論文発行年度: 1990年 VE研究論文集 Vol.21

建設業は顧客から工事の注文を受け生産するという,受注生産形態を有している。つまり,顧客第一主義に徹し顧客の事業化を有利にして,はじめて工事受注を獲得できるという業種である。

この受注と生産活動を円滑に行うためには,顧客の事業化を有利にする方法が必要である。

このためには,今まで不可能とされていた工法を可能にし,また,社会・経済情勢の変化による建設費の変動を安定させる等の方法を創出する必要がある。

これらを実現する具体的な手法として,工法を創出するVE手法を作成した。

この手法は「工法の機能」と工法に対応する「作業手順」をマトリックスの関係に関連づけ工法を創出する手法で,以下にこの内容を提示しようと思う。

情報ネットワークを伴うシステムをVE対象とする場合,単独システムを効果的に稼働させ,その機能を満足させるためには他のいくつかの関連システムと相関させ,有機的に結合することによって始めて目的を達成するものが多くなってきた。

この論文では相乗(派及)効果を狙ったシステムVEの推進ジョブプラン及び評価法について述べた。

そのポイントは次の3つである。

(1)システム構成要素研究と連想キーワード設定による関連システム追求法

(2)ダイヤチャートによる独立したシステム機能ブロック関連評価法

(3)システムVEにおける相乗効果(派及効果)の評価法

当社ではこの手法を物流システム改善に適用し,大きな成果を上げることが出来た。

この手法を用いることは最少の投入工数で,大きなVE効果を得るために極めて有効である。

試作設計段階、さらに開発企画段階といったようにより源流段階でのVEの適用が注目される時代となった。

しかし他方では、VE導入期および停滞気味の段階における企業では、保守的な考え方の殻をどう破るかが大きな問題である。

本論文は、この問題について掘り下げを行うと共に、解決の一方策としての「現状打破の技法」を提案したものである。

さらに、当社における同手法の展開事例を通して、この問題に対し本技法が有力な道具となることを示した。

生産性向上は企業における永遠のテーマともいえる。その生産性の向上を製造VEの立場から挑戦してみようと思う。すなわち造り易さの観点からVEを行ない,生産性の向上をはかろうというものである。

作り易さの基本は(1)部品を知る (2)工程を知る (3)加工しやすさ,組立やすさを評価する (4)付加価値を生まぬ作業を排除することにあると考え,各々を有機的に結びつけ,それから改善のポテンシャルを導き出し,生産性向上に結びつけようというものである。

自動車部品を対象とした自社のVE活動を進めるかたわら,13社に及ぶ協力会社に対して同じような共同VE活動を指導・推進し,6~8ヶ月の活動で所期の目標を達成できる見通しを得た。

協力会社とのVE活動においては,各企業の性格を十分に理解することが必要であり,また,発注者と協力会社は売買する製品の価格については対立関係にあるため,共同VE活動において両者は対等な立場にあるとは言いがたく,VE活動を推進するに当たってはその点を十分に配慮しなければならない。この論文では,通常の自社内のVE活動と違って協力会社との共同VE活動で特に気配りを要する点についていくつかの提案をする。

当事業所の製品群は"エネルギーと情報をつなぐ"ための電線,ケーブルおよびこれらのシステム製品である。近年これら顧客の生産体制並びに販売ルート等の変化に伴い,多機能,短納期の要求が強く打ち出されて来ており顧客ニーズに立脚した組織的な推進がより重要な課題となっている。

本論文は,こうした時代の変化に対応した全社組織のVE活動を構築したものである。『顧客の要求因子』をベースに,要求ニーズをより正確につかみそれを製品に反映させるマネジメントVEを行い,より高価値を生み出す体制作り推進の有効ツールとして考案したものである。

新製品の開発に当たって,開発プロセスのどこでコスト・品質を作り込むかが,そのプロジェクトの開発効率に大きな影響を及ぼす。

目標コストに到達しないが故に,開発後期に再設計,再検証などの作業を強いることも多い。

そこで,VE手法を中心に,当社にある各種CR手法を組み合わせ,実施タイミング,責任部署等を整理した『コスト展開フロー』を作成し,最適活用を図った。

また,各種のケースに合った多くのCR手法がマニュアル化されているが,活用時に,最適のCR手法を選択するために"CR手法選択のためのツール"が必要となり,これを『コスト攻略マップ』としてまとめた。

通信機器の海外生産を考える場合,その製品の特殊性(一般的な民生機器との違い)や,海外での生産形態の違いを充分に考慮した製品設計が要求される。

本論文は,ビジネス用ボタン電話機の設計を通し,通信機器が要求する品質水準や小量多品種問題等と,海外での製造技術力とのギャップを克服する為に実施した開発設計手法に関するものである。VA的な観点からの分析やVA設計方針,具体策の選定方法など,実際の海外生産事例に適用し,その効果を実証した。本報告は,その事例を基に,通信機器に於ける海外生産化設計手法について考察したものである。

環境問題に対する世論の高まりは近年特に著しい。その中でも特に大きくとり上げられている1つが,廃棄物処理の問題である。

当工場は昭和62年に廃棄物処理のVEに取り組んだ。しかしこれは埋立地枯渇による処理費高騰への対応を目的とするコスト低減プロジェクトであった。

2年余を経て,このプロジェクトは一応の成果を得つつある。しかしこの間,環境管理への意識の高まりは,「産業廃棄物処理のVE」の焦点をコストから序々にその処理法へ移していった。すなわち環境保全・再資源化を指向した処理法により,産業廃棄物処理そのものの価値を高めることへと,主目的を移動させたのである。

本論は,当工場がコスト低減を目ざした活動から,地球を顧客とみなした「産業廃棄物処理のVE」へ転向する一課程について学んだところを報告するものである。

ソフトVE活動は,あらゆる分野・局面に拡大適用され,複雑多岐な活動となっている。活動を効果的に進めるには,多くの要因を科学的に管理するシステムが必要であるが,実際の活動では,多くの部分を経験と勘に頼っている。

そこで,当論文は,対象テーマに応じた,技法の適用と活動形態の組み合せの良否が,活動の成否を左右するものとの観点に立ち,過去5年間の実践活動事例を25の活動パターンに分類分析し,その成否結果から,ソフトVEにおける効果的な活動形態の選定方法を提言するものである。

VE活動の機能的見方によるアイデア発想活動の,体系的手順化を論じている。具体的には,

(1) アイデア発想チームへ,真のテーマを明かさない発想の工夫

(2) 機能表現を拡張した願望追求発想の導入

(3) アイデア発想活動を意識した機能分析の工夫

(4) アイデア具体化レベル順に発想法を変える工夫

をもとに,物中心の即物的発想から,機能中心の斬新な発想を可能にした。アプローチ1~5は,願望・希望列挙発想,機能・特性列挙発想,テーマ背景列挙発想,欠点列挙発想,マトリックス発想である。

建設業界では,長年にわたって若年労働者の入職率の低下による技能労働者の不足と高齢化のために生産性の低下や労働災害の増加などの問題をかかえている。

これらの問題を解決するために,VE的な思想をベースとした方法を考案し,その内容と手順をまとめている。すなわち,現場の生産性の向上に直接寄与することの可能な「建設作業所における省力化」を目指す生産手段のVE手法である。

この手法では,種々の管理技術や改善活動に用いられている改善のヒントの「キーワード」を利用し,VEの手順にそってその「キーワード」を問いながら改善のステップを進め,改善案の立案に結びつけることとなる。

その手法を適用した結果では,作業性向上と省力化工法や設計に効果があることが実証されている。この論文においては,この事例を示しながら内容の説明を行う。

様々な企業のVE導入が進み,製品の価値向上競争が熾烈になっており,VE活動のアイデア発想段階におけるキーワードの適用は,極めてその効果が期待されるところである。

基本的なキーワードの作用はアイデアを出し易くする事であると考えられるが,実際にキーワードは我々の頭脳の中で,どのような作用を及ぼしながら,価値の高いアイデアまで到達する事ができるのだろうか。

本論文はキーワードの機能が隠れた情報の顕在化にあるという仮設を立て,思考経路を3つのパターンに分けて分析し,物質名詞キーワード(自然・創造物キーワード)による発想検証の結果を踏まえながら,キーワード発想のあり方とこれからの課題について述べる。