論文発行年度: 1987年 VE研究論文集 Vol.18

企業の商品戦略を有利に展開するためには,中・長期的視野に立った正しいVE目標の設定が不可欠である。

コストに関するVE目標の設定法については,過去に報告済みであるが,ここでは更にこの考え方を拡大し,競争の激しいすべての製品に適用するために,機能とコストすなわち価値の側面から,VE目標の設定法を検討した。本研究は,まず価値の低減に関する考察から,価値低減曲線の経験式を確立した。更にこの式から目標価値指数の設定式を導きだし,これらの式の妥当性を具体的事例によって検証した。

VEにおける製品の機能評価は,製品を構成している各機能の重要度が評価(分析)者間の主観的な判断を基に決定され,かなり確定した値として各機能にコストが配分されていると思われる。

そこで,本論文では,出来るだけ評価者間の主観的な判断を避け,より客観的な判断で各機能の重要度に応じた配分比とその配分コストを決定するための「あいまいさを考慮した機能評価システム」について考察する。

当社はVEの導入以来,数々の技法開発を行っている。最近では,建設の工事ソフトVEを開発し実施しているが,適用分野によっては改善の余地があると考えられる。

今回さらに使いやすいものに近づけるために,当社で開発した工事ソフトVE(施工計画・施工法)での問題点を拾い出し,次の3点を改善する。

① 機能が欠落することがある。→VE対象の選定時の項目(計画工法・計画工法の問題点・改善希望点・制約条件)より言語データを抽出する。

② 機能どうしの結合に無理な点がある。→言語データを使用して連関図にて因果関係を整理する。

言語データを機能に変換し,連関図を利用して機能系統図を作成する。

③ アイデア発想が十分生かされていない。→ブレーン・ストーミングで出たアイデアを評価し,機能系統図の各機能にアイデアを並べ,アイデア具体化のプランづくりを行う。

ソフトVEの重要性,有効性はすでに報告されているが,ハードVEにくらべて手法・対象の難しさから具体的な実践活動は各企業で試行が積重ねられている。

当事業所では部課単位の業務改善活動に重点をおいて推進してきた。この過程でテーマを選定することが改善の成果をあげる大きな要因であることを感じた。

この論文はソフトVE事例のテーマを用語の面から調査し,テーマ選定に活用できる方法を考える。すすめ方はVEテーマに使用されている単語を調査し,「分類語彙集」(国立国語研究所)を基準に分類する。分類結果を図表化してテーマの傾向を明確にするとともに,未着手の分野を示す。VEテーマを指標化し,適用分野拡大に役立てようとするものである。

建設業が多様化してゆく社会の中で発展してゆくためには,新技術の開発が不可欠であるが,従来のように数少ない研究開発担当者によって技術開発を進めるのでは多様化する今日のニーズに答えられなくなっている。

本論文は,こうした状況を打破するため,全社的なVAの組織と手法を利用して,全社員のもつ情報と能力を結集して技術開発を推進する方法を示したものである。具体的には,技術開発の初期段階から最終段階まで各ステップに応じた社内提案制度,VA実践チーム,プロジェクトチーム,各種のVA会議を通じて,上下両方向の情報の伝達を繰り返すシステムを提案した。

当事業所では,製品開発時にVECを効果的に導入し,製品価値向上に積極的に取り組んでいる。その中で金型VECも重要な役割をになっている。

この論文では,新規型の約70%を占める射出成形用金型とプレス板金用金型に焦点を当てて,新規型の必要な部品の機能系統図から,価値の把握と金型費の低減ポテンシャル値を算出し,それに基づいてアイディアを具体的に抽出するプロセスを「金型VEC」としてまとめ報告するものである。

装置産業と言われる電子部品製造は塵挨の関係上,分析するための作業状況の把握や,微細作業の解析が困難であり,VECのアプローチが充分出来ないといった先入観があった。この問題を解決し電子デバイスに合ったVEC手法を開発し適用した。これは,信頼性およびコストに最も影響する要素である不良を指数化して,それを基に工程機能分析,不良要因系統図を作成し,要因分析マトリクスにまとめ,それをベースにアイデア発想を行うものである。特にこの種の評価にあたっては一つのアイデアが多岐にわたって影響を及ぼすため,それを総合的に評価把握するのに,バードチャート評価表を用いて,改善後の不良指数を推定し,アイデアの検証を試み,改善の前後で不良指数を比較検討するものである。

科学的管理技法としてVEをわが国に導入して以来,各産業分野でそれぞれ独自に技法の改善,開発が行われて来た。

当社においても昭和44年にVEを導入して以来VE成果をさらに拡大するために,より効率的な技法の研究・開発に取り組んでいる。

本論文は,VEに標準化の考え方を取り入れ,より一層VE成果を拡大するために,当事業所で行っている標準化VE活動と,VE技法の概要について述べる。

当佐和工場は,自動車機器専門工場として,昭和43年に設立されて以来,顧客第一主義をモットーにし,製品機能をより確実に,より安く達成することを使命と考え,全従業員の総力を結集してVEC活動を展開してきた。

しかし,昨今の急激な円高ドル安の進展等世情の急変により,より一層の価値改善努力が急務となってきている。

そのため,製品開発段階では,0 Look-VECとか1st Look-VEC という形で,構造方式面に力点を置いたVEC,さらに生産段階では,2nd Look-VECとして生産性,組立性に力点を置いたVEC等あらゆる局面で一段と強力なVECの展開をしてきている。

その一環としての当工場の,主力VEC展開に製造VECがある。

この製造VECは主として加工費を対象とすることから,その実施に際しては,加工(組立)の現状を早く正確に把握し,その問題点やネックポイントを深く認識の上,改善ポテンシャルの摘出から多くの良質のアイデアが創出できるようにすることが重要である。

そのために,製造VEC手法として工程や工程要素分析等の各種分析技法が用いられてきたが,いずれも対象部品(作業)のみに分析範囲を絞った技法であるため,改善された結果が,他の類似機能部品(作業)と比較しベストの価値改善ができたかどうかは必ずしも明確でなかった。

本論文は製品機能をより確実にし,製造上の価値を向上させるため過去のベストな類似機能部品と各要素について対比し弱点部分を改善するヒントの摘出からアイデアの発想を容易ならしめ,価値を上げていく技法である。

なお,当社では61年9月より従来使用していた"VA"の呼称を"VEC" [Value Engineering For Customers:顧客指向の価値改善] [マーケティングに基づく顧客ニーズを踏まえた開発段階からの活動] に変更したので,本論文では全て"VEC"と表現している。

以下その内容を紹介する。

VEは,わが国に導入されて25年余となり,各企業の利益確保に貢献をしつつ,大きな発展を遂げたが,今後VEの"真価"を更に発揮しなければならない状況にある。

本論文は,VEの今後の課題について,

(1) VEの原点ともいうべき,「企業経営におけるVEの位置づけの明確化・VEの基本ステップの確認・VEの原点の再認識」をして,

(2) VE発展の最大のカギとなるVErが,「VErの"あるべき姿"を確認し,それを目指して,努力を続けること」である。

と考え,関係文献を参考にして,筆者なりの考えをまとめたものである。

現今の厳しい経済環境下にあって,企業は間接部門の効率化に取り組むことが必須事項である。これの有効な手段はソフトVA活動である。と認識していても実態は伴わない。本論文はこれを追求し,取り組みやすいソフトVA技法の開発により,活動の定着化を営業部門の実践活動で実証している。また,本技法の特徴は,見えない業務機能を見えやすく機能定義していること。及びソフトVA活動は,TFP活動もさることながら改善提案事項を組織全体が受まとめて,着実に実行させることが難問であり,これを解決している点である。

管理・間接部門の生産性向上が急務となっており,この部門に科学的管理技法であるVEが適用され始めている。建設業の特殊条件をふまえ,ソフトVEを効果的に実施するために,VE管理システムとVE実施システム,トップダウンのVEとボトムアップのなどの仕組について考察した。

企業の商品戦略を機能の側面から分析すると,次の4つのパターンに分類することができる。

①単機能化(単純化) ②多機能化(複合化)

③低機能化(普及化) ④高機能化(高級化)

本論文は,企業の商品戦略に結びついたVE活動を強力に展開するために,第Ⅰ報で確立した目標価値指数の一般式を4つのパターンの機能戦略に適用し,それぞれの目標価値指数の設定式を導きだしたものである。

この結果,すべての商品戦略をVE活動のための目標価値指数として定量化することが可能となった。

建築設計では,顧客の要求する構築物を作るために,顧客ニーズを具体化して,寸法,強度,材質,デザイン等に変換し,要求されている構築物がどのようなものであるか,工事段階でのようなものをつくればよいかを設計図書,仕様書を作成し,確定化している。

設計分野でVE活動を行う中で,因子分析法を用いて顧客のイメージを収集・分析し,機能評価に反映することで,顧客のニーズをより的確に把握し,顧客の価値向上を図る構想設計VE手法について述べる。

VEの発想ステップでは,カードがよく利用される。しかし,現実のVEプロジェクト活動の多くは,カード本来の利点をあまり生かしていない。むしろ,弊害の多い使い方が目立つ。

本論文は,VEが組織的活動であるという視点に立ってアイデアの発散段階におけるカードへの記述はどうあるべきかについて,記号論をもとに研究したものである。

まず,カード利用の目的を明確にした上で,現状のカードへの記述の問題点と,それが発想作業にどのような弊害を与えているかを指摘した。つづいて,これを克服するために新しく開発した。効果的なカードへの記述方法を,具体的かつ詳細に述べた。

最近の市場環境は,飽食の時代・感性消費の時代などとも言われ,顧客の表面的ニーズだけの商品開発では不充分であり,潜在的ニーズをいかに掴みとるかがその成否をわけている。0 Look VEにおいても,潜在ニーズの把握が非常に重要な意味をもってきている。

この論文では,潜在ニーズをより効率的に発見するために,研究開発者が市場に行き,顧客自身を定量的側面(IE手法の応用)と定性的側面(感性アップ)の両面でとらえることの重要性を示すとともに,その能力強化のために当社の0 Look VEの中で実施しているトレーニングプログラム”KISS法”を紹介する。

新製品開発を成功に導くためには,品質,コスト及び日程の3つのリスク・ファクターについて進度をコントロールする必要がある。

その管理をVEの"機能設計"に取り入れ,VEジョブと融合させる方法を考えた。その名を『機能関連図』といい,全体を一望しながら開発進度を管理出来るVEテクニックである。

通常アイデア発想法については,ブレーンストーミング法が行われているが,ややもすれば一般的なアイデア発想に終わってしまう場合が多い。当社のような物流業においては営業拠点が全国に散在しているため,短時間で効率的なアイデア発想を行わなければならず,そのため,従来行っているブレーンストーミング主体のアイデア発想から,より効率的なアイデア発想法を開発する必要があった。そのため,VEC-CG技法とブレーンイラストライティング技法の2つを開発した。

本報告はその経緯及び結果についてまとめたものである。

本論文はコンピュータシステムを稼働させるアプリケーションソフトウェアを開発,生産する企業において,効果的なソフトウェア活動を展開するために「コストトランスファ技法」をKEYにして,マーケティングVE,開発VEを遂行する戦略的ソフトウェアVEの実用法について述べる。

ソフトウェアの製品を定義化し,その特徴をとらえ,業種業態に合わせたソフトウェアVEジョブプランを掲げ,高度なソフトウェア技術者不足が深刻さを増す本業界において,ソフトウェアVE活動が,顧客のみならず企業が継続して社会に貢献するための,経営活性化策であることを強く提唱するものである。