論文カテゴリー: VEの適用局面 118件

公共事業に対する国民の批判や不信感は、相変わらず根強い。この原因として、地域の人々のニーズを十分にくみ取ることができないことや、計画策定手順が不透明になりやすいことなどがあげられる。

そこで「県民が何を必要としているのか」「使用者が求めているのは何か」を把握し、「公共事業が見えるようにする」ため、計画の早い段階から住民の意見を聞きながら計画を策定する県民参画が、公共事業の現場で、導入されている。

一方、国や地方公共団体で、公共事業の設計段階におけるVE(以下「設計VE」という)が導入されている。設計VEの導入目的は、地域のニーズに応じた設計、使用者の立場に立った設計など、公共事業をよりやすく、より価値の高いものとして提供していくことにある。

本論文は、「機能」という言葉で、「県民参画」と「設計VE」を結びつけ、地域住民が求めていることを事業の設計に反映する手法を紹介する。

最近各企業では収益性の向上と競争優位性を確保するため、製品の価値創造と平行してサプライチェーンの競争力強化が進められ始めており、今後、VEを用いてサプライチェーンの価値創造が活発に進められるはずである。そこで本論文は、サプライチェーンの価値向上を図るVEを効果的に実施するためのアイデア評価方法を提案するものである。

従来は、サプライチェーンの価値向上のために発想した資金投入期間を短縮するアイデアについては、その効果を定量的に評価することができなかった。そのため、アイデアの具体化の段階で機能とコスト両面からの達成度を高めた代替案までに洗練化することがむずかしかった。そこで本論文では、発想したアイデアの資金投入期間減少効果を時間短縮として評価するのではなく、Jコストの考え方を用いることによりJコストの減少量に変換することで機能とコスト両面の評価を効果的に実施することを提案する。

人口減少時代への突入、少子高齢化の進展、地域間競争の激化など社会情勢が大きく変化しているなかで、道路、河川、都市計画等の社会資本整備のあり方が問われている。

そのような状況のなか、2009年9月には「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズに、民主党政権が誕生し、公共事業予算も大幅に削減された。

国や地方公共団体では、公共事業の設計段階におけるVE(以下「設計VE」という)が導入されているが、効率的な社会資本整備を行うためには、改善効果が大きく、設計段階よりも上流側にある、企画段階、開発設計段階でのVE手法の導入が必要である。

本論文では、公共事業の企画段階、開発設計段階に相当する、社会資本整備(公共事業)を実施していく上での指針である「社会資本整備基本計画」の策定にVE手法を適用することの効果と、その手法について紹介する。

本研究は、原価企画の支援業務を改善するために、VEの5原則から原価企画の支援業務に対する受援者側の視点と切り口を決め、改善に必要な機能を抽出する方法を提案し、その有効性を明らかにするものである。要旨の第一は、原価企画の支援業務に対する改善視点の重要性を明確に述べた。第二は、この受援者の視点と切り口を三つのマトリックスにまとめ、機能抽出する方法を提案した。その受援者の視点は、支援者本人の立場と支援業務を評価する立場である。改善の切り口は三つである。一つには、順機能からの機能抽出、二つには、逆機能・実際認識からの機能抽出、三つには、要望からの機能抽出である。最後に、これらが原価企画の支援業務の改善に効果的であることを明らかにする。

製品の外観を良くするためには、魅力機能として取り扱い、顧客要求や顧客満足度を指標に計画が進められる。一方、土木事業で扱う景観には、建造物の外観だけではなく、すでにそこに存在する自然や他の建築物の外観が含まれている。景観検討では、周辺環境との調和や強調といった概念が必要となる。

我が国では2004年に景観法(景観緑三法)が制定され、良好な景観の形成を促進するための仕組みづくりが進められてきた。しかし、具体的なアプローチ方法までは示されておらず、景観検討には担当者の感性やデザイナーの美的センスに頼らざるを得ないのが現状である。当初のイメージを具体的な形とし良い景観を創出するまでには、関係者の努力と多くの時間が投入される。

筆者は、景観検討の精度向上と効率化を目的に景観検討の手順にVEを取り入れた検討を行い、具体例によりその効果を検証した。本稿では、その手順、考え方、手法について具体例とともに示す。そして、景観検討へのVE適用の効果を明らかにするとともに、今後VEを用いた景観検討の方向性を示すものである。

公共事業における設計段階は長期間にわたるうえ、意志決定のプロセスが複雑であり、製造分野でのVEをそのまま適用することが困難とされてきた。また、VE対象が単品生産であり個別性が強いことから、VEを公共事業へ適用するには、個別の対象テーマに応じて検討の方法をその都度工夫することが必要とされてきた。

同一の対象テーマであっても適用の目的や適用段階が変われば、実施手順の各ステップにおける検討の方法やテクニックも柔軟に変える必要がある。しかし、多種多様な事業がある公共事業において、適切に検討の方法を選択することは容易ではない。

本稿では、検討方法の選択を容易にし、設計VEによる効果を高めることを目的に、検討の方法について定型化を提唱するものである。本文中では、この定型化した検討の方法を、スタイルと表現している。

現在、公共事業では設計VEは事業の進捗段階や事業種別に応じて分類されている。

本稿では、定型化の観点から、対象事業を改善するレベルや改善の方向性に応じて分類することが適切と考え、この考え方に基づく5つの基本スタイルを提唱する。また、改善の方向性の概念として、3つの方向性について説明する。

最後に、特に適用方法に工夫が必要となるデザイン・レビュー型、開発設計型について事例と共に留意点を詳述する。

なお、本稿では、公共事業における設計VEについて取り扱っている。よって本文で扱う設計VEとは、公共事業における設計段階に適用するVEである。

公共事業では、計画、設計の段階で事業費を算出する。そして、その事業費をもとに事業が管理される。事業の凍結や停止も、この事業費を利用している。

しかし、設計の時点で算出した事業費が、最後まで変わらないことはほとんどない。なぜ、毎回事業費の修正をしなければならないのか。その理由は、「事業費はたった1つしかない」という幻想を信じているからである。本来、まだ起こっていない未来の費用を、完璧に見積もることは不可能である。

そこで、重要なのがリスクの概念である。リスクを設計に盛り込み、より最適な改善案を引き出すための新たな手法「コスト・リスク・マネジメント」を提案する。

土木事業へのVE導入は展開する時期にかかろうとしている。VE導入の基本であるVEの基礎つくりも年々発注者をはじめ各階層で普及されつつあると思われる。

しかし、複雑な構図を持っている土木事業は、もっと明確的なスタンスで取り組まないとVEの定着・普及が難しいことは否めない事実である。これらの特徴を汲み上げながら土木事業にVEを植えつけるには事業にマッチしたVE活用法が求められていると思われる。

本論文はまず土木事業のVE展開の基礎つくりを論ずる。つぎは土木事業のVE活用の課題を抽出する。そのつぎはVE活用課題の解決策を考察し、提案する。

公共事業は、経済活動と国民生活を支える社会的使命を担っている。しかし、限られた財源と長い事業期間は、大きな課題となっている。コストを削減する技術は多くが提案されてきたが、整備を早める技術があまり提案されていない。

そこで、公共事業の整備に関わる各段階において、それぞれに実践的対策法を提案する。すなわち、合意形成を早める実践的対策法、工期を評価する実践的対策法、機能発現を早める実践的対策法である。

合意形成を早める実践的対策法では、3つの共同VEの提案を行っている。工期を評価する実践的対策法では、コストと工期を同時に評価できる多指標評価法の活用を提案している。そして、機能発現を早める実践的対策法では、段階整備の考え方と各段階における価値分析を判断するプロセスコントロール図法を提案している。

これらのテクニックが全ての公共事業に活用され、国民、県民の満足度の高い社会資本が適切なタイミングで提供されていくことを願っている。

個々の事業の改善から、公共経営としての取り組みの必要性が問われている。

特に、設計VEの効果が実証されている昨今に置いては、さらに進めたVM(バリュー・マネジメント)としての導入と運営が不可欠であると考える。事業をVEにより改善する時代から、社会基盤をVMによりマネジメントする時代へと移ることが大切である。

VMに必要な要素は、筆者の複数のVM導入の実績から、4つに集約された。つまり、この4つの要素さえ整えれば、VMの導入をはじめることができる。そして、そのバランスを常に保つことが、失速しない秘訣である。

さらに、VEの効果を最大限に引き出すテクニックについて、ファンクショナル・アプローチ、VEインセンティブ、ファシリテーション・スキルアップの3つを取り上げ、原点に立ち返った考え方や具体的な内容を紹介する。