論文発行年度: 1998年 VE研究論文集 Vol.29

建設業では品質規格ISOの認証取得ラッシュが続いている。当社でも全支店で品質規格ISO9001の認証を取得することができた。一方、当社では30年にわたりVEに取り組んできた。VEとISOとは、どんな関連があるのだろうか。個別に運用していてよいのだろうか。本論文では最初にVEとISOとの関連を分析し、それぞれの性格を明らかにする。その後、企業にとって効率的で効果的な運用をするための提案を行う。

標準的な事例として、某文化会館建設工事でのVE適用事例により活用提案の検証を行う。本論文を公表することにより、ISOとの融合をはかり施工管理においてVEを管理技術として有効活用することを期待する。

建築生産活動の中で企画から維持管理まで広範囲な分野に関わる設計部門では、効果の大きな川上でのVEや、潜在需要の発掘や事業化推進の有効な手法としての建築設計VEの重要性が高まっている。

本論文では建築設計部門内部で行われてきたVE活動の分析から問題点の把握を行い、今後の効果的なVEの活用法の提案を行うものである。

設計案を評価するには通常コストテーブルが活用される。コストテーブルの一形態としてコストモデル式を採用する企業が多くなってきた。多くのコストモデル式は統計的手法を用いて作成されているので、それに見合うデータ数が必要不可欠である。しかし、現実には数多くのデータが入手できないことが多く、このときはこの手法は採用できない。

われわれが開発した重み付け分析や制約付回帰分析と称する技法によるとこの制限を解消でき、きわめて少数のデータしか入手できない場合でも、理論的に妥当なコストモデル式を作成できるし、これを活用することができる。本研究はこのような方法の概要を述べ、その活用方法について新しい提案をするものである。

今日のヒット製品は突然生まれてきては消えていくという浮動的、流動的な特徴をもち、個性的な顧客の潜在的なニーズやウォンツをタイミングよくとらえたものが多い。このようなとらえづらい顧客のニーズやウォンツに俊敏(agile)に対応していくには、新しいものを好む先導的顧客の動向を常時把握していなければならない。彼らは当該製品群に対するオピニオンリーダー、すなわち一般ユーザーに大きな影響を及ぼす先導的顧客だからである。本研究は製品ライフサイクルが短く、次々と新製品が投入されるような導入期や成長期の新製品を対象にし(事例として情報携帯端末をとりあげた)、ヒット製品づくりをするコンセプトメーキング法の1つとして、先導的顧客が当該製品に対し要求する機能を明確にし、その評点に基づいて、次期製品の新製品仕様をユーザーの視点から評価する方法を展開したものである。

求められる機能を提供する企業にとって、新しいコンセプトの提案をして潜在ニーズを掘り起こし、そのニーズに沿ったシーズ開発をする必要に迫られている。一方、新しい価値を創造し、明確に他製品を差別化するための鍵を握るのは、製品を構成するキ一部品/キー材料ともいわれていることから、開発企画段階から、製品開発側の発注者と資材供給側の取引先との両者の研究開発部門を参画させたプロジェクトをつくり、両者が共同して製品開発を推進する資材共同開発VE推進の仕組みを確立し、価値を共に創造する基盤構築を行いVE活動を推進することが重要である。

この資材共同開発VE推進の仕組みについて、パイロット・プロジェクトを実行した結果、VEの適用範囲の拡大に効果の期待できる成果が得られたので、これに基づく方法論を以下に記述する。

大競争時代下で価格競争の厳しい家電業界では開発製品に対して、厳しい目標原価の設定と開発期間の短縮が必要である。しかし、収益確保に必要な厳しい目標原価を達成できずに製品化する事例がある。

本論文は目標原価未達の課題を改善するために、開発設計段階の目標原価達成手法である原価企画活動を1994年から実施してきた事例について目標原価未達の原因を分析評価した。この結果に基づいて、原価管理とVEを具体的に融合させてVE担当者が目標達成意欲をだせるシステマティックで組織的な活動をコンカレントにできる実践的な原価企画とVE活動システムを開発したのでこれについて述べる。

取り上げたVE対象の機能評価を行う際に、実用的には機能別にコスト分析したあと、このコストを基準にして、機能評価値をきめ価値指数を求めて判定する。

その過程で、多くの場合は全体の低減目標などのバランスだけで、解決のつくものもあるが、扱うシステムが大きくなり、また新しい機能を追加したり、ソフトを対象にするようになると判定が複雑となる。

本論文は、機能のコスト評価の段階で、目的にあった評価の価値指数を求める方法を提言する。

建設産業、特に公共工事の一部において設計VEの導入が始まった。しかしながら、現状の設計VE導入に際しては、VEについての基本的な理解がなされぬまま、まず形から入ることが多い。その結果期待したほどの成果が上げられず、設計VEそのものに対する誤った評価がなされることもある。これまでの設計VEへの参加経験から、公共工事設計VEにおいては、特にチームリーダーが結果に非常に大きな影響を与えることを痛感した。

本研究では、設計VEのもつ問題点を整理した上で、VEスタディを円滑に実施し、より大きな成果を上げるためには、チームリーダーとしてどのような考え方や行動がポイントとなるかを中心に論述した。

研究開発部門の生産性向上は、企業経営において重要課題であり、その課題に対応する管理技術としてVEは効果的であり、しかも、研究開発段階でのVE活動の実施はVE活動対象のなかで最も効果的である。そこで、本論文では、研究開発部門のVE活動をより効率化するために構築した、既に研究開発部門に普及している高度情報技術を活用した経済的システムとしてのイントラネットを利用し、チームデザインを重視するとともに、VE発想技法を活用したVEジョブのアプリケーション化と分散協調型のVE活動を可能にするVE活動支援システムについて述べる。

企業が永続的に発展するためには、それぞれの製品が必要利益を確保していかねばならない。そのための方策として原価企画が有効である。しかし、従来発表された原価企画は、どちらかというと完成品メーカー(例えば自動車とか、家電製品等)の新製品開発段階における展開方法に関するものが多く、部品メーカー(この場合、機能分野ごとに引合いを受けて生産している専門メーカーをいう)にとって活用しづらいものが多かった。

本論文では、部品メーカーにとって有効な原価企画の展開方法を、戦略・戦術的観点から望ましい「あるべき姿」を示すと共に、効果的に推進するための具体的方策として、①攻めの原価企画②守りの原価企画③要素別VE の3つの活動を効果的に組み合わせる方式を提案する。そして、これら3つの活動における現状の問題点を明確にし、その対応策として具体的ステップを示し、各ステップがなぜ必要なのか、また、なぜそうせねばならいのかについて解説する。