論文発行年度: 1976年 VE研究論文集 Vol.7

オイルショックが,日本経済に大きな変質をもたらせてから,早や2年半余,経過した。この2年半余の日本及び世界経済環境の激動の流れは,高度成長時代から低成長時代への経営転換を迫り,企業経営について体質改善を余儀なくしてきた。体質改善の具体策は,高度成長時代の感覚を超えた諸策が求められ,その対応策の一環として,内部努力により利益改善の達成-コストダウン-が,企業の安定軌道を着実に確立するものとして,重要視される。

その最適有効手段として,VE活動の一層の充実展開が,各企業に進められている。企業内部各層へ浸透・定着を通じ,適用局面の拡大を進めながら,企業経営のマインドに押し進めてゆく展開過程は,幾多の企業に,その実例をみることができる。それゆえに,VEの威力に,企業が注目するところであろう。

一方,現時点の資材調達環境は,石油パニック・物価狂乱の一時期を経て,資材の新価格体系への移行が進んでいる。生産工場における購買部門の調達活動は,コストダウンの最前線部門として,質的充実・価値の追求を強く要請される。

この難局のなかで,購買部門として,個品のVE活動を積み重ねて,購買管理体系にVEマインドを組み入れ,低成長時の購買部門の利益創出機能の徹底追求と確立をはかり,併せて企業内VE活動の活性化を進めることは,企業体質改善の効果あるアプローチであろう。

本論文は,購買局面におけるVE活動の新展開を進めて,原低成果をあげてきた当所の展開過程を紹介しながら,その重要性・波及効果をまとめたものである。

ステップリスト・マネジメントの方法とは「ステップリスト」という書式を道具として使って,マネジメントをする方法につけた名称です。

ステップリストの書式とは,第1図に示す通りです。

この書式は,こみ入ったマネジメントをするときに,非常に便利なものであり,他にも,考えをまとめたり,新しいことを創造したり,問題を解決したりするときにも,便利に使うことのできる道具です。

一般に,ある目的を達するためには,いくつかの手段があります。そして,目的に対して,適切に手段が選ばれ,それが能率よく運ばれていく場合には,そこに,なにか共通したものの存在を感じます。これが,これから説明するステップリストマネジメントの中身なのです。

従って,この方法が使える対象は,ごく簡単な問題解決から,非常にこみ入った内容をもった対象分野にまで及びます。そして,その対象がこみ入ったものであるほど,この方法は使ったときの威力を発揮します。

すなわち,この方法は,こみ入った対象分野において,従来開発された各種の管理技術(IE,QC,VE,PERT,KJ法等を含んだ幅広い意味の管理技術)を目的に対し,必要に応じて適切に位置づけ,総合的に使っていくことのできる枠組を作りあげる性質をそなえており,システムエンジニアリング等の基本手法としても使える,極めて応用範囲の広い方法です。

この論文では,紙面の都合上,まず,その方法の手順ステップについて述ベ,次に,その各部分の意義と応用について説明します。

また,手順ステップに使うことばの説明は,この方法を多くの人に利用して載くため,できるだけ日常の卑近な例と,ことばを利用するように努めました。

利益指向にもとづいた目的的情報活動と,その最大限の活用により,現状打破へのシステム的VEアプローチは如何になすべきか。

利益の基本要因は,原価,売価,販売量であるが,これは(hard ware VE)と(soft ware VE)の総合システムVEで達成されるべきものである。

総合システムVEは,組織的な努力と運営により成果をみるものであるが,更に,トップの戦略決断に待つものが多い。

現在のわが国における企業競争は,同業他社との競合だけに対処しておれば,企業の存続が可能であるといった時代ではなくなり,他の業界はもとより,国際競争をたえず意識しなければならないのである。

国際競争を意識したとき,部品業界は,現在の完成品メーカーの要求仕様,最優先の考え方を捨て,要求された機能を果すため,最も価値の高い製品を完成させるために,完成品メーカーと対等の立場での協力関係を確立し,VE活動を実施することによって,共に国際競争の勝利者となることができると確信するものである。

そのためには,完成品メーカーと部品メーカーの製品企画が,同一方向を指向していることが,最も望ましいことである。

しかし現実は厳しく,国際競争力のある製品においても,多くの機会損失を発生させており,この点の改善が必要である。

今回,VE研究論文を発表する機会を得たので,ここに私の考えを発表し,完成品メーカーの賛同を得たいと考える次第であります。

昨今の経済情勢,企業動向,雇用情勢等,景気はマクロ的には若干の回復基調にあるとしても,すべての産業企業が,回復の波に乗れるとは限らず,減速経済下における企業間競争は,ますます熾烈化し,まさに各企業にとって企業環境は,厳しい状況下におかれている。

このような状況にあって,企業は何としても生き伸びていかなければならない。企業目的達成のために,いかにして利益確保をはかるか。各企業共,経営者はもちろん,幹部,第一線にいたるまで,全組織力,総合力を結集,一丸となって必死に取りくんでいるのが,今日の姿といえよう。

そして今や"VE"は,単なる改善手法としてのみでなく,すでに大多数のトップマネジャーが,認識を新たにし"経営戦略"の柱としての位置づけと,同時に実践への真剣な取りくみ姿勢がうかがわれる。

もはや高度成長経済は過去の甘美な夢と化した。

低成長経済を大前提として,企業活動の健全な発展を期して行かねばならい現在,この点での努力と成果が,企業間格差を大きく広げて行くであろうことは,容易に想像がつく。当然,VEに対する要請も過酷なものとなり,より効果の上る手法の登場が期待されている。

当事業部においては,昭和48年頃より本格的なVE活動の実用化段階に入り,第1図に示すように着実な成果をあげて来たが,われわれは49年初頭までを"VEを実施する環境と手法の確立"を成した『第1次活動期』と呼び,以後VE活動は新たな段階である『第2次活動期』に突入したと考えている。この段階では,先に確立した手法と環境をベースに,さらに過酷なVE要請に力強く答えるべく『ワースト指数』という概念を導入したVE活動によって,飛躍的なコスト力の向上を計り,着実に成果を上げつつある。

本論文では,この『ワースト指数』を中心としたVE活動について,当事業部の実例を交えながら,述べてみたい。なお,本論文では図表等を意欲的に取り入れているので,内容把握の一助としていただければ幸に思う。

最近における企業経営は,わが国の経済構造が,高度成長から低成長に移行したことにより,量的拡大から質的充実への大きな変換を迫られ,厳しさを増しているが,この中でVAの果す役割りは,ますます大きくなってきた。

今やVAは,企業収益を改善するための重要なツールとなっているが,VAの中心的役割りを演じるべき手法の一つである機能分析は,使う側での勉強不足や受入れ体制の不備はあるものの,必ずしも実践的であるとはいえない。

これらの背景から,実践ベースでの実用度の高い機能分析手法の確立を目的に,機能評価に焦点を合わせた手法の開発を行ない,有効性が確認されたので紹介する。

本手法は,現流品を対象としたものであり,この主な内容は,機能評価に必要な情報を,VA前にコンピュータにより作成し,これらの一元化されたデータより求められる比較的具体性のある期待メリットと,改善余地件数により,展開する実践的機能評価手法である。