論文カテゴリー: VEテクニック 216件

オーディオ業界は,今,深刻な構造変化の時期に直面している。ひとつには,輸出比率の高いこの業界は,欧米市場の長期不況のために,売り上げを低迷させていること,更に国内においても需要の一巡,個人消費の低迷などにより,昨年は,前年より1割方売り上げが減少した。ふたつめには,第3国グループなどに,低価格品はシェアを譲り渡す傾向が続いている。もうひとつは,今までのアナログ技術からデジタル技術への転換に象徴される技術革新,新素材の時代を迎えたためである。今年秋,コンピュータ技術の応用であるDAD(デジタル・オーディオ・ディスク)という新しい規格のレコードとプレーヤーを一斉に発表する。今までのアナログ式のレコードよりも,音質は良くなるが,各社ごとの音の個性は,さらになくなることが予想される。そうなると,オーディオ製品は,趣味の製品というよりも,安くて良い物を作ることの競争になって行くことが考えられる。今まで,高度成長から低成長への変化を,減量経営,軽量経営によって乗り切ってきた各企業は,今また,大きな試練に立たされているわけである。

当工場においても,昭和44年の工場独立以来,VA活動を展開,多くの成果をあげてきた。本年も,前述のような企業環境に対処するため,従来以上のVA活動の展開をはかるべく,意欲的に推進しているが,特に,VA効果実現のスピードアップおよび機会損失の撲滅に力点を置いている。

本論文で紹介する「アイデアのバリュー評価法」は,アイデアのレベルをビジュアル化し,それぞれの価値の評価を適確にすることで,VA成果の増大につながるという信念に基づいて展開しているVA活動のー技法である。

VAは資源有効活用の技法として,時代的要請を満たすものであり,各企業において積極的に取り組み,多くの成果をあげていることは事実である。

しかし,一方においては,手間暇のかかる技法であり,効率的な運用が求められている。また,VAは経験技法であり,何回もProjectを体験することによって,要領がマスターされる,いわばスポーツの技のようなものであるともいわれる。しかし,現在のVAジョブプランは,分析が主体であり,現状を機能的に理解することを強調しているが,その後の代替案作成のステップが抽象的であり,不親切であると思う。成果につながるのは,この代替案創造のステップであり,具体的指示を求めている。

私どもの企業においても

1) VA実施の効率化と

2) VA成果の質,量の拡大

を目標に"機能分析と創造性の有機的結合の研究"に取り組み,"MELCO-VA発想技法"をアウトプットしたので,その一部を紹介するので,諸兄のご批判をいただきたい。

企業におけるVA活動は,経営効率を向上させるための有効な手段として,完全に定着してきている昨今,VAの役割りは,ますます大きくなり,活動の対象とする局面,および範囲は,経営活動のあらゆる面にまで拡大してきている。

この中で,今後のVAのあり方としては"VA活動の効率化"すなわち「最小の投入費用で最大の成果を生み出す」ことが課題となってきており,このため,各種VA技法の研究,開発が盛んに行われている。

しかし,そのほとんどが,VAの実施手順における「分析段階」,「アイデア発想段階」を対象にしたものが主体であり,「評価段階」すなわち"最も効果のあるアイデアを,効率良く,適確に選択し採用する"ための「アイデアの評価」に対しての技法は,必ずしも充分でない。

近年におけるVEの企業内普及は,著しい進展をみているが,その中にあって職能区分的(設計,資材,製造など)に人員割合を考えてみると,製造関係者が圧倒的に大であることは,いうまでもなく,この製造機能にVEの思想を導入し,製造機能の価値向上をはかることは,焦眉の急といえよう。昨今の製造技術のレベル・アップは,マイコン制御,作業ロボット・NC工作機等々真に目をみはるものがあるが,それに並行して,VEによる製造部門中心の製造コスト諸元の価値向上運動の展開が,大いに期待されることは,理の当然といえる。

本論では,製品のVEについては,すでに検討済みの製品について,その製造面からのVE検討を必要とする場合を想定し,それに機能分析(機能定義,機能整理,機能評価)をなす場合の考え方,すすめ方を述べようとするものである。

VEの技法は,製品VEの基本ステップの応用展開により,製造の領域とか物流の領域への通用等,歴史的な発展の過程を経て,今日多くの対象領域へと拡大され,大きな成果を生みだしている。

本論文は,これらの応用展開の1つである製造VEをとりあげ,その中でも,VEの基本ステップの応用が難しいとされている機能定義に焦点をあて,その具体的方法を,実践レベルで提示するものである。

製造VEにおける機能定義の難しい点は,1. 製造機能をどのように表現するか(機能定義用語),2. 人およびその手段となる構成要素をどの程度まで細かく定義するか(機能定義の対象レベル),3. 機能を評価し,改善の方向性を把握するために,定義された機能をどのように整理するか,(機能系統図の作成)の3つにある。

はじめの1つは,主として改善のためのアイデア発想を容易にする表現が重要な要素となる。あとの2つは,VE対象の生産形態およびその特質によって異なるものであり,たとえば量産品の製造ライン,単品受注品の組立工場,装置産業的製造ライン等によって,それぞれに適するアプローチの方法を選択,決定しなければならない。以下,これらについて述べる。

建設業のVEは,繰り返し効果があまり期待できない。1件1件が,施主,近隣,環境,土質など,種々の制約条件により,新規のVEを実践すると考えて良い。そこで,ベストよりベターの改善案を求め,短時間で数多くのVEを作業所で実施し,建設業固有のVE活動を展開してきている。

しかし,毎年,大量のVE実施例が報告され,蓄積されるにいたって,その事例を,いかに有効活用していくかが重要課題となってきた。もちろん,従来から内容の優秀な物件については,VEニュース(VEスポット)として全社員に配布している。

ここに,現在までのVE実施例の活用法と,その問題点について検討を加え,それらの問題を解決すベく,新たな情報システムの確立をはかった。

なお,現在までに作業所VEとして実施され,報告書の形で蓄積されている件数は,建築,土木,設備を含めて,10,000件にも及んでいる。

最近の産業界においては,従来あまり関係がないとされていた分野にも,エレクトロニクス化の波が押し寄せてきている。メカトロニクスと呼ばれる新造語にもみられるように,エレクトロニクス化された機器は,多種多様にわたり,それとともに,使用される電子部品に要求される機能・性能・品質は,複雑多様化し,電子部品の開発のためには,高技術力が必要とされている。一方,電子部品業界内における企業間競争は,ますます激しさを増し,高技術・高品質とともに,低コストが要求されている。かかる背景から,新製品の量産開始までに,性能・品質・コストを充分検討し,問題を除去するとともに,より早く他企業に先んじて新製品を市場に送り出すことが必要であり,そのためには開発の効率化をはからねばならない。当事業部では,こうした問題を解決するために,製品設計・生産設計において充分品質・コストを検討し,かつ,開発を効率化すベく,VEとQCの融合をはかり,その推進方法のシステム化を行った。本論文は,高技術・高品質製品のVE活動を行うにあたって機能故障という考え方を導入することにより,VEとQCの融合をはかった例を紹介する。

当工場はモートル,可変速ドライブモートル,換気扇,送風機,圧縮機,ポンプ,給水装置,産業用ロボット,プログラマブルコントロールシステム,制御装置,制御システム等を生産している。これらの製品は,それぞれ顧客のニーズに対応して各種の容量のものが作られており,何らかのシリーズ品として捕えることができる。

これらの製品は,それぞれ,顧客は市場値(プライス:Price)で購入し,製造側では,それを作り上げるのに原価(コスト:Cost)が発生している。このプライスとコストの差が製造側の収益となり,企業は収益を確保するため余分なコストの発生を防止しなければならない。

一方,市場においてはエレクニロニクス等の技術革新が激しく,製品のライフサイクルも,従来は5年~10年であったものが,最近では2年~3年と短かくなってきており,顧客は,常に最新技術を駆使したコストパフォーマンスの高い製品を求めている。このようなエレクトロニクスの市場は,技術の進歩も著しく品質,仕様,機能等を含めて製造者間の競争が激しい。したがって製造側は,常に最新技術で顧客の要求機能を達成すると同時に,それらの技術を,更に発展させることによるコスト低減競争が極めて激しくなっている。

このような環境で,従来のVAの価値の捕え方である V=F/C での機能(F)とコスト(C)に代って,プライスとコストで価値を評価する方法を考えることができる。本来,機能を評価する際,機能は値打ちとして捕えられてきた。部分としての機能は,代替機能としての値打ちが機能評価値となる。しかし,製品全体としては,プライスそのものを顧客の指定する値打ち,機能評価値と考えるべきである。すなわち V=F/C をV=Price/Cost と置き換えて価値を評価することができる。これによって企業収益に直結した形で価値改善を考えることができる。

また,このプライスとコストの関係を,当工場の製品のようなシリーズ品全体に適用し,プライスライン,コストラインとして,グラフによって比較すれば,シリーズ品全体収益についての管理も可能となる。すなわち図-1に示すように,プライスラインとコストラインが平行になっていなければシリーズ品の構成の考え方に誤りのあることがわかる。更に,コストの内容を基本機能,補助機能に分割し,顧客の要求機能すなわち顧客が金を支払う機能と,製造側が要求機能を達成するのに必要な機能に分けて,それぞれのコストラインをプライスラインと比較すれば,どの機能分野が収益確保の阻害要因かが明白になる。

このように,収益を確保するための製品VAで,プライスとコストの関係から価値判断をすることによって,顧客のニーズに見合い,かつ収益確保に密着したVA活動の進め方を「PCチャートによるVA診断法」としてまとめたので,以下,内容を発表する。

企業の利益計画におけるVEの役割は,ますます大きくなり,その活動に投入する資源も増大の一途をたどりつつある。しかし,一時期としてとらえると,企業の人的資源には,おのずと限界があり,これを越えると,大きな混乱が生じる。また,VE活動には,企業の宿命として,できるだけ短い期間で,目的を達成し,機会損失を少なくすることが,常に要求される。これらのことから,最近では,バリュー・マネジャー及びバリュー・エンジニアに課せられた大きな課題として,VE活動の効率化および迅速化の問題が大きくクローズアップされてきた。

本論文は,製品を対象とした数多くのプロジェクトの実践活動による資料をもとに,基本機能から補助機能(または二次機能)への展開およびアイデアの発想につなぐステップをとらえ,これらステップのアプローチを容易にするために,補助機能の性質を統計的に分析,明確化すると共に,発想のしやすい機能定義用語を抽出,体系化したものである。

これによると,機能のコスト順位において,上位の5つの機能で,全体コストの84%(平均値)を占め,また全体コストの80%を占める上位コストの構成品が,これら5つの機能に,何らかの役割を持っていること,同様に,上位6つの機能で,全体コストの90%(平均値)を占めていることがわかった。また,機能そのものについては,ここで取扱った173の機能のうち,いろいろな表現形式をとっている同義語および同類語をまとめると,例えば,「電流を流す」,「絶縁を保つ」,「○○を固定する」等の機能は,それぞれ13あり,これらのものをパターン化することによって,発想のための機能定義用語の体系化が可能となった。

なお,本論文は,当社の性質から「電気製品」を中心としたものであるが,他業界の製品にも,これらの考え方は,充分,敷延することが可能であると思われる。

従来の価値工学の分野では,思考の幅を広げるために機能定義と機能系統図の方法が使われてきた。

しかし,これらの方法は,いずれも使ってみると,有効ではあるが,なにかあいまいなところ,ぎこちないところが残っており,それを取り除く技法の開発が各国で望まれてきた。

この論文は,そのあいまいなところ,ぎこちないところを取り除くため,日常なにげなくやっている思考のメカニズムを,新しい目で再分析・再組立し,それの手順化を試みたもので,次のような結果を得たものである。

(1) 「最も適切な基本機能の表現」をとらえる簡単な手順を確立し,そのメカニズムを明らかにした。(機能定義の方法の改善)

(2) 従来の作業分割構成WSSの考え方を一般化し,それを機能系統図の上に重ね合わせることにより,両方の考え方の改善をした。(機能系統図の改善)

(3) 価値の高い案を手ばやく合理的に創り出し選択するプロセスを再確認し,それを手順の中に含めた。

FBSテクニックとは,その手順につけた名称である。