論文発行年度: 1970年 VE研究論文集 Vol.1

VE実施計画における機能評価の段階は,VE活動の思考展開を特徴ずける重要な過程であると考がえられる。機能を評価することの目的は,つぎの3項に要約される。

①改善目標の設定,②低価値機能分野の確認,③改善活動への動機付け。

しかし,機能評価に対する一般的理解は,①にのみ重点がおかれ,②,③に対する理解は極めて薄い。もともと,機能評価は革新を予測することであるから,絶対的達成目標を設定することは,困難なことである。厳密にいえば,それは永久にみつからないかもしれない。なぜならば,絶対目標の設定が,機能評価によってなされるとするならば,そこには,すでに機能達成の代替となる具体的設計が裏付けされることとなり,未知への挑戦としての目標の意味が失なわれてしまうからである。したがって,機能評価による目標設定は,改善能力を,どれだけの確度で予測し得るかに期待がかけられているのである。こうした技術予測の研究は,未来学研究の一課題として盛んに思索されている。たとえば,OECD科学技術顧問,エーリッヒ・ヤンツの分類による直感的手法,フィードバック手法,探索的手法,規範的手法などがあり,ランド研究所によるデルフィ一法は,かなり有力な方法として利用されている。しかしいづれの方法も,目下のところ確度の高い,きめ手になるようなものは見当らず,いわば,あいまいな形で予測せざるを得ないのが実状である。VEにおいても,各種の方法が提示されてはいるが,同様である。それがためにVEにおいては,機能を評価すること自体,意味のないものとしてしまう傾向がある。極端にいえば,まったく省略されてしまっているともいえる。機能評価を目標の設定ということにのみ主眼をおくとするならば,それも,やむを得ぬことかもしれない。しかし,評価活動の本意は,その結果である評価値(改善達成目標の設定)そのものを得ることもさることながら,それ以外に,その過程にこそ,システム設計上の基本的姿勢が認められ,改善行動の動機を得ていくところにあるといえる。したがって,機能の評価を改善目標の設定のみ,その意義を認めるといった考がえかたは,価値保証活動推進上の大きな支障とならざるを得ない。この問題を解決するためには,機能評価活動の意図するところの正当な理解と,より現実的な評価テクニックの開発が期得される。そこで,本論では,問題解決への一手法として,機能レベルの把握による評価方式を,仕様変更の方向性の予測を交えて,これまで各企業で試行してきた結果を中心として,まとめるものである。

市場における国際的な企業間競争の激化,技術革新の飛躍的な進展,労働力不足など,今日,企業における最大の課題は,情勢に対応して,リーダシップがとれるように,企業体質を改革強化しておくことが重要である。

すなわち,企業の永続的発展のためには,新製品の開発を中心に生産性の向上,コストダウンおよび安定し,かつ,より適切な製品品質による利益の確保が,絶対的条件であり,そのために激しい企業間競争の背景のもとにあって,日々革新の連続が成されなければならない。

とくに開発に結びつく機能アップとコストダウンの問題については,企業規模が拡大すればする程,単なる一部門の活動のみならず,企業内全機能,全部門が機能に対する革新的な考え方をもった一元性のもとに,トータルコストとしての低減をねらいに,より機能向上された製品を,ユーザに供給してゆくことが重要である。

このような考え方にたって,昭和41年度より,従来資材・購買部門中心に取組まれてきたVE活動を,QC,IEとともに事業本部の管理技術の3本柱として,新たな設計中心のVEの導入普及をはかり,今日までVE教育を中心に,そのフォローアップを実践活動に結びつける方式をもって展開し,人材の育成と成果への貢献をはかってきた。

本報告は,こうした活動経過を基礎に,更に1歩,VE活動の着実な普及をはかるために,VE活動を経営に有効な武器としてIE,QCとの融合の下に,広く総合的に経営活動における価値向上のためのプログラムとして,そのトータルシステムを確立,適用,実効をあげることの必要性から,当事業本部管理技術計画重点プロゼクトとして,昨年より,当本部VE専門研究会(能大VEワークショップを終了し社内講師VEプロゼクトメンバーとして経験の深い者7名で構成)を軸に,事業部技術部門との連携の下に,経営活動の一元化を指向したVE手順の研究,適用,試行を行ない,その効果について確認がはかれたので,ここにまとめ,ご指導をお願いする次第である。

思考活動は,その過程で省略があっても,製造活動と異なり,実態が目にみえないので,不良を発見することがむづかしい。そこで,思考の省略を防ぐために,詳細な思考の手順を設定することが必要になる。

VEが大きな成果を納めているのは,機能中心の思考もさることながら,思考の過程に一応の手順が設定されていることも,重要な要因であると考えられる。

ところが,現状ではVE活動の手順は,まだ充分であるとはいえない。特に後半の代替案作成過程は,前半の機能定義,機能評価の過程に比べて,手順とテクニックが不明確であり,優れた代替案を漏らしたり,代替案の洗練化の効率が悪かったりする危険性がある。

したがって,本論文では,優れた代替案を効率的に作成するために,詳細な手順とテクニックを設定して,代替案作成過程を充分な構造化することを目的とする。

必要機能を,最低コストでえようとするVE活動の中に,ある種の沈滞ムードが漂い始めている。VEの導入当初の活動はめざましく,その成果も大きかった。その結果,VE思想が広く普及したことは,産業界にとって,誠に喜こばしいことである。しかし,より高度なものへの発展の突破口が手近かにないため,堂々廻り的活動を余儀なくされているのが,実状であろう。また,VEは理論ではなく,活動であるといわれる通り,その活動範囲は膨大であり,情報収集などは,それだけで企業が成り立つ時代でもある。これに,一つのVEグループが対処するとなると,その活動に,自から限度を生ずる。特に,委員会制度をとっている場合は,極めて断片的活動に終始せざるを得なくなるであろう。したがって,VE対象の選定段階において,部品的要素を取り上げがちになる。

部品の機能と徹底的に分析し,その部品としてのVE結果が,機械の一部として組込まれ,予期しない結果になることもある。これは,組立てた時,初めて生ずる二次機械や条件に,見落しがあったからであり,情報収集の不足,機能分析の不徹底,テスト証明の不備不足などが指摘される。VEの理論上は,このようなことはありえないという反省にもとずき,次の活動を始める。

機械としての基本機能に附随する多くの2次機能や,条件,要素などの複雑な結びつきと合理的に分析するには,どうしたら良いかを研究することが必要であろう。

この論文は,基本機能を抽出するのではなく,できるだけ多くの2次機能や要素と付随させ,それらに,どのようにコスト配分をすれば,商品として良い製品になるかを研究したものである。

多くの企業が. VEと取り組んで,ほぼ,10年になるが,その間のVEの発展には,目覚ましいものがある。日本にVEが導入された当初は,製品の製造段階での適用を狙った購買関係の技法(PE)として展開された。しかし,今や,製品化前の設計段階,あるいは開発段階での適用がなされ,資源の有効活用のため,システムの価値追求を狙う考え方,技法として重要な地位を築きつつある。

このように,VEの体系化は,もち論のこと,その各技法としての機能的研究,また,創造性開発の技法にも,著るしい発展が見られる。

しかしながら,各技法が専門化して,高度化すればする程,相互関係の理解が乏しくなり,VEの正しい理解と効果的な適用が難しくなってくる。

その例として,企業でVEを進めて行く途上,しばしば,次のような一見,単純で,その実,非常に重要な質問に出くわすことがある。

「われわれは,何故,機能的追求をする必要があるのか?」

「創造技法は,本当に役立つのか?」

「私は,長年,設計業務に携わって来たが,何もそんな事をしなくても,設計は出来た。」

以上のような種類の質問である。しかも,この種の質問をする彼等は,一応,機能的追求の技法,また,創造性開発の技法も知っているのである。

結局,彼等はVEの正しい理解と,各技法間の関係が理解されていないため,VE適用の効果的方法を知らないのである。

以上の事柄をまとめてみると,次の二点がVEの現在の問題点としてあげられる。

1. システムの価値を追求するためのVEの考え方が理解されていない。

2. 創造性との関係においての機能的追求の重要性と有効性が理解されていない。

私は,この論文において,上記の2点に焦点を絞り考察を加え,これに関する実例を紹介し,実証づけるものである。この論文が,VEに携わっている多くの人々とVE発展のために一助となれば幸いである。

検討者は2名,検討期間は30時間である。対象機種(カラーテレビ)は,コスト低減の必要があった。そのため,この機種から22項目のVE対象品が選ばれ,各項目ひとつひとつVEする計画がたてられた。シャーシ引出し機構は,そのひとつの項目である。

シャーシ引出し機構各構成部品の情報を収集し,機能定義を行ない,テストまで行なったが,主にその過程の進め方,考え方を中心に記述した。

ステレオ製品の原価の中でキャビネット・コストの占める割合は最大で,シャーシ(アンプ部分〉をしのぐ高価なものである。したがって,企画進行段階でキャビネット・コストの決定は,重要な問題であることは,いうまでもないことである。

では,このキャビネット・コストが,どのようにして煮つめられ,決定されていくのであろうか,また,その過程でVE手法は,どのように使用されるべきなのだろうか。

生産には大別して,生産の基本ラインである直接作業と,それに付随する間接作業(すなわち管理業務〉とがある。本来,直接作業と間接作業の比は,直接作業の占める割合が多い程望ましい。しかし,多機種少量生産体制下では,技術部門では,純設計活動以外の多くの雑業務,機種毎のぼう大な設計資料の管理等の作業がある。また,そのために,同一機能品の二重設計や,同じ失敗のくり返しを生じやすい。発注部門では,伝票量の増加に伴なう発注工数の増大,工程管理部門では,管理オーダーの増加に伴なう管理漏れ等を生じやすい。

生産性の観点から見れば,密度の低いこれらの業務が,生産原価に占める間接作業費の割合を多くしている。

われわれは,生産ラインでの業務及び,それに付随する各種管理業務の機能分析を行ない,これらを最も少い労力で,最も能率的に行なうために,問題点を把握し,それぞれに対して,きめの細かい改善を施し,業務の合理化を実施しつつある。そのいくつかを紹介して,識者のご批判を仰ぎたい。

なお,このVE的合理化計画は,現在,まだ進展の途上にあり,完成したものではないので,併せて今後の方向についても言及させていただきたい。

IEは衆知のごとく,テーラーの科学的管理法にはじまる伝統的管理技法であり,わが国に導入されてから久しいが,近年,賃金の高騰,人手不足による省力化の必要性から,ふたたび見直されてきた。

また,VEを進めていく過程で,すでにIEの基盤のあるところは別として,一般に標準時間の未確立によるコストデータの不備が改めて認識され,遅ればせながら,IEの導入に踏み切った企業も少なくない。

以前,わが国が,まだ人手不足の経済でなかった時代には,IEのニーズはあまりなく,むしろQC,VEを重点的に採り入れた企業のほうが多かったようである。

全社的に,ただ1つの管理技法に努力を集中している時は,問題にならなかったが,途中から別の管理技法を併行して導入するとなると,企業によっては,それらの間の関係をどのように位置づけ,理解,統合したら良いか混乱することも十分にあり得る。とくに親企業から種々の管理技法の導入を勧告されても,中小規模の協力企業では人材も少なく,なおさら上記のような事態がみられるのではあるまいか。

この問題は,IEをどのように定義するかによっても,取上け方が違ってくる。VEをはじめ,多くの管理技法は,広義のIEにふくまれてしまうが,それでは主題の解決にはならないので,ここではIEを,狭義のIEすなわち,作業研究に限定し,VEとの関係を取扱うことにする。

どのような管理技法にしても,時代とともに,適用の場所,対象,時期,要求に応じ得る範囲を拡大し,それぞれ精緻な手法も漸次,開発されて内容が豊富になり,往々にして,あたかも1つの管理技法のみで,あらゆる経営管理上の問題が解決できるかのように信じられることがある。

しかし,管理技法は,あくまで手段であり,それ自身は目的たり得ず,また,1つの管理技法のみでは限界があることも否定できない。すなわち,それぞれの管理技法が相補関係にあることを理解し,各技法の利点を良く認識し,企業目的のためにうまく統合活用してこそ,はじめて意義がある。

この論文では,プロジェクトワークを中心にして,IEとVEの特徴を考察し,とくにIEの場合,問題定式化のフェーズが重要であることを指摘した。そして問題解決のジョブプランを基本とし,これに手法を組み合わせたWSS方式による教育訓練プログラムを開発,実施したところ効果が認められたので,統合のあり方を方向づける一例として,その内容を提示する

VAが,わが国に導入されて10年を経過した。この間,VA思想の企業への浸透は,めざましいものがあり,VAの対象も部分から全体,そして総合化へと,遂次,拡大の一途をたどってきた。またVE技法はセカンドルックを中心としたVAから,ファーストルックをめざすVEにと,発展拡大してきたことは,周知のとおりである。

最近の価値概念の変化は,大きく拡大しつつある。使用価値の向上に限定された初期のVAに比して,最近の傾向は,エスティーム・バリューをも対象とした,感覚機能に重点が置かれた,広い価値概念に対象が拡大化してきたといえる。今やVEは,単なるコストダウンの有力な手段にとどまらず,広く顧客の要求を満たすマーケッティングの中にあって,商品の価値を高める,そして具現化を計る強力な一助を担うVEに,成長したとみるべきであろう。

一方,企業内活動においても,ソフトウェア面で,価値向上をめざす努力がなされている。"物"を中心として発展し,半ば成功をおさめてきたVEの適用局面も,その基本姿勢ともいえる価値概念を,ソフトウェアの効率向上面に拡大しつつある点も,指適できよう。

このように10年を経過したVE,そして,これまで未開発であった局面に,VErの活躍の場が展開しようとしている'70代に,VErとして,企業から何を期待され,また,どのように応えるべきかについて考察を試みたい。

最近のVEの一般的傾向として,機能を向上させることもVEであるとされている。また,今後はその傾向がより深められる,といわれており,現に,その方向にVEを推進してゆこうとしている企業が多くなりつつある。

しかし,従来からの機能を一定でコストだけを下げる,が本当は本流ではないだろうか?また,機能向上ということは,一体どの様なことなのだろうか,従来の機能一定と,どのように違うのだろうか,設計段階のVEでも機能向上があるのだろうか? 以下考察してみよう。

VEとは,その製品とかサービスの機能(目的とする働き)を最低の総コストで達成するために機能を分析し,価値を最大にするための組織的なチーム活動である。

VE活動を活発化するためには,企業トップの明確な方針により営業部門の受注活動より販売後の保守サービスに至るまでの総コストを最小を最小にするVE活動の管理が重要となる。

従来は,とかく日常業務はそのまま担当させ,従業員個人またはVEチームの自発的な努力に期待し,VE活動推進の環境整備をおこたり,VE予算の裏付けもせず,いたずらにVE低減目標のみ過大な要求を行なうなど,VEに対する投資を過小にする企業のトップが少くなかった。VEの効果は,その投資額に比例して増大されることを自覚し,国際的なコスト競争に打ち勝つVE推進の総合化を,早急に実現させるべきである。

1. 最初に三つの言葉を提示しよう。多くのVErは,VEを論ずる時,これは的はずれであると合点し,とまどうかも知れぬが。

(1) 正しいはかりと天びんとは主のものである,袋にあるふんどうもすべて彼の造られたものである。

(2) 相はかることがなければ,計画は破れる,はかる者が多ければ,それは必ず成る。

(3) 全地は同じ発音,同じ言葉であった。時に人々は,東に移り,シナルの地に平野を得て,そこに住んだ。彼らは互いに言った。「さあ,れんがを造って,よく焼こう。」こうして彼らは,石の代りに,レンガを得,しっくいの代りに,アスファルトを得た。彼らは,また言った,「さあ,町と塔とを建てて,その頂きを天に届かせよう。そして,われわれは名を上げて,全地のおもてに散るのを免がれよう。」時に主は下って,人の子たちの建てる町と塔とを見て,言われた,「民は一つで,みな同じ言葉である。彼らはすでに,この事をしはじめた。彼らがしようとすることは,もはや何事も,とどめ得ないであろう。さあ,われわれは下って行って,そこで彼らの言葉を乱し,互いに言葉が通じないようにしよう。「こうして主が彼らを,そこから全地のおもてに散らされたので,彼らは町を建てるのをやめた。これによって,その町の名はバベルと呼ばれた。

以上聖書より

2. VEをツールとしてVErが自からの生命を企業に奉げんとしている時,"VEを経営の中に組み込み体系化しなさい"と言うことや,"VEをコストダウンプログラム,また,新商品開発プログラムで充分活用しなさい"と言うようなことは,よく耳にすることである。VEの具体的な展開方法については,確かに,充分に論議し,研究しなければならないであろうが,われわれは,今,VEの根本,VEの本質までさかのぼって,討議する必要もあるのではなかろうか。

3. V=F/C(V:価値の尺度,F:要求機能,C:総コスト)

これは,われわれVErが見慣れている式である。ではVErに尋ねよう,「価値が高められた,損われたというが"価値をはかる正しいはかりと天びんは何んですか。何を基準にして価値を判断していますか。機能とコストのバランスによる?それならば,そのバランスは何を基準にして判断していますか」

次に尋ねよう,「あなたがたは,よく計画を立てるが,それは生かされていますか。実施され,成果を得ていますか。計画が破れる? どうしてですか?」

最後に尋ねよう,「あなたがたは懸命に働らいているようですが,一体,何をしているのですか。何を造っているのですか。

4. 開放経済のなかで,VEはあらゆる時と場で適用され,いろいろなものをどんどんと生み出していく。しかしながら,本質的な問題が解決されないままのVEは,VEと呼ぶだけの値打ちをも持てなくなるのではないかと考えるのである。

この問題を解きながら,ここに,これからのVEのあり方として,Value Design(VD)を提唱する。

5. Value Design(VD)という言葉自体は,過去において,何人もの人々によって,述べられたことなので,何も新しいことではない。ただ過去においては,デザインというので,即,物の形態や色彩をどうすべきか,などの点とVEとの関係において,問題をとらえていた感が強く,デザインの本質までには触れていなかったようである。

ここでいう "Value Design" とは,本物のVEとは,デザインの本質を包含しなければならぬことを意味し,これが,今後のVEの姿勢であろうと考え,推奨したいのである。

VA手法が導入されてから,既に,10年が経過している。導入当初,部品に対する分析から始まって,製品・装置へ対象が移行して行っている。これと並行して,各ステップ毎のVA手法も研究が進み,対象の変化に応じて,展開が可能になって来た。

当社では,VA活動の企業内の定着は,経営幹部の理解と,承認が,最も,効果が大である点に着目し,VAの効果を,経営効果に反映させることを最終目標とし,工場単位の,収益改善計画としてのVA活動の投入,受注から発送迄の,各段階におけるコスト効率を高めることを目標とする。

このような,経営活動そのものに対する,VA活動の適用は,経営活動の広範囲な分野に対し,高所からの,マクロ的な視野による,問題点の摘出が必要で,それら,対象となる問題点の多様性に応じて,解決のための戦略を立案しなければならない。

従って,環境によって,極めて,特異な性格を持っている問題点に対しては,個々の具体的な手法そのものよりも,VA活動の計画,すなわち,広義の対象選定の計画立案が,より重要な課題となる。

今後,予想される材料費の上昇,人件費の高騰,労働人口の減少等,山積する問題点をかかえた企業経営は,戦略的なVA活動の投入によってのみ,健全性を確保出来ると考えられる。

本論文は,取り上げられた対象機種が「経営の川」を流れてゆく過程で,どの領域にVA的攻撃の的をしぼるかを,戦略的に決定し,実施した事例を挙げて,その効果が,経営の業績を直接向上せしめた実証を示したものである。

一般的に,企業間の取引品目の発注契約の際に,明確なVE契約によって,VE提案を義務づけている場合は少く,報奨金支払の取り決めを行なっているに過ぎないのが,現状と思われる。

取引先業者のVE提案を,より活発化させるためには,VE提案の採用に伴なう効果を,業者へかんげんし,その努力にむくいることが大切である。すなわち,VE提案を行なうことにより,業者の利益が増し,受注が安定することを,実証する必要がある。

VEを実効あるものとするには,業者の協力体制を整備し,業者の"ちえ"を活用しなければならない。もしそうでなければ,VEは,たんなる精神運動となり,親企業とのつきあい上,やむを得ずVE提案を提出することになり,購入コスト低減の強力な技法とはいえなくなる。

当社にVEが導入されたのは,昭和38年6月,購買部内にVE事務局が設置されたのに始まる。

戦後,経済界の非常な発展と,各業界の技術革新のさなかにあって,各企業は経営の合理化,利潤の追求なしには,激しい時代を乗り切れず,落伍するため,種々の管理方式を導入し,成果をあげる企業も多かった。その経営管理方式の1つとして,VEがアメリカより紹介され,昭和34年頃から導入する会社があらわれ,現在では約2,400社がVEを導入している。

各企業により,導入の動機は違うが,やはりコストダウンの手法として,またコストチェック等を目標にしていると思われる。導入後の展開もまた,千差万別であろう。

当社の導入の動機は,やはりコストダウンによる利益の増大と,コストチェックを目標としていた。また,VEによってセクショナリズムを打破することもあった。こうしてVE事務局は,活動を目標に向って開始した。

当社の如きアッセンブル・メーカーの場合,購入部品(生産用)のすべてが,必らず一度は購買セクションを通過するのと,外注業者との接触が一番密接である等の理由により,購買部門にVE担当者を配置したのである。

高度選択社会といわれている現代の技術社会において,技術開発そのものも複雑化し,多様化して,変身している。この高度に複雑化した技術社会における研究開発の分野も同様である。

この論文は,このような技術社会における研究開発(R&D)のプロセスは,如何にあるべきか,また,そのプロセスの中で,価値工学(VE)は,どのように適用されていくかを中心に論じたものである。

新製品開発へのVEの適用というと,一般に要求仕様から展開するファースト・ルックVEが考えられるが,ここに紹介する方法は,類似機能をもつ製品から展開していく方法である。すなわち,類似機能製品の機能系統図より基本機能だけをとらえ,この基本機能を満足する二次機能,部分・部品機能をアイデアにより展開して,これを評価して新製品としての機能系統図を作成し,これを具体化して新製品を開発していこうとする方法である。したがって,この方法は,要求仕様から展開していくファースト・ルックVEに比較して,革新的な新製品開発は望めないかも知れないが,現有の製品をVE手法を用いて,着実に改善した新製品を開発することを可能にした方法といえる。

現有製品を市場の動向や要求にマッチするように改善した新製品を開発することに対する要求は,企業競争が激化の一途を辿っている今日,ますます強いものになっていくことは自明のことであり,この方法の適用が拡がっていくと考える。

この方法は,要求仕様から展開していくファースト・ルックVEと,いわゆるセカンド・ルックVEとの間に位置し,また類似機能製品の基本機能は要求仕様の一部と考えられることから,強いて名づければ,セミファースト・ルックVEと呼ぶことができる。

現在の電気業界における競争は,熾烈をきわめ,新技術の開発,コスト開発の優劣は,そのまま製品の販売に大きく影響を与えております。

このような厳しい市場をはいけいに,コストダウンの手法として紹介されたVEは,各社こぞって導入したことは当然であります。

当社においても,このような状勢のもとに,昭和38年,購買部門にて,購入する部品のコストダウンを計ることを目的として,VEを導入し,その任としてVE事務局を,購買部門に設置致しました。

購買部門に設置された理由は

(a) 当社製品の製造原価中に占める材料比率が70~80%に及び,その90%を外注工場に依存していること。

(b) 市場より各種情報の収集が容易であること。

(c) 外注工場の専門的技術を活用出来ること。

(d) コスト情報がはやく,問題点をとらえやすいこと。

(e) 製品開発が,モデルチェンジ(一部機能の改造)的なものが多いこと。

等の理由によります。

株式会社日本製鋼所においては,広島製作所が昭和42年11月VEを導入,半年後,室蘭,東京,横浜の各製作所も導入し,全社的なVE活動が展開されようとしている。

中でも広島製作所では,VE推進満3ヵ年を迎え,7回に及ぶセミナーと,ON THE JOB TRAINING 方式により,養成されたバリューエンジニアの総数は,230余名に達し,春秋2回実施されるセミナーの期間を除き,年間,常時,6人編成のチームを2チーム活動させ,製品の価値の向上とコスト低減に取り組んでいる。

このような継続的VE活動の原動力となっているものは,次に述べるトップの方針よろしきを得た,設計管理者を中心とする積極的姿勢であることは,論を待たないが,VE推進マニュアル活用を通じて,設計ライン,VEチームメンバー,これに助言するスタッフの三者が,よりよいコミュニケーションによって結ばれ,総合されたチームデザインが生れていることも,忘れてはならない。

このマニュアルと,その背景について,動機づけを中心に,主要項目につき解説すると共に,今後のVE適用範囲とタイミングに言及し,将来のマニュアルの姿と,バリューエンジニアの使命について,述べることとする。

最近は,VEあるいは価値分析に対する反応が非常に多い。「価値」という問題に,非常に関心がもたれ,バリューエンジニアという専門家が養成されつつある。企業内におけるVEは,アレンジされた形で推進され,定着発展しているが,もう一度,本来のVE理論を基本よりふり返り,再確認し,現在の企業内におけるVEの問題と対策及び今後の方向づけの指針の設定をしてみたい。

しかるに

1) VEの適用局面

2) チームと組織化

3) VEの専門化

という問題を深く,企業の体質に合わせてボーリングし,定着化する必要がある。

最近の企業の置かれている立場,環境は,非常に厳しい。特に,その技術革新による商品ライフサイクルの短いこと,価格の低減が急速であり,創業者利潤をむさぼっていられないこと等,企業努力は並々ならぬものである。その中でも労働賃金の高騰に対し,利益を確保してゆくため原価低減には,企業は必至の努力を払いつつある。その中でVEという原価低減の手段は,有力な武器として企業にみとめられ,ここ数年来急速に進展して来たことは否定できない。しかし一方,10数年前にGEのマイルズの創始した古典的VE「敢て古典的といわしてもらう」にも,考え方,プロセスの上でも修正を大幅に加えられる時期に至っている。すなわち,この1970年代の変化と,技術革新に即応するVEとしては,余りにも受身的発想から出発していると思われる。そこで今後の時代変化に対する1,2の考え方を述べて見たいと思う。

"VEとは何か"について,数多くの定義づけがなされているが,その根底に流れるものは,確立された組織をもて,要求された機能を最底のコストで満足させるための手法であるといえないであろうか。従ってVEを展開する上で組織編成を如何に行なうかが,1つのポイントとなる。

しかし,一概にVE組織といっても,企業形態・規模・生産品目などにより異なるであろうし,また,その企業に適した組織編成をしなければ,VE効果を100%発揮させることは出来ないであろう。

そこで,VE組織とは一体如何なるものか。どのような構成を計らねばならぬか,という問題が生じてくる。

本論文は,このVE組織の問題について,アッセンブリメーカーである当社の例をとり纏めたものである。