建築構造体系が確立すれば、構造設計者はコストエンジニアリングの一環として、自由なアイディアで技術提案をして構造設計が可能になる。その際の技術提案の最有力候補の一つに免震構造の採用が考えられる。

しかし、これまでの免震構造はコストは多少アップするが、機能(耐震性能)を大幅に向上させることで、価値を高めてはいるが、高い耐震性能が要求される一部の用途を除き、コストアップを許容しにくい一般建物への普及にまでは至らなかったのが実状である。

そこで、本論文ではコストアップの問題点を定量的に整理した上で、従来型の耐震構造の代替案として免震構造を採用した場合の設計VEの可能性と有効性について検討を行い、その有効性を確認した。

さらに、新しいコスト評価手法として、地震に対するリスク管理を含めたライフサイクルコストの低減についても免震構造の有効性を示した。

商品の価格破壊が進むなかモノ造りの面において生産体質の強化が急務となってきた。要求されるコストダウンの目標が大きく部門ごとの個々の活動や、単一の管理技術の活用では限界がある。各種管理技術の融合を図り、実践的かつ効果的な問題解決手法の確立の必要性を痛感している。

このような背景から、本論においては「製造現場における実践的なVE活動」を考える上で、特に「科学的管理手法のIE」と「機能的アプローチ手法のVE」の利点を融合化し、製造工程における管理技術として体系づけた。

その活動ステップは次の3段階で構成されている。

① IEの基本を活用して工程を細部にわたり分析しVE手法で機能定義する

② IE手法の核となる時間のデータから各工程を製造VEの効率指数に変換する

③ 製造VEの効率指数をもとに機能的アプローチで創造的に工程の改善を行い、ロス削減に取り組む

建設産業政策委員会が1995年4月に策定した「建設産業政策大綱」の基本目標の一番目に「エンドユーザー(国民)にトータルコストで良いものを安く提供する」と示されている。これは、われわれ建設産業に携わるものに対する社会的な要求であり、果たすべき使命でもある。

この社会的使命を果たすためには、対象プロジェクトに携わるすべての人々が従来の枠組みを乗り越え、エンドユーザーの立場に立って能力の結集を図らねばならない。

本稿は、このための有効な手段としての「公共工事における協同VE」の必要性とその進め方について提言するものである。

近年、当社の作業所における「VE計画会議」は、VE計画のためだけでなく、VE実施のための会議としても位置付けられるようになってきた。即ち、会議の内容が、VEテーマの摘出にとどまらず、多くのアイデア発想やアイデアの具体化を含むものに変化してきている。本論文は、当支店の「VE計画会議」において機能分析がどのように展開されているかを検証・分析し、それを踏まえて「新しいVE計画会議」を提案するものである。

企業が永続的に発展するためには、個々の製品がそれぞれに必要利益を確保することが重要である。本論文では、それを可能とする原価企画活動についての概念と進め方を、体系的にまとめると共に、その定着化における課題について実態を踏まえて抽出し、原価企画活動を円滑に進めるためのVE適用方法の望ましい姿を、仕組みづくり・人づくり・道具づくりの面から総合的に提案する。

カーメーカーは車両の商品性向上のために、様々な装備品を開発しユーザーに提供している。それぞれの装備品は標準装着、オプション、車両グレードによる使い分け、等に分類され車両全体の製品仕様に組み込まれる。ユーザーの各装備品に対する評価を正確に把握しユーザーにとって最適の製品仕様を設定できる方法が確立できれば、製品の価値を高める有効な手段となる。

従来、製品仕様は様々な情報をもとに経験的な判断により決定されていたが、最適化を追求するためには今一歩精度に問題があった。

本稿はユーザーにとっての必要な機能、不要な機能を、装備品という切り口からより高い精度で評価し、製品仕様に反映させる方法とその検証結果について述べたものである。

VEの成果拡大を図るため、今まではあまり目を向けていなかった単体部品(構成部品を持たない単一材料や単機能部品)についてもVEを実施していかなければならない。単体部品は製品のVEの適用が難しく成果も出しにくいので、製造のVEを適用しているが、VEの活動メンバーからは手軽に使えて、より成果のあがる新VE手法が望まれている。

現在行っている製造のVEでは製品改善も考慮するようにはしているが、手法として活動の進め方が製造工程を中心にした進め方となっているため、製品の機能に対する意識が薄くなりがちで製品の改善力に欠けるといった問題点がある。

このような問題点を解決するため、誰にでも使えて成果が得られ、実戦向きで、しかも従来と同様な時間で活動できる製品・製造混成型VE手法を開発したので、これについて述べる。