論文カテゴリー: VEテクニック 216件

VEが,各企業に導入され,効率的戦略の一環として推進されるようになってから久しい。

当社も,昭和43年にVEに着手して以来,「建設業におけるVEの適用」をテーマとしてとり組んできた。その中で,作業所において比較的短時間に行なうことができ,さらに,BETTER的改善を狙って開発された「3時間VE」に関しては,既に発表し,また,VE対象の選定方法,3時間VE会議の諸問題,VE会議から施工,完了までの手順等についてもフォローを行なってきた。

一方,そうした作業所を中心としたVE活動の推進と相まって,母店内勤事務系職員を中心にして,soft ware VE(特に事務のVE)の実践にも,近年,力を注いできた。

こういったVE事務部会では,時間的な面において,3時間VEは適用しにくい。というのは,ソフト面のVEのステップでは,情報収集,現状分析に,より大きなウエートをかけねばならないからであり,また,最終的な改善案は,ほぼBESTに近い状態でなくては実践に結びつかないからである。

このようにソフトVEを実践していく上には,種々の問題点があるが,本稿においては特に,「ソフトVEにおける問題点整理法」に的を絞って述べてみたい。

VEがわが国に導入されて以来,各企業において着実な成果を上げ,個別活動から企業経営方針に基づいた組織的な活動へと発展してきた。また,VE対象範囲においては購入部品のコストダウンを狙ったVE活動から,既製品を対象にした2nd Look VE,商品の構想決定時に実施する1st Look VE,商品企画時に実施する"0" Look VEへと,商品が生れる源へとさか上ったVE活動が積極的に展開されるようになってきた。更には,ハードウェア中心からソフトウェアの分野へと,ますますVEの適用範囲が拡大しつつある。

一方,具体的問題解決においては幅広い関係部門の人々で構成し,その人々の最大能力を発揮するのに適したVEチーム活動を実施して大きな成果を上げている。しかし,対象分野が広くなると共に関係部門から集った人々によるVEチーム活動を,常に成功に導くためには,チームメンバー全員に必ず目標は達成しなければならないという"使命感"を持たせることが非常に重要なことである。

本稿は,価値ある商品づくり(ハード面)をするために,顧客ニーズとメーカーのコストを考えた価値係数を用いることによって,目標の適切なブレークダウンとVEチームのやる気,目標達成への使命感をおこさせる機能別コスト目標の求め方とその展開について,過去研究してきたことを紹介する。この進め方を開発するに当って,最も留意したことは,実践において確実に展開できるようにすることであった。

当社では,VE普及の一環として,主に中堅社員を対象に入門議座を開いている。過去数回の開催で百数十名の終了者を出している。この講座の指導を通して「機能分析」について苦労した。

そこで,われわれは,過去何回かの経験を標準化して,機能分析の一手法として確立しようと努力して来た。

例えば,根本氏の講演中ふれておられた「透明軸ボールペン」について,3~4時間としておられたのが,本手法を一通りマスターすれば,1~2時間で出来る。

因みに,当社の経験によれば,1~3工程分の作業改善,または一部品当りの設計改善程度の機能分析であれば,従来法では,平均15~18時間に対し,本法によれば平均7~8時間程度で出来る。

本論文の主眼とするところは,次の3つである。

ひとつは機能系統図についてである。VEでは機能系統図が,本来,非常に重要な役割を持っていると考えられるにもかかわらず,単に形式的なものにとどまったり,あるいは,せっかく時間をかけて作っても,後の代替案との結びつけが明確でないという現象が見受けられるが,これは機能系統図の作成の仕方に一因があると考えられる。

VEにおける機能定義,機能整理のひとつの大きな目的は,それによって,物事の本質を考え直すことにある。すなわち物事の原理原則を,しっかり認識することが,真の独創力を導くことになるからである。従って機能系統図も,その趣旨にそっての検討がしやすく,かつ,そのプロセスを明確に出米るものが望ましい。

そこで機能系統図を目的,手段の関係で追求して作成することには変りないが,その機能分野を基本的な原理にかかわる本質的機能分野と,機能の形への転換に関わる形態的機能分野,さらに,その形態的機能分野で,ある特定の手段,構造をとったがために派生的に発生した付帯的機能分野という形でとらえる方法を提唱し,その考え方,VEをすすめる際の注意などを,ひとつの事例をもとに,具体的に述べている。

第2番目は,製品を構成する各種の材料,部品が,以上の機能系統図のどの機能分野に,どの程度関与し,またその時のコストとの関係はどうかということ,かつ,その状況からVEによって,改善すべき方向,あるいはVEの結果,それらが,どう改善されたかをvisibleにとらえるため,新たにバリューベクトル及びバリューベクトル図という考えを導入し,展開した。なお価値標準というのは,このバリューベクトルでいえば,そのコンポーネントを作ることに相当すると考える事が出来る。

第3番目はバリューベクトル図とコストテーブルの関連について述べている。バリューベクトル図による機能の材料,部品への割りつけ変更の検討,コストテーブルによるその可能性の追及は,前者の定性的機能の後者によるその定量化という面において,この両者の結びつけは,VEにとって非常に重要であると思う。

では,以上の骨子に従って論をすすめることにする。

市場競争がますます緊迫すると共に,材料費・人件費等の高騰が続く現在,価値ある技術商品を開発するために,設計部門においては,今までにない創造的な設計が要求されている。それは,非常に優れた技術的なものから,使用材料を少なくしたり,生産性・サービス性の向上を狙った,ちょっとした工夫等諸々である。

そのため,設計部門においては,日々,ユニークな,優れたアイデアの必要性が叫ばれ,グループによるアイデア会議や個人的なアイデア発想が行なわれている。

しかし,そういった形で出されたアイデアの多くは,目的とする所を充分に達成しているであろうか。また,創造的な設計をするためのアイデア発想技法は,ブレーンストーミング法・NM法・KJ法等を中心に約40前後あると言われているが,日常の設計活動の中において充分に理解され,効果的に活用されているであろうか。

どちらにしても,現在の厳しい社会情勢の下で要求されることは,実際に役立つ,効果的なアイデアを,いかに確実に,早く,多く出すかということである。

そのためには,過去の技術蓄積の全てをもっている設計者の経験・知識・知恵を,いかに有効に引出すかが,重要なことである。

そこで,この論文においてはいかにして,設計者の経験・知識・知恵といったものを有効に引出すか。そして,それを真に価値ある技術商品の開発に結びつけるかを,アイデア構造図を中心とした,創造的設計の考え方と,その進め方について,過去,研究してきたことを紹介する。なお,この論文中の実例は,当社で製造・販売している,オープンリールテープデッキに応用,活用した事例である。

昨今の企業をとりまく環境条件は,まさしく,戦後史に一時期を画し,経済混乱は,過去何回かの不況時とは,格段の違いを持った様相を呈している。この事は,もはや,かっての10%を越える高度成長の時代は終り,経済体制の転換を示していると言っても過言ではあるまい。

高度成長時代に培われた感覚での判断は,非常に危険な常識となりつつある。

当社における「VA倍増作戦」の展開も,こうした過去の高度成長時代の常識より脱し,企業をとりまくもろもろの環境条件に,柔軟に,先行的に,対応せんとするもので,"全員参画のVA" "製品総点検のVA"をキャッチフレーズに,昭和49年3月より実施されておる。

ひるがえって,当社におけるVAの発展過程を見るに,十数年前,購入資材費の原価低減を目的に導入された"VA"も,現在では,企業体質の改善を最終目的として,製品損益の改善を主体とした活動に,完全にエスカレートしており,現在,全工場で,期ごとに,1,000以上ものVAプロジェクトが実施され,その成果も,月額30億円余にも達している。

本論文は,こうしたVAプロジェクトの一環としての成果のうち,全社的に使われている部分機能を,共通機能として抽出し,分析した結果を,「横断VA」のステップとして纏めたものである。

機能を科学的に,あるいは,合理的に評価することは容易なことではない。価値分析の場合,この機能評価は価値評価ということであり,価値分析の最初にして最後のテーマであろう。

機能評価が意の如く行なえないのは,機能の多様性もさることながら,評価者の立場上の限界,あるいは制約があることを見逃してはならない。以下の論述は消費財について展開するが,一般的には商品の供給者(メーカーと考えよう)の立場から,機能の研究や評価がなされ,ここに需要者(ユーザーと考える)の欲求事項は満たされているとはいえない。

もともとメーカーとユーザーとは,立場を異にしており,どんな価値概念をもってしても,両者に共通するものはない。そこで,従来の価値分析は,ユーザーの立場を理解したつもりになって,メーカー的センスのもとに行なわれてきたが,これに対する反省も必要となってきている。

本稿はユーザーの立場を重視した(user oriented)機能評価のアプローチと,価値改善の方法展開を試みたものであるが,併せてesteem valueを伴った消費財の評価法や,従来ではあまり実用化されていなかった機能系統図と構造系統図との有機的関連性についても,ある新しい試みをもってアプローチしようとしたものである。

工程改善への管理技術的アプローチとしては,QCやIEがふるくから適用され,大きな成果をあげていることは衆知のことである。しかしながら,工程改善へのVE手法によるアプローチに関しては,以前より叫ばれていながら,今日,まだこれといった成果事例が少ない。

この背景としては,VE手法そのものの誕生が,製品の改善を主体としていることと,また,その後の発展の歴史をみても無理からぬことと考えられる。

ところが,工程というものを,インプットされたものが何らかのプロセッサー(処理機能=工程)によって,新しい価値が付加されてアウトプットされると考えるとき,工程は価値分析の対象となり得る。

すなわち,(1)工程によって一定の機能を付加するために,工程の処理(作業,加工等)に要するコストを小さくすることによって,工程の価値を向上して工程改善をはかる方向と,(2)一定の処理(作業,加工等)コストでもって,付加する機能を大きくすることによって工程の価値を向上して,工程改善をはかる方向とが考えられる。

したがって,工程改善に適合したVE手法を用いれば,従来のQCやIEと異なった観点,というよりはもっと総合的な観点から工程改善が可能となり,大きな成果をあげることが可能であると信じる。

そのためには,工程改善にVEアプローチが可能となるように,工程の価値の定義を明確にし,機能分析の方法論を確立する必要がある。

以上の考えから,ここに工程改善のためのVEアプローチのための一つの方法論と,これを組立工程に具体的に適用し,成果をあげた事例を提示して,諸賢の御批評を仰ぐ次第である。

VEは,価値に関する問題解決の手法であり,その特徴は機能本位のアプローチである。それは,いかなる問題にたいしても,機能定義・機能評価・代替案作成の基本ステップを,組織的に展開する活動である。

VEを製品の価値改善に適用する場合には,製品に要求される機能を,正確に定義することが必要である。2ND-LOOK VEの機能定義には,製品構成部品の機能定義と機能整理の2つの段階がある。この段階は,物本位の考え方から機能本位の考え方への思考変革の過程であり,真に要求される機能を明らかにし,思考範囲を拡大させて,価値改善を達成することが目的である。

機能定義は,機能的研究の基礎であり,VE活動の成果と効率に大きな影響を与える重要なステップである。この論文では,機能定義用語の実態調査にもとづいて,機能定義の現状について検討する。

GE社に端を発する購買を中心としたVEは,製品や部品(Product or Parts :これを第1のPとする…P1)に適用され,著るしい効果をあげつつ今日に至っている。わが国においても同様,そのめざましい発展は,昭和46年7月現在で,約3,500人のバリュー・エンジニアを育成するに至った。しかし,VEのもつ独特な機能展開の方法が,単に製品や部品,つまり"物"にのみ限定されるとは考えられない。当然,適用の範囲を拡大すべく,その応用研究は,電子回路,建築,あるいは装置へと発展した。しかし,それは単に対象が復雑になっただけで,やはり"物"の域を脱しないものである。"物"をとりまく工場の仕組みは"物の流れ","情報の流れ"を必要とする。従ってP1を中心に120度方向を変えた応用は,工程(Process:これを第2のPとする……P2)への適用である。さらに,120度方向を変えた応用は,手続き(Procedure:これを第3のPとする……P3)への適用である。