論文発行年度: 1978年 VE研究論文集 Vol.9

この論文は,先に発表された「ステップリスト・マネジメントの方法」(1976年度VE大会論文集に記載)の考え方を利用して,DESIGN-TO-COSTの方法を新しく手順化すると同時に,その中で使われる「VE手法」をいくつかの形に変化させ,短時間でかつシステマティックにそれを進めることができるようにしたものです。

金型は個別発注生産であるため,発注者側(例えば,資材購買部門)で金型の事前分析を行なうことは,大変困難であるといわれていた。しかし逆の見方をすれば,金型は個別生産(1品生産)であるだけに事前に各種の分析や標準設定を具体的根拠に基づいて行ない,両者(発注者と受注者)が共通のベースで,両者の意志を十分に取り入れた型分析を行なう必要がある。

決して各担当者個人の経験技量だけに基づいた分析であってはならない。基本的な型製作方針に基づき,型分析を行ない,判断を必要とする部分に対し,経験や技量を結集していけばよい。このようにして作られた金型は,意思の入った金型といえるであろう。

ところで,最近の型製作技術の進歩はめざましく,NC装置付加工機,EDPによる型設計・製作,ワイヤーカット放電加工機等,型製作加工機の進歩のみならず,金型を構成する各種の標準規格部品の普及度合も高く,削って作る時代から,規格品の選択・組合せの時代へと移りつつある。つまり"金型づくりの改革"が行なわれつつあるのである。

一方,産業界にあっては,経済の低迷,需要の鈍化など厳しい環境下にあり,生産部門では多種少量生産の傾向がますます増大している。ということは,金型製作面数の増大,金型費用の上昇(コスト増大),金型切換頻度の増加ということになる。これらのことを考えると,発注者側での事前の金型分析,つまりは"金型への意志投入"ということは,大変重要な意味を持っているといわざるをえない。

今回,このような金型という技術的要素の強い分野にVE手法も活用し,資材購買部門がどのように取り組んだかを述べてみたい。

当社のVE導入は,先進各社より大分おくれ,昭和49年における全社でのコスト低減緊急指令にもとづいて行なわれ,以来5年を経て全社的な成果を確保するまでに至っている。

昭和47年に始まった全社的なTQC推進活動の中で,VE導入はトップの強いニーズにより組織化されてスタートしたが,導入に当り,TQCの考え方にもとづいてPLAN,DO,CHECK,ACTIONのサークルをまわしてゆく方法がとられた。このような姿勢のもとに,本社センターと,各事業部との分担する役割を明確にしてVEが導入された。

この論文は,後発のギャップを解消するために,VE導入の考え方・すすめ方をTQC推進の中で計画化し,PDCAのステップをふみながら成果に結びつけた過程を報告し,ご批判を乞うものである。

石油ショック以来,低迷を続けるわが国経済は,最近の為替相場の激変と相重なって,強烈な打撃を受け,今世紀最大の危機状態に陥ったといえよう。

当社に置いても,不況の波を諸に受け,受注量の激減,販売の伸び悩み,等々,暗い材料がうっ積し,重大な危機状態に陥ったことが,身にひしひと感じられる昨今の状況である。この激動の時代にこそ,「物の機能の本質にもどって見よう」とするVEの原点に帰り,多くの職場で多くの人々によって,限りある資源,大切な物や労力の価値を高め,ひいては日本経済の発展につとめる必要がある。

そのためには,"バリューエンジニア人口の増大"は不可欠の条件であり,当社では,その一環として,VE入門研修会を開催してきた。

本論文では,このVE入門研修会の考え方と進め方を紹介するとともに,今後の問題点などについて述べるので,ご批判,ご叱正を頂きたい。

今や,低経済成長下における各企業のVA活動に対する期待は大きく,収益向上の強力な武器として,VA活動はより活発に展開される傾向にある。

しかしながら,一方では,製品へのVA案適用遅れ,VA案検討不足による実質効果の目減り,さらには,VA分析期間の長期化等,VA活動自身の非能率等の理由により,「時間をかけた割には儲からない」という批判もある。

このようなVA活動の効率的運営という課題に対しては,従来より,VAプロジェクトの計画とフォローアップに際し,「VA効率」によりVA投資効率効果を測定してきたが,今回,更に時間的効率指標を設定することにより,機会損失を最小とし,実質効果を向上させてVA活動に対する信頼度を高めるための管理手法を確立した。

以下,これらVA活動を効率的に運営するための管理手法について述べてみたい。

新製品開発に当っては,①性能,②開発期間,③コストの3つを管理する必要がある。しかし,現実には他社との競争上,新製品を早く市場に出すことが要求されるため,性能,納期が優先され,コストについては多少の不満があっても,そのまま出荷されることが,往々にしてある。

ところが,コストは開発,設計段階で"その大部分"が決定されてしまうので,利益機種を開発しようと思えば,その時点でVAを適用し,徹底したコスト管理を実施することが重要である。開発VAを展開するに当っては,機能展開の方法,機能評価法,アイデア発想法など,各種の技法上の問題があるが,それにも増して重要なことは,各メンバーがプロジェクトに対して,どれ程真剣に取り組む気持を持つかである。その大きな要因の1つに「目標コストの決め方」がある。

本稿では,目標設定の仕方と,その管理について,以下の項目に従って述べてみたい。

(1) 製品の目標コストの合理的な設定方法

(2) 目標コストの配分方法(機能コスト配分と個人別目標配分との融合)

(3) 目標コストの管理体制

なお,本稿における新製品開発とは,今まで世の中になかった製品を開発するという意味ではなく,従来の機種系列の1つとして開発するとか,コストダウンを狙ったモデル・チェンジとして新製品を開発するという意味で使用している。

建設作業所におけるVE活動は,さまざまの制約条件のもとにあり,これを一つひとつ克服していくことは,建設業の特色を生かしたVEを生み出すことになる。建設作業所は全国に散在し,一品受注であり,ーつとして同一条件のものはない。また移動性があり,工期も6ヵ月とか1年という比較的短期間のものが大部分である。編成メンバーも1人から数名と少人数であり,その都度,編成替えが行なわれる。工事管理,原価管理はもとより,作業所経営の大部分は,作業所長に委ねられている。このような条件でVEを実施するためには,ベストをねらうより,ベターなものを数多く取り上げるのがよい。この考え方に基づいて,当社では「3時間VE」手法及び,VE対象選定のための「VE計画会議」を作業所において実践していることは,第6回および7回のVE全国大会で発表したとおりである。

現在,新しい作業所においては,次々とVE改善が行なわれ,その実施例はVE部門に報告されたもののみで,およそ,2,000件に達している。これらは,定期的に評価され,よいものは「VEスポット」にまとめられ,全作業所に配布されている。しかし,「VEスポット」はVE実施例のごく一部分であり,これらを含めたVE実施例は,今後も増え続けていくものである。

以上のような特色と実績を踏まえて,作業所VE活動をさらに実のあるものにし,質的にも転換をはかるためには,この莫大な実績データとしてのVE実施例を,縦横無尽に使い切ることが,きわめて重大な課題となる。VE情報としての手持ちVE実施例を,システム的に活用することは,今後の作業所における工事管理に欠かせないことになると思われる。また,とくに少人数作業所において,従来の「3時間VE」を補完する手法としての「担当者VE」を活用することも有効である。以下に,主としてVE情報側面から作業所VE活動の現状と問題点を述べ,その解決策と要点を工事管理に即したVEの展開として詳述する。

昨今の企業を取り巻く環境は,円高ドル安,国内外の景気不振と,ますますの厳しさを迎え,企業の総合的な体質改善を余儀なくされている。また市場競争の形態からみても,ほとんどの商品群が成長期から爛熟期へと移行し,コスト,品質,技術等の膠着化による,デザイン競争の感が,より顕著となり,デザイン部門に対する,価値ある商品デザインが切望されている。

また,こうした中で,当社VE活動の重点を,商品,部品に対するハードVEと,製造部門や間接部門を中心とした,仕事の作業の進め方のVE,いわゆるソフトVEとの,トータル的VE活動展開による,価値ある仕事の進め方を基本思想とした,新しい商品づくりを志向している。

しかしながら,感覚的な要素が重大な意味をもつデザイン活動と,価値,機能を重要視し現象をクールに分析把握しようとするVE活動とは,相反する要素を含んでいるために,水と油的印象を与える。しかも,機能(F)を一定にして部品コスト(C)を下げるという,ハードVEの影響を受け,デザイン(外観コスト)に対する価値評価が正確に把握されていないことと相互して,VEによるコストダウン会議では,常にデザイン面が"いけにえ"にされていた時期があり,デザイナーはVE活動を反目敬遠するようになり,VEを正しく理解する機会を逸していたが,新しい仕事への脱皮を迫られる今日,VEというクールなフィルターを通して,デザイン業務全体の体質改善,およびデザイナーの意識改革を目標とし,手仕事的な作業を省力化することにより,デザイン本来の機能である,発想部分に重点をおいた,デザインプロセスを展開し,将来の状況を予測し,それを描くことのできるという,デザイン独自の秘法と信用を,確保することを目的としなければならない。

景気の低迷と円高とによって,わが国の経済は低成長の時代に入り,総需要の減退から深刻な景気の悪化をまねくに至って,各企業間の競争は,ますます激烈をきわめ,その環境は,非常に厳しい状況下におかれている。

このような状況にあって,企業の目的である利益確保をはかるため,各企業はVAを単なる改善の手法としてのみでなく"経営戦略"の柱として位置づけ,全組織を結集して取り組み実績を上げている。

しかし,現在,新製品開発のためのVAアプローチ技法はあっても,それが新製品企画の市場調査や新規機能の発掘・拡大のツールとしては生かされていないのが実体のようである。それは,まずVAの考え方の中心をなす機能分析が,うまく生かされていないからである。これは使う側での勉強不足のために"機能"についての考え方に幅がなかったし,柔軟な考えが持てなかったためと思われる。

これらの背景をもとに,ある分野における商品に関しては,製品企画への実用度の高い手法の開発と確立を行ない,その有効性が確認されたので,ここに紹介する。

本手法は,新製品の中でも,現製品をもとに大幅に改善されるものを対象としたものであり,その主な内容としては<情報収集にもとづく顧客要求機能を,そのもっとも関係の深い各機能分野にとり入れ,使用者機能及びメリットを開発していく-川下型開発法>と<各機能の分解・組合わせによる方法と基本機能から使用者機能を展開していく-川上型開発法>をドッキングして展開する,商品企画に対する機能分析・分解・組立手法である。

当社では昭和47年に産業能率短期大学のご指導により,VE実践セミナーを開催以来,従来の管理技術の主流であった「IE」,「QC」,に「VE」を含めた三本柱で,生産活動の合理化・管理技術の向上を推進してきた。

その間,推進組織の変遷や,ポリシーの変化により,個々の事業場での進歩状況は,一定の伸びを示してはいないが,全体としては,着実に定着・発展しつつある。

しかしながら,商品ライフの短縮傾向をはじめとし,VE活動をとりまく環境の変化とVE活動の活発化により,次のような新たな問題が発生してきた。

<改善の質的内容の変化>

(1) VE改善の繰返し実施による投資効率の逓減。

(2) 多品種少量生産による改善効率の低下。

(3) 取組メンバーの拡大による改善案の多様化。

(4) 標準化推進活動とVE活動の競合。

一方,VE提案の採否判定については,商品ライフの短縮化の傾向の中で多様化する改善案に対して,機会損失を防ぐ意味から,早急な決断が必要とされている。

そこで,これ等の問題に対処するべくVE提案の損益分岐点を明確にすると共に,その判断基準の確立を目指した。